下記のような論文が発表されました。死亡までいかなくても、副作用で苦しんでいる患者さんは予想以上に多いのかもしれない。患者さんも主治医もそれを副作用と認識していない可能性が・・・・・・。薬局での副作用の説明とモニタリングが広まれば、今よりもっと多数の副作用例が見つかると予測します。今回いただいた「副作用説明の熱心なかかりつけ薬局」からのメールからもこの予測が正しいことをうかがわせますね (98/10/29)。.
<共同通信> 医薬品の副作用による死者は米国全体で年間十万六千人に上り、心臓病、がん、脳卒中に次いで死因の第四位を占めているとの推計をカナダ・トロント大の研究者らがまとめ、米医師会雑誌JAMAに発表した。ブルース・ポメランズ博士らは、副作用被害に関する多数の調査を分析。それぞれの調査が対象とした地域や医療施設の、入院患者に占める副作用被害者の割合を算出し、全米の被害者数を推計した。誤差の範囲で死者を低く見積もっても七万六千人になり、肺疾患、不慮の事故に次ぐ第六位と上位を占めることが分かった。同誌は、小規模な調査から割り出した率を全米に当てはめていることなどから、推計値が高すぎる可能性を指摘する別の研究者のコメントも掲載。 |
副作用説明の熱心なかかりつけ薬局:薬剤師 |
先生がいつもおっしゃっている「薬剤師は副作用のチェック がお仕事!」について、私はいつも「それだけじゃないよ」と思っていましたが、最近、立て続けに副作用をひっかけてしまいまして、はからずも先生のおっしゃる薬剤師のお仕事を遂行してしまいましたので、ご報告いたします。
その1
58歳 セルテクト、 同じ薬を2ヶ月前にも服用。そのときは、多少の眠気があった程度。調剤の翌々日にTELにて相談「ふらふらと頭がゆれる感じと、夜中の頻尿(一晩に6回)、軽い排尿痛あり」との訴え。服薬と同時に急に起こったことから、薬による膀胱炎症状も考えられるのでとりあえず服薬を中止してもらうことにして、Drに連絡。「服薬を中止して、早めに受診してもらうように伝えて下さい」とのこと。 患者に連絡。その後、処方変更。頻尿、ふらつきなし。
その2
48歳 女性 ワーファリン服用中。今回、プレタール追加。この患者は服薬の必要性と副作用についての意識が非常に高く、ワーファリンについてもかねてより副作用を詳しく説明していた。プレタール追加にあたって、出血傾向が増強する可能性があること、不眠などの精神症状が出るかもしれないこと、飲み始めには頭痛の可能性があるが、1ヶ月くらいで慣れて気にならなくなることが多いこと、などを詳しく説明。1ヶ月後、プレタール2回目の処方時に副作用についてインタビューしたところ、飲み始めて2日目より、明らかな頭痛あり。生理時の出血もかなり多く、ふらつきがありつらかったが、薬の作用のせいだとわかっていたので、そんなに心配はしなかった。病気のためには服用が必要だとわかっていたから、とのこと。生理時、もしかしたら貧血状態がひどいかもしれないので、次回の受診時に生理時の状況などくわしく主治医に伝えて、対処の仕方をよくきいてくるようにアドバイス。検査結果とのかねあいで、もしかしたら処方の変更もあるからと話しました。
その3
24歳 原因不明の発熱のため、TELにて相談。すぐに市民病院内科受診を勧める。その結果、とりあえずバクシダールをもらってくるが(院内投薬)飲み始めてすぐに、ひざの力が抜ける感じと、頭痛がするとのこと。すぐに服薬をやめて、主治医に電話で伝えるようにアドバイス。現在、投薬を中止して発熱の原因について検査中。
その4
10歳 アトピー性皮膚炎にて加療。リザベン服用中 。発熱のため、近医受診(院内投薬のため薬は不明)その数日後より頻尿(1日十数回)相談のTELあり。服用を中止し主治医受診を勧める。受診後、処方変更。
と、ここ1ヶ月ほどの当薬局での出来事です。
つまり薬を飲んでいて何かあった場合、医師は病状の変化と考え、薬剤師は薬のせいと考える。医師は新しい症状に対して治してあげようと薬をオンすることを考え、薬剤師は新しい症状に対して薬をオフすることを考える・・・どちらが正しいかはケースバイケースですが、この方向の違いがまさに分業の意味するところなのではないでしょうか?そして、薬剤師の方から「薬のせいかもしれませんが・・・」というサジェスチョンをすれば、医師はかなりの確立で処方変更、または処方中止を検討するのではないでしょうか?医師が薬のせいかもしれないということを念頭において、その症状を診察してくれるだけで、医療の質は変わってくるのではないでしょうか?最近、私はこう考えていますが、いかがでしょう?
