全国から寄せられたご意見、ご感想(16)

全国の読者から貴重なメールが届きました。その中の一節です。フィリードリッヒ2世(神聖ローマ帝国皇帝)の発した5箇条の法令の1『医師は薬局と関連のあるいかなる事業をも経営してはならないし,いかなる薬局をも医師の保護のもとに置いてはならない。また医師は薬局といかなる金銭的な契約を結んでもならないし,薬局を経営してはならない。』その2『政府によって任命された監督官が,薬局で調製された薬剤が法にしたがってつくられたものであることを調べる。もし薬剤師が法を犯していたら財産を没収。監督官が違反を見逃したり,悪事に荷担したときは死刑とする。』となっているそうです。「薬剤師の財産没収」「監督官の死刑」とはとても厳しい掟ですね。ここでいう監督官とは今の日本でいえば「お役人」ということになるのでしょうか?薬を扱う者にここまでの厳しさを課さなければどのようなことが起きるか、中世の為政者には賢い知恵と先見性があったようです。750年後の日本でそれが証明されました。





1)医薬分業は、医療という車を快適に走らせるためのブレーキのような安全装置・・・

一薬剤師会に勤務する久保田眞矢(薬剤師)


この度は、学術大会特別講演の講師をお願い致しましたところ、快くお引き受け下さり、誠にありがとうございます。 以前より、有名な先生のページを拝見させていただいておりましたが、この機会にすべてを印字して再読させていただきました。多くの面分業批判に対する先生の過激な(?)反論を拝読させていただいて、医薬分業の本質を鋭く捉えていらっしゃることに、感銘いたしました。

医薬分業というと、国の施策や医療の現状に基づく目先の議論や現場の議論が多く、薬剤師の間でもほとんどそのような認識しかないのが現状です。そのような中、医薬分業は薬の安全性を確保するシステムだと捉え、医薬分業の本質を突いた高所からのお考えを展開されている先生に、深く敬意を表する次第です。

服薬指導や薬歴管理など、それ自体は医薬分業のシステムの中で有効に動くメリットの一つですが、それが医薬分業の本質ではないはずです。どうも、医薬分業を「医療を改善する制度」として捉えている方が多いようですが、私は「医薬分業は然るべき制度」であり、改善ではなく改革なのだと思っております。

医薬分業は、医療という車を快適に走らせるための補助装置ではなく、ブレーキでありエアバッグのような安全装置だと思います。まだまだ不完全なものですから、ブレーキの利きも悪いですし、キーッと異音を発したりします。エアバッグも必要のないときに暴発したり爆発が強すぎて搭乗者自身に危害を与えてしまうこともあります。しかし、だからといってそれらが必要ないわけではなく、改良を加えて行くべきものだと思います。

私がかってお話をさせていただいた医師や薬剤師は、ご自分の範囲で、ご自分の診療行為や調剤業務との関連で、処方せん発行や医薬分業を捉えてご意見を述べらた方が多いようです。しかし、先生は、患者の立場から医薬分業を考えていらっしゃる。先生もおっしゃるように、「二度手間だから」、「患者負担が増えるから」、「医師と薬剤師の説明が異なり混乱するから」などは、家父長主義に基づいた押し付けの「患者のため」であり、患者の視点から見た「患者のため」ではないでしょう。

車のブレーキは、エンジンの状態を気にしながら遠慮がちに作動するのではなく、搭乗者の安全のために、急ブレーキが必要なら、エンジンがどのような状態であろうとも作動すべきです。マンツーマン分業、門前分業では、やはりエンジンばかり気にして、搭乗者のことは二の次になってしまうでしょうね。

