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Vae Victis #62


L'art opératif
 1re partie


作戦術 第一部


作戦の準備と行動

by David BEAUDLET

 


今ここに、あなたのお気に入りのシミュレーションゲームが用意してある。
向かい側には対戦相手が腰掛けており、プレイの準備はできている。
では次に、あなたは自身の手駒を勝利に導くため、何を命じればよいのか?

 


おそらく、あなたは 漠然と 何かをやろうと想っている。 でも それは非常に 漠然と したものなのだ・・・。  そんな あなたには、もっと しっかりした 作戦計画 が必要であり、軍事作戦 と呼ぶに値するモノ を遂行する要領、その大切な 基礎知識 を幾つか伝授せねばなるまい!

記事のタイトルの通り、まずは我々の立ち位置を 「作戦級Operatif (注1)」、 つまり 戦術級 (戦いが繰り広げられた現場を扱う) と 戦略級 (敵対勢力同士の全体的な衝突を扱う) との間に設定する。

 

注1 : 「 Operatif (作戦的な)」 という表現は、実際には 「 Operationnel (作戦に関する〜)」 よりも適切だが、後者 ( Operationnel ) の方が広く使われている。
「 「 作戦レベル ( Le niveau operatif ) 」 とは、作戦展開地域内 の 戦略目標 への到達を目的とする
大規模な作戦を 計画 ・実行 ・ 継続 する レベル のことである・・・。 これより一般的な "Operationnel" という用語は、 (上記のような) 重い責任を持つ レベル (軍の最高司令部) 以外での 兵力投入を扱う すべての事柄 を意味する。」
( EMA (統合参謀本部) より )

作戦レベル ( niveau operatif ) の例 : 1914年のフランス侵攻に関する シュリーフェン計画や、1943年のシシリー戦役 等々。基本的なユニットの部隊規模は 大隊〜師団 となる。


ちなみに、ここでは 攻撃側の立場 で話を進める (ただし、防御側のための内容を抽出した レッスン も簡単に記す)。 これから語る 基礎知識 は 戦術級 にも容易に応用できるし、戦略級 にも そこそこ役立つ。 ただ、ここで紹介する 基礎知識 は どちらかと言うと、十分な数の組織化された 戦闘部隊 で編成された 軍隊同士 が、 国土の領域 に配置された状態で対立する シミュレーションゲーム (例えば、ナポレオン時代 や 第二次世界大戦 を扱うゲーム) において、その真価が発揮される。


作戦術 は 二つの場面で役立つ。

 ・
作戦計画を立てるとき

 ・
作戦行動時に、部隊移動の定石に従う必要があるとき

 

 

1. 作戦計画


作戦計画 を練り上げる際の 合言葉 (スローガン) は、「 単純に 」 である。
その理由は よく御存知のとおり : 作戦というものは、戦闘や 敵の反応といった現実に起きる困難によって、当初の計画から解離する厄介な傾向がある。 そのため、まず最初に為すべきは、直面する作戦状況を、頭のなかで可能な限り 単純化 することである。つまり 以下の基本的な質問 に答えることから、まずは始めなければならない。

 ・ どのような地形の上で作戦を展開するのか?

 ・ どれだけのユニットを所持しているのか?

 ・ 何が目標なのか?

 ・ 敵について何が分かっているのか?


次に、『 勝つためには どんな 作戦行動 を 準備 しておくべきか? 』 という、すぐ頭に思い浮かぶ 疑問 への 答え を 一度考えてみる。 この時点で、作戦計画の基本方針の 概略 (アウトライン) を組み上げるのだ。

ゲームプレイ の 第1ターン で用いる 詳細かつ複雑な計画 を 練り上げるのは、望ましいこと かもしれない。 だが、そんな 複雑な 計画を 数ターンに渡って 求めることはできない。 第2ターンから早速、思いもよらない出来事 が起き始めるからだ。 こんな時は 「作戦行動」の原則 に従いつつも、自ら決定した 作戦計画の概略 (アウトライン) に従わねばならない ( 次号掲載の 第二部 を参照 ) 。

トリッキーな手法を考え出したいのなら、それも良いだろう。 だが、最も ありきたりな 作戦計画 というのは、時として 一番優れている ものだ。 インスピレーション (閃き) を得たなら、対戦相手には ちょっとした サプライズ となる計画 ( 空挺降下、陽動、ハッタリ、etc ) を立てられるが、それは その サプライズ が成功する幸運に恵まれ、なお 且つ 自軍が勝てる状況ならば、という条件が付く。 要するに、あまり 史実に振り回されない ようにするのがよい。 史実に基づいた 作戦計画 や 史実に沿った 作戦展開 は、興味深い教訓 には成り得る。 でも ゲームに勝つためには、往々にして それらとは 正反対 のことをしなければならない。
ゲームプレーヤーは、著名な先輩プレーヤー達の 真似 をしがちである。 しかし やがては どの先輩が有能で どの先輩が無能か を判定するための 分析 を行うようになり、結果として それが自分自身の 作戦計画 に重大な影響を及ぼすのである。

戦闘 や 戦役 を 一から十まで 歴史家が 「詳細に分析した」 戦史書 を 何冊も読んでアイディアを得る人もいる。その場合、戦いの流れを変える 試行を その当時に 実行可能 だったならば、それら の戦史書から結論を導きだすことは可能だ (歴史家自身が試みる場合を除く)。


 1. 1 - 単純化 と 状況分析

作戦計画 を 準備 し 実行 するには、状況 を 幅広く 明確に 見通せるようにして、決断 し易く する必要がある。


 a) 地形を 単純 にする・・ ・・

今、あなたの目の前にあるのは、さまざまな地形の 数百ほどのヘクス にすぎない。
同じ地形が広がる領域(山地 や 森林 等々)を識別し、それを紙の上にサッと描き写す。次に、主要道路と大河川を描く。どれが 正しい進出方向であり、機動に適した場所なのか (当然ながら、それはあなたが決めるものではない。たとえ、道路網の密集地域や平地などの、移動に最適と思われる地形だとしても) 、同様に どこが スローダウンする場所なのか(湿地や森林など)、そして 障害となるのはどこなのか(広大な山岳地帯を通る 一本道 など)、判別を始める。

