極めて長大な戦線、多種多様な部隊、そして歴史上かつて見たことがない規模の戦闘を
この大激突は包含し、その多くが凄まじい気象条件 (雪、凍結、そして泥濘) の中で繰り広げられた。故に ゲームデザイナーは、第二次世界大戦の中でも魅惑的なこれらのエピソードを描かねばならない。これら全ての特性により結果として十分にバランスがとれ、変化に富み、ダイナミック、しかも
この大規模な激突における陸上戦の戦術 ・ 戦略をクッキリと映し出す “戦闘” あるいは “戦役” のゲームが生み出されている。
ここで我々は、現在でも入手が可能、あるいは入手が容易なゲームのパノラマ(概観)を作成した。我々のゲーム選択は網羅的でも完全でもないが、東部戦線に興味を抱く
Vae Victis 読者に指針を提供することを主目的としている。ただし、購入するゲームの選択に苦慮している人を対象にはしていないことを
断っておく。
戦略級ゲームの目的は、この闘争の全期間、または少なくとも1年間を戦線全体でシミュレートすることである。
Clash of Arms の
War
without Mercy ( Tilsit
がフランス語ルールを添付して今年 (訳註 : 1999年です) 発売した)
は、かなり簡素なシステムで軍事的側面に取り組む、とても優れたゲーム (VV #25を参照) 。
Russian
Campaign と Russian
Front は Avalon Hill
の古典的名作であり、ルールはシンプルながらも、深い熟慮を要求するメカニズムと戦略を備えている。この2つのゲームは発売当時に 一世を風靡したので、現在でも簡単に中古品を見つけ出すことができる。
Columbia
Games の
East
Front は、これもかなりシンプルなゲームだ。戦略上の不確実性を再現するため、そして損害を記録しやすいように、積み木
形状のユニットを使用している。このシステムは VV 24号で解説されている。
最後に、ヨーロッパにおける第二次世界大戦を扱う 様々な戦略級ゲームを挙げておかなければならない。というのも、それらは東部戦線用のシナリオを最低1つは用意しているからだ。:World
in Flames、Advanced
Third Reich、そして WW2
: ETO 。
このクラスでは個別の戦役、または戦闘をシミュレートするのが使命である。 作戦級ゲームの数は非常に多い。その理由は、機械化部隊の強力な攻撃、広大で防御不可能な戦線、あるいは家屋を一軒ずつ地道に制圧しなければならない都市
等々の特徴を有するロシア戦線が、このスケールに すんなりと適合するからだ。 出版社ごとに作品を順に概観する。
採点方法
: ( a / b / c )
a : ゲームの難易度 を
1(易しい)〜 5(難しい)で採点し、システムの難しさとゲーム・サイズを同時に考慮している。(簡単なモンスター・ゲームとは、単に巨大でプレイ時間を多く必要とするゲームのことである。)
b : ソロプレイの しやすさ
を 1(適さない) 〜 5(適する) で採点している。ただし、実際には どのゲームもソロプレイ用には作られていない。しかし、いくつかのゲームは練習プレイを容易に行えるメカニズムとなっている。
“3点” というのは、プレイヤーに重度の精神分裂症状を要求する平均的なゲームであることを示す。(
訳註 : なんちゅ〜説明や!(笑) )
c : 心証点。 1
は「嫌い」で、5 は「大好き」。この点数は まったく主観的なものであり、そのゲームの難易度は考慮に入れていない。どちらかというと
“面白味” 、次に “歴史性” を斟酌している。(例えば、Panzer
Gruppe Guderian は偉大なシミュレーションではないが、優れたゲームである。逆に
OCS
シリーズは、その2つを兼ね備えている。)
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Avalanche
Games ( 訳註 : 現在は Avalanche
Press ) は東部戦線での戦闘をシミュレートする2つのシリーズを用意している。: VV 18号で紹介した、1940年のフィンランドとソ連の争いを描く
Blood
on the Snow (2/4/3)
、そして より戦術色の濃い以下の2つのゲームから成るシリーズである。Red
Steel
(3/3/3) は、1941年に発生したソ連とルーマニアの間でのマイナーな戦いを扱い、Red
Parachutes
(3/3/4) は、1943年 9〜10月のドニエプル渡河、特にカネフ周辺でのパラシュート降下 -
そこからタイトルが付けられている - を扱う。ルールは複雑だが非常にリアルでもある。大隊規模のユニットを使用する。
Turning
Point : Stalingrad (2/3/4)
は、1942年 9〜12月にかけてのドイツ軍によるシンボル都市占領の試みを描く。マップは多数の区域に切り分けられていて、活性化と主導権(イニシアティブ)の概念を活用し、区域(エリア)から区域へとスタックごとに移動・戦闘を実施するという、かなりシンプルなシステムである。実際、このゲームシステムは、他の3つのシミュレーション・ゲームと同一のメカニズムを共有している。:
Storm
Over Arnhem、Thunder
at Cassino、そして Breakout:Normandy
だ。 これらは Vae Victis 8号で検証されている。
最近、Clash