さて、特別講演でどのようなお話をご依頼申し上げるのかということに戻ります。今までも、医師を招いて医薬分業のお話を戴く機会がありましたが、「仲良く、一緒に、チーム医療で」という趣旨が多く、「より良い医療のために、お手伝いいただけるのはありがたいが、もっと病気や医療のことを勉強してもらいたい」というお話でした。そのため、薬剤師も、先生から「任された」からには、期待に沿って頑張らなければという感想を抱いているようです。 先生には、そのような内容ではなく、ホームページにも書かれていますように「薬剤師は医師の助手ではなく、独立したパートナーである。」という視点でのお話を希望します。そして先生のお考えになっていらっしゃる医薬分業の本質は、目的は、あり方はこうなんだという事を、お話いただければと思っております。ぜひ、薬剤師に「医薬分業」というものをお教え下さい。その上で、「20の批判への反論」などを展開いただき、さらにそのために薬剤師にはこうして欲しいという要請をお聞かせいただければと考えております。

本県の分業率は全国的に見ると、平均より少し上というあたりでしょうか。本県も例に漏れず、マンツーマンや門前が主体です。しかし、面への拡散も急速に進んでおり、先進地ほどではございませんが、面の薬局でも月に500〜1000枚ほどの処方せんを受け付けるところも出て参りました。また、昨年の10月のデータで、保険薬局の89%の薬局が処方せんを実際に受け付けるようになりました。現在では95%ほどになっているのではないかと思っております。 医薬分業バッシングの中、非常な危機感を抱いております。今までの処方せんを出していただくという分業推進活動から、患者さんのための医薬分業を社会にアピールできる活動に変えていく必要を感じております。薬剤師も頑張っているのですが、どうも方向性が違っているように感じます。そのためにも、医薬分業の原点と進むべき方向性を、先生にご教授いただきたく、謹んでお願い申し上げます。



2)医薬分業の原点は第3者によるチェック

一薬剤師会に勤務する久保田眞矢(薬剤師)

前回の意見とも言えない私の雑文を、先生の貴重なホームページに掲載して頂けるとのこと、大変光栄に存じます。このようなものでよろしければ、よろしくお願い致します。あのメールは、医薬分業の全てをご存知の吉田先生に読んで頂くためにしたためたものですので、舌足らずのところがございます。以下に、私の過激な医薬分業論の一部を書いてみましたので、併せてご紹介いただければ幸いです。

第二薬局(もう死語になっていますか?)はもとより門前薬局やマンツーマン分業、マンツーグループ分業などの是非について、私は次のように考えております。その前に、まず医薬分業というものは何を目的としたシステムなのか、私なりの考えをまとめてみます。

医薬分業の原点は、薬剤師の大憲章(フリードリッヒ2世,シチリア,1240年)の中にあると思います。

  1. 医師と薬剤師に免許を与えるとともに,医師は医療のみを行い,薬は薬局に置くこととする。医師は薬局と関連のあるいかなる事業をも経営してはならないし,いかなる薬局をも医師の保護のもとに置いてはならない。また医師は薬局といかなる金銭的な契約を結んでもならないし,薬局を経営してはならない。
  2. 政府によって任命された監督官が,薬局で調製された薬剤が法にしたがってつくられたものであることを調べる。もし薬剤師が法を犯していたら財産を没収。監督官が違反を見逃したり,悪事に荷担したときは死刑とする。
  3. 強度の一定した,効き目の確かな薬剤を調製することを宣誓する義務を負わせる。
  4. 薬局の数を定めて,国内に適切に分布するようにし,特定の地域に集中しないようにする。
  5. 薬価は政府が定める。


このような規制が作られたのは、薬という物のいやらしさ(薬であるとともに毒であること、ただの物質なのに薬効があるという情報を付加するだけで暴利を産むこと、素人には評価や鑑別が一切できないこと等)を、当時の為政者が知っていたためだということです。そのため、薬を市場から隔離し、チェック機構をもった管理体制の檻の中に置いたのだそうです。(薬のプロフェッション:水野睦郎、薬事日報社、 1989、を参考)

