地元の医師との議論や電子メールでの往復書簡、JPMEDやニフティーサーブの会議室での討論などをもとに20の「否定的意見」を作成し、それに「反論」するという形で私の分業理論(?)をまとめてみました。そのキーワードは「薬の安全性の確保」と「情報開示」「面分業(かかりつけ薬局)」の3つです。私の考えに対していろんなご意見があるかと思います。読まれた方、是非メールください。「理想論だ」「現実は違う」とか「机上の空論だ」とか・・・・・・。なお、この内容は岐阜県薬剤師会の生涯教育研修会(大垣市98/10/4、多治見市11/8)で発表しました。(98/11/11) |
1)医師自身がていねいに服薬指導すればよい。薬剤師がいなくても特に困らない。
A)これは「薬剤師の服薬指導は医師がする服薬指導と同じである」という誤解から生まれたご意見かと思います。医師のする服薬指導は病気を治そうという立場からの指導になります。病気と関連づけた説明ですね。一方、薬剤師の服薬指導は副作用を防止する立場での指導です。薬そのものについての説明になります。副作用が出ないようにするにはどうしたらよいか、万が一副作用が出ても重症化しないうちにいかに発見するか、「薬の安全使用」を主眼としたものです。薬を飲んでいて別の症状が出てきた場合、医師は病状の変化かあるいは新たな病気かと考え、薬剤師は薬のせいと考える。そして、医師は新しい症状に対して治してあげようと薬をオンすることを考え、薬剤師は新しい症状に対して薬をオフすることを考える・・・どちらが正しいかはケースバイケースですが、この方向の違いがまさに分業の意味するところだと思います。(全国からのメール9の1、ご参照)
2)薬剤師は医師の治療方針を理解した上で情報提供を行ってほしい。医師と薬剤師との説明の食い違いなど、患者に不要な不安・混乱を招くような服薬指導はしないでほしい。
A)このようなご意見の医師は確かに多いですね。「薬剤師は余計なことを言っては困る」と。私は次のように考えています。「統一された説明」では本当の情報開示とはいえません。これでは「患者は余計なことを心配せずに、言われたとおりお薬を飲んでおればいいんです。」という旧来の父権主義医療と何ら変わりませんね。それに、医師と薬剤師との説明の食い違いは時には必要です。「薬について薬剤師からセカンドオピニオンを聞く」ということは、医師とは別の立場からの意見を聞きたいわけですから、最初から「食い違いがあってはいけません」ではセカンドオピニオンにはなりませんね。このようなご意見は私からしますと「処方医にとって面子の立たない服薬指導はしないでほしい。」に聞こえます。それと薬は薬代を払った患者さんのものです。医師のものでも薬剤師のものでもありません。患者さんは重篤な副作用も含めて薬のすべてを知る権利があります。商品の内容も知らせずに黙って買わせるものとしては、薬以外にはお正月の福袋ぐらいしかないでしょう。
3)処方意図も病名も知らずに服薬指導ができるのでしょうか?特に面分業の場合は不可能だと思います。薬剤師はカルテが見られる状態か、医師と緊密に連絡の取り合える状態でなければ患者さんの病状が把握できない。したがって、薬剤師は院内にいることがベストであり、どうしても外部の薬局に出さねばならないという場合でも絶対に「マンツーマン分業」でなければなりません。(ご参照:面分業でチーム医療ができるか? )
A)このようなお考えから「マンツーマン分業」でなければと言う医師は確かに多いですね。しかし、処方意図や病名を知らなくても服薬指導ができます。私は薬剤師の仕事でもっとも大切なことは「薬の安全性の確保」だと考えています。処方監査、薬歴管理、重複投与や相互作用のチェック、疑義照会、服薬指導、副作用等の情報提供、いずれも薬を安全に飲むためのものです。これらは処方意図や病名を知らなくても十分にできることです。カルテを見たり、処方医と緊密に連絡を取り合わなくても、何も困ることはありません。薬歴管理などの点でもかかりつけ薬局の方がよほど優れています。それに、この薬がなぜ処方されたか、その薬がなぜ変更されたか説明するのはもともと処方医の役目のはずです。
4)薬剤師が副作用を説明すれば、かえって薬のコンプライアンスが低下します。
