全国から寄せられたご意見、ご感想(6)


JPMEDという医療関係者のニューズグループのメールリンクメンバー(会員)になりました。そこに当HPを1月11日から10回余に分けて転載しております。それを読まれたローマの内科医中田吉彦氏よりメールがありました。情報開示の遅れがこんな所に弊害が及んでいたのですね。

インターネットでメールをやりとりしますと、日本もローマも同じです。本当に身近に感じられますね。当HPで読み疲れた方は、中田氏のHPへどうぞ。修道院のお話なんかがおもしろいです。


1)日本を発つ前に簡単な「病歴と薬歴」を持たせていただけないでしょうか。

ローマ中田吉彦医院:中田吉彦(イタリア、ローマ、内科医)

ローマで開業しております内科医の中田吉彦と申します。日本より一足先に「医薬分業」が常識化している社会から日本を見ますと、皆さんの努力と健闘に応援をしたくなります。日本の医薬分業が遅れているために、日本からの旅行者がどれだけ不便を強いられているかわかりません。この件に関しましては、 JPMEDを通じて14/10/97に以下の内容を投稿いたしました。

医師、薬剤師の方々へ、 ローマで開業しております内科医の中田吉彦です。ここのところ立て続けに同じようなケースが発生してますので、皆さまの業務に役立てていただきたいと思いまして投稿いたします。

最近は海外旅行が極めて楽にできるようになったので、治療中の患者さんも薬を携帯して来られることが多くなりました。ところが、その服用中の薬を途中でなくされたり、あるいは旅行中に体の調子が悪くなり服用できなくなるケースがよくあります。その際に、服用している薬の名前どころか、時には余り種類多く服用しているので、どのような薬か憶えていないという患者さんが多いのです。もうお分かりかと思いますが、患者さんが「病歴」「薬歴」を携えて旅行に出ることが余りに少なく、たとえ日本人医師がいたとしても病院では対応に大変困ります。これは言葉ができるできない以前の問題でして、時には患者さんの死活問題となります。従って、日本を発つ前に患者さんには英語で簡単な「病歴と薬歴」を持たせていただけないでしょうか。それさえあれば、緊急事態が生じても診断及び処置に重大な過ちを犯さずに済ませることができると思います。どうぞ宜しくお願い致します。

以上ですが、日本での「医薬分業」が速やかにしかも確実に進めてもらいたいと切に望むものです。ところで、私のURLをご覧頂いたうえで結構ですが、URLの紹介とリンクを希望いたします。どうぞよろしく。(1/13)



2)分業してないと医療の現場では・・・・JPMEDより

NAKATA(医師)

旅行先でのこういう事件を考えると、患者自身が投薬の資料を自分の責任で携えていて欲しいことは明らかですね!

もう1つ私の経験している状況をご説明申し上げたいと思います。循環器や消化器の薬剤、催眠剤や向精神薬などは下部尿路に各種の影響を与えますので、排尿障害の診療(私の専門領域)ではまず常用薬をチェックします。それで、内科で頻繁に使われる薬について処方の変更をお願いせざるを得ないケースがありますと、院外処方の制度に乗っている患者と、そうでない患者とでは、扱いやすさも最終的に到達できる医療のレベルも違います。

医師が薬を渡し患者が盲目的に飲んでいる場合には、「この薬をやめられれば今よりお小水の調子がよくなると思いますよ」と申し上げると、こちらは日の浅いつきあいの対診医、あちらは長年世話になっているかかりつけ医なのにもかかわらず、かかりつけ医の処方全体に対する疑念を持ってしまう患者が少なくありません。患者にしてみれば薬を盛られた感覚なのでしょう。

院外処方箋をもらって薬局へ行っている患者ならば、処方箋のコピーを持参する方が多いですし、薬の功罪についてよく認識しています。1つ1つの薬に対してこちらから説明して理解させることが可能です。また、処方する医師も、自分の仕事は処方の時点で終わっていること、そして薬を買うかどうか服用するかどうかは最終的には患者の自由であることを知っています。患者の選択権を残すことが現在の医療の方向として必要なのでは?