 ● Kasserine (GMT) での 作戦計画例

1943年2月、ロンメル および フォン ・アルニム 率いる枢軸軍は、チュニジア で 連合軍 の 南部防衛線 を突破して 北 と 西 へ深く進出することにより、補給基地 の奪取 や 連合軍の 全面退却 を誘発するべく、決定的な打撃 を与える 決断 を下した。

このゲームは 1ターン=半日 で、これを 20ターン行う。 枢軸軍の目標は、主として 連合軍の補給源たる 数ヵ所のマップ端 ヘクス への到達 である。ユニットの撃破、ならびに 町や村の占領 でも勝利ポイントが与えられる。 第5ターンには、スベイトラ ( Sbeitla : マップ中央に所在 ) の占領や 「P1」 地点からのユニットの離脱 (マップを参照) 等で、”急死” ( サドンデス : シナリオで定められている 勝利ポイント数 を獲得すると発生する、自動的勝利 のこと ) することがある。 第12ターンまでに テベッサ Tebessa を占領した場合も、 サドンデス が成立する可能性がある。その他、第20ターン (ゲーム終了時) に テベッサ の占領 および 「P2」 と 「P3」 地点 からの ユニットの離脱 が、決定的勝利 を納めるために必要となる。 自動的勝利 の成立や 勝利ポイントの最高点 を獲得するには、スピード が極めて大切である ( 実際、ターンが進むにつれて、目標ヘクスの 勝利ポイント は減少する ) 。

 ● 地形

1ヘクス= 3.2 Km である。
主要な 地形 は二種類で、簡単に識別できる。 見通しが良く 移動に適した 地形 ( 平坦な 砂漠 ) と、通行が 極めて困難、または 通行不能 な 地形 ( 戦車 は進入できない 山地 )。 ワジ (水なし川) や 街道 が 縦横に走っている点 が重要である。 ワジ は雨天時以外では 影響 を与えたであろうし、街道 は移動力 を 二倍 とするし 雨天時には不可欠、そしてもちろん 補給輸送 を 可能にする。 街道は、山岳障壁 の中でも カセリーヌ峠 のような起伏のある場所では 隘路 となって通過する。 西へ進むほど 山岳地が密集 している点に留意すべきである。


 ● 影響

ほぼ 街道筋 に沿いながら 平地 を突進する ( 戦車 の 速度 と 戦闘力 を最大限に活かせる地形だ )。 理由は、対戦相手が 堅固な防御線 を築く前に 素早く 峠 を占領し、西方の 山岳地帯 へ到達するためである。 が、力押しで 峠 を通過する準備 もしておくこと。



 b) 自軍部隊の 総合的ビジョン を持て

シナリオの 戦闘序列 (初期配置) が 事前に用意されていない場合、任務別 に 自軍ユニット を 明確にグループ分けする。

次のようなケースで考えてみよう。
複数の 連隊駒 が、師団司令部 の指揮下にある。
この場合、今後は 師団単位 で思考しなければならない。 つまり、全般的な任務を 複数の 連隊駒 に (または 複数の師団から成るグループに) 割り当てるのだが、個別の駒 には割り当てない。そうすることで、作戦計画時に あなた が管理運用しなければならない グループの個数が 少数に 限定されるのである。 それでも まだ多過ぎるのなら、さらに 上のレベル (上級組織) に移行するのである ( 軍団、または あなたが便利と思う グループ なら何でも OK 。 ボスは あなた なのだから!)。


● 初期配置の自軍部隊

ここでは 史実での編成と配置 (南東方向への攻勢) を採ることにした。 最初から 八個のグループを (マップの東と南東で) 使用できるものの、別の 三個のグループは増援として 第 6 〜 8 ターンにかけて 南西に (加えて 少数の増援 が北東にも) 到着する。
各グループの 攻撃力値の合計 をそれぞれ求め、各グループの 戦力 を 大雑把に掴む (これは、戦場で確認された敵のグループ 〜マップ上を視察せよ〜 と比較するため)。 各グループの おおよその 速度 にも注目すること。

-- 駒の説明
・ (数値:左から) 攻撃力 - 防御力 - 移動力
・ (駒の右側) 錬度 ( 3 から 8 (最優秀) まである)

-- 「Sten」 グループ (戦闘団) の 攻撃力 の合計値は 29

-- この 戦闘団 は 「快速」 と見なす


自軍部隊の長所 :
速力 (多数の 機械化 ならびに 自動車化 歩兵部隊)
・ 部隊の 錬度 が、平均して連合軍のそれよりも 高い
航空優勢

長所の影響 : 数的劣勢の状況下 でも攻撃可能な場合があり、部隊の速力 は 包囲を実行する際や 敵の増援を先制するのにも役立つ。

自軍部隊の短所:
・ ティーゲル戦車 の行動は街道上に限定される (ただし ティーゲル部隊の数は少ない)
・ 補給線が延びきってしまうため、敵の急襲 に弱い


c) 敵部隊にも 総合的ビジョン を持て

敵部隊の位置 を まだ把握していないなら、敵 が必ず利用すると思われる 地形 から、それを推測するとよい。 おそらく 対戦相手も、シナリオに明記されている 目標 を考慮に入れて ユニットを配置 するはずだ。
敵の 戦闘序列 (初期配置) を調べ、どのような敵なのか 規定してみる。 快速か? 戦闘力は強力か?  自軍部隊と比較するのは それからである。 敵のユニットは 「狼」 ( 親衛隊 ・ 戦車部隊 ・ エリート集団、等々) なのか、 「子羊」 ( 民兵部隊 ・ 新参部隊、等々) なのか? これも 詳細に調べておく と良い。


● 初期配置の敵軍部隊

七つ ある 敵のグループ のうちの 三つ が、第1ターンに早速 我が軍と 接触する。 以降、連合軍は 東方を除く あらゆる方向から ほぼ途切れることなく増援を受け取る。 なかでも重要な増援が、第2ターンに 北方から (少数だが早いタイミングで現れるため厄介だ!) 、第3ターンに 南西から、第11ターンに 北方から それぞれ到来する。 これらの増援は主として 北方から 現れる。

敵のグループの 攻撃力 および 防御力 の 合計値 をそれぞれ求める (防御力には 防御拠点による 1、地雷源による 2 を加える)。 私は その二つの合計値の、どちらか 一方 (そのグループがゲームの中で担う役割 (攻撃側 または 防御側) に 見合う側 の合計値) だけを覚えておく。 案外、その二つの数値は かなり 近似 している ものである。