サラリーマン薬局長 |
先生、お元気でいらっしゃいますか。私は、「サラリーマン薬局長」をやっています。いわゆる「マンツーマン」ですので、正直なところ「医師の顔色をみながら・・」の毎日です。ただし、リベートなどの問題だけはぜったいにない・・と信じて毎日働いています。先生のホームページを読む度に、「理想的な分業のあり方」と「現在の自分」の落差について自己嫌悪に陥ります。でも、私は、先生のようなお考えのドクターがいることを心の励みにして頑張っています。
ところで、「疑義照会」難しいですね。正直、「先生、こんなに防御因子の胃薬いらないんじゃないですか」とか「この人の喘息はステロイドをもう少し増やせば・・」とかは言えません。せいぜい、「この人のめまいはハルナールの副作用の可能性があるのでは・・」位です。「門前ですら難しい」のか「門前だから難しい」のか、おそらく両方真実でしょうね。ただ、私の薬局のコンセプトの中にこんな一文を入れてあります。それは「勇気を持って疑義照会をしよう」です。怒られることもたびたびですが、それにくじけちゃ「薬剤師」の存在を否定されっぱなし・・ですもんね。頑張らなくちゃ。
先週金曜日の午後には、目の前以外の医療機関から3枚も処方箋が来て、薬の調達に追われました。「うれしい悲鳴」です。在庫のない薬の処方箋が来る度に、パニックになってますが、卸の協力と、患者さんの暖かい対応によって、何とかやっています。ご近所の患者さんが多いので、気軽に「じゃあ、後で来るわ・・」って言ってくれます。これに甘えちゃいけないんだけど・・。あす、もう一日リフレッシュして、また頑張ります。
なお、私の薬局の「コンセプト」の全文は以下の通りです。恥ずかしながら、こんな事を意識しながらみんなと頑張っています。現実はなかなか・・ですが、理想は高く持たないと、堕落しそうなので・・。
コンセプト1:ミスのない調剤と、適切な服薬指導によって、治療に貢献する。
コンセプト2:サービス精神を持って、患者に応対する。
またメール送らせてもらいます。
徳久和夫(日本薬剤師会生涯教育副委員長、石川県薬剤師会副会長(当時・現会長)、石川県金沢市) |
ご無沙汰いたしております。県薬事務局の村上からホームページのコピーを届けられ、一気に読み終わったところです。「面分業」の『お文さん』を見る思いです。敬服と感謝に言葉もありません。
Dr.MYCONOSやPh.アップルのご意見、大変興味深く読みました。医薬分業システムに対する医師と薬剤師の距離の遠さを痛感しますとともに、薬剤師側の問題点が山積していることに改めて気持ちの引きしまる思いです。
医薬分業は「二度手間」を掛けることによって薬物治療の質的向上が計れるものです。患者だけが二度手間になるのではなく、医師も薬剤師も同時に現行(自家投薬=非分業)よりは二度手間になるということです。大岡裁きの「三方一両損」が想起されます。
分業システムの中の薬剤師の役割は「副作用の防止」の一点に尽きます。その目的達成のために、服薬指導という名の情報提供があるということを現場の薬剤師がまだ十分に判っていないように見えます。オールドボーイの私に課せられた使命は次代の薬剤師を養成することと自覚し、今年も日薬生涯教育委員会の末席を汚して来ました。
今、薬学教育も含め、薬剤師教育は大きく転回を開始しております。その中に薬局実務実習も現実のものとなっています。去る10月に「薬局薬剤師実務研修テキスト」が出来ました。私としては企画から担当執筆まで手がけた初めての出版作業でした。内容的には未熟ですが、時代の要請に答えるために、とりあえず第一版の発刊となったものです。別便でお届けする様手配しました。ご笑覧くだされば幸いです。
母校(金大薬学部)の薬友会誌に掲載の拙文と薬局関係の情報誌に連載の小文コピーもFAXでお送りします。
地域輪番による当番薬局制度が、この12月より加賀江沼薬剤師会でまずスタートしました。小松能美地区は明年1月を予定しているようです。理想には程遠い半熟卵ですが、ご指導のほどよろしくお願いいたします。H10.12.8 AM4:30
今から5年前(平成5年12月22日)、私がまだ医薬分業についてほとんど何も知らなかった頃、県薬剤師会に「処方箋発行したいんだけど・・・」と電話したところ、折り返し徳久先生より電話があり、「今夜説明に行きたいが、よろしいでしょうか?」と。9時頃金沢から、しかも雪の降りしきる中を来院いただきました。先生とはその時が初対面でしたが、医薬分業にかける「信念とパワー」がひしひし伝わってきました。分業の目的、理念、それをすすめる方法、手順まで、熱心に講義していただき、終わったのが真夜中の12時過ぎでした。このホームページに書いてあることはこの時の講義が基礎になっています。先生の指導がなければをこれを作ろうという発想も意欲もわかなかったはず。従って、先生は私にとってもこのホームページにとっても「恩師」ということになります。 |
田丸薬局:田丸 敏弘(岐阜県大垣市、薬剤師) |
ご無沙汰をしております、生涯教育研修・大垣会場でお世話になった田丸敏弘です。先生の「反論文」を拝読しました。非常に勇気づけられるお言葉が随所にあり、大変感銘いたしました。
薬剤師が行う業務について「すべき業務」と「行える業務」のあいだに擦(ず)れを感じ、自分としては常々悩んでいました。そして、突き詰めて考えると「薬剤師不必要論」にまで発展してしまう自分に対して嫌悪感さえ持っていました。そのような時、この文章の中にある次の下りを読んで、自分の中にあったもやもやがすっきりと晴れました。先生のような医療文化を持っていらっしゃる方に大垣でお会いすることができ、自分は大変幸せ者です!!!!