of Arms は2つの優れたヒストリカル・ゲームを出している。それらは Black
Sea / Black Death から着想を得たメカニズムを基にして、“ヒストリカル・ゲーム・オヤジ”
こと ジャック・レディ 氏が開発したものである。 Borodino
41 (5/3/3) は大隊〜連隊規模で 1941年 10月のモスクワ街道上での戦いを生き生きと描く。同様のルールを持つ
Operation
Spark (5/3/4) は 1943年のレニングラード解放というソ連軍の試みに焦点を当てている。
SPI
社の版権を買収した Decision Games は、大ヒット作の中のいくつかを再販した。
PanzerGruppe
Guderian (2/3/5) が Avalon
Hill に買い取られてから何度も再販されたので、同一システムを共有する他のゲームも再び日の目を見たのだろう。
Leningrad
(2/3/3) は VV 13号で紹介済みであり、Kiev
と Rostov
は S&T 誌 188号で再販されている。これらはゲームの基本を学んだり、楽しい時を過ごすには最適な ミニ・ゲームだ。
一つは、単独のゲーム
:
Lost
Victory (4/3/4) で、1942〜43年の冬にかけてのウクライナ方面へのソ連軍の攻勢をテーマとするゲームであり、VV
2号で紹介されている。
もう一つは、非常に野心的で完璧なシリーズである ヴァンス・フォン・ボリス 氏の East
Front シリーズ で、既に3つ
(訳註 : 2009年現在では5つ) のゲームが発売されている。
:
Typhoon
は 1941年末のドイツ軍によるモスクワ侵攻がテーマ、Barbarossa
: Army Group South は同年 6〜9月におけるドイツ軍の南翼を、Barbarossa
: Army Group Center は中央戦区を扱う。これらは見事なまでのグラフィック、そして複雑
且つ とてもよく練られたルールを有し、非常に正確なゲームである。1ターンは2日間に相当し、ユニットは大隊〜師団規模。東部戦役全体をカバーするため、全部で
12個のゲームが予定されていて、連結可能なマップと共通ルールが用意される。1つのゲームを発売するには 500個の注文が必要という方針を掲げているので、シリーズ完結には長い年月が必要と思われる。詳細は今号の記事を参照してほしい。
1943年8月の (第4次) ハリコフ戦を扱う
Ring
of Fire (3/3/3) は 1994年に発売されたが、残念ながら最近は見つけ出すのが困難になっている。しかし、MiH
は このゲームを基に、幾つかのゲームを生み出している。: East
Wall : Battle for the Dniepr は 1943年末の防衛地区内での戦闘を、Triumphant
Return
は 1943年のキエフ解放を、そして
Clash
of Titans も同じ 1943年のクルスク攻勢を扱う。ゲーム・スケールは、主として 連隊〜師団
レベルで、1ターンは1日〜1週間。プレイ手順は かなりオーソドックスだが、戦車戦と予備の使用に関しては、やや凝りすぎの面がある。
Turning
the Tables (3/3/4) は 1942年春のソ連軍による攻勢を扱うゲームで、上記のゲーム群とは別の、将来的に発展が期待されるシステムを用いる。活性化する部隊の選択、行動(移動と戦闘)の順序の選択、そして
容器から戦闘チットを引き当てる等々の、遙かに革新的なメカニズムが与えられている。
やはり これも ジャック・レディ 氏によってデザインされた
A
Bold Stroke (3/3/3) は、1943年 11〜12月にかけてのキエフ奪回戦をシミュレートする。これは非常に実戦的且つ流動的なメカニズムを持つ、かなり複雑なゲームだ。ユニットは
師団〜軍団規模、1ターンは2日に相当する。Spearhead
は小規模な会社なので、多分、このゲームは早々に品薄となるだろう。加えて、そのルールには辻褄が合わない箇所が多く見られる。第2版が出るのを待った方がいいだろう
……。
同一のルール・システムを共有するゲーム・シリーズ製作のスペシャリストは、東部戦役のメカニズムを理解するのに役立つ、素晴らしい作戦システムを提示している。
Operational
Combat Series (OCS) (5/2/5) のルールとシリーズの各ゲームに関する事項は、VV
13号で既に紹介されている。東部戦線関係のゲームは3つある。:
Guderian's
Blitzkrieg は グデーリアン将軍配下の装甲軍団によるモスクワ攻略を、Enemy
at the Gates は スターリングラード周辺でのドイツ第6軍の包囲と その救出作戦を、Hube's
Pocket は 1944年のウクライナ解放をそれぞれ扱う。最初のゲームのみ 1992年発売なので、入手が
かなり難しい。
Standard
Combat Series (SCS) (2/4/4) では、Stalingrad
Pocket (Version
2) が Enemy at the
Gates と全く同一のテーマだが、2時間でプレイ可能となっている。その Version
1 の方は、Stalingrad
という商品名で Oriflam から翻訳版が出ている。
要するに、非常に正確だが複雑でプレイに時間が掛かるゲームを望むのなら OCS
シリーズを狙えばいいし、逆に シンプルで手早くプレイできるゲームが必要なら
SCS シリーズを選べばよい。そういうことなのだ!