3)東京の医薬分業は?・・・・・・・・

N.O.(東京都、薬剤師)


また、ホームページのコピーありがとうございました。まだ全部読んでおりませんが、内容にもイラストにも感動してしまったので、途中でお礼状を書きたくなりました。

先生のご努力に報いる薬剤師がいる石川県はとてもすばらしいところです。医薬分業の本質は処方せん受け取り率の数字ではなく、そういうことだと思います。まだまだ東京の薬剤師はひ弱で臆病です。

ついでに他の人にも先生のホームページを回しています。「すごい!」とか「異常だ(失礼)」という声が聞こえてきます。こんなに医薬分業の実状を理解している医師がいることも驚きのひとつです。ところで、石川県では雪下ろしもリベートの一種ですか?


一瞬、先生のホームページを連載で誌上公開していただけるようお願いしたいと思ったのですが、それでは先生がまるで「薬剤師の味方をしている・・・・」ように感じる薬剤師や医師が出てくるのではないかと危惧いたしました。あくまで先生は医師ですからご自身の本業と患者のために分業をなさっていただきたいと思い、断念いたしました。

全国からのメールの、「5箇条のご誓文」はとても良い内容です。ともすると、お金を儲けて自分はオーナーで外で遊んでいて、調剤は雇った薬剤師がやっているという薬局が多い東京では、耳の痛い方がたくさんいるでしょう。


東京では今年2度目の雪が降っています。雪に慣れていない東京では、ちょっとの雪であっと言う間に交通網が麻痺してしまいます。先日の雪の日は帰宅に3時間半かかりました。一見、華やかで、近代的な「花の東京」は脆い町です。

東京の医薬分業は商業ベースと良心がせめぎ合って進んでいます。医師も薬剤師もクールでスマートですがその実態は脆いのです。

学会などで東京にいらした際にはどうぞ一声おかけ下さい。


4)JPMEDで「患者さんのための医薬分業」を拝見して・・・・

東邦大学付属佐倉病院図書室:下原康子(千葉県佐倉市、司書) 

はじめまして。JPMEDで「患者さんのための医薬分業」を拝見して、このような先生もいらっしゃるのかと感激しています。私も医学情報を扱うものとして、また患者として、情報開示に関心をもっています。これは「分業」の本質的な部分に大いにかかわると思っています。どうぞ、今後もはりきってご活躍ください。資料の調査や文献検索などでお役にたてることがありましたらどうぞご連絡ください。



5)医薬分業の光が見えたような気が・・・・・


いけだま(愛知県、薬剤師)

初めまして!全部読ませていただき、とても感激しています。医薬分業の光が見えたような気がします。私は、1日の患者数が40人に満たない暇な薬局に勤務している、女性薬剤師です。この薬局は医師サイドから話が出て開局されたようで、ほかの薬局よりは、医師の協力が得やすいのですが、しかし、それでもなかなか困難です。調べに調べた上で、よく言葉を選び、慎重にお伺いする・・・というのが現状です。そのほかに、病院サイドの受付事務の不備にもかなり振り回されました。開局3年、やっと少し、落ち着いたところです。薬剤師なら誰でも先生のような方とともに仕事をしてみたいと願うことでしょう。吉田先生のHPの波紋が薬剤師には確実に、そしてきっと、医師のかたたちにも静かに確実に広がっていることを感じます。これからも、ますますのご活躍を!!(3/2)
                             


6)「3月議会において、取り上げたいと思います」  

山野之義(金沢市議会議員、石川県)

                               
突然のお便りで失礼いたします。先生のホームページをじっくり読ませていただきました。さらに、全ページプリントアウトして、熟読もさせていただいております。医薬分業の本当の意味での意義がわかってきたような気がします。何といっても、石川県の停滞ぶりが気になります。県都金沢市として、率先して医薬分業に取り組むべきと思い、今3月議会において、取り上げたいと思います。先生のHPを参考にさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。ぜひ、ご理解の上、ご協力いただければと思います。よろしくお願いいたします。(3/6)



7)3月16日、金沢市議会で質問しました。


山野之義(金沢市議会議員、石川県)