長所 : ユニット数が 増加 してゆく

短所 : ゲーム開始時に 分散配置されているグループ や 少数のグループで到来する増援は、多くの点で 質が低い (直ぐに戦力を集中できないため)。

: 「SBZ」グループの 戦力合計値 は、攻撃力が 24 で 防御力が 22 。


d) 敵の 最重要中枢(注2) を 割り出せ

敵の 最重要中枢 とは 敵の力の源 であり、地理的な位置 ( 首都 ・ 主要な兵站施設 ・ 要塞 ・ 防御陣地 など) や 軍の部隊 (親衛隊 ・ 総司令部 ・ 主力戦闘部隊 など) を指すと思われる。 これを割り出すため、次の 質問 に答えて頂きたい。

   敵の 気力 を削ぎ、無力化 するものとは 何ぞや?

その 答えは、シナリオの 勝利条件 の中にあるのかも。
最重要中枢 を 侵害すると 「サドンデス」 になったり、多量の勝利ポイント (VP) を得る場合が多い。 だが 注意してほしい。 シナリオ に明記されている 目標 と、ここで探求している 最重要中枢 とは、別物 である場合があるのだ。
シナリオの 目標 とは、例えば シナリオ終了時に保持していると 勝利が確定する (サドンデス ではなく) ような、単なる 象徴的 な 都市 であるかもしれない。 そのような 都市 を占領しても、それを奪い返す、あるいは あなたの部隊 を粉砕するために必要な 敵の反撃能力 を 何も 奪い取りはしない。
とにかく、まずは 敵の 最重要中枢 そのものを無力化 し、そのあとで 目標都市 を攻略する のだ。 そうすれば、敵は それを取り戻す 望み を失ってしまう。
というわけで、この 二つ ( 目標最重要中枢 ) を取り違えないよう、くれぐれも 御注意を!


注2
 : 《 Centre de gravite 》 重心 (つまりは 最重要中枢)、 《 Points decisifs 》 決定的地点、 《 Axes d'operations 》 作戦の基本方針。 これらは フランス や 米国 の 参謀本部 で使われる 専門用語。


● 最重要中枢 Centre Vital

戦略的な観点 から眺めると、まず 前線背後 にある 連合軍の補給センター を占領し、次いで 北方 および 西方 への突破 を成し遂げれば、やがて彼らは チュニジア南部 からの撤退 及び この戦域内での あらゆる作戦の中止 を余儀なくされるだろう。 シナリオに明記されている 目標 は、この 戦略目標 および 最重要中枢 の定義に一致 すると思われる。

最重要中枢 は 一つではなく、 時間が経つにつれて 変化 するため、ここでの シナリオは 特殊なものになる。 そのため、連続的に三つ現れる 最重要中枢 を明示しなければならないだろう。

・ 第 5 ターン までの 1 ポイント (スベイトラ Sbeitra が 事前に占領されている条件の下 での自動的勝利。 スベイトラ に関しては何も問題ないが、南部で 史実配置 を用いると、この 1ポイント を得る公算は ほぼ無い。)

・ 第 5 ターン から 第 12 ターン にかけての テベッサ Tebessa (自動的勝利)。

・ 第 12 ターン 以降は テベッサ 以外にも 2ポイント または 3ポイント (決定的勝利)。

ゆえに、一発逆転の打開策 として 北方への突破 (3ポイント) を狙いつつ、第 12 ターン までに テベッサ を占領して 敵をノックアウト するよう努力する。



e) 敵の配置から 中間目標 を割り出せ

敵の 最重要中枢 へ到達するには、中間目標 が カギ になる。 普通、それは 地理上のもの ( 都市 ・ 補給庫 ・ 航空基地 等々) だが、特定の 戦闘部隊 ( ××師団 ・ 予備の砲兵部隊 等々) である場合もある。
この 考察期間 を利用して 敵の弱点 ( 戦域 や 部隊 ) を割り出すこともできる。 敵の 弱点 を突けば 目標 (勝利条件) 達成に近づくだろう。 が、それほど重要 とは言えない戦域 を 敵が わざと 空 にしているのなら、 (そこを突くと) 勝利 から遠ざかる ことになりかねない。

最重要中枢 と同様に、シナリオの 目標 ( 訳注 : 勝利条件のこと )中間目標 を 割り出す助け となるかもしれない。 大抵、これらの 目標 ( 勝利ポイントの対象都市 ・ ユニットの マップ外への退出 ・ 政治指導者の捕縛 等々 ) を 自身の作戦計画 に組み込まなければならない ・・・・・ たとえ、自身が割り出した 純粋に軍事的な 中間目標 とは違っているとしても。

自軍部隊の 制圧能力 を越えた 数 の 中間目標 が存在することもある。 この場合、敵の 最重要中枢 に接近しつつ 勝利 と イニシアティブ (主導権) の保持 とを 最大限に与えてくれる 中間目標 はどれなのか。 その答えから (中間目標を) 選択しなければならない。


● 中間目標

この作戦で 勝利するために重要 となる 中間目標 は、

・ シディブジッド Sid Bou Zid 周辺の 戦闘グループ ( SBZ および Bar ) の迅速な制圧。 スベイトラ と テレプト Thelepte は 最重要中枢 へ 遅滞なく侵攻 するには不可欠となる。

・ 自軍の 前進ルート 上にある すべての 峠

テレプトの 飛行場 (これを占領すると、連合軍から 貴重な航空機 を 数ターンの間 奪える)

勝利ポイント (VP) の目標 :
どうしても 自動的勝利 を得られないのなら、勝利ポイント (VP) のことを 計算に入れて 行動しなければならない。 要するに、道中での VP の積み上げが とても大切なのである!
 敵ユニットの殲滅、それに 占領すべき 町 および 集落 等の 一覧表 が用意されている。 VP の対象になるものすべてが 侵攻ルート上 にあるわけではないので、どこへ進出するのか 選択する必要がある ( マップを参照 )。

 