通常、物を購入する決定権は消費者にありますが、こと医療においては、消費者が購入する薬を決めることは出来ません。消費者である患者にどの薬を購入させるか、その決定権は医師にあります。 決定権者である医師に、薬の販売権まで与えたのでは、つんぼ桟敷に置かれた消費者は、何をどんな値段で売られても分からないことになります。例えば、毒薬を高価な価格で売られて、それを飲んで死んだとしても、それはその医師のみぞ知るところです。

そのような時のために第3者によるチェックとして作られたものが、医薬分業システムではないでしょうか。当時と現在とでは医療環境も薬の形態も異なりますが、今でもそのような恐れがないとは言いい切れません。 病んでいる患者を救うための処方という神聖な行為を、そのような薬のいやらしい性質から分離させるシステム、医療と医薬品の販売(供給といった方が格好がいいですが)を分離させるシステムが、医薬分業であるとは考えられないでしょうか。薬価差益や在庫などの雑念に捕われず、患者にとって最適な薬を自由に処方できるシステム、それが医薬分業です。

このような観点からすると、シートベルト着用が、社会的安全性の確保のために法律で義務付けられているように、医薬分業も社会的な安全性確保のシステムとして義務づけられるべきものであって、患者の希望や医師の考えによって決められるものではないように思います。 それがあったからこそ、薬剤師が1人もいない状況にも拘わらず、明治政府は西洋医学、西洋薬の導入と同時に医薬分業システムも輸入し、明治7年の医制を公布したのではないでしょうか。(その後は、医師と薬剤師の利権争いの中で、制度はあっても実施はされなかった)

ところが、現在の医薬分業是非論は、医薬分業の本質を語ることなく、その副次的な効果(経済性や利便性、サービスの過多など)ばかり議論されているように思います。 シートベルトは、平常時の快適性や経済性を云々するものではなく、あってはならない事故が起きた時の安全性として語るべきものです。シートベルトは、それだけで全ての事故から命を守ることは出来ませんが、エアバッグとの併用などによってより有効性が高められ、また自動巻き取り式や緊急時ロック方式などによって、装着性や快適性も高められて行くものです。 医薬分業も、それだけで全ての安全性を確保することはできませんが、他の制度との併用で有効性が増すものと思われますし、薬歴管理や服薬指導によってサービス性も付加されていくものだと思います。

 話が変な方に飛んでしまいましたが、この安全装置としての医薬分業が有効に作動するためには、医師が薬を販売しないだけでなく、販売する薬局との間で何等繋がりがあってもいけません。 医薬分業における安全装置の一つとして疑義照会がありますが、経済的に特定の医療機関からの処方せんに頼っている門前薬局やマンツーマン薬局の場合、疑義照会に何等かの(処方せんが出なくならない方向の)意図が働く可能性は否定できません。処方する医師と調剤する薬剤師との間で、感情を左右する個人的な繋がりあった場合も、(調剤ミスを医師がカバーするなどの)影響を受けるでしょう。これらは、例え強制分業になったとしても現れる可能性はあります。 以上のような点から、医薬分業の精神(機能)にもとづけば、特定の医療機関の処方せんによって、その薬局の存続が左右される、門前やマンツーマン分業は、否定されるものと考えます。

上記のことの他にも、「医療という密室から、処方せんという間接的な手段を用いて、情報を公開する」という消費者の知る権利の確保や、「調剤してもらう薬局を選択したり、処方せんを破り捨てる」という消費者の選択権の確保も、医薬分業の目的としてあるように思いますが、今回のテーマには直接的な関連は少ないので触れないことにします。

 しかし、理屈でそうは言っても、現実的には患者の意志による任意分業(?)で動いておりますし、消費者、医療関係者、行政、保険者、マスコミなども、医薬分業の副次的効果を期待しておりますので、私も、「医薬分業を通して薬剤師は、薬局は何を出来るのか」という前向きの姿勢で、考えて行きたいと思っております。 また、現実論から言えば、立地的には門前薬局であっても立派にかかりつけ薬局として機能しているところもありますので、本県では、それらも含めて面の薬局を構成するというスタンスで、活動を行なっております。 要は、医薬分業というシステムが問題なのではなく、医療の中に営利を持ち込まないという医療関係者の意識と、患者自身が望むよりよい医療を提供するという姿勢が重要ではないかと考えております。