3W
はヒストリカル・ゲームの舞台から消滅してしまったが、その多くのシミュレーションゲームが 3W
のパッセージを残すこととなった。特に、発売中だったシリーズものの
East Front Battles (4/2/3) は、師団規模、同一ルールを用いて互換性を保ち、しかも連結可能な10数個のゲームによって東部戦線全体をシミュレートしようとしていたのだが
…。 GMT に同様な計画が存在することが確認されたのは興味深い。おそらく、ヴァンス・フォン・ボリス
氏への印税が全く支払われなかったのだろう。我々の知る限りでは、2つのゲームのみ発売されている。
Blitzkrieg
in the South は バルバロッサ作戦の南部地域を、Spires
of Kremlin は 1941年末のモスクワ侵攻をシミュレートしている。これらのゲームは非常に複雑、それに
指揮と補給のパラメーターが多く導入されていて、シナリオ・マップ・ユニットも多数備えている。1ターンは2日、ユニットは 主として連隊〜師団を表す。
Duel
for Kharkov (4/2/5) は People's
Wargames のゲームを Cosi が再販したもので、3W
が販売していた (訳註 : 現在は Decision
Games が Cosi 版を販売している)
。これは 1942〜43年冬のソ連軍の攻勢と、それに続くドイツ軍の反撃をカヴァーする優れたゲームだ。隠蔽ユニットの使用、部隊
(フォーメーション) 単位での集結、明確で拘束力のある命令授与 等々により、非常に詳細なシミュレーションとなっている。;精巧に歴史を再現するため、不確実性が前面に出されている。
そしてもちろん、Vae Victis 4号付録の
Moscou
1941 と、前号(25号)の
Kharkov
1943 もお忘れなく!
このクラスはロシア戦線の残りの側面を描くものだ。ドイツ軍とソビエト軍の局地戦に格別な興味を抱かせるゲームは極少ない。
まず、The Gamers の
TCS
Series (4/2/5)
に属する2つの作品を挙げることができる。GD41
はトゥーラのモスクワ街道上でのグロス・ドイチュラント連隊を、Black
Wednesday は 1942年のスペイン青師団によるクラスヌィ・ボル防衛をそれぞれ扱う。これらのゲーム・メカニズムは
VV 2号と 8号でつぶさに紹介されている。
陸上戦闘をシミュレートするための 包括的で質の良い戦術級ゲーム・システムも存在し、それらはロシア戦線でのシナリオを まるまる提供している。Panzerblitz
(1/2/3) は初心者が手軽に楽しくプレイするために継続して販売されている尊敬すべき草分け的存在であり、しかも東部戦線が主戦場となっている。
最後に、Avalon
Hill の有名な
ASL
は、多数のシナリオや拡張モジュールを用いて スターリングラードやクルスクの戦いを追体験するゲームの中でも 『頂点』 の地位にある。
WEG (West End Games) の Eastern
Front Tank Leader (3/2/4) と VG
(Victory Games) の Panzer
Command (3/4/5) にも目を向けると、後者は 1942年冬期のチル川における戦闘を扱っている。残念ながら2つのゲームとも、見つけるのは
かなり難しい。
ヒストリカル・ゲームの誕生以来、幾つものシミュレーション・ゲームが
その時代々々で大きな影響を与えてきたが、現在ではそれらを見つけ出すことさえ困難になっている。でもやはり、それらについて言及することに興味は尽きない。
1973年に出版された Drang
Nach Osten と、その続編である Unentschieden
は、師団規模で 1941年から 1944年までの独ソ戦全体をシミュレートできる。GDW によって発売され、エウロパ
(Europa) ・シリーズの最初のゲームとなった。これらは
1980年代に Fire
in the East と、Scorched
Earth (4/3/4) というタイトルで再販されている。
1976年に S&T 誌の付録として初めて出版された
Panzer
Gruppe Guderian はスモレンスクでの闘いを扱い、ソ連軍の戦力未確認ユニットとドイツ軍装甲師団のオーバーランを用いることによって、空前の大成功を収めた。Drive
