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Vae Victis Hors-Serie #10


La bataille de Stalingrad

スターリングラード戦ゲーム ミニ・レビュー

by Luc OLIVIER


 

スターリングラードの現在の姿であるヴォルゴグラード、そして その街角の到る所で目にする歴史を書き留めた記事を掲載するにあたり、Vae Victis は伝説的なスターリングラード戦に捧げられた数々のゲームを多角的に検討した上で皆さんに提示する。

 

 1942年夏の会戦や'42〜'43年冬の厳しい戦いの他に、スターリングラード市街での死闘もヒストリカル・ゲームのデザイナー達を魅了してきた。過去に出版されたゲームは2つのカテゴリーに分類できる。この戦いの一部、あるいは2ヶ月間全体を克明に描く独立したシミュレーション。もう一つは、第二次世界大戦の戦術級ゲーム・システム用に作られたヒストリカル・シナリオである。

 

単体ゲーム

Streets of Stalingrad 第3版 (L2D) 1979年にフェニックス・エンタープライズから出版された Streets of Stalingrad は、目下のところ精緻さでは一番のゲームだ。この戦い全体を中隊規模、1ターンは 1日、1ヘクスは 300m で再現する。どちらかと言えば戦術級的なルールと多数のシナリオで構成されている。このゲームは熱烈なファンには歓迎されたが、すぐに絶版となった。1982年に、まず Nova Games から2つのボックス・ゲームに分割して再販された。南部編の Fire on the Volga と 北部編の Battle for the Factories、そしてこの二つを結合するための エキスパンション (拡張) ・キット も準備されたが、 これは発売されずに終わった。しかし 2002年になって、グラフィックの改良 及び 少々のルール改善が施されて断然豪華になった新版が、 L2D Games から2度目の再販 (第3版) と相成った。非常に正確な戦闘序列と詳細なマップを備える Streets of Stalingrad は依然として 『基準』 となるゲームだが、プレイに時間が掛かり、難易度も易しいとは言い難く、しかもプレイバランスは良くない。

Battle for Stalingrad (SPI) 1980年に SPI から発売された Battle for Stalingrad はとてもユニークなゲームだ。 スコード・リーダー (AH) のデザイナーである ジョン・ヒル John Hill が開発したこの作品は、インタラクティブなゲーム・ターン や ほぼ戦術級と言える戦闘システム等々、非常に創意に満ちたメカニズムを用意している。各ターンは一週間単位であり、総合 (?) シークエンス中に2つの陣営が互いに短い活性化セグメントを行う。ゲーム・スケールは大隊規模、1ターンが一週間、1ヘクスが 600m であり、どちらかと言えば作戦級となる。当然ながら入手困難だが、最近になって日本のゲーム雑誌・ Six Angles によって再版された。こちらには見事なグラフィックと、とりわけ SPI 版では省略されていたユニットの部隊番号が用意されている。

Struggle for Stalingrad (3W) 1985年に 3W から出版された Struggle for StalingradThe Wargamer #47, Vol.1 の付録だった。これはエリアで分割されたハーフマップ 1枚と少数のユニットから成るミニ・ゲームである。ユニットは師団規模、1ターンは 6日、ルールは簡単だが巧妙であり、短時間で一回のプレイが終わる。シナリオは複数用意されていて、キャンペーン・シナリオは 9月13日〜12月5日までとなっているが、ドイツ軍プレイヤーが慣れていればもっと早く終わることもある。残念ながら Struggle for stalingrad は絶版であり、再販の見込みも全くないと思われる。

