ごくろうさま

「ごくろうさま」は使えない?

「ごくろうさま」は目下に対する言い方であり,目上や同僚あるいはお客様に対しては使わないようにという指導を受けたことがある。ではこの言葉に代わる言葉は何かというと,「お疲れさま」だそうな。
柔道では指導を2回受けると有効をとられるらしいので,次の指導を受けないように「お疲れさま」を連発してきた。しかし,言葉というのは確かに言い換えることはできるが,それぞれが微妙なニュアンスを含んでいて全く同じではない。「お疲れさま」ではどうも具合が悪い場面がある。
たとえば,職場へ予定されていた日程でお客様がおいでたとしよう。玄関にお迎えして,「本日は,ごくろうさまです。」と言いたいところだが,指導を受けているので「本日は,お疲れさまです。」と言いかえられるかというと,何かがちがう。道中たいへんだったでしょうというふうに聞こえないこともないが,予約した客を迎える旅館の女将のようで何かおかしい。また,取りようによっては,すぐお帰りくださいというふうに聞こえないこともない。
では,この場合は何と言えばいいのだろうか。ここでも,やはり指導はあった。こんな場合は「本日はありがとうございます。」というのだそうな。なるほど,と感心はしたものの,これにしても使いにくい場面がある。お客様の訪問目的がはっきりしていれば「ありがとうございます。」でもかまわないが,もしかしたら,この訪問客は何かの無心にきたのかもしれない。そんな場合は「ありがとうございます。」とは言えないでしょう。いくら指導があってもそこまでお人好しにはなれません。さあ,こうなるとたどりつくのはやはり万能挨拶言葉「ごくろうさまです。」を登場させるしかない。言葉は言い換えればいいというものではない。
「ごくろうさま」に代わる言葉が私には見あたらない。