全国から寄せられたご意見、ご感想(19)




1)方法論として、医師会との交流が必要だと・・

小島勝彦


前略、私は中小の後発医薬品会社に勤める者(薬剤師)です。分業の現場にいるわけでないのですが、免許を持っているので、医薬分業には関心があります。99年10月の日本医事新報(3939)の時論;宇都宮済生会病院・内科科長の中澤堅次先生の「医薬分業で医療制度改革は危機を迎える」を読んだり、医事新報社のHPに医薬分業に対する全国の医師の意見が相当数ありますが、どれもメリット(ほとんどなし)/デメリット(患者の負担が大きい、保険支出がかえって多いではないか、他)で分業をつぶそうとの意見です。これらのことでいてもたってもいられなくなり、メールを送りました。


現在の私達の社会での分業を進める目的は、医師のためでなく、薬剤師のためでもありませんよね。過去私達は大きな薬害を何度も経験してきました。分業であれば、防げた場合もあったかも知れないと思うのです。すべて患者のために、副作用情報を発信し、適正使用を願って分業を進めているのだと思います。これは少し理想に走りすぎていますか。不思議に思うのですが、日本人は薬が好きなのでしょうか?それとも他人や他の物に頼る性格なのでしょうか?その心につけ込む医師や薬剤師が多くいて、正常な分業が進展しないことを危惧する者です。薬剤師一人では、分業というシステムを正常に進展させることはできないでしょう。その方法論として、医師会との交流が必要だと思いますが、ごく一部の分業先進県あるいは地区で行われているだけです。この交流のためには何が必要なのでしょうか。教えていただければ幸いです。

吉田均


小島さんのお考えは私と完全に同じです。理想を現実のものとしなければなりませんね。

「日本人は薬が好きなのでしょうか?」の点に関しましては、最近出版しました拙著に書いてあります。医者が作り出し、患者さんをそのようにし向けてきたのだと思っています。

「交流」の件ですが、正常な医薬分業をしようという意志を持った人が医師会会長にならなければ難しいかも知れませんね。ところが、逆に保守的なお方がトップにおさまることがほとんどです。医師会との交流からいい医薬分業が生まれるかに関しては私は懐疑的です。長年医者に分業を勧めて来ましたが、その経験からそれは「無駄な努力」かも知れないと悟り、今は患者さんのほうから、良い分業を推進したいと考えています。今回患者向けの本を出版したのはそのような意図からです。


小島勝彦


最近、日本医師会は門内薬局を認めてもらおうと動き出すようなことを記事で読みました。これに対し、先生はどうお考えになりますか?投薬も医師ができるという例外条項を作って、分業は全く進みませんでした。10年ほど前から、経済的にメリット、デメリットを作って、やっと全国平均30%位になりましたが、ここへ来て、門内薬局制度を持ち出すなんて、医師会は全く悪知恵に長けていますね。この動きどうしても、つぶしたいと思いますが、患者のためと言うことを考えるとそれもいいのでしょうか?全くこの世はおもしろいですね・・・先生のお考えをお聞かせ下さい。

吉田均


小島勝彦 さん、こんにちは。 日経ドラッグインフォメーション最新号に門内薬局を特集しています。そこに私の意見も載っていますので是非お読みください。又当HPの「日本医事新報の意図が見えてきた。」にもこのことを書きました。ご参考にしてください。ではよろしく。 

小島勝彦


日経ドラッグインフォーメーションを読みました。分業に対する先生の揺るぎないお考えを行間に感じ、私達薬剤師は心強いと思いますし、先生の期待を裏切るようなことをしてはならないと思いました。自分たちのためでなく、国民のために、正しい分業を進めていかないとと意を強くしました。県薬のレベルでもっと勉強をし、アピールも必要ですよね。先生もお体に留意され、診療などにがんばって下さい。(2000/7/10)