Conseil pratique : 実践的な アドバイス

ゲームを プレイ する数日前に、自身の 作戦計画 を よく考えて練り上げること。
まず ルール を きちんと読み返し、自身の アイディア を メモ し、そこから 大まかな考え を 具現化 し始めるのである。
自分自身の計画 を 書き込むには、単純に 普通の紙 を使ってもよいのだが、マップ上に プレキシガラス (安全ガラス) の板 (または プラ板 や 透明ガラスの板) を置いても良い。 マップ を デジタルカメラ で撮影するのもよい。 その画像データ を PC に移せば、フォトショップ や パワーポイント、 ワード 等の ソフトウェア を用いて、マップの画像上 で 書き込み ができるようになる。 マップ画像 を 印刷 して 鉛筆 で 直接書き込む方がいい というのなら、それも良し。
PC 関連では、Cyberboard や Aide de Camp のモジュール が用意されている ゲーム がいくつかあり、これも 紙の代用 となりうる。
プレイ する ゲーム を 対戦相手 が所有していないなら、マップ の コピー か、デジカメ で 撮影した マップ の 写真 (こちらの方が良い) に 両陣営の 戦闘序列 の コピー を 添えて送っておくと 良い。

 

 

1. 2 - 作戦行動の選択


a) 目標へ向かわせる部隊の割当て

部隊の総括 が終わったら、マップ上に 自軍ユニット を配置する。 ただし、各部隊ごとに 1ユニット だけ (例えば 師団司令部) を置くようにする。 もしくは 紙に戦場の地形を描き、それに自軍の居場所を おおまかに記しておく。 次に、あなたが定めた 目標 に どの部隊を割り当てるのか を決める。

師団 と 軍団 (複数の師団から成る) で編成された自軍部隊の場合だが、とある目標 に軍団全体を割り当てたものの、その中の1個師団だけを 別の目標 に割当てる、なんてことも起こりうる。

量 だけでなく 質 も考慮して部隊を割当てること。 おそらく あなたの手もとには、他よりも 移動力 に優れた (突破口の拡大に最適な) 部隊や、他よりも 戦闘力が優秀な (狭苦しい地形で大打撃を与える用途に向く) 部隊、それに 特殊能力 (河川渡河 や 空挺、対戦車 など) を持つ部隊があるはずだ。

自軍部隊を 割当てる際は、指定された目標の 重要度 だけでなく 予想される 敵の抵抗 をも考慮し、可能な限り 効率的に 行わなければならない。 実際、決定的な戦力比 を得るには あと1ユニット足りなくて困り果てたという場合、その1ユニットが 後方地域で立ち往生 しているのが常である。

さらに加えて、便宜的に部隊を 2つのカテゴリー、「支援グループ」 「支援を受けるグループ とに分類することもある。
「支援を受けるグループ」 は主要な 中間目標 に直接割り当てられ、敵の 最重要中枢 への到達 (少なくとも そのグループの中の1ユニットによる) を課せられる。
「支援グループ」 は 作戦機動 (側面援護 や 陽動 など) や 射撃 (砲撃 や 航空支援 、敵の消耗を目的とする地上攻撃 など) による支援を実施する。この 「支援グループ」 自体に、作戦計画全体の中の 中間目標 をいくつか割当てる場合もある。

その一方で、常に 予備部隊 を用意しておくこと!
この 予備部隊 は 後方に残置しておき、ここぞ という場面で 即座に 重要地区 へ投入できるよう、高速交通路上 (道路 ・ 鉄道 ・ 空輸) に配置しておく。 予備部隊には 2つの異なる性質 があると思われる。

・ 作戦計画の構成要素としての予備
ある戦闘地区で (複数) 実施する攻撃の いずれか一つの戦果 を拡張する際、ならびに、あなた自身が瞬時に 決定的瞬間だ と捉えた場面で、これを投入する。 このような局面で 敵に 致命傷 を負わせ、あなたに勝利をもたらす (または 限りなく勝利に近づける)、それが 作戦計画の要素となる予備部隊 である。

・ 対応部隊としての予備 :
この予備部隊は後方に配置し、好機が訪れるのを待つ。 戦果拡張のための局地的勝利、敵の部隊配置に突如あいた穴、対戦相手のミス、敵を閉じ込める包囲等が 決定的な 好機 と言えるだろう。 ただし この予備部隊は、敵の反攻が成功しそうな場合、または 勝利の代償として予想外に発生しかねない 多様な危機 に対処する 救援部隊 として活用するのが肝要と思われる。

他にも、活動中の部隊を護衛するために “機動予備” を 配備 ・ 同行させるケースが考えられる。

多少なりとも長期間、いくらかの自軍部隊が 予備 として受動的な状態 のままになってしまうのは否定できない。 けれども、この (予備部隊が前線から) 一時的に不在になるという難点は、ここぞ という場面で 予備部隊 を活用することから得られる 利点 に比べ、些細なもの である場合がほとんどだ。 上述のケースにおいて、予備部隊 がいない場合 (の 事態に対応する適時性、あるいは 危険性) を 想像するといい!

上記を踏まえたうえで忠告する。

 忍耐強く、冷静沈着であれ!



● 目標に部隊を割り当てる (攻勢開始時の南東地域)

他のグループからの支援を受けつつ 可能な限り西方へ突破侵攻するグループを準備する、というのが ここでの概要である。

- 支援を受けるグループ (敵陣の殲滅 ならびに 突破 を専門任務とする 突撃集団): Ger、Sten、Men (第6ターン)

- 支援グループ : Buh (敵の足止めを担う歩兵部隊)、Ecr (包囲環の縮小、足止めを担う歩兵部隊)、 Lan と AA5 (戦闘地区を迂回し、敵の増援の前面に進出する快速部隊)、Rei (敵の増援の動きをブロックする Lan と AA5 を補佐する かなり強力な部隊)、Sch ・ VdH (第7ターン) ・ Cen (第8ターン) (突撃グループの支援、ならびに予備の代わりにもなる強力な部隊。 Cen には包囲環内の抵抗部隊を殲滅する任務もある)

- 予備部隊 : Sch ・ VdH ・ Cen は 「機動予備」 としても打って付けである。 この3つは戦闘に参加させ (但し、別の部隊に損害を負わせ、この 3部隊の損耗を防ぐこと)、 あらゆる 不測の事態 に対応可能な状態を維持する (対応部隊としての予備である)。