薬剤師の服薬指導の目的は副作用を患者自身が早期に発見し、薬を安全に飲んでもらうためのものであって、医師の病気に関連づけた服薬指導とは当然異なっている。 |
分業すれば医療費の患者負担が増える点、薬剤師として心の痛みが日ごろよりありました。先生のお言葉にある、
そして、今ようやく処方箋が発行され始め、本来あるべき姿になってきたということである。このように薬剤師の調剤は本来あってしかるべき仕事なので、それに付随する技術料も当然のフィーだということである。 |
今までの医療体系に薬剤師が介入すると医療費が大きくなり、その点も自己嫌悪に悩んでいましたが、お陰様ですっきり納得できました。今後とも健康に気をつけられ、ご家族を大切に、患者のための医療に精を出されることを切に願い、お礼の言葉と致します。
匿名希望(静岡県,薬剤師) |
私は先生の主張されている医薬分業を心から願っている開局薬剤師です。このホームページはもう何回も見せていただき、とても勇気づけられています。
私の所 は小さい商店街にあり、OTC,化粧品,雑貨など販売しながら保険調剤を面分業で受け付けております。2年程前から調剤を始め、月2−3枚から現在は約50の医療機関から約500枚/月ほどの処方箋を受けるまでになりました。また、OTCを求めて来局された方には詳しく病状をお聞きし、できるだけ要望に合う医療機関を紹介するようにしています〈決してOTC薬を売って済まそうとだけは考えていません〉。
また、医院側からアレルギーの薬歴の問い合わせなどもあり、患者さんの情報を差し上げたり、またその時得た情報を薬歴に加えたりしています。また、近くのドクターともEメールを通じ交流を始めています。一方的に教えていただくことの方が多いのですが、趣味や医療情報(今度この様な新薬が出るとか、この様な患者さんでこんな副作用が出たとか)を交換しています。
当市は人口約11万人で分業率は38%ほどですが、分業している医療機関では門前薬局を持っているところがほとんどです。しかも,患者さんは医院の前の薬局で薬を貰わなければいけないと思っていたり,医院から患者さんに処方箋を渡すことなく門前薬局にファックスしたり,医院の受け付けで薬局を指定していたり,となかなか本来の医薬分業の姿が見えてきません。
でも、神奈川県のある薬局では面分業で100の医療機関から3000枚/月ほどの処方箋を受けているところも出はじめています。患者さんにも面分業の良さが理解され始めていると考え,先生の言われている事を実現するように今後も努力していきたいと思います。
ペーパー薬剤師 |
ホームページ拝見しました。 私は千葉県で農業を営むペーパー薬剤師です。
薬剤師の資質のばらつきについてはどうお考えでしょうか。知っての通り、薬科大学では薬についての教育の比重は非常に低いのです。また、卒業して30年もたった人の知識は時代遅れ+忘却により、素人に毛の生えた程度と考えられます。 個人的に勉強している人もいれば、単に雑貨売りをして30年も過ごしてしまった人もいます。 「薬剤師」とひとくくりにしても、非常にばらつきがあるのです。医師のように、ほとんど全員が一度は臨床教育を経験する職能とは、全く違います。私は街中の薬局薬剤師には、ほとんど何も期待していません。
薬剤師資格に上乗せする形で、業界資格を制定する必要があると思います。また、知識の陳腐化に対応するために、その資格は最低でも3年に一度は更新する必要があるでしょう。
返信 |
吉田均 |
貴重なご意見ありがとうございます。医薬分業を進める場合、薬剤師の資質について問題視されることが多いですね。しろうと同然の薬剤師、全く勉強していない商売人の薬剤師、確かにいますね。このような方は調剤する資格はありません。薬局の免許を返上してほしいと思います。「私は街中の薬局薬剤師には、ほとんど何も期待していません。」とおっしゃりたい気持ち、よく分かります。私もやる気のない薬剤師には何も期待しておりません。分業が広がればいずれ患者さんの厳しい選別によってそのような薬剤師は消えていく運命にあるのだと思っています。