2)調剤薬局のダブルチェック伝説は、眉唾ではなかろうかという疑問が・・・

江野川義文


お久し振りです。ここ二三日の間に、調剤薬局の医療ミスが世間を騒がせています。もちろん、病院の医療ミスは枚挙に暇がありません。やっと、情報公開が当たり前になってきたようです。ただ、まだまだ法曹の質は低く、まともな裁判は地裁レベルでは望めないというのが、現実のようです。話が逸れましたので本題に戻しましょう。調剤薬局のミスが相次いで明らかになり、多分、調剤薬局のミスも枚挙に暇が無いのが現実ではなかろうかということです。調剤薬局のダブルチェック伝説(敢えて神話とまではいいませんが)は、眉唾ではなかろうかという疑問がふつふつと私の中に湧いてきました。先生はいかがお考えでしょうか。この文面を先生のサイトに公開していただいて今後の議論のきっかけにしていただければ幸いです。

  1. 川崎市の調剤薬局がセルテクトドライシロップの処方箋でセレネースを調剤してしまい、それを服用した子供8人全員に副作用が出現し、5人が入院した。
  2. 会津若松市の調剤薬局がアレビアチンを処方箋の10倍量調剤してしまい、服用した女児が昏睡に陥った。
求む!ご意見
吉田均

「薬局のダブルチェック機能は伝説にすぎないのでは」という内容のメールです。薬剤師は薬のリスクマネージャーと自認されている方も多いかと思います。その肝心の薬剤師がミスをしていては反論できません。しかも、アレビアチンの10倍量調剤は私の知っているだけでも5件もあります。学習効果が見えません。アレビアチンは原末等の発売は中止して、10倍散のみにするしかないのではないか。私はそのように思っています。

3)名センターのたった一度のミスをピッチャーは責めるのか?

JOY(薬剤師)


本当に残念なことであります。医薬分業がまだまだ過渡期にある今,薬剤師はもっともっと気を引き締めてがんばらないといけないと思っています。

薬剤師によるダブルチェックというのは医師の処方内容に対するものであって,薬剤師自身のエラー(セルテクトとセレネース取り違え)は,入っていないものであろうと思います。薬剤師は自分たちで薬を集めた人と出す人を別にしたり,薬の充填のときは他の人に見てもらったりとかそういう努力をしてるものだと思いいますが,急激な分業の進展によって質の悪い薬局が中にはあるということも否定できません。でもこのエラーは,薬剤師が関与していない場合でも起こりえる,いやむしろ責任のない事務員等がしていたらなお起こりえるものではなかったかと思うのはいいわけでしょうか?

仮定の話としてこのメールの方が正しく処方をお書きになって薬局側がミスしたのなら医師にはまったく法律上の責任はないが,もし,自分の医院ないで看護婦なり事務員になりさせていたならば,法律上そうとうな責任を追及されるケースであり,それだけでも医薬分業は意味があることではないのかと思います。

アレビアチンのことですが先日の事故のニュース後も,ある医師(大学病院では助教授)の処方箋が来まして,アレビアチン 1.0 が1日量でした。その前まではアレビアチン 0.15 だったんですね。

薬価にはアレビアチン(原末),アレビアチン細粒97% アレビアチン10倍散があること,今まで処方箋にはアレビアチンの表記だけだったのでアレビアチンで今までは秤量していたこと,しかし,製造中止になり薬局にはすでにないこと,アレビアチン細粒の1種しか置いていないことを伝え,アレビアチン細粒0.1となりました。

医師は看護婦や薬剤師から指摘を受けるが,看護婦などは実行者なので,過誤の当事者になり易いというのがFCASEでありました。同感だと思います。私は11月から今に至る時点で,重要な問い合わせで禁忌となっている例に処方されている薬を2例変更,他院で同種同効薬を重複投与されていて薬を削除が1例,小児科への過量投与で量の変更一例,少量投与で量の変更を1例。今言った大人へのアレビアチン過量投与1例を経験しています。

