Vae
Victis誌 54号の付録ゲームで、基本的には 1942年6月末 〜 同年11月中旬までの枢軸軍による夏季攻勢 “青作戦”
を扱う。だが、同誌 55号には後半戦シナリオ('42年11月中旬 〜 '43年3月中旬)と追加ユニットが、さらに 56号には
フルキャンペーン('42年6月末 〜 '43年3月中旬)シナリオと追加ユニットが用意されたので、青作戦から第3次ハリコフ戦までを堪能することが可能になった。故に、これをお読みの皆さんには三冊揃えて購入なさることを薦める。
部隊ユニットは枢軸軍が軍団、ソ連軍が軍を表し、各部隊ユニットは多段階の損害ステップ (6ステップまで) を有するので打たれ強く、しかも同種の部隊ユニット間で損害ステップを融通しあうことができるため、かなり柔軟な部隊運用を実施できる。
手番プレイヤーが一つの司令部ユニット(枢軸軍は軍、ソ連軍は方面軍)を活性化させると、その指揮範囲内の部隊ユニットを移動・戦闘させることができるようになる。この活性化を両プレイヤーが交互に実施し、活性化可能な司令部がなくなるとターン終了、という
Vae Victis 誌の付録ゲームではポピュラーなシステムを用いている。両陣営には上級司令部(軍集団司令部)も用意されていて、これを活性化させると、その指揮範囲内に存在する複数の下級司令部も同時に活性化でき、一回の手番中に多数の部隊ユニットを集中運用できる。
手番プレイヤーの行動手順は、活性化 → 第1移動 → 戦闘 → 第2移動 と単純なのだが、第2移動では機械化ユニット(戦車・機械化)と騎兵、それに第1移動で動かさなかったドイツ軍歩兵とソ連軍親衛部隊が移動可能となる。ここでも部隊運用の柔軟性が配慮されているが、逆にプレイヤーを相当悩ませる(楽しませる)ことにもなりそうだ。
戦闘は、戦闘比を算出してダイスを振り、CRT上で解決するという一般的なもの。一定条件を満たすと “電撃戦”(ドイツ軍のみ)や
“人海戦術”(ソ連軍のみ) といったボーナスを利用することができるし、将軍ユニットのボーナス、さらには空軍ユニット(爆撃機)の支援等々を活用して、自軍に有利な展開に持ち込むようにできる。
と、ゲームの概略を見る限りでは、単純そうな感じである。しかし、和訳ルールを一読なさると理解できると思うが、結構細かいルールが多い
(実は、Vae Victis誌の付録ゲームの中でも高難易度) ので、いきなり前・後半戦のキャンペーンやフルキャンペーンに挑むのは無謀かもしれない。そこで、まずはプレイ例を読んでから、4つ目のシナリオ、
「ウラヌス作戦」 を何度か試しにプレイすることをお薦めする。たった2ターンのショート・シナリオなので気楽にプレイ可能、且つ、このゲームの基本システムやコツ等々を修得できるし、チル河を巡る攻防も意外にアツイ。
以下は、PDF形式の和訳ファイルです。
・ 非公式・和訳ルール Ver.1.02
・ シナリオ集 Ver.1.01
・ チャート類
・ ユニット凡例・地形凡例 (カラー)
訂正情報 '05/11/3
: 和訳ルールおよびチャート類に誤訳・訂正箇所等がありましたので、改訂しました。 詳細はこちら
新たに Q&A のページを作成しましたので、併せてご覧ください。
上記4つのファイルはSkyDrive に置いてあります。
こちらからどうぞ・・・
★ デザイナーズ・ノート と プレイ例
の和訳 (Vae Victis 54号マップ裏 掲載)
★ ゲーム解説 と リプレイ の記事の和訳 (Vae
Victis 56号掲載)
★ ルール等に関する Q&A
★ Vae Victis's Nach
Stalingrad (Paper Wars #66) New!
:米国の専門誌に掲載されたレビューで、割と好意的に評価している。
しかし、細かい粗の指摘が多いこと!
◆ 勝利条件について ◆
このゲームの勝利条件は、ドイツ軍側にとって大変厳しいものになっています。
このことについて本ゲームのデザイナーである Hervé BORG
氏に質問したところ、次のような回答を得ました。以下は要約です。
「 〜 ドイツ軍に厳しく勝利条件を設定していることは、もちろん承知しています。ですが、ドイツ国防軍は
このスターリングラード戦役で全てを失ったのです。故に、情け無用なのです。: 勝利条件のバランスを整えるには、戦力バランスを大幅に変更しなければなりません。 (
ヒトラーは、まさにその事を理解しなかったので、自身の貴重な軍隊を無駄な戦闘に投入し、彼らに馬鹿げた目標を与えたのです。) 」
「上記の私の考え方を理解してくれない人もいることは分かっています。しかし、私はゲーム・プレイヤーとしてよりも、歴史家として活動しているので、ヒストリカルじゃないゲームが良いとは、とても考えられないのです。
スターリングラード戦役は、この戦争に決着をつけるつもりで計画されましたが、現実はヒトラーが想定していたようにはならなかったのです。私はかなり違ったものになってしまったと確信していますし、あるいは
“引き分け” の可能性も有ったでしょう。
夏の戦役の続きとなる戦いにも帰趨を決める可能性がありますが、それは夏の戦役後のポジショニング次第でしょう。 」
… ゲーム発表当時、BORG氏がゲーマーとしてよりも歴史家として活動をしていたことは、このゲーム用のヒストリカル・ノート
( 53号掲載の長文と、54号掲載の短文の両方とも) を彼自身が書き上げていることからも明かです。その情熱が故に、夏季攻勢の計画立案時のドイツ軍の目標を基準として彼がゲームの勝利条件を設定しているのも、まぁ、理解できないわけではありませんね。心情的に。
そういうことならば、細かな勝利条件に神経を集中させてチマチマとプレイするのではなく、1942年当時にタイムスリップしているんだという妄想にドップリと浸りながらコーカサスの地を駆けめぐる、というのが、このゲームに関しては正しい遊び方のように思われます。
もう少し正気を保ってプレイしたいのなら、勝利条件を段階的にずらすなど、プレイヤーの側で適当に融通を利かすのが良いのではないでしょうか。
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