校内放送

校内放送

今日はめでたい卒業式!
開式が9時30分。10分前には生徒は全員体育館に集合,着席している。
5分前,来賓,保護者入場。本日の出席者全員が席に着こうとした時,9時25分のチャイムが普段よりゆっくりめにそして大きめに「キーーン・コーーン・・・カーーン・コーーン」。 
チャイムを切り忘れていたことに気づいた教頭が,近くにいた年輩女性教師に放送室へ行ってチャイムを切るようにお願いをした。女性教師はやや躊躇したもののうなづいて,はき慣れない靴の音をたてないようにと腰をかがめながらそっと体育館から姿を消した。
教頭は定位置に立ち開式の辞を心の中で反復する。いよいよ定刻9時30分,教頭は小さく息を吸い込んで会場を見回す。まだ,先ほどお願いした教師がもどっていない。整えるようにゆっくり息をはきだしたその時,かすかに放送のスイッチが入ったような気がした。そして,開式の辞を待つ静まりかえった会場に校内放送が入った。
「私に頼まんと,自分で切りに来ればいいのに! こんなたくさんスイッチあったらわからんわいね!」
会場に複雑などよめきが起き,ほどなく女性教師は任務を果たした達成感にあふれた表情で席に着いた。教頭は大きく息を吸い込んで「開式の辞」を発声した。