その間に自分自身のムコダインの過量な秤量ミスが1例です。次の日に気がついて取り替えてきました。私自身のエラーよりも,私が処方箋上の疑義を見逃していたら患者自身の病状悪化や有害反応,薬の効果不足など考えられるケースが多いのです。私はFCASEで書きましたが,ピッチャーの牽制球にカバーにセカンド,ショートが入らなかった,バックアップに入ったセンターがまたトンネルをしたとして失点してしまった。センターが一番悪いのは確かです。センターは体を張って胸にぶつけてでも後ろにそらさない義務があるのにそらしてしまった。それが一番悪いんですが,センターだけが悪いのかという話です。いままでどんなファインプレーでチームを救ってきたとしてもそのエラーでセンターをピッチャーは責めるのか?という話です。(2000/11/18)

注:このご意見の出典は@nifty FDRUGです。ご本人及びFDRUGシスオペのご了解は得ております。ありがとうございました。


4)患者の目が肥えると医療のレベルが向上する・・・

浜田 直樹

はじめまして、浜田と申します。 普段はコンピューターの仕事をしている者ですが、最近、口蓋扁桃の摘出のため入院したのをきっかけに医療に関する様々な問題に興味を持つようになりました。インターネットを検索していてそちらのページにたどり着いたしだいです。医薬分業のメリットについての丁寧なご説明はとてもわかりやすく、患者の立場から見てとても納得できるものでした。釈迦に説法かもしれませんが、お礼のかわりに私自身の経験をお話ししたいと思います。


数年前までかかりつけだった病院では、院内薬局で薬を渡す際に「1日3回、食後に飲んでおいてくださいね」程度の注意がある程度で、副作用はおろか、どういった薬が出ているのかも説明はありませんでした。そこで、市販の解説書を見て副作用を確認するのが常でした。

その後、転居して行くようになった病院では、処方箋を発行してくれます。自然と、自宅の近くにかかりつけの薬局ができました。はじめて薬を出してもらっておどろいたのは、ひとつひとつの薬について口頭で丁寧な説明があったばかりでなく、効き目や副作用、疑問があるときの連絡先などをまとめた説明書を薬とともにもらったことです。「医薬分業でこんなにサービスがよくなるものか」と嬉しい驚きでした。入院までの数ヵ月はひんぱんに受診していましたが、顔見知りになった薬剤師に「あ、前回は抗生物質も出てましたが今回は消炎剤だけになったんですね、症状軽くなってきましたか?」などと声をかけてもらい、「チェック体制が機能しているんだな」と、とても心強く感じました。


ところが、入院してみると院内薬局の世界に逆戻りです。どういった薬が出ているのか、いつからどのように服用するのかがはっきりせず、ナースに聞いてもわからない、医師に問い合わせてもらって回答を得たときには服薬の時間をすぎていた、といったことがありました。患者として大切にしてもらっている、という感覚は常にありましたし、スタッフは皆明るく熱意のある人々でした。そういったなかで数少ない不満のひとつが薬関連でした。入院4日目にはようやく病室に薬剤師の来訪を受けましたが、結局、知りたいことはあらかた調べたあとでした。

院外薬局のサービスを受けたことがなければ、こういった院内薬局のありかたも当然のように受け入れていたかもしれません。しかし、ひとたび院外薬局のサービスに慣れてしまうと、貧弱なサービスでは満足できなくなり、院内薬局にも院外薬局並みのサービスを提供してほしい、と入院中つよく感じました。(このことは次回の受診時に伝えようと思うのですが、そういえば院内の薬局がどこにあるのかすら把握していませんでした)こうやって患者の目が肥えることにより医師や病院への要求水準がたかまり、結果として医療のレベルが向上する、という結果につながるのはまちがいないことと思います。

クリティカルなケースではありませんが、医薬分業のメリットを患者として感じることができた、ということをお伝えしたく駄文ながらお送りするしだいです。もし、拙文でお役に立てることがありましたら何なりとご利用ください。今後のさらなるご活躍を期待しております。(2000/11/23)