- 特殊能力ユニット : すべてのドイツ軍ユニットは、自発的に 補給範囲外への配置 が可能 (包囲の完成、または敵の増援の機先を制するため、これを行う)。 88mm砲や その他の火砲は防御力に優れるため、目標都市の守備 や 補給線の警備用途 に 「分遣」 される。 砲兵ユニットは、峠 を攻略する際に 友軍部隊のスタック を飛び越えて射撃することで 支援を実施する。


b) 作戦計画の基本方針 の概略(アウトライン)、そして 責任境界線

今 あなたが描こうとしている 作戦計画の基本方針 は、敵の 最重要中枢 へ到達するまでの間、自軍部隊の中の いくつかの部隊が 中間目標 から 他の中間目標 へと移動する 行程 を示す。 自軍ユニットが移動するため選択したであろう 道順 (ルート) こそ、作戦計画 の核心である。 総じて 作戦計画 とは、迂回作戦 ・ 中央突破 ・ 包囲 ・ 陽動 ・ これらすべての組み合わせ 等々、あなたが実行すると決めた 作戦行動の種類 のことである。

一つ一つの 作戦行動 や 作戦計画の基本方針 に伴う リスク (成功する確率 ・ 失敗時の影響 ・ 敵が行う可能性の高い反応) を推定せよ。 これは 計算 ならびに 戦術 (というより 作戦) のセンスを最も必要とするであろう 熟考のゲーム である。 だが その答えは容易に予測できるはずだ。 大切なのは、忘れずに上記の事柄を 熟慮 することである!

作戦計画の基本方針、その的確な選択は あなたの双肩にかかっている。 これは あなた自身の状況判断 と 目標 (シナリオに記載されている目標、ならびに あなたが自分で定めた目標) 次第だが、一般原則 をいくつか言及できる。

● 自軍部隊を差し向けて 直接 対決する。 あるいは 敵を混乱 もしくは 足止めする 努力により、間接的に 敵を打破できる。

● 敵の 最精鋭部隊 や 頑強な陣地 との 正面衝突 ・ 直接対決 を回避する 間接 アプローチ を採用し、戦力の節約 (注3) の要求に応える。 この 間接アプローチ は、敵の 行動の自由 (交通路の使用 ・ 兵站輸送) および その保持 を制限するものでもある。 そしてそれは、以下の行為によって成立する。


注3
「戦力の節約」 ・ 「戦闘努力の集中 (主要な 場所 ・ 時 で敵に優位を得るために行う連携行動 (ロベール仏和大辞典より))」 ・ 「行動の自由」。 この三つを 「戦争の原則」 という。
戦争の原則 : 1903年にフランスの軍人 フェルディナン ・ フォッシュ によって発表された軍事学の著作。



- 抵抗拠点の回避 :
作戦の基本方針 では、敵の 主力部隊 あるいは 要塞化拠点 を回避するものとする。 自軍部隊の主力 が 突破口 (もとから存在する突破口、または あなた自身が切り開いた突破口) を抜けて 突進している間に、防備 (援護)部隊 を用意しておくこと。
その際、自軍の防備部隊 が敷いた 包囲網 からの救出に必要な時間 を 敵に与えないため、そして、先行している自軍部隊を 後方拠点から孤立させないため、スピーディーな行動 が不可欠となる。 このような方針の下では ”迅速な目標達成” が勝利を確固たるものとするし、その戦区内での戦闘に ケリ をつけるには、これで十分と思われる。

- 敵部隊を分断する :
相互の連携が不可能 (指揮や補給のネットワークの切断) となるように 敵をバラバラに 分断 するよう努める、これも 作戦の基本方針 である。 この技法では、単に 迂回 (回避) する以上に 敵を 麻痺状態 に陥れ、その後、自軍主力部隊が手際よく 敵の抵抗拠点 を 縮小 → 壊滅 へと導くのを目標とする。 自軍の小部隊には、さらに (敵陣の) 奥深くにある 目標 へと 突き進む任務を与える。 主力部隊は 戦区内の敵が壊滅した後、進出するのだ。

- 敵陣奥深い地域での攻撃 :
敵の交通路 (補給 ・ 指揮 ・ 退却ルート ・ 増援進入路 : (注4)) や 支援部隊 (司令部 ・ 砲兵 ・ 飛行場 など) を攻撃し、 敵を麻痺状態にする のが目標。 自軍部隊を 突破 させるのは 後方地域全体に 敵が部隊を展開するよう仕向けるためであり、結果として 敵は麻痺状態となる。 ただ、純粋な 間接アプローチ の観点からは、専門部隊 (航空部隊 ・ 長距離砲 ・ 空挺部隊 ・ 後方地区への上陸 ・ パルチザン ・ 騎兵の急襲 ・・・ これは 時代 や 使用可能な手段 に応じて選択する) を 用いるのが望ましい。 こうして 敵陣を不安定化 させた後に、弱体化した敵を攻撃するべく、最前線の攻撃部隊 が参戦するのである。 

注4これらの交通路は、山岳路 や 地狭路 などの 交通のネック になる部分で特に脆弱となる。



● 作戦の基本方針 (この記事の最初のページの地図を参照 (訳注:下に再掲載しました)

右側面に援護を伴い、(主力部隊が) 迅速 かつ 敵陣奥深くへ突破する、という作戦である。 地図上には自軍の進出ルートが記載されている。

- この進出が成功する可能性を算定する

作戦の初期段階 では、その時点で 発生する可能性が極めて高い事象 (敵の弱小部隊を最初に叩く) があるものの、西進 すればするほど 敵の (増援 や 構築された防御陣地 による) 抵抗が激しくなる。 敵の抵抗激化は 作戦計画に折り込み済み とは云え、計画の 最終段階の完全実行 は、より不確かなもの となる。
計画全体についても事情は同じ。 ゲームプレイが 第1ターン から 進めば進むほど、不確定要素は増大するのだ・・・。 だとしても、徹頭徹尾、現実主義的な作戦計画 を お勧めしようというのである。

第3ターン に 連合軍の増援 が南方から到着する。 しかし、敵が その増援を どう使うか は予測できない。 私自身は、ロンメルの進撃を阻止するため テレプト Thelepte 地区にそれらを留めておくものと思っている (逆の立場から見ると、非常に重要なこの地区で、連合軍は 危機的な兵力不足 の状況にある)。
もし、東方から迫る我が軍を阻止するために この増援を用いるなら、ロンメルは事前の計画に従って テベッサ Tebessa を襲撃する。 言うまでもなく、よりスムーズに!