先生に早くお会いして、直接お話を伺うことを楽しみにしております。 長かった梅雨も空け、暑さが厳しくなっておりますので、くれぐれもご自愛下さいませ。



3)「医薬分業はこんなに役に立つ・・」と


ひげの薬剤師


先生、こんばんは。暑中お見舞い申し上げます。いやぁ、暑いですね。連日の猛暑のように、「薬剤師パワー」も今、盛り上がらなければ・・。今日、薬局の待合室に「お薬相談タイム」実施のポスターを貼りました。日付と時間、限定ですが、まずは患者さんにPRしてみます。そこでは、遠慮なく「セカンドオピニオン」発揮するつもりです。薬剤師としての「最高のパフォーマンス」見てもらいたいです。薬剤師の利用価値を患者さんに知って欲しい。「医薬分業はこんなに役に立つ・・」と思って欲しい。患者さんの「本当のニーズ」を知りたい。頑張ってみます。また、報告します。 



4)薬の作用・副作用などを薬歴簿に書き出して、すべてを覚え・・・

BMW

すべて読みました。大変おもしろく2日間をかけどこまで続くのだろうという不安も混じりながら、おもしろさのあまり最後まできました。しかし、残念なのは、OTC主体の調剤を受けている薬局の意見がなかったように思います。また僻地における分業のあり方などを述べる方もいなかったのが残念です。

私は、人口14000名ほどの小さな町で薬局を開設している薬剤師ですが、処方枚数も(当町に分業をしている医院がいないため処方枚数は月150枚程度!備蓄品目は、(広域医療圏のため)600種類を越えています。幸い遠くにある(50キロ)備蓄センターより1錠単位で薬品を取り寄せできるため備蓄金額は少なくてすむので助かっていますが欠品したときなどは大変です。以前は、1日2回50キロを往復する事もあり、何のために仕事をしているのかさえ解らないような時期もありました。しかし、これから来るであろう分業の時代のために苦しくともと思いがんばり、今ではほとんどそのようなことはなくなりました。

私の現状はこんなところですが、基本的に面分業賛成派です。様々な先生方のご意見を読んでいる中で薬剤師の能力のことが一番気にかかりました。実際薬剤師は大学で医療を学びません!この医療を学ばない薬剤師が医師にあれこれいうのはどうかと思います。しかしそれではどうしようもありません。私は、薬剤師になってからOTC専門でやってきました。病院の薬を知りませんでした。服薬指導などできるものではありませんでした。しかし、患者さんの薬の成分・作用・副作用・相互作用・などを今日の治療薬の本などからすべて薬歴簿に調べ書き出しています。すべての患者さんに対して行っています。同じ薬であっても書き出しておきます。何度も書いているうちに自然とすべてを覚えるようになりました。新しくできた副作用情報なども書き足すようにしています。調剤を始めてから5年近くたちましたが、やっと医師にしっかりした疑義紹介ができるようになってきました。何度か会ったことのある医師からは、薬の相談も受けることができるようになり、臨床結果からこの薬はいかがですかなどといえることもありました。

分業反対の医師の方に:町の小さな薬局の薬剤師も勉強しています。もっと薬剤師を信用してください。

医療費の増加について:私の考え方は、良い医療は、病気を治すことではなく、病気にならないことが一番と考えているため、医師にはなかなかできない健康指導を中心に考えています。病気にならなければ医療費は自然に減るはずです。病気にならない医療を考える!このことを論じている方がいなかったのも残念です。