A)それは逆ですね。きちんと説明すればコンプライアンスが必ず上がります。薬に対する漠然とした不安が解消され、この点に気をつければ安心して飲めるのだというふうに理解が深まります。それにコンプライアンスを上げることが必ずしも良いことではありません。患者さんは、この程度の症状にそこまで副作用のある薬は飲みたくないと考えるかもしれません。薬を飲まない、あるいは薬を変更してもらうという選択肢もあります。これがインフォームド・チョイスです。「この非加熱製剤を注射すれば関節の出血が止まり、腫れと痛みがなくなります。副作用もほとんどありません。おうちで週に2回注射してください。」この説明ならコンプライアンスは100%だったでしょうね。そして数年後に薬害エイズ・・・・・
5)病状に応じて選択して副作用説明をすべきです。何でも説明すればよいというものではない。
A)実際このようなお考えの薬剤師は多いと思います。しかし、医療の現場では予想外の副作用が出ることがあり、選択して説明することに危険性を感じます。こんな例があります。平成8年10月、福岡地裁にてリウマチ患者にシオゾール投与後に発症した間質性肺炎について医師の説明義務違反の判決がありました。シオゾール使用にあたって、医師から肝障害と腎障害の説明が行われたが間質性肺炎の副作用については適切な説明がなされなかったというものです。また、平成8年2月、高松高裁のフェニトインの副作用死亡事故についての判断では「まれであっても重大な副作用こそきちんと説明すべきである。」となっています。患者さんが冷静に判断できるように、上手に説明することこそが薬剤師の職能だと思います。
6)「薬剤師は医師と対等の立場であるべきだ」とおっしゃいますが、実現不可能な幻想でしょう。薬局の経営は処方箋枚数に依存しており、面分業であっても処方医の顔色をうかがうことなしに言いたいことを言うのは難しいのではないですか?
A)確かに、門前薬局やマンツーマン分業の場合は病医院の下請けになってしまっているケースが多いようですね。ほとんどがそうかも・・・。リベート分業ではなおさらでしょう。だからこそ面分業が必要なのです。患者さんが自分で選んだ薬局へ自分で行くという行為が、薬局の独立性を高めます。また、町の薬局はOTCも扱っており、今まで処方箋なしでもやってきました。したがって、薬局経営を処方箋枚数のみに依存しているわけではありません。将来、面分業が広がり、多数の医療機関からの処方箋を応需するようになれば、薬剤師は医師とより対等の立場になれるはずです。また、たくさんの処方箋が来ればその中から必ず処方ミスが発見され、薬の事故を未然に防ぐことになります。処方医は薬剤師を貴重なパートナーと認めざるを得なくなるはずです。
7)薬剤師が医師を監視すべき事柄は重複投与や過量投与等だと思いますが、院内の薬剤師で十分ではないでしょうか?面分業でなければという理由がわかりません。
A)日本で数年おきに大きな薬害事件が繰り返し起きています。その主因は薬事行政にありましたが、副作用の情報開示をせず、無批判にその薬を使い続けたわれわれ医師にもその責任が問われると思います。ただ、医師は患者さんから病気を治してほしいと期待されていますので、どうしてもそれに答えたいと思うものです。そして、治さねばという気持ちが強いため、その治療に伴うデメリット=副作用を軽視しがちです。まれな(当時はそういう認識だった?)エイズの副作用よりも、今起きている出血を止めたいと思ったはずです。医師のこのような性向にブレーキをかける役割を薬剤師に期待したいのです。それには、医師の考えにコントロールされた院内薬剤師では無理ではないかと考えています。
8)医薬分業は相互監視(相互チェック)が目的だということですが、確かに、薬剤師は「処方監査」という方法で医師をチェックできます。しかし、医師側には薬剤師を監視する手段がありません。
A)おっしゃりたいことは分かります。でも、医師の代わりに患者さんがちゃんと監視しています。調剤ミスをした薬局にはすぐに訪れる患者さんが減り、自然淘汰がおこります。「悪い噂は千里を走る」です。これはある意味で薬剤師にとってはより厳しいチェックですね。医師の監視よりもよりストレートな反応となり、弁解の猶予も与えてくれません。開局薬剤師は院内薬剤師よりもより実力が問われるということです。逆に、それだけにしっかり調剤しているというふうにも言えるわけです。