この作戦計画における 側面防御 (右側面の守備) について。
想定される脅威は長期に渡って充分に抑止できる (連合軍の 「Pic」 部隊は 歩兵で編成されているので鈍足、しかも我が軍の 「Buh」 部隊 と対峙する ピション Pichon を守備しなければならないのだ。 P2 (訳注 : マップ上端中央にある連合軍の増援登場ヘクス) から到来するはずの脅威は、なかなか登場しない。 最重要の この増援は、終盤になって やっと登場する。)。



- 一時的に敗北した場合の結果を推定し、勝利への方策を練る

主として危険なのは、突破目標への侵攻に遅れが生じることである。 この遅れは、敵に 第2防衛線の補強 を許してしまう。
このような不測の事態が続けて起きた場合、守備隊から錬度を問わず兵力を引き抜かねばならない (侵攻部隊には すでに機動予備が同行している)。 その場合、兵力を引き抜かれた守備部隊は、徐々に南方へ撤退する程度には持ちこたえる。
あるいは、敵の抵抗拠点での危険な戦闘に 自軍侵攻部隊 を投入し、敵に決断を強いる必要がある。

第12ターン までに テベッサ Tebessa の占領が不可能だと判明した場合も、やはり目標を変えて 作戦計画を変更 しなければならない。 テベッサ の占領は常に念頭に置かねばならないが、ここは北方へ大兵力を投入し、突破を試みるのである (その場合、恐らくは Ger と Sten グループ を投入して P3 へと向かう矢印のルートへ)。

敗北が続く場合は、既得権の維持、ならびに 対戦相手に最大限の損害を与えるべく努力しなければならない (この 消耗戦 の果てに、突破 まで行き着くかもしれないのだ!)。

逆に、側面の守りが脆弱だと強く感じるのなら、事前に準備しておいた予備部隊をそこへ (特に Sch グループ へ) 投入する。または 自軍部隊を 既得権 や 補給線 の方へと徐々に後退させる (遅滞任務)。

「直接アプローチ」 では、敵ユニット (抵抗拠点に集結中、または 戦線に沿って展開中のユニット) そのものを ターゲットにする。 その 敵ユニットは 我が方の予測通りに、急襲 や 段階的消耗による壊滅 という 危機的状況 へと陥るのである。
自軍の側に 卓越した先制攻撃力、あるいは 敵ユニットよりも高い 再生率 (増援と補充能力) があれば、作戦機動 を犠牲にしてでも 直接アプローチ を実行するのが望ましいかもしれない。 とりわけ 消耗戦術 に関しては、補充を受けていない敵ユニットを 手早く撃破しておくことで、敵の 再生力 や潜在的抵抗力 を打ち砕いてしまうのが肝要である。

急襲、あるいは 消耗戦術 を実施するというのは、敵の 防御決壊点 へ到達するように努めることである。 ここで言う 防御決壊点 とは、突破 や 壊滅 などの 重大危機を回避 するために退却をしようにも、それを実行する能力が不足している 時機 (タイミング) を指す。 故に、このタイミングは 作戦機動 の (開始の) 合図となる。

戦況により、直接アプローチ が強要される場合もある。
戦域全体を貫く 戦線、あるいは 適切に配置された 抵抗拠点 によって、前進が阻まれている ・・。
縦深攻撃に用いるユニット (航空機 や パルチザン など) が不足している ・・。
これらの状況下では、作戦所用地積 (部隊の機動 ・ 警戒 ・ 展開 等に最低限必要とされる 戦域空間 ) を創出するため、直接攻撃 に訴えざるを得ない。

抵抗拠点 や 前線の攻撃目標範囲 を攻略する際、チャンスを最大限にするため、努力を集中する。 直接アプローチ は、この行動原則に必ず応えてくれるだろう。 従って、多数の部隊や支援部隊 を危険地区に集中させて、如何なる部隊も 無駄に戦力を分散させるような任務 に充てない。努めて この二点に留意すること (敵部隊の態勢状況 に応じて 自軍戦力を最適化する という、「戦力の節約」の原則 に帰結する)。

● 直接 / 間接 アプローチ
直接 / 間接 アプローチ の概念 を説明するため、事例を いくつか提示する。

●  直接アプローチ の事例 :

- 急襲 による 峠越え (山岳地であるため 機械化部隊 は 迂回不可能)。 この攻撃には 最大限の支援 (砲撃支援 ・ 航空支援 ・ 優秀な部隊 ・ 最大限の兵力) が与えられ、副次的な攻撃 や 防御に それらを分散させない (「戦闘努力の集中」の原則)。

- 南方の攻勢 と連携し、好機と見るや (つまり 敵が前線から兵力を引き揚げた なら)、 「Buh」 が正面から Pichon を奇襲する。

: Chambi 山地の 峠攻め
この山岳障壁は フランス部隊 が守備している。 我々は 自軍部隊を分散させることなく 一ヶ所の峠 のみに対し 全戦力を投入 する (突撃部隊 ・ 砲兵 ・ 全ての航空機 ・ この攻撃を陣頭指揮するロンメル将軍)。 砲兵 と 自軍部隊 の側面を守るため、軽装備部隊だけを 後置しておく。


● 間接アプローチ の事例 :

- 敵の 生き残り や 孤立している部隊 は迂回する (これらは 「Ecr」 グループのような 二線級部隊 を用いて 「とどめを刺す」、もしくは 「封じ込め」 ておく : 対空砲 や 対戦車砲 も、守備隊には有用なのだ)。 主力集団の スピード を重視するためだ。 これにより 我が軍の 活動の自由度 が増大する一方で、敵のそれは減少する。 さらには 敵との全面対決 も回避するのである。

- 航空機 (阻止任務の実行手段となる) や 偵察部隊 (敵の補給を遮断する) を用いた 戦線後方への攻撃。

- 敵の増援 を ブロックする (敵の増援の 行動の自由 を制限する) 専門部隊。  

: 歩兵 を用いて 連合軍部隊を 封じ込め、戦車は これを迂回する。

(左図の説明)
歩兵部隊 は 事前の戦闘で生き残った 敵 を孤立させ、さらに 味方の突破部隊の 通行の自由 を確保する態勢をとっている。 この 歩兵部隊は (彼らの影響下にあると見なされる) ポケット (孤立地帯) を縮小するため 攻撃を行う。