患者を信用しすぎる医師:医師を信用する患者・患者を信用する医師・この2面性を考えてください。患者は、平気でうそをつきます。医師の前で患者は「良い患者を演じます」。医師は、自分の患者と思っていることが多いようですが、患者にとって医師は一人ではなく、そのことを医師にはいいません。また、OTCを買いに来られたお客様(患者)が、医師の前で「A薬局でこの薬を買わされた。」といいます。買った(自分の意志で)・・買わされた(売りつけられた)、 この違いは重要なことがあります。

また近々HPに訪問させていただきます。(99/7/29)


5)久保田眞矢氏のメール拝見して

かけもちパート薬剤師M(福岡)


こんにちは。 久保田眞矢氏のメール拝見致しました。そしてどうして分業なのか、私の中でくすぶり続けていたことの答えが出たような気がしました。今まで私は6ヶ所ほどのマンツーマン薬局で働いてきましたが、久保田氏のメールを読んでやっと分業、それも面分業は患者さんのために当然しなくてはいけない制度であると確信できました。

私は今まで、Drの医療行為によるものではなく薬価差益によって儲けることのいやらしさを、またそれを平然としているDr に対して嫌悪感すら感じておりました。 また私だけでなく患者さんの中にも、必要のない薬を儲けるために出していると不信感をあらわにし、「この薬は飲まない」と言われる方々もいらっしゃいます。 今のままではDrが患者さんから信頼される医療ができなくなりはしないでしょうか。

利権争いをしている場合ではないと思うのです。  Dr の皆さん、いつもいつもノアの箱舟の特等席を確保するのではなく、薬剤師に手を差し伸べてください。 もちろん患者さんのためにです。 さもなくば舟もろとも沈没してしまうかもしれません。今こそ、薬剤師のみならずDrも日本のより良き医療制度の確立のために、面分業を是非進めていかなければならない時ではないでしょうか…?


6)「言っちゃいけないこと」が「本当は言いたいこと」


ひげの薬剤師


テレビの取材、頑張って下さい。ぜひ「医薬分業」サポーターが増えますように・・。一般市民のみなさんにも「本当のことをちゃんと」伝えれば、絶対ご理解いただけるはずだと考えています。今の「日本薬剤師会」のスタンスは、どうも「某団体」に遠慮していると感じます。だから「分業」をPRしようとしても説得力がない。「言っちゃいけないこと」が「本当は言いたいこと」・・って感じです。だから、私たち「街の薬剤師」のストレスはたまる一方・・。まあ、当面は一人一人の患者さんを「自分の薬局」のサポーターにするしかないですね。頑張ります。いつか、どこかで「先生の生のお話」を聞きたいと思います。また、メールします。




7)すごいことだと思います。


放射線技師の卵


私は医師でも薬剤師でもなく、そのうち診療放射線技師になる学生です。医療の現場ではさまざまな難しいことが山積している事を病院実習でわかりました。病院で働くそれぞれの立場での問題に、こうやって議論を交し合うのはとてもすごいことで、私の理想とする医療従事者の姿です。いい事も悪いこともインターネット上で議論を交し合うことは一般の人にも現状をわかってもらえるいい機会だと思います。医薬分業の話は私の専門ではないので意見とかはないですが、将来(といっても来年ですが)現場で働いた時に自分の立場での意見などをしっかり伝えていい医療活動をしたいと改めて感じさせられました。(99/8/26)


8)門前のドクターよりクレーム


ひげの薬剤師


先生、こんばんは。今日、門前のドクターより服薬指導について、クレームがありました。こういう事のようです。患者に「診察は受けましたか・・」と聞くな。患者が「薬局でもっと効く薬がある・・」と言われた、と言っている。これは薬局としての行為を逸脱しているので、何とかしろ・・と。

