“門前薬局”からのリベートが発覚


「怒れる薬法師」より読売新聞11月26日のニュースが届きました。


「春秋会」脱税事件 「門前薬局の利権」にメス 膨れる報酬に「うまみ」/大阪 98.11.26 大阪読売夕刊 *厚生省の規則改正直後にリベート 2回も「要注意」指導/大阪府 
大阪地検特捜部が26日、法人税法違反容疑で摘発した医療法人「春秋会」(大阪府羽曳野市、池浦達雄理事長)の脱税事件は、いわゆる「門前薬局」と病院との利権構造を浮き彫りにした。医薬分業化の裏で、病院と薬局の〈もたれ合い〉はうわさされ続けてきたが、今回のリベート授受は、厚生省の規則改正で禁止が打ち出された直後。しかも、今年9,10月の二回にわたって、大阪府は同会と薬局の双方に「要注意機関」として個別指導していただけに、府などは事件に衝撃を受けている。厚生省が、病院と薬局の一体的経営と両者間のリベートを禁止したのは、96年3月。



95年、門前薬局大手のクラフトが未公開株を医師らに譲渡していた問題が発覚し、96年には業界二位の日本調剤が医療機関にリベートを渡したりと、門前薬局と病院の癒着はこれまでにも明るみに出ています。こういった事件を受けて、厚生省は96年の診療報酬改定で大型門前薬局の調剤基本料を大幅に下げたため利益率がかなり低下していました。そして、98年の薬価改定で薬価差益もほとんどなくなり、リベートも捻出できなくなっているはずと認識していましたが、そうではなかったようです。


外来患者らによると、同病院は、毎朝午前6時には患者が並ぶほどはやっているという。

全国的に見ると、97年9月に外来薬剤料別途負担が決まってから患者数が減少し、それに伴い処方箋枚数が減少し門前薬局経営を直撃しています。しかし、この病院はそうではないようで、薬局経営は順調だったものと想像される。とはいえ、多額のリベートは薬局側の経営を疲弊させますので、どうしてそこまでリベートが出せるのかと不思議に思っていました。



春秋会傘下の城山病院(同市)の駐車場跡地に薬局が開設された。経営母体の医薬品販売会社(枚方市)の設立者は春秋会本部長兼理事三沢哲夫容疑者(56)で、前年まで社長を務めており、業界関係者は「一体的経営の禁止で表面上、退いたのではないか」と指摘する。

実質的にいわゆる「第二薬局」に当たるものだったようですね。病院と医院が一体であれば、投薬日数を短くして処方箋枚数を増やす、薬価差益のある薬を処方する、不良在庫になりそうな薬を処方する、日数剤数倍数制を悪用した処方などいろんな方法で簡単にリベートを捻出できます。

今日、私の所にある現金問屋と思われる所よりはがきが来ました。メーカー品でもかなりの薬価差益が出るような価格が書かれていました。後発品では薬価の4から7分の1と驚くべき値段です。例えば、バクシダールの後発品マリオットンは500錠22,300円のところなんと85.6%引きの3,200円です。仕入先によってはまだまだ薬価差益は大きいのですね。もっと露骨なやり方もあります。たとえば先発品を処方箋に書き、薬局では後発品を患者さんに渡して、その差益を得る。これは「振り替え請求」というテクニックです。こういった方法であげた利益を薬局から病院に回していたのでしょうか。



国税庁はこれをリベートといっていますが、逮捕された関係者はおそらくリベートの意識はなかったと思います。経営母体は同じなのですから単に利益を還流させていただけということです。しかしいずれにしても処方箋料でも儲け、薬局の技術料でも儲け、医療保険を食い物にしていたわけで一種の公金横領ですね。

こんな見え見えの第2薬局を見逃していたお役人の責任はどうだったのでしょうか?


大阪府は、城山病院で投薬や注射など過剰な診療が目につくことなどから、今年10月に個別指導し、不必要な検査などを指摘していた。薬局も9月に指導したが、病院による誘導などは確認できなかったという。 それだけに、府社会保険管理課は、ショックを受けた様子。同課は「病院と薬局の場所が近いので、薬局の保険指定のときから注意してきたが、形式上は整っており、病院と一体的な薬局とは言い切れなかった。個別指導で調査できる範囲は限界があり、リベートなどもわからなかった」としている。

「形式は整っていた」と言っているようですが、薬局の経営者は医療法人の元本部長兼理事ですし、薬局の場所は病院の駐車場跡地ということです。誰が見ても病院と薬局は「機能的にも構造的にも経済的にも一体」です。


病院がダミー会社を設立し、門前薬局を経営させるケースもある。

まさにこの(類)ダミー会社でしょう。お役人はこのことを知っていてわざとお目こぼししたととられても致し方ないですね。弁解のしようがないでしょう。もしかして大蔵省、防衛庁の汚職と同じことが・・・・とつい連想してしまいました。本当にショックを受けているのなら、その前にもうちょっときっちりチェックしてほしいものです。大阪安田病院の時も同じような言い訳を聞いたような気がします。行政の怠慢といわれても仕方ないですね。このようなタイプの門前薬局は他にも全国にたくさんあるのじゃないですか。お役人さんは「摘発」があるたびに同じ言い訳をするのでしょうか?!