第三次ハリコフ戦ゲーム

KHARKOV 1943 [HC / Vae Victis #25]

Ecole de Guerre (VV #26) , vol. 1

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"Kharkov 1943" に関する分析記事が Vae Victis 誌 26号 ・ "Ecole de Guerre (戦争学校)"コーナーに掲載されているので、日本語に訳してみました。
フランス人ゲーマーの考え方は、果たしてどのような物でしょうか?


以下は、Vae Victis 編集部の許可を得て公開する、非公式の日本語訳文です。
文中、日本語として少々変な箇所がありますが、2002年に翻訳した当時のままにしておきます。


戦争教室 : ハリコフ 1943 の上手な遊び方

Vae Victis がお届けした最も野心的且つ完璧なゲーム、"Kharkov 1943" は、我々の読者の間に真の熱狂をもたらした。 故に、よりよく理解する為、そしてこの歴史ゲームを本物のクラシックとするために、編集部はこのゲームの分析記事を皆様に提供する!

写真解説:グロス・ドイッチュラント師団の擲弾兵達。1943年2月、ハリコフ近郊での雪中行軍


Grégory Anton (プレイテスター)


1942年から43年にかけての冬の終わりに、ソ連軍は自分達の成功、とりわけスターリングラードでの勝利に酔いしれ、東部戦線全体に対する大攻勢を開始しました。

彼らは自分達の敵が、つい最近の敗北によって壊滅していると判断したのです。この1ヶ月間の戦闘で、ソ連軍自身の本来の戦力が非常に弱体化していることに気付くこともなく。

戦線南部の重要な中心都市・ハリコフの奪回、そして何よりもスターリノと黒海の間に“ポケット”を作り出すという、野心的な『星作戦』と『ギャロップ作戦』が焦点になっています。

"Kharkov 1943" というゲームは、上記の全体状況こそが重要なのです。



Des Objectifs Ambitieux : 野心的な目標

戦史をサッと想い起こすことによって、ゲームプレイの勝利条件と各自の目標をより良く理解することができます。

例えば、史実と同じようにプレイするソ連軍プレイヤーは、大攻勢を、それも西方向にだけ実施しなければなりません。 確かにハリコフとポルタワの占領は有益ではありますが、それだけでは充分ではないのです。

ソ連軍プレイヤーは、自軍の主要目標が、実際にはスターリノの南方に展開しているドイツ軍を罠にはめる為に、マップの南部に突破口を開くことである事を忘れてはなりません。
南部におけるソ連軍プレイヤーの領土獲得が重要になる程、勝利はより大きなものとなるでしょう。

とは言え、単なる西方向への圧力では、人民のオヤジさん(訳注:ヨシフ・スターリンのこと)を決して満足させることは無いでしょうが・・・・・ そう、ソ連軍プレイヤーはゲーム全体を通して、マップ南部の領土を占領するように試みねばならないのです。


スターリングラードから続いた相次ぐ後退後のドイツ軍側の目標は、次の夏季攻勢を見越した上での好都合なポジショニングに配慮しつつ、最終的に赤い大群を押し止めることができる新しい防衛線を構築することです。

要するに、赤軍の攻勢に抵抗し、ドネツ川沿いに踏み止まることが重要なのです。
その場合、ゲーム終盤にプレイヤーの最終的な目標が決定されていない間は、(上記の)目標を忘れないでください。

従って、ドイツ軍プレイヤーはその場で死守することを全く強制されませんし、それどころかゲーム終了までに領土の放棄が決定的と判明しない限り、(一時的に)領土を失うことも許されるのです。



Des Armés Équilibrés mais Differentes 
 : 異質だが、釣り合いのとれた両軍


到達目標がハッキリと定まったので、初期配置時の両軍の戦力を点検する段階になりました。

下記の表に示されているように、対峙している両軍は消耗しない限り、ゲーム全体での戦闘ステップ値の総数ではほぼ互角です。 ドイツ軍プレイヤーの合計127ステップに対し、ソ連軍は125ステップを持って攻勢を開始します。
このことから、ソ連軍の攻勢は開始時点から十分に危ういと結論づけることができるでしょう。

たとえ、この戦闘がソ連軍プレイヤーにとって困難故に、これらの第一印象が完全には間違っていないとしても、ソ連軍プレイヤーは万事休すと思ってはいけません。

まず第一に、これらの数字は理論上のものです。
この表では二つの陣営がいかなる損害も受けず、補充と増援を蓄積するという状況を示しています。 実際には損害が等しくなることは無いですし、ゲーム・プレイが進行するにつれ、両プレイヤーが立てる作戦の善し悪しに応じて、損害の差が生じるものなのです。

第二に、ゲームの初めにソ連軍プレイヤーが持っている二つの大きな切り札を考慮してはいません。


1.戦力の集中 ソ連軍プレイヤーは、自軍の短い補給線以外に守るべきものを何も持たない密集した軍を自由自在に扱えるという点で、相手よりも勝っています。
実際、共産主義者の軍が勝利条件都市群へ向かって突破するのを防ぐために、ドイツ軍プレイヤーは部隊を分けて戦線全体を守らねばなりません。 おまけに、ドイツ軍は孤立した配置区域の中央に部隊の一部を置いた状態でゲームを始めるのです。


2.ユニットの規模 もし、ドイツ軍プレイヤーが装甲ユニットを、専ら攻撃を主導する存在と見なしているようなら、ソ連軍プレイヤーは、狙撃兵師団をその愚行のお相手として押しつけることが出来ます。
なるほど、ドイツ軍の歩兵は連隊規模なのに、共産主義者側のそれは師団規模なのです。 ひとことで言えば、二倍のサイズなのです。
1個戦車旅団毎に絶えず3個狙撃兵師団を付けたソ連軍部隊は、ドイツ軍の1個連隊に打ち勝つことが出来るのに、ドイツ軍の3個連隊では、共産主義者の1個師団に対して比較しうる結果を得ることができません。


自由に使用できる戦闘ステップ値の総数


ターン数 開始時

10 11 12
枢軸軍 * 127 143 169 203 263 281 289 307 323 332 338 344
枢軸戦車** 37 42.5 47.5 56,5 77.5 81.5 86.5 90.5 94.5 98.5 102.5 106.5
ソ連軍 * 125 142 167 203 226 237 256 281 302 333 344 357
ソ連戦車** 38 42 48 60 70 74 83 88 95 106 110 116

* : 指定されたターン時の、マップ上に存在する分と、増援・補充の分を加えた戦闘ステップ値の総数。

** : 指定されたターン時の、マップ上に存在する分と、増援・補充の分を加えた戦車部隊 (偵察ユニットの戦闘ステップ値の半分を加えた) の戦闘ステップ値の総数。

 




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