9)薬剤師の服薬指導で副作用(薬害)が減るとは思いません。国やメーカーが薬害の原因を調べ,具体的に対応することが大事だと思います。
A)もちろんおっしゃることは副作用(薬害)の防止のためには大切なことです。しかし、それだけでは不足です。すべての薬に副作用があるわけですから、副作用を防止するとすれば、早期発見しかありません。薬剤師が個々の患者さんに重大な副作用の初期症状を説明しておけば、患者さん自身が早期に副作用に気付き、手遅れになる前に薬を中止することができます。服薬指導は副作用の重症化を防ぐ上でとても大切なのです。また、発売停止となるような場合でも、まず副作用モニタリングで情報を収集してはじめて、その発生状況も分かるわけです。これについても薬剤師の果たす役割は大きいと思います。現在、日本薬剤師会が進めている薬局での副作用モニタリングはいずれ薬害の拡大防止に有力な武器となるはずです。
10)1つの薬局ですべての薬剤をそろえることは不可能ではないでしょうか。結局は門前薬局に行かざるを得なくなります。あの医院を受診した場合はあそこの薬局で、この病院の時はこの薬局でというふうに。
A)おっしゃる通り一万三千種余りの薬をすべて備蓄しておくことは不可能ですね。そもそも日本では同種同効薬が多すぎます。例えば塩化リゾチームだけでも130種もの商品があります。処方箋にすべての薬を一般名で記載するようになれば薬局としてどれほど助かることか・・・・・とはいえ現在の状況でも十分対応は可能です。地域の薬剤師会で薬局別の在庫リストを作成し、薬を融通し合ったり、薬剤師会で配送センターをつくったりして対応しています。卸によっては薬の至急配送サービスをしています。薬局ではいずれかの方法で薬を調達し、患者宅へ大至急で配達できればよほど緊急時以外は問題はないと思います。なお医薬分業の先進地の東京都蒲田では処方箋1000枚/月の薬局でも2000品目の備蓄が当たり前になっているそうです。
11)「面分業」の意義は、むだな薬剤を投薬させないようにという一点にしかないと思います。
A)現在薬価差がほとんどないか薬によっては逆ざやにになっています。したがって薬価差を求めての処方は今までよりは減っていくと思います。ところが、先発品と後発品の薬価点数の差を利用した不正が「薬価差」以上の利益を生み、リベートとして処方医側に流れていると言われています。たとえば、1g133.1円の抗生剤が処方箋に記されているのに、1g53.7円の後発品を患者さんに渡せば1gにつき79.4円の差益を生むことになります。実際の不正の規模はどれくらいかは闇に包まれて不明ですが、マンツーマン分業はこういった癒着を生みやすい体質があります。これを防ぐだけでも面分業の意義はとても大きいと思います。重複投与や相互作用のチェック、薬歴管理などの利点は言うまでもありません。
12)光カードや健康手帳に投薬内容などを記入しておけば、薬歴管理や重複投与、相互作用などのチェックはできます。むだな医療費を薬局に払わないで済みます。
A)確かに良い方法だとは思いますが、このシステムでは誰が調剤し、誰が服薬指導するかが問題になると思います。医薬分業の最も重要な点は、薬剤師が調剤することにあります。もちろん各診療所に薬剤師がいればそれはそれでよいのですが、現実は看護婦や事務員が調剤しているところが多いですね。いわゆる無資格者の調剤ということになります。調剤ミスの危険性が高まるだけでなく、法的にもクリアされていません。それに薬剤師による処方監査や服薬指導ができませんし、セカンドオピニオンを聞くこともできません。
13)医薬分業は医療保険の無駄遣いです。医院に薬剤師を雇えるだけの診療報酬を新たにもうけてもらえば、薬局を建てるだけの経費が浮きます。