<質問>
次に、医薬分業についてお聞きします。 医薬分業とは、病気になり医師の診断を受けた際に、病院・診療所で薬をもらう代わりに院外処方箋をもらい、その処方箋に基づいて街の保険薬局で薬を調剤してもらうことをいいます。

世界の先進国のほとんどでは医薬分業がなされています。日本でも、1956年の法改正により、医薬分業は制度化されましたが、漢方医の流れのうちに西洋医学を取り入れ、医師が診察と投薬をすることが習慣として定着してきたことから、分業はなかなか進展してきませんでした。しかし、ここ数年の薬害エイズ事件や、薬価差益の縮小などのため、状況が著しく変化してきました。

医薬分業の最大のメリットは、「薬の安全性」と「情報開示」といえます。そして、ともに患者のためというのが最大の眼目となります。「薬の安全性」とは、薬の専門知識を持つ薬剤師が、薬の量や飲みあわせに間違いがないか確かめた上で、正確に調剤することにより担保されます。さらに、いわゆる「かかりつけ薬局」も持つことにより、どの医療機関にかかろうと、常にその薬局に処方箋を持っていき、薬剤アレルギーや重複投与、相互作用のチェックをしてもらう事により、患者本位の薬の安全性も保証されるといえます。

「情報開示」という点では、インターネットで世界中の情報が瞬時に手に入る、情報公開のこの時代に、自分の健康のために飲む薬の副作用はもちろん、名前さえ満足に知らされていないのは、不思議な事といえます。数年前のソリブジン事件や薬害エイズの問題などは記憶に新しいところです。昨年4月より、薬剤師は薬剤の効果、副作用、相互作用などの情報提供が法律で義務付けられました。制度上からも医薬分業イコール情報公開ということが明確になりました。また、患者の心理として、医師に処方された薬について質問するより、第三者の薬剤師の方に尋ねやすい、ということもあります。

その他にも、薬の待ち時間が長い大病院では、院外処方箋をもらい、自分の「かかりつけ薬局」で調剤してもらえるというメリットもあります。一方、医薬分業に懸念を持つ考え方としては、今まで病院で薬も一緒にもらっていたのに、薬局に行くのは「患者の二度手間」になる、というものがあります。一見、正論に聞こえますが、問題は「利便性」を求めるのか、かかりつけ薬局を持つことにより「薬の安全性」を重視するのかという議論になってきます。また、「医療費負担アップ」に繋がるということも、耳にする意見ではあります。しかし、例え薬局の手数料が増えることになっても、かかりつけ薬局による薬の重複投与や相互作用のチェックにより、結果的に薬の使用量全体は減少に向かっていくことになります。実際、ここ数年の医薬分業の進展に併せるかのように、医療費に占める薬剤費の割合は、急激に減少してきていることからも明らかといえます。

医薬分業の進展度合いを表す、院外処方箋受けとり率、いわゆる分業率は昨年10月の日本薬剤師会の調査によると、石川県は、全国最低の5.7%。全国平均は25%を超え、トップの佐賀県は52.7%となっています。特にここ数年における、全国平均の伸びは著しいものがありますが、石川県は、もともと分業率が低いところに持ってきて、ここ数年間の伸び率でも全国最低となっています。金沢市単独でのデーターは手に入りませんでしたが、全国平均に比べ著しく低いということは間違いないということでした。もちろん、これは、いわゆる門前薬局での処方も含まれたものでもあり、この数字だけを見て、本当の意味での分業、つまり、かかりつけ薬局をもつという、いわゆる面分業だけの伸びを表しているというものではありませんが、一つの目安にはなると思います。

そこで、お聞きします。市長は、医薬分業ひいては「かかりつけ薬局」の意義をどのように理解しているのか、そして金沢市のこの著しい分業の遅れについて、どのような思いをもたれているのかお聞かせください。

昨年9月に実施された薬剤に関わる一部負担金の新設、今月6日の官報で報告された大幅な薬価下げ率に見られる薬価基準制度の見直し、そして定額制の拡大を考えれば、患者や薬局だけではなく、医療機関の経営という観点から見ても、その先に見えてくるものは医薬分業しかありません。