 

集団 (グループ) の 責任境界線 により、集団の 優先活動範囲 が明確に示される。 この範囲は それぞれの進行方向を取り囲み、その軌跡は 各集団の役割の本質を ハッキリと視覚化する のに必要不可欠とまでは云えないが、役に立つとは云える。

 

c) 作戦行動の順序 を決める

完全な基本計画 とは、作戦の基本方針 に基づいて それぞれのグループ が 他のグループ の 位置 を気にすることなく 進撃する、というものであろう。 もちろん その通りなのだが、いくつかの理由から その選択は ほとんど望ましくないと言える。

- ある一点、つまり ある時点 で 別々のグループ が 一致協力して行動する ならば、実効性がより高まる。

- 一般に 支援グループ は、自分達の近くに駐留する 支援を受けるグループ と 連携する 形で行動するよう 努めなければならない。

- 作戦計画の都合により、グループは 前進 を自発的に中断し、別のグループの 前進 を待つ 場合もある。

故に、ターン が進行するにつれて 自軍の 各グループの 相対的な位置 が どうなるのかを、あなたは考えなければならない。 さらに、他のグループ と連携する形で いつ行動させるのか も決めなければならない。 これを 算定 するのは容易ではなく、しかも 第1ターン から ずっと先のこと を熟考するので、余計に 苦慮するだろう。
というわけなので、それほど きっちり 明確に 計画を立てる必要はなく、むしろ あなた自身が最初に想定した 部隊移動 と照らし合わせ、最も妥当と思う 作戦機動 を描くとよい。

戦闘グループ の 前進速度 に差異が生じるのには、いくつか原因がある。 ユニット自体の移動速度、地形、天候、枢軸諸国のあいだで脅威となった レジスタンス、それに あなた自身の選択 (補給待機 ・ 再編成を受ける ・ 兵力集結のため、または 全体的な連携のため 自発的に行う スローダウン)。
最初に 算定 をする際、 もし 敵の兵力が皆無なら 1ターン の間に 各グループが どれだけ前進できるのか、まず確認する (地形、天候、ユニットの速度だけを考慮に入れる)。 驚くことが いくつもあるだろう。 次に、敵の抵抗拠点 を通過する (殲滅する、包囲するに留める、または迂回する) のに必要な時間 を 大雑把に見積もってみる。 以下同様に、数ターン先へと この試みを延ばしていく。 こうすることで、実行可能な 作戦展開 の、より明確な 着想 を得るであろう。

作戦とは、同時行動 と 時間差行動 (休止 ・ 牽制) の組み合わせである。 ただし、別の戦闘地域との距離 が離れていたり、任務の性質が原因で 完全に独立して前進するグループ もあるだろう (例えば 速度を優先するなら、他の部隊の位置には お構い無しに、目標へ突き進まなければならない)。


● 同時行動の利点 :

- 自軍戦力の累積 (集中) のため、数個のグループ を用いて 適切な一点に 打撃を加え、突破口 や 包囲網 の形成を探る。

- 敵軍は あらゆる場所を 同時には守りきれない と判定するならば、 戦線全体 を 同時に打撃する (防御の飽和状態)。


● 時間差行動の利点:

- あるグループ が 別のグループ の到着を待つため 小休止を余儀なくされる (この自発的遅滞が、のちの 別グループとの 連携行動の効果 によって相殺できるのなら)、あるいは 再編成 (戦闘後 または 補給の欠乏による) を受けなければならない場合。

- 第 ( T ) ターン に 一個グループ による 牽制 を行い、こちらの思惑通りに 敵を 誘引する。 すると 次の第 ( T+1 ) ターン には、敵が 部分的に放棄したばかりの区域を、別の 一個グループ を用いて 攻撃できるようになる。

実際には、あなたが立てた計画 に基づいて 「大雑把に細かく断片化された 進軍の基本方針」 が描かれる (これを あなたの計画に基づいて放つ 「矢」 とみなす)。 大きな流れの中の 一つ一つの 「断片」 (あるいは 「一本の矢」) は、次の目標、あるいは 小休止する場所へ 1〜 数 ターン を使って向かう 移動 や 攻撃 を表す。 この 基本方針 ならびに その 「断片」 のプロット (見取図) を用いれば、あなたは 自身が立てた計画 の全体像を把握し、連携行動 や 時間差行動 の準備が可能になる。


● 作戦行動 を 順序づける
(訳注: 下図も参照しながらお読みください)

第1段階 (第1〜2ターン) Phase1
最初の 山岳障壁 の通過、そして 連合軍の Sbz と Bar グループの壊滅。 これにより 突破 が生じる。

第2段階 (第3〜5ターン) Phase2
スベイトラ Sbeitra への攻撃と、ピション Pichon 南方での 膠着戦線 の確立。

第3段階 Phase3
カセリーヌ峠 の突破と攻撃、北方の 膠着戦線 (第5〜8ターン)。 孤立した抵抗勢力を 一掃したのち、Ecr グループ は ピション 地区で 敵と対峙している Rei との交代を 命じられる。 その際、Rei は スベイトラ 周辺 で任務に就いている AA5 と合流する (マップ上に経路は記されていない)。 テレプト Thelepte への攻撃 (第6〜7ターン)。

第4段階 (第8〜9ターン、悪天候のリスク有り) Phase4
テベッサ Tebessa の手前にある、北方膠着戦線 の 最後の山岳障壁 を突破する。 敵の残存部隊を 排除した後、予備部隊の 「Cen」 は西方への突破口 を拡張するべく努力する。 北方の膠着戦線 を増強するため、可能であるならば 「VdH」 を 北へ移動させる (VdH の点線矢印を見よ)。 

第5段階 (第10〜12ターン、悪天候) Phase5
テベッサ地区での 連携攻撃。


グループの 進行タイミング (各ターンにおける所在位置) を どのように推定するのか? :
将軍 (プレーヤー) は いくらでも経験を積める! 入門シナリオを プレイし、戦闘での 致命率 を理解すること (別の妙手が記載されている記事も参照するとよい)。 厳重に防御されているであろう カセリーヌ峠 への 接近 および 通過 に 3ターン、さらに テベッサ の占領に 3ターン はかかる、と私はみている。 距離は短いものの、天候不順 となる。