薬局としての「服薬指導についての考え方」をレポートにして医師に届けました。内容は以下のようなものです。

薬局としては「患者さんが主人公」というスタンスで業務している。漫然と通院を続けている患者さんに対して、治療に対する前向きな姿勢を持って欲しい・・という観点から、「診察うけてますか」という問いかけをしている・・と。「自覚症状のない生活習慣病」「喘息」「事故・労災」などの患者にみられる「マンネリ化した姿勢」「あきらめ気味の姿勢」。こういう患者さんには、もう一度「治療の主役は自分だ」という考え方を持って欲しい・・、と。自分の事だから「医師に遠慮する必要はない」「言いたいことは言えばいい」

日頃から、患者さんには不安を与える事のないよう、十分気を配っているつもりです。「もっと効く薬が・・」なんて事は言いませんよ。ただ患者さんが「痛みが取れない」「眠れない」・・って言えば「医師に相談して、違う薬も考えてもらったら。薬の種類はたくさんあるから・・」ってことになりますよね。私は「患者さんのため」という目標に向かって、仕事をしたいだけです。目的を「ここ」だけに絞れば、医師とも「全然違うベクトル」ってことはないはずだと信じています。現実には「門前の医師」とのギャップは大きいようですが・・。明日も、あさっても戦いますよ。


返信
吉田均

メール拝見しました。

私はホームページで「薬剤師は医師の助手ではない。」「薬剤師は患者の立場で服薬指導すべきである。」「薬剤師は患者のためにあえて医師と対決しなければならない場合もある。」などと主張しております。しかし、現実的にはこれを実行できる薬剤師はごく少数であろうと考えておりました。今回のメールで、私の主張を調剤の現場で実行されていらっしゃることを知り、感激いたしました。私がホームページで求めている理想の薬剤師像をまさに体現されているということです。心から敬意を表します。これを実行するには、薬剤のプロであるという自信の他に、ものに動じない心と勇気が必要ですね。保身的姿勢ではとてもできないことです。

一般的に申しますと医者は他の職種に比べますとプライドが高すぎる傾向があり、他人からの批判になれていません。したがって、「患者さんのためにの行為」は初めは「反発」を持って受け取られるでしょう。しかし、それによって病気の治癒を早めることになれば、患者さんから喜ばれ、まわり回って処方医のためにもなるわけです。賢いドクターであればそこのところはいずれ理解してくれるはずです。そして、最後には良きパートナーを持ったことに感謝するはずです。

とはいえ、多くの医者にとって「薬剤師は対等の立場のパートナー」との認識は薄いのが現状です。残念ながら意識変革が遅れているということですね。したがって、「患者のためにもの申す」を押し進めるには多少の時間と根気とテクニックが必要かと思います。いずれにしましても、今回のメールは薬剤師の従属意識に一石を投じる内容です。全国の薬剤師に「大いなる刺激」となるはずです。(99/8/28)



9)ごまめの歯ぎしり

自然派薬剤師


吉田先生はじめまして。私は大阪で薬剤師をしています。友人から先生のホームページを教えてもらい読ませていただきました。医師側、薬剤師側どちらかに偏ることなく、真に国民のための医療を目指している姿に感激しました。

医事新報の特集「医薬分業にメリットはあるか」を読みました。以前からそのように思ってはいましたが、やはり大抵の医師はコストと手間を盾に分業に反対のようですね。この辺りの理屈は、医療に限らず日本中いたるところにある基本的な考え方なのでしょうか?分業に反対の意見を読むと企業が起こした過去の公害や薬害を思い出さずにはいられません。これらも経済性や利便性を追求した結果だったように思います。特に医療においては吉田先生がいつも書かれているように安全性を第一に優先させるべきです。経済性(患者負担)、利便性(二度手間)を追求して生命の存在(安全性)が危うくなれば、本末転倒です。そして、、もはや経済性、利便性の追求も無意味なこととなってしまいます。これは地球環境にも当てはまることですね。「経済のためなら」と地球の温暖化を容認すれば人類の生存さえ危うくなる・・・・。このように考えると医師の方々にも少しは理解してもらえるのではないかと考えています。

