Nostalgie (1)
Entretien avec Théophile Monnier
L’initateur
de Vae Victis
Vae Victis 創刊者 テオフィル・モニエ との対談
Vae Victis
#150
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by Patrick
RUESTCHMANN パトリック・ルエッチマン
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情熱家たる者、25年毎にアイディアを思いつく。
だが重要なのは「思いつく」ことではなく、そのアイディアを「実現する」こと。
テオフィル・モニエ Théophile Monnier の場合、それは 歴史(ヒストリカル)ゲーム への情熱を
玄人集団(ゲームマニアの人達) のみならず、それ以外の人々とも共有し、理解し易くするようにすることだ。
とは言え、この25年の間には 『Jeux & Stratégie』誌が ゆるやかに、そして結局は 消滅 したし、そして何よりも
初期の数年間はウォーゲームに多くの紙面を割いていた『Casus Belli』誌という非常に有力な先例が存在したのだ。
(写真)シリアスゲーム・フォーラムでの
テオフィル・モニエ(左) と ニコラ・ストラティゴ。Vae Victis 創刊時の古き良き時代と何ら変わりない! -
VV誌 #150 P.34より -
じゃあ、時間を 1995年 に戻そう。 “Advanced Squad
Leader” の同人専門誌 『Tactiques』 を立ち上げ(1991年)て さらにヤル気になった テオフィルが 『Vae
Victis』 誌を創刊した年だが、当時 彼は出版社を探している状況だった。
《
あの頃、期待が高まっていたんだよ。驚異的な発展を遂げる“歴史ゲーム”に相応しい“メディア媒体”への期待がね。・・・ ほぼ
一年、雑誌の企画を携えた私は 数多の出版社へ売り込みを、否、攻め立てていたんだ。
それで最終的に私を信用してくれたのは、Histoire & Collections 社の経営者 フランソワ・ブヴィリエ François
Vouvillire なんだ(彼自身は ミニチュアゲーム のプレイヤー)。 ちなみに
私は彼に『Tactiques』を送リ付けていて、その号には
1940年時のセネガルの原住民歩兵に関する共同執筆記事が掲載されていた。まず彼は、その記事中のすべての間違いを事細かに綴った返事を私宛に書いたんだ。この雑誌(Vae
Victis)の構想についての話し合いを申し出る 数か月前にね。》
夢中になると 人は
意欲が溢れるもので、この編集者(テオフィル)は 付録ゲーム “Tunisie 43” が付く創刊号を携えて行動に移る。
確かに、(この雑誌の読者は)付録ゲームをプレイする前は忍耐強くあらねばならないだろう − そして 切れ目の入った駒シートが付属する
98号(2011年発行)を待たねばならないのだ − 。 けれども、ウォーゲームの経験っていうのは
まさにそれであり、それ(忍耐強く取り組むこと)が とても高尚なものだと 徐々に分かってくる という 美点 があるのだ (これって フランス流
<French Touch> ?)。 この美点は なによりも この雑誌に将来の展望を授ける
ファンダメンタルズ (訳註:「経済の基礎的条件」と訳されるが、ここでは「重要基本事項」くらいの意?) に基づいている。
《
フランソワ・ブヴィリエと私には、自分たちがやりたい非常に明確なアイディアがあり、Vae Victis のすべての概念 …
ミニチュアゲーム と ウォーゲーム、ヒストリカルノートをつけた毎号の付録ゲーム、娯楽色、そして 情熱 の混合 … は
レストランのテーブルの上で、ほぼ一度の昼食の間に練られたんだ。
VV
の編集方針は異色であり、「ダイナミック」且つ「お遊び」のあるものだった。その頃のウォーゲーム誌の大半は
インテリっぽい 感じだったけど、私は過度にそうなるのを避けたかった。同様にフランソワも
たいへん高品質なグラフィックを持ち込み、真の突破口を形作ったんだ。Vae Victis の誌面は 活力 と 欲求
で溢れていたけど、決して「身の程知らず」ではなかったよ。 》 と語るテオフィル。
この編集者はリスクを負ったことも記憶している。 これから編集チームを編成しなければならないのだ。
《
(チームは)とても精力的で自主性があったよ。私個人の 出会い や 引き合わせ に任せて、数週間で編成したんだ。》
力説を続けるテオフィルに引き込まれる。
《 目を輝かせて このプロジェクトの呼びかけに応じてくれた
新しい世代を優遇するため、私は逆に 神殿の番人たち
には懇願しないよう気を付けた。年寄りを排除できるよう、大勢のボランティアで編成したんだ。
アンバシュ Imbach
ストラティゴ Stratigos
ベイ Bey
ベドフスキー Vejdovsky
ショール Chaulet
そして 他のすべての人々。
これまで彼らの大半が この雑誌に付き添い、育ててきた。》
Vae Victis
の読者なら、これらの名前に見覚えがあるだろう。なにしろ彼らは今でも在籍しているし、彼らの中の約一名、 ニコラ・ストラティゴ は
1999年からあなたの雑誌の編集長を務めてる。 創刊の際には すべてを構築しなければならず、それを背負いこんだのが
テオフィルだ。
《 そういうわけで、あっという間に私は “Tunisie 43” をデザインし、ニコラ・ピラート
Nicolas Pilartz と ニコラ・ストラティゴ からの(熱烈な)要望で テストプレイ
をしたんだ。それに、創刊号と続号の大部分の執筆もね。それらのネタをひねり出したのは 当然 私だし、他の原稿のいくつかにも私は関わっているよ!