5)調剤ミスと処方のダブルチェックは別物。

転職薬剤師


今回の江野川氏の指摘している点は、調剤ミスについてです。薬を取り違えたなどというミスです。このようなミスは、院内、院外に限らず、昔からあったことですし、これからも頻度の低下はあってもなくなることはないでしょう。うっかりミスとか気の緩みがミスの原因です。 

 ただ、このようなうっかりミスと医薬分業におけるダブルチェック機能不全をいっしょに考えるのはどうかと思います。医薬分業のダブルチェックとは、医師の処方が適正かどうかのチェックです。そのチェックにより、処方が変更になる場合もあります。その処方変更により、重大な副作用が回避されたとしても、ニュースとして報道はされません。それに、薬剤師は、処方医の名誉を考えて、患者さんにも、処方医のミスについて伝えることは控えています。しかし、薬の取り違えミスを少なくする努力は、今後とも必要ですし、処方せんのチェックが十分にできる薬剤師を多く誕生させることも必要です。 

私からの江野川氏への要望は、薬剤師にもピンからキリまでいるということを知っていただきたいと思います。そして、処方せんを渡された患者さんには、信頼のおける薬剤師をご紹介していただくようお願い申し上げます。(2000/12/1)


6)患者さんの為に戦えないのなら、薬剤師の存在価値はゼロ。

ひげの薬剤師


先生、ご無沙汰しています。いやぁ、連日の医療事故報道。びっくりしていますが、まだまだ氷山の一角でしょう。調剤薬局でのミスも、いくつか報道されましたが、まぁ、「あって不思議じゃない」ミスでした。起こるべくして、起こってしまった・・って感じ。と言うことは、防ぎようも必ずあったはず。薬剤師の責任は重大です。院内での「抗ガン剤」投与に関するミスについても、薬剤師の責任は、もっとクローズアップされるべきだと思います。最低でも、医師と同じだけの責任は問われるべきでしょう。医師の処方に「ストップ」を掛けられるのは、薬剤師だけなのです。命に関する最後の砦です。もっと、もっと、疑義照会をしましょう。必要があれば、患者さんの為に戦いましょう。それができないのなら、薬剤師の存在価値はゼロ。今こそ、薬剤師は「存在価値」を世間にアピールするチャンスだと思います。調剤を離れて半年。また、戦闘意欲が涌いてきました。(2000/12/5)


7)薬剤師は一体何をしてたんや!

薬剤師のサンタクロース

初めまして。大阪で4年強、病院薬剤師として働き、院外処方箋を発行することになったためそこの門前に作られた調剤薬局に勤めてもうすぐ2年になります。

分業を始めた当時、「料金が高い」「どうして二重に支払わなければならないのか!」などお叱りをうけることも多々ありました。最近では自分の服用するおクスリに対して“よく理解したい”という患者さんが増え副作用のこともきちんと説明して欲しいというかたが多くなりました。正しい知識を身に付けておかないと…と最近つくづく実感しています。クスリの作用、副作用から常用量、薬効など。。。

最近医療事故が増えている中、ことクスリのことに関しては薬剤師にも、もっと責任を感じてもらいたい、と思ってます。医師の処方ミスにより「サクシゾン」のところ「サクシン」が投与されてしまった。。。という事例では医師に多大な責任があるように報道されてますが、処方→患者さんに投与されるまで、医師→薬剤師→看護婦と3段階のチェック機構があるにもかかわらず、クスリのプロであるはずの薬剤師が処方のままに作って通してしまうなんて…大病院だとたくさんの患者さんの病状までは把握するのは難しいとは思いますが、「どうしてこのクスリが…?」という疑問を持てなかったのかな…と思います。

クスリはお菓子でも何でもないのです。レシピ(処方箋)のまま作ればそれでよいのではなくて、装置瓶に小分けにするときにも、それはただの小麦粉ではなくクスリなのです。私を含めて薬剤師はもっとプロフェッショナルである、という意識をもたなければ今後このような事故は減らないと思います。ニュースを見るたび「薬剤師は一体何をしてたんや!」といつも、もどかしく思ってました。なんか愚痴のようになってしまって、スミマセン。。。(2000/12/13)