それとひとつ吉田先生に質問なのですが、医事新報に投書された医師の方々は投薬を院内にするか院外にするかの「決定権は我にあり」と思っておられるようですが、このページにも「無資格調剤」の件が載っていますが、法律を読むとその決定権は医師に無いように思われるのです。じつのところどうなのでしょうか?やはり医師の方々の大きな勘違いなのでしょうか?私は医師が診断・処方・調剤・そして死亡診断書まで、ひとりで出来てしまうところに恐ろしさを感じます。国民(患者)はそのことがあたり前のことと思っているのか、医師を信頼しきっているのか、あるいはお任せ医療に慣れきってしまったのか、どちらにせよ患者側から院外処方せんの発行をお願いするのはほとんど皆無だと思います。医療の透明性を確保し情報公開することは当然必要ですが、それが国民の声として出てくるように、医薬分業が患者側から要求されるような、そんな働きかけをしていきたいと思います。(99/9/14)


10)「日医の本性を見たり」といった感じ・・・


浪花の薬剤師


吉田均先生、ご無沙汰してります。

医薬分業を含め、医療を取り巻く状況の変化は相変わらず激しいものがあります。診療報酬に絡んだ日医の一連の分業バッシングには、業界紙などでその内容を読むたびに、非常に腹立たしい思いと、悔しい思いをしておりました。しかし、ここしばらくは、それも下火になったのか(?)、ホッとしております。とにかく、診療報酬の財源捻出という政治的な議論の道具に医薬分業を使う日医の手法には腹立たしく思います。非常に言葉は悪いですが、「日医の本性を見たり」といった感じです。

しかし、最近の議論の流れは医薬分業にとって厳しいものが多く、これまでにも色々なところで叫ばれてきたように、いよいよ、医薬分業のメリットを目に見える形、数字で示さなければならない時期に突入しています。そんな中で我々現場の薬剤師は、毎日毎日薬局で接する患者さんに対して、一生懸命調剤(計数・計量という狭義の調剤から服薬指導までの広義な意味での調剤)するしかありません。すなわち、分業のメリットを患者さんに肌で感じていただくしかありません。

ところで、日本医事新報のホームページ見ましたが、医師による医薬分業デメリットの数々のご意見、相変わらずワンパターンといった感じです。少々気になったのですが、後半に掲載されている薬剤師の意見の前に記載されている「薬剤師側の方々からも以下のようなご意見をいただきました。」という言葉、引っかかります。「薬剤師側」の「側」です。この「側」という言葉から推察すると、医事新報は最初から「医師」対「薬剤師」という図式、すなわち「分業反対」対「分業賛成」を意図していると取れるのですが、私の考え過ぎでしょうか?

ところで、医薬分業に関する本を出版されるとのこと、本当に先生の積極的なご活動には頭が下がります。楽しみにしております。では、また… (99/9/16)



11)全てにミリグラム数が書いてありません・・・


ひげの薬剤師


処方箋について、日頃から感じていることを聞いて下さい。医師は「処方箋の書き方」についてどのように考えているのでしょうか。今日、うちに来た「ある大病院」からの処方箋には、5種類以上の薬品が書いてありましたが、全てにミリグラム数が書いてありませんでした。おまけに用法も分1、分2・・のみ。これでは薬局は「お手上げ」です。こんな処方箋に限って「疑義照会」すると「患者に聞いてくれ」なんて言うんです。寂しい気持ちになります。ひどいと思いませんか。事細かに処方箋を書くのは大変なんでしょうね。でも、ちゃんと書いて欲しいです。この処方箋で、ちゃんと自分の思ったとおりの調剤が出来るのか・・、想像してみて欲しいと思います。患者が薬をちゃんと飲んで、ちゃんと治るまで・・医師と薬剤師には重大な責任があるはずなので・・。