》
歴史ゲームの「遊戯小宇宙」の中で精力的に活動した数年の後、テオフィルは、このホビーの中で自身が興味のある分野へ復帰する、と我々に告げた。
《 近頃、歴史ゲームのジャンルは さらにマイナーになってるけど、活力 と 多彩さ
は保たれてるね。ネット販売や先行予約のメカニズムのおかげで、ゲームの企画や出版社の数が増加したのは感慨深いよ。
私自身に関しては、2012年に Edition du Palaldin 社(私が経営し、なかでも「Voyage &
Histoire」誌を発行していたので深い愛着がある)を清算した後、産業部門を eスポーツ(ビデオゲーム競技)の世界 へ、業務を
販売指導の役割 へと完全に方針転換したんだ。
でもいつかは書籍出版、あるいは歴史グラビア誌、いや、歴史ゲームの世界へ再び戻る望みを持ち続けている。情熱っていうのは、ちょっとした友好的な出会い、例えば
エコール・ミリテール(旧陸軍士官学校)周辺での出会い
注1 を機に、轟き溢れ出るものさ。》
注1:第2回 Serious
Games Forum 2020年1月27日 を参照。Vae Victis は第1回から協賛しています。
澄んだ両目に笑みを湛える テオフィルは ミリタリー分野で戯れたい気持ちを抱き続けている、これは確かだ。
《
ボードゲーム
に ローグライクゲーム、4Xゲーム に
ハック アンド スラッシュ、それに
シミュレーション・ロールプレイングゲーム … 若い時分の
ASL (Advanced Squad Leader) 以来、私は ちょっと気が多すぎるんだよね!
それで、ずっと前から私は
ビデオゲームの利便性 に屈伏してしまってる。コンバット ミッション に数年間
嵌(ハマ)っちゃったせいでね。それに時流にも逆らえず、皆さんよく御存知の 選択の自由 ってヤツに屈してしまったんだ。
もっと具体的に言うと、私は目下、軍事用シミュレーションゲーム、それに
シリアスゲーム
の分野の作品にすごく興味がある。以前は熱烈なマニア御用達の趣味であったものが、近頃は紛れもない ビジネス になってるんだ。
さらに話は続いた… 》
テオフィルへの 定番かつ当然の質問:
Vae Victis
に今後数年間、さらに何を望みますか?
《 Vae Victis が末永く継続できるかどうかは、結局のところ、全て
ニコラ(ストラティゴ)に行き着くよ。彼は不測の事態をくぐり抜けつつ、この雑誌の レベルの高さ と 刊行 を維持できたんだ。
結論として、Vae Victis の最大の功績は、全ての歴史ゲームファンに 誇り
を取り戻させたことさ。ゲームに対する、そして歴史に対する 情熱 への誇り。VVの各号には 楽しい思い出や、(皆さんと)分かち合いたかった
あの情熱、あの熱狂が詰まってるんだ。 》
ありがとう、テオフィル。 25年経っても
キオスク (訳註:ヨーロッパの駅・公園などで、新聞・雑誌などの売店や公衆電話ボックスとして用いられる簡易な建物。−goo辞書より−) で目にする、フランス語で書かれた 基準となる唯一の 「歴史ゲーム専門グラビア誌」 。これを世に出すには、情熱に任せる思い切りの良さが
必要だったのだ。
読者の皆さん、二十年来
采配を振る人物が語る歴史の続きを、まだ読まねばなりません。ニコラ・ストラティゴ、その人です!
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Interview de
Nicolas Stratigos
ニコラ・ストラティゴ
へのインタビュー
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パトリック Patrick: 1999年に
この雑誌の舵をとることになるのは運命だったと言える名前だけど、君はどんなゲームをプレイしてきたの? それに職歴は?
ニコラ Nicolas:
1970年代の末にゲームをプレイし始めた。親しい仲間が数人いて、音楽やその他多くの事柄のほかに 歴史
をとても愛していたんだ。 僕らは
6mm(1/300)のフィギュアを使う第2次世界大戦のミニチュアゲームや、1/76のプラスチック製フィギュアを使う “La
Flèche et l'épée(弓と剣)”、ジャン=ピエール デフィユー Jean-Pierre Defieux の
アウステルリッツ “Napoleon A Austerlitz”、それに SPI
の古いボードシミュレーションゲーム(“Napoleon's Last Battles(クワドリ)”、“Panzergruppe
Guderian” など )をプレイしたよ。 僕は「イドロ Hydro」になった(訳註:直訳だと「水」の意で、フランスの
旧 国立商船学校
l'école nationale de la marine marchande の学生のこと
)。そこには潜在的なゲーマーが大勢 居たんだ。で、それをいいことに、JdR(ロールプレイングゲーム
Jeu de
role)の “ D&D
Dungeons & Dragons”
や “クトゥルフの呼び声
l'Apeel de
Cthulhu”、それに パリ と ル・アーブル の間で “キラー
Killer :
The Game of Assassination“
(訳註:Steve
Jackson Game 社の
アクション・ロールプレイングゲーム )なんかをプレイしてたよ。
パトリック: ボードシミュレーションゲーム と ミニチュアゲーム との間で、君の心は揺れ動いてるの?