連携とは? :
補給線 を守るために 両側面に展開する部隊は、突撃グループの 前進速度 に付いて行かねばならなくなる。 テベッサ での最終攻撃では、連合軍の 防御支援部隊 を 飽和状態 にするため、そして 攻撃力 を最大限に累積するため、ロンメル と フォン ・ アルニム の部隊を 連携させる。 ピション での攻撃は不確定となるが、南方のテコ と 東方のテコ を 連携させて実施する。

小休止とは? :
基本的に 手負いの部隊は、最後の強襲での 連携準備のため、第4段階の終盤で 小休止させる。 他にも、運悪く 突破部隊 の補給が危機的状況にある場合、さらには、巧妙に防御されている 峠 を攻撃する前に 砲兵部隊 (移動速度が他よりも遅い) を待つため、小休止を行う。

Une ruse au passage : 通過時の戦術

敵と対峙する 最前線で、良好な 連絡路 (戦線と平行な道路) を ようやく自由に使えるようになったなら、自軍の 攻勢軸 の 根本的な変更 が可能になる。

H の形をした 道路網 を 思い浮かべてほしい。 主力グループ は 左の道を、第2グループ は 右の道を (下から上へ) 突き進む。 両方のグループ が バイパス道路 (訳注 : 「H」 の横棒の部分) に到達 (彼らがその部分を支配している) すると、突然、主力グループ が右へ 方向転換 する。 恐らく 敵は、「右側」 の戦域で この新手の 軍勢を 押し止めるための 充分な戦力を 準備していないに違いない。 加えて、あなたの 主力グループ の移動を追尾するための バイパス道路も 手中に無いのだ!  この種の 方向転換 は特に有効である。
地形 と 道路網 を研究するべし。 この手の 戦術領域 には、きっと有益であろう・・・。



d) 作戦行動のテンポ

通常、部隊の 前進速度 は勝利を得るために最も大切なものだが、それが成立するのは シナリオに 明確な期間 が有り、且つ、目標が 戦線から後方へ離れている場合 である。
作戦計画を立てる際、その 作戦 に吹き込む テンポ (速度) を決める タイミング (時機) を理解していることが、何よりも肝要である。

テンポ を決める要因は、あなたに 突進 を強制する ”明確に定められた シナリオの期間” ではなく、”外部の要素” の場合がある。

- 次第に 天候 が、移動や戦闘に適さない 酷い状況 (厳冬 ・ 泥寧 ・ 酷暑) へと 悪化することもある。 そんな時は、活動が妨げられる前に 勝利を確定するべく、急ぎ立ち回る 必要にせまられるだろう。

- 事前に定められた 日時 に登場する 敵の 大量増援 (あるいは 事前に予告されている 自軍部隊の撤退) は、勝利のチャンス を 危うく しかねない 「要注意事項」 である。 自軍の作戦計画を立てる際、敵の増援 (それと 自軍の増援 も!) の 日時 を必ず考慮に入れなければならない。

あなたは ゲームをプレイする前に、シナリオの 「増援」 の項目を しっかり確認していただろうか? 予備部隊の投入 を引き起こすほどの 相当急激な状況変化 を予測するためにも、これを キチンと頭に入れておかねばならない。

逆に、自軍が (目標達成に) 必要とする 時間 が充分にある場合でも、敵の態勢を不安定にしたり 主導権を保持する ためにも、「テンポ (速度)」 は有用となるだろう。

作戦行動のテンポ は 移動 の問題だけでなく、戦闘の頻度 の問題でもある。 あなたは 総花的に 戦闘をターン毎に実施するのか、あるいは 散発的攻撃 を主体にするつもりなのか? 
戦闘の回数が多いと それぞれが 損害量を増加 させるので、損害のテンポが上昇する。 それに伴い、対峙する両軍の 態勢 ・ 戦術 ・ 作戦状況 は急激に変化する。 チャンス を生み出すため、とりわけ 敵の防御に穴を開ける (部隊不足、または このような速い変化によって生じた 配置ミス を要因とする) 好機到来 を引き起こすため、このテクニック を採用してもよいだろう。

時間 に縛られる恐れがなく、しかも 「体系的に敵部隊を殲滅する」 ことが 「速度によって敵を混乱させる」 ことの代わりになると考えるなら、テンポ を もっと遅く してもよい。 向こう見ずな動きで 敵の罠にかかるのが怖いのなら、慎重な行動 を選ぶこともできる。 だが、しっかり 状況分析 をしているならば、どんな罠も 恐れるに足らず であろう!


● 作戦のリズム

時間 が経過するにつれて 勝利ポイント は減少、敵の増援 は殺到、天候 は悪化する。 それが故に、テンポ (速度) が求められることを理解したのだ! 後方で孤立した 抵抗地帯 の殲滅に 多少の時間をかけられるのは、数個のグループ (Ecr、Cen) だけである。

例証に基づく結論 :
教育上の理由により、ここまでの 作戦計画は 必要以上に 詳細 である。 今から あなたが自分で 作戦計画を立てる (もっと優れた作戦を!) というのなら、もはや 言うべきことは何もない ・・・・ なぜなら、あなたの頭の中には (正確には 三つ星 (師団長級) のついた あなたの軍帽の中に!) 大量の情報 が蓄積されているのだから。
次回のエピソードでは、本格的な 攻勢時の実践的な作戦計画 を考察する!

作戦計画 なるものは、戦闘自体の推移 は当然として、シナリオ や ヒストリカルノート の読解、ユニットの配置、勝者側の決断による ゲームプレイの帰結、有志達による優れた対戦分析 等々の プレイ以外のすべての要素と同様、本来的には ゲームプレイ そのものであり、且つ、プレイする喜びの 一要素 なのかもしれない!

 

Fin

 

続いて、「作戦術 第二部」 をお読みください。


本記事掲載誌の Vae Victis 62号は、2005年4月に発行されました。

この非公式翻訳文は Cerigo Editions 社 の許可を得て公開しています。

Translated by T.Yoshida

 

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