しかし、一方で積極的に勉強し、経験を積み立派な薬剤師になっている方も多くいます。患者さんから厚い信頼をうけ、遠方からわざわざ電車を乗り継いてでも患者の集まる薬局さえあります。時代に乗り遅れないように日々勉強に励んでいる方もとても多いです。薬剤師の世界も数年前とは大きく様変わりしています。大変失礼なことを申し上げますが、もしかして現場を離られているため現状認識が少し古くなっていないでしょうか?間違っていましたらお許しください。
とはいえ、薬剤師資格に上乗せする形での業界資格を制定には賛成いたします。これでやる気のない方を選別できるといいですね。日本薬剤師会に期待しましょう。
返書 |
ペーパー薬剤師 |
もともと、「現場」なるものに入った試しがないのですが(笑)、少なくとも教育体制は、卒業後4年程度で大きく変わったはずがありません。教員の面子も、知っている人たちばかりですし。 薬剤師にとって最も足かせになっているのは、薬科大学でしょう。薬剤師は臨時講師以上にはなれません。
返書 |
吉田均 |
おっしゃる通りですね。6年制にする話もなかなか実現しませんし・・・。大学の教授陣の多くは臨床薬剤師の経験のない方だと思います。開局薬剤師を育成しようにもその能力が・・・・・とはいえ、大学も時代の要請によって変わってきています。たとえば、私の地元の金沢大学薬学部では96年から修士課程に医療薬学コースが創設され、1年の病院実習と2ヶ月の薬局実務実習が必須科目となっています。北陸大学でも1ヶ月の薬局実務実習がスタートしています。98年には21の薬局で学生を受け入れています。ご参考までに・・・・。(99/1/10)
aimai(横浜市、医師) |
横浜のaimaiと申します。時々覗かせて頂いてます。
いよいよ2000年から、新薬価制度がスタートするようですね。 ”参照価格制度”について、日医はともかく業界は絶対ウンとは言わないだろうと思います。ドイツの先例に倣えば、総量規制を掛けなければ薬剤費増加は止められない事を百も承知で、同じ道を辿ろうとする厚生行政には??です。
歯科の先生方は、未整理の保険点数制度の見直しを強く要求されているようですが、医科に関しては、薬剤費を如何に抑えるかが急務だと思います。総量規制しかないと思うんですが。その場合、院外調剤の立場はどうなるんでしょう?(やや持ち直すか、ドンゾコか?)
返書 |
吉田均 |
時々HPにご訪問いただいているとのこと、ありがとうございます。
参照価格制度あるいは総量規制についてですが・・・・・実は私はこの点については勉強不足で、そのような制度がスタートすれば「院外処方箋のドクターが増えるかなぁ」ぐらいの認識しかありません・・・・。
先生のおっしゃるように参照価格制度はドイツでは結局うまく行かなかったとのことですね。ドイツでなぜ成功しなかったのか詳しくは知らないのですが・・・・参照価格の対象外の新薬に処方がシフトする、あるいはメーカーがその新薬の値段をつり上げるなどすれば確かに効果は出ないでしょうね。それと、参照価格対象の薬でも、低薬価の薬は値段が上昇するとも言われていますし・・・・。しかし、いずれにしても、今よりも薬価差が減少するのだとすれば医薬分業に拍車がかかるのでは・・・・。
総量規制に関しては「薬価の包括予算制」というものがドイツで行われてきましたが、昨年1月に廃止されたと聞いています。その経緯は知りませんが、もしかして医療機関側にあまりにきつい制度だったからかもしれませんね。ということは、薬剤費増加に対してはそれだけ効果のある「劇薬」ということになるのでしょうか?
「院外調剤の立場はどうなるのか」とのご質問ですが、総量規制の中に処方箋料を下げるということも含まれるのであれば確かに「ドンゾコ」でしょうし、そうでなければ影響は少ないのではないでしょうか。もっとも処方回数を減らさざるを得なくなれば影響は大きいかも・・・・・。
調剤薬局にとっても同じでしょうね。調剤技術料を下げる、処方箋枚数が減少する、などで影響は大きくなります。それに薬価差がなくなる点も大きいかも。したがって、院外調剤にとっても総量規制だけは堪忍してほしいですね。そうならないためにも私は参照価格制度が成功することをひそかに願っています。分業されていない方にはつらい事でしょうが・・・・・・。(99/1/13)