A)各医院に薬剤師をおけば分業しなくてもいいし経費も浮くとのお考えですね。確かに形の上では必要条件を満たしているように見えますが、肝心の「医薬分業の理念」がクリアされていません。そもそも西洋で分業という考えが出てきたのは、医師と薬剤師を互いに監視(相互チェック)させるためです。「死亡診断書を書く手で薬を作るべからず」・・・・・医師にすべてを任せる危険性を感じたのだと思います。中世ヨーロッパでの話ですので必ずしもすべて現代の医療に当てはまるとは思いませんが、薬害事件のことなど考えれば本質的には正しいと思っています。これを現代にあわせて表現すれば、「薬についてのセカンドオピニオンを聞く」になるかと思います。したがって、薬剤師がその病医院に雇われていては肝心の役目が果たせません。医師から独立していなければなりません。医師の助手ではだめということです。
14)調剤は単純な作業ですので、事務員でも十分可能です。過量処方や相互作用のチェック,薬歴管理、薬剤情報提供は大部分パソコンで機械的にできます。必ずしも薬剤師は必要ありません。
A)調剤は決して単純なものではありません。専門家としてのノウハウがあります。薬理作用を知った者の調剤とそうでない者の調剤では自ずから違いがあります。それに事務員の調剤は法的に認められておらず、調剤ミスで訴えられた場合や内部告発などのなどの万が一の場合も想定しておく必要があります。また、患者さんは薬のことについていろいろ尋ねたい場合でも、それを医師に聞けないことが多いようです。私のために考えてくれた薬について、「それは大丈夫ですか?」などとは聞けないと言います。日本人の性格なのでしょうか?それに、処方医とは別の立場からのセカンドオピニオンを聞きたい場合でも、事務員では無理でしょう。
15)薬剤師を本当に信頼していいのでしょうか?重複投与、相互作用のチェック、薬歴管理を実際はしていない薬局がほとんどではないですか。そもそも服薬指導できるだけの勉強をしているのですか?3つの医療機関からのバファリンとボルタレンとブルフェンの3重複処方を見逃した事例があります。このような初歩的チェックもなされていません。
A)確かに信頼のできない薬剤師がいることは認めます。しかし、薬剤師の勉強不足、経験不足の原因は今まで処方箋を発行してこなかった医師側にもあります。そもそも町の薬局は処方箋を受け取り、調剤するためのものです。今頃になって自分の経済的都合で処方箋を発行し始め、薬剤師に勉強する猶予も与えず「信頼できない」の烙印を押してしまうのは、ちょっと身勝手すぎるように思います。医薬分業には立派な目的理念があり、それを達成するために、全国の薬剤師は日夜勉強に励み、経験を蓄えているところです。分業が本格化してまだほんの数年。発達段階にあると言えます。失敗の経験を積んでこそ信頼できる薬剤師になれるのです。医師も苦い経験を積みながら一人前になるのですから・・・・。とはいえ、信頼できる薬剤師が全国に日々育っています。薬剤師を育成する気持ちで、もう少し長い目で見ていただけませんか?
16)「この薬は在庫がないのであとで取りに来て欲しい」と言われたことが何回もあります。高熱や吐き気、激しい痛みを訴えている場合でも致し方ないと思っているのでしょうか?
A)このような薬局があることは確かに困った問題です。私どもの地区では薬剤師会内の申し合わせで、備蓄がない場合は早急に手配し薬剤師自ら患家に配送する、を守っています。小児科の場合は急を要するケースが多いのですが、今まで患者さんからのクレームは一度もありません。むしろ「わざわざ、家まで持ってきてもらえて」と感謝されています。それと、このような意見を言う方は通常は院内処方にしており、何かの都合でたまに院外処方箋を出される方に多いようです。地区薬剤師会にあらかじめ処方薬リストを渡しておけばこのようなことも少なくなくなると思います。私は医薬分業のシステム自体は良いものだと思っています。こんな欠点があるから「ダメだ」じゃなくて、それではどうしたら改善できるのか、と前向きに考えていこうと思っています。
17)医薬分業は二度手間です。分業するとしても医院のすぐ近くに薬局が必要だ。
A)処方を薬剤師によってダブルチェックすることが医薬分業の大切な目的の一つです。すなわち「わざわざ二度手間をかける」ことを意図したシステムなのです。その上で薬の安全性を確保しようということですので、これは本来、医薬分業のメリットと考えるべきことです。薬の安全性を大切にする医療をするのか、単に利便性のみを重視するのかが問われるところですね。