Turning Point : Stalingrad (AH) 1989年にアバロンヒル (AH) から発売された Turning Point: Stalingrad は、Storm Over ArnhemThunder at Cassino、それに Breakout: Normandy と同じエリア・システムを用いるゲーム。内容物は、AH社特有の美しいハードマップや丈夫なパーツを備えたもの。基本セットは 9月13日〜10月3日にかけての最初の 3週間しか扱わない。別売りのエキスパンション・キットでは 11月4日までの戦いの残りの部分をカバーするために必要なユニットとシナリオが追加されている。マップは市街地やその近郊を細分化する“エリア”によって分割されていて、ユニットは殆どが大隊規模、1ターンは一週間。プレイ手順は、同一エリア内にいる (敵味方の) ユニットがスタック単位で攻撃を実行するインパルスを、両陣営が交代で行う。ゲームのメカニズムは かなり簡単で、ゲームプレイは速く進行する。絶版とはいえ、他のすべてのアバロンヒル社のゲームと同様、かなり容易に (中古品を) 見つけ出せる。

 再販ものを除き、1989年から 2005年にかけては何も (新作は) 発売されていない。最近になって2つのミニ・ゲームが出現した。
2005年9月に Stalingrad: A Walk in HellArmchair Generalの付録として発売。この雑誌は、実際には、出版社の Webサイト上に用意されている PDF 形式のゲームをダウンロード可能とするためのパスワードを配布している。このゲームは 9月と 10月の戦闘をシミュレートする領域が描かれたマップを 1枚備えた完全なミニ・ゲームで、ターン中にユニットを動かすためのアクション・カードを用いる。このゲームはスターリングラード戦を扱う新しい究極のシミュレーションと言うよりも、雑誌の販促用 『ボーナス・ゲーム』 である。
ゲームジャーナル 第19号 Storm Over Stalingrad は日本の雑誌・ゲームジャーナル 第19号 の付録として 2006年に出版された。このゲームは Storm Over Arnhem (邦題 : アルンヘム強襲) と同じメカニズム、つまり Turning Point: Stalingrad と同一のものを使用しているが、スケールは異なる。Storm Over stalingrad は 10月と11月しかカバーしていないし、両陣営のための支援戦術カード … 砲撃、航空支援、工兵、地雷、モロトフ・カクテル、カチューシャ … を使う。手早くプレイできるゲームではあるが、まだまだ至高のシミュレーションとは言い難い……。

 

ヒストリカル (史実) ・モジュール

RedBarricades (AH/MMP) アバロンヒルは ASL 用の最初のヒストリカル・モジュール、Red Barricades を 1989年に発売し、初めてこのジャンルに乗り出した。赤いバリケード工場周辺を中心に工場地区を 2枚のマップに描いている。 ASL のルールに基づいており、戦果と損害に応じた資源管理、長期目標を掲げる 『数日間』 のキャンペーン ・モジュール、それに簡単なシナリオを用意している。2001年になって MMP がこれを再販した。
現在予約受付中の Valor of the Guards (訳注 : 既に発売中) は、MMPから発売された 7番目の ASL 用ヒストリカル・モジュールである。これは中央駅を奪い合う 9月の戦いをシミュレートするものと思われる。

ATS Basic Games II : Streets of Stalingrad (Critical Hit) クリティカル・ヒット社 (Critical Hit) は、何と言っても、ASL 用の非公式シナリオとヒストリカル・モジュールの出版社だった。ASL の版権を買い取った MMP が訴訟を起こした後、まず クリティカル・ヒットは Combat! という独自の戦術システムを発売、次に 1975年に出版された (アバロンヒル社の) 旧作 ・ トブルク Tobruk の大幅な改訂版を再版し、その後、Advanced Tobruk System (ATS) の開発を決定した。Dzerhezinsky Tractor Works (1997)、Valor of the 37th Guards (2001 and 2005)、それに Stalin's Fury (2005)。これらは様々なバーションが発売され、同一の基本マップを用いて 1942年10月の工場群を巡る戦いをシミュレートしている。最初、これらのモジュールは ASL 用だったが、Dzerhezinsky Tractor WorksATS 用に手直しされ、1998年には Combat! Stalingrad の商品名で発売されていた ATS Basic Game II: Streets of Stalingrad がこれに続いた。

 

Fin

 


本記事掲載誌の Vae Victis Hors-Serie 第10号は、2008年夏に発行されました。

この非公式翻訳文は Vae Victis 編集部の許可を得て公開しています。

Translated by T.Yoshida

 

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