on Stalingrad は、同じルールを用いてスターリングラードとコーカサスへと向かう 1942年のドイツ軍の攻勢を描いた。
初めは OSG 、次に Avalon
Hill が発売した Panzerkrieg
(2/3/3) は、複数のシナリオで 1941年から 1944年にかけてのドイツ南方軍集団の局地戦全体を師団レベルで再現できる。とてもオーソドックスな仕上がりのこのゲームは
1943年のマンシュタイン・プラン、すなわち、クルスク攻勢を回避するという戦略を試みる手段をプレイヤーに提供している。
Proud
Monster (2/3/4) ( Command
誌 27号・1994年) は1941年を、Death
& Destruction ( Command
誌 34号・1995年) は続く 1944年までを、師団レベルで独ソ戦全体をカヴァーしている。主な特徴は 雑誌媒体で出版されたこと、にもかかわらず本物のモンスター・ゲームであること、そして豊富なオプションおよびシンプルなルールによって
プレイアブルであることだ。
Vanguard
Games からデビューし、Clash of Arms
に引き継がれた Winter Storm
シリーズ (5/2/3)
は、極めて美しいグラフィックを持ちながらも非常に複雑な4つのゲームで構成されており、連隊〜師団規模、1ターンが2日である。Winter
Storm はソ連軍によるスターリングラード包囲を、Last
Victory は '43年始めのソ連軍によるウクライナでの攻勢を、Edelweiss
(シリーズ中、断然最高の出来) は 1942年のドイツ軍による夏季攻勢を、そして Prelude
to Disaster は 1942年のソ連軍による春季攻勢を描く。
オーストラリアの会社である Panther Games
は Trial
of Strength (5/3/5) を製作し、1986年に発売している。このゲームは 理解しやすくて非常に画期的なメカニズムを有し、師団〜軍団規模、1ターンが10日であり、戦役全体を扱う最後の戦略級シミュレーションかもしれない。唯一の欠点は、プレイに酷く時間が掛かることである
… 。
それとは逆に The
Great Patriotic War (2/3/4) (訳註
: 出版元は GDW )
は、同じ期間を扱うものの、もっとあっさりとしたルールであり、1ターンが1ヶ月、軍団〜軍レベルのユニットを用いる。 このゲームはシンプルなメカニズムではあるが、理解が容易、且つ
独ソ戦全体を かなり速いスピードで追体験できる。
どうやってゲームを探す?
一つ目の方法 … 一番良い方法でもある … は、ゲームショップで購入することだ! Descartes
(デカルト)の支店がフランス国内各地に展開している。パリ市内では、 メトロ (地下鉄) 10号線の クリュニー ・
ラ ・ ソルボンヌ 駅周辺に集積するゲームショップ群の品揃えが非常に良く、古いゲームも並べられている。
二つ目の方法は、フランス国内なら Vae Victis 誌の広告主となっているショップで、場合によってはインターネット上で(全てのゲーム出版社は自社のウェブ・サイトを開設している)通信販売を利用してゲームを注文することである。古いゲームなら、ウェブ上の次のアドレスで探し出すことができる。
三つ目の、さらに古いゲームを入手するための方法は、中古品市場にあたってみることだ。Vae Victis 誌の三行広告
(訳註 : 付録ゲームのマップ裏に掲載されている
『売ります・買います』 コーナーのこと) には 頻繁に名品が並んでいる。しかもそこでは、あなたの頭から離れることのない、読者が隠し持っている
(つまり、屋根裏部屋にしまい込んでいる) 珍しい真珠を、望みどおりに “注文” することもできるのだ!
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Fin
訳者より : 姉妹記事
『西部戦線ゲームのすべて』 (VV41号)の和訳も御覧ください。
本記事掲載誌の Vae
Victis 26号は、1999年4月に発行されました。
この非公式翻訳文は Vae Victis 編集部の許可を得て公開しています。
Translated
by T.Yoshida
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