又、分業するにしても、患者さんの利便性を考えると医院のすぐ近くに薬局が必要ということですが、これでは重複投与や相互作用のチェック、薬歴管理はできません。分業の目的からいっても門前薬局は失格です(ホームページ「薬剤師の視点」 )。医院の薬局が前に出ただけで分業のメリットが生かせないとすれば、患者さんや地域の住民から「なぜ門前に薬局が?」と不審がられ、かえって医院の印象を悪くします。リベートをもらっていなくてもそのように悪く考える人も世間には結構いらっしゃいます。それに、地域の医師会や薬剤師会の仲間内から白眼視されるのも嫌なものです。分業のせいで今まで築き上げた医病院の信用に傷が付いては取り返しがつきません。
また、門前薬局型分業では医院と薬局は一種の運命共同体を形成することになります。薬局の経営状態についても責任を持たざるを得ず「かなり気が重い」ことになります。万が一、患者数の減少や休業の場合、薬局も同時に苦境に立つということになります。逆に薬局側は利益が上がらない場合も医院と運命を共にしなければなりません。「利益がないから撤退」では医療人としての人格が問われます。もっとも、その「人格の問われる」ことをするチェーン薬局も多いのも事実で、残された医院は簡単に院内調剤に戻すこともできず、立ち往生します。そうならないためにも、また社会的信頼性がを失わないためにも「面」分業が大切ということになります。
18)分業は医療費がかえって高くつき、患者さんの納得が得られない。
A)患者さんには「薬を安全にお飲みいただき、副作用から身を守るためのコストですので是非ご理解ください。」とおっしゃっていただければ理解が得られるはずです。多くの薬局では薬の安全性の確保と情報提供で患者さんに満足の得られるサービスをしています。私のクリニックの応需薬局での経験でも、「医療費が高い」といわれたことは一度もありません。それに、医薬分業すれば無駄な薬の処方が減りかえって医療費が安くなる場合も多いと考えられています。
それに、町の薬局はもともとは処方箋を受け付け、お薬を調剤するためのものですが、処方箋が来ないため本来の仕事ができない状態でした。そして今ようやく処方箋が発行され始め、本来あるべき薬局の姿になってきたということです。このように薬剤師の調剤は本来あってしかるべき仕事ですので、それに付属する技術料も当然のフィーだということです。今までそれを支払う状態になっていなかったことのほうがおかしかったわけですね。患者負担や医療保険財政については医薬分業とは切り離して別途議論すべき問題と考えます。
19)医薬分業は医療機関の利益のため、薬剤師の職場確保のためで、決して患者のためではない。
A)医薬分業は薬の安全性の確保と情報開示のためで、患者さんにとってとても大切な制度です。もともと医師は法律上処方箋を発行することが義務づけられています。患者さんから特に求められない限り調剤はできないことになっています。そういう決まりをを今まで遵守してこなかったのです。院外処方箋の発行は本来あるべき姿にようやくなってきたということです。一方、町の薬局は調剤するためにあるのですが、今まで医療機関から処方箋が発行されななかったためその役目が果たせませんでした。したがって、これも薬剤師の職場確保のためではなく、本来あるべき姿にようやくなってきたということです。
20)大病院の周辺には調剤薬局が立ち並び、医院を開業しようとすれば調剤薬局が押しかけてきて、リベート供与をほのめかします。私には利潤を追求する薬局チェーン店の経営者の顔しか見えません。これが、医薬分業にふみきれない一番の理由です。
A)お気持ちはよくわかります。門前薬局がはびこるような地域であれば分業に踏み切れなくて当然ですね。真剣に医療を考えていらっしゃる医師であればなおさらでしょう。このような門前薬局に対抗するためにも「面分業」が必要です。患者さんに「面分業」の理解が広まるにつれ、門前薬局からかかりつけ薬局に患者が移動し始め、必然的に門前薬局の患者数が減ります。その上、国は門前薬局規制を今後さらに強めてくると予想されます。今までのような利潤は望めなくなり、採算割れになり撤退するところも出てくるでしょう。このように考えますと、門前薬局は一種の「衰退産業」といえます。利潤追求型の薬局チェーン店をなくすためにも是非「面分業」での処方箋発行にご協力ください。