石川松任薬剤師会は昨年8月より、公立松任石川中央病院に「院外処方箋相談コーナー」を県内の公立病院では初めて開設しました。また、先の石川県議会において県立中央病院では、院外処方箋を迅速に発行できるようコンピュータシステムを整備することも発表されました。さらに、金大薬学部とその附属病院では、薬学部大学院生が医師や看護婦とともに入院患者の病棟を回り、患者に薬の服用方法を説明したり薬の服用後の体調変化などを調べるという、いわゆる臨床実習も始めました。また、県の薬剤師会では、保険調剤のほか薬の相談に応じ、個人の薬暦カルテなども保管する、薬アドバイザー薬局いわゆるPAM薬局指定も行い、地域のかかりつけ薬局としての機能充実を図っています。

石川松任薬剤師会は昨年8月より、公立松任石川中央病院に「院外処方箋相談コーナー」を県内の公立病院では初めて開設しました。また、先の石川県議会において県立中央病院では、院外処方箋を迅速に発行できるようコンピュータシステムを整備することも発表されました。さらに、金大薬学部とその附属病院では、薬学部大学院生が医師や看護婦とともに入院患者の病棟を回り、患者に薬の服用方法を説明したり薬の服用後の体調変化などを調べるという、いわゆる臨床実習も始めました。また、県の薬剤師会では、保険調剤のほか薬の相談に応じ、個人の薬歴カルテなども保管する、薬アドバイザー薬局いわゆるPAM薬局指定も行い、地域のかかりつけ薬局としての機能充実を図っています。

金沢市及びその近郊においても医薬分業に向けて、さまざまな環境整備がなされております。

そこで、お聞きします。金沢市としては、この医薬分業に関して今後どのような取り組みをしていくのか。具体的には、市内の大手病院の中では最も院外処方箋発行が遅れているといわれる本市立病院において、そのための施策をどのように考えているのか。また、市内の医師会、歯科医師会、薬剤師会との協議を今後どのように行っていこうとしているのか。最後になりますが、アメリカで一番信頼されている職業は、大手調査機関によると、10年以上続けて、薬剤師がトップであり続けているということです。保険制度の違いもありますが、医薬分業が進み、かかりつけ薬局によせる信頼が、薬剤師という職業への信頼に結びついているといえます。本市においても、一番大切なことは市民への「かかりつけ薬局」への重要性の啓発活動かと思われますが、その観点からもお答えいただければと思います。(3/16)


8)山出金沢市長の「答弁」です。

山野之義(金沢市議会議員、石川県)


<市長答弁>

次に医薬分業のことについていくつかお尋ねでございました。かかりつけ薬局を持ちますことは、ひとつは薬の重複投与の防止、二つは、薬に関する十分な説明、指導が受けられる。また、患者の薬歴管理が行われる、こうした上で意味のある事だと思っております。

ご指摘の通り金沢市の医薬分業が遅れておる、ということは事実でございます。ただ、医療機関と薬局との連携でありますとか、処方箋の受入態勢の整備と、こういう事に課題がある、というふうにも聞いております。いずれにいたしましても、患者の立場にたった、適正な形での医薬分業の推進が望ましい、このように思っておる次第でございます。

市立病院での対応はどうかということでございますが、患者の希望があれば院外処方箋を発行するしくみにはなっているのではございますが、利用率が低いことはご指摘の通りでございます。利用促進の方策といたしましては、当面は窓口における案内掲示を充実させる、ということをしたいと思っております。それから、これから開発予定でございます、オーダリングシステム、これをやろうということを考えておるわけでございますが、この中で適切な利用促進を図れるように、前向きにひとつ検討したい、とこう思っています。

関係機関との協議また、市民への啓蒙活動はどうかということでございますが、市の薬剤師会が主催しました、「かかりつけ薬局定着推進協議会」というのがありまして、この協議会には、市、県そして市の医師会、歯科医師会金沢支部、金沢市の老人連合会、とこうした市民団体が参画をいたしまして、かかりつけ薬局の普及、啓発について協議をしたところでございます。で、この協議結果を踏まえまして、本市といたしましても県や関係団体と連携しながら、かかりつけ薬局、医薬分業につきまして市民への意識啓発に取り組んでいきたい、こう思っている次第でございます。(3/17)