ニコラ: 率直に言って、両方とも大好きさ。 “DBM
De Bellis
Multitudinis”(訳註:B.C.3000 〜 AD 1485 までを対象とする ミニチュア・ウォーゲームの
ルールセット)と “
l'Art de la guerre
” がとても好きだし、トーナメントに参加していろんな相手と対戦した。気が置けない人達の中で楽しい時間を過ごすし、以前から
“Panzer
Corps” も時々プレイしてる。トーナメントに押し掛けた時はいつも、ナポレオン信奉者の育成に大きな喜びを感じてるんだ。
僕は自身の最終的な専門分野と認識してきた「紙製のウォーゲーム」を常に愛している。 Compass Games
の “Hearts and Minds” や GMTの “Triumph &
Tragedy” と “Ukraine'43” をね。GMTの “Staringrad'42” をテストプレイするのが待ちきれなくて ウズウズ してるよ。
でも白状しないとな。“テラホーミング・マーズ
Terraforming Mars” が大好きだし、“アーカムホラー
ザ・カードゲーム
Horreur
à Arkham le JdC” を「こけおどし」だと思いつつ
息子とプレイしてるし、それに 本格的なロールプレイングゲームをやる時間がないから “マンション・オブ・マッドネス
Demeures de l'épouvante”
を息子と同年代の若者数人とプレイしたってことをね。
パトリック:
およそ50個の VV誌の付録ゲームを 製作したり 製作協力してる君は、雑誌編集 と Cerigo Edition
社の舵取りをするのに必要な時間をどうやって得てるの?
ニコラ:
膨大な時間とエネルギーをそれらに取られているのは認めるよ。
だから、ゲームをプレイしたくてもしない(というか、もうしてない)。
でも、ゲームプレイと同じくらい楽しい仕事をしてる自分を哀れむなんて、どうしてできるだろう?
パトリック:
Vae Victis の創刊以来、どんな事態の悪化があったの?
ニコラ:
定期刊行物の流通がますます困難になって、配給元の多くが休業してるね。この危機は、間接的に 雑誌取次の Plestalis 社(訳註:2020年7月に経営破綻)と MLP(Messageries
Lyonnaises de Presse)社を揺さぶっているよ。雑誌における広告利益は下がってしまったし。
僕ら(ゲーム出版業界)は
まさに中小企業のエコシステムであって、多国籍企業のそれとは違う。確かに、ソーシャルネットワークが部分的には補ってはいるけれど、インターネットは
おびただしい数の
諸党派階層(訳註:ここでは「ゲームジャンル」の意か?)を細分化したんだ。そして数多のイベントがフランス各地で開催されている
− ミニチュアゲームのトーナメント、ティエール Thiers 図書館での
OPJH(訳註:Open de Paris des
Jeux d'Histoire:パリで毎年開催される歴史ゲームのイベント)、エコール・ミリテールでの
シリアスゲーム・フォーラム − それはもう、とても積極的にね。Vae Victis は、可能であれば
それらのイベントに喜んで協力してるよ。
パトリック:
フランス語・外国語を問わず、君にメールを書いて送る読者って、どんな感じなの?
ニコラ:
メールの内容は、どちらかと言えばポジティブなイメージだよ。古参の常連と同じくらいにはね。 この雑誌は 一旦
段取りを組んでしまえば、もう僕が統制することなんてそれほど無いし、あらゆる国の読者からの投稿に僕が依存してるってことは、みんな分かってるはずだよ。
パトリック: 雑誌に(記事や付録ゲームを)投稿して指導を仰ぐことを躊躇している 新人作家諸氏
に言いたいことは?
ニコラ: 投稿して あなた自身を売り込んでほしい。
僕にとって新人作家を獲得することは、大きな喜びなんだ。
全員に応じる保証はしないけど、偉大な長老(老舗ゲーム専門誌)と比べて、VV誌には
いつでも新人作家の名前が記載されていることに気づくはずだよ。
パトリック:
25周年後の、この雑誌の展望は?
ニコラ: 30周年を祝って欲しいね! つまり、僕らで盛大に
第180号へ到達 させるってことさ。
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Fin
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第50号特集記事の テオフィル・モニエ 寄稿文
および、Strategikon
の ニコラ・ストラティゴ インタビュー記事
本記事掲載誌の
Vae
Victis 150号は、2020年3月に発行されました。
この非公式翻訳文は Vae Victis 編集部の許可を得て公開しています。
Translated
by T.Yoshida
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