コンピューターで事務員が打ち出した処方箋ってのも世間には多いようですが、これは「超」恐いです。何が起こっても不思議じゃない・・って感じ。入力ミスがあったとき、医師は「事務員の責任」だと言うのでしょうか。ぜひ、プリントアウトした処方箋には「ご自分の手」で印鑑を押して欲しい・・と思います。今夜は勢いで書いてしまいました。今後もよろしくお願いします。


返信
吉田均

その医者の個人的な資質かもしれませんが、処方箋の書き方をちゃんと教育してない可能性もあります。医者は一般に病気の診断に一番力を注ぎますので、その分、治療にきめ細かさが見られないことがあります。そして処方せんの書き方ばかりでなく、薬の効果がちゃんと出ているのか、あるいは副作用は大丈夫なのかなどのチェックが大ざっぱになっていることも・・・。副作用が出ても病気が悪化したと考え、更に薬を追加するなどは決して稀有なことではありません。薬について慎重さの欠ける医者は、疑義照会されると一般につっけんどんな答え方となります。・・・ちょっと悪く決めつけすぎましたか?


転記ミス。やはり「超」恐いですか?私も病院勤務時代に経験があります。ポララミン0.5mlを5mlと看護婦が転記ミス(手書き)しました。私のチェック無く、院内薬局でもそのまま調剤し、赤ちゃんは翌日寝てばかりで来院しました。幸いなことに点滴のみで回復しましたが・・・。薬のミスの恐ろしさを初めて実体験した例です。先日、他の方からいただいたメールでもテオドールをテグレトールと転記ミスし昏睡状態になったとのこと。語感が似ていて勘違いしやすいのでしょうか?(99/9/22)


12)驚くニュースがありました。


ヒダ薬局:飛田日出男(薬剤師 新潟県上越市)


吉田先生へお元気ですか、ご無沙汰でした。新潟のヒダです。昨日、驚くべき事件がありましたがご存じでしょうか?既に聞き及んでいると思いますが・・・。ニフティーのニュースからの転記ですが、メールします。

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埼玉県警吉川署は十五日までに、窃盗の疑いで同県三郷市彦川戸二ノ一○五、開業医野口明彦容疑者(47)を逮捕、送検した。  調べでは、野口容疑者は九月一日午前六時ごろ、同市彦川戸一丁目の薬局に侵入、店内から現金十万円の入った手提げ金庫と、耳鼻咽喉(いんこう)科で使用する薬約一万二千六百点(約四十五万円相当)を盗んだ疑い。                    

この薬局は六月まで、野口容疑者経営の耳鼻咽喉科の病院が処方する薬を調合、販売していた。薬局経営者や野口容疑者ら四人しか持っていない合いかぎが使われていたため同容疑者が浮上。病院の家宅捜索で、薬局からなくなった薬が見つかった。病院の患者に対し薬を使用していたとみられる。野口容疑者は犯行を否認している。同署が動機を調べている。 


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以上ですが、どうもこの内容から推測すると医薬分業の裏約束のもつれからの事件に感じられますが今後の調べに注目したいと思います。

合い鍵を持っていたということは日常薬局に自由に出入り出来るということで、マンツーマン分業をしていたと推測出来ます。薬局関係者以外に合い鍵など持っていることは考えられません。薬局は自分のモノという感覚がこの医師にあり、薬局のものは自分のモノという感覚があったのではないのか、こんな分業を野放しにしておかれて怒りがこみあげてきてしまいます。真相はまだわかりませんが非常に注目する事件でないでしょうか。(99/10/16)


13)今回辞めることにした薬局

薬局本来の仕事をしたい薬剤師


吉田 均 先生、こんばんわ、 今回辞めることになった薬局についてメールします。

その薬局は、平成10年2月に開局しました。診療所の門横薬局です。1日外来が、120人くらいから300人くらいで、1日平均は140人くらいです。開局当初は、管理薬剤師の私とオーナーの2人でした。

ご存じの通り薬局運営ガイドラインでは、「処方せん40枚につき薬剤師1名を配置すること」と明記されています。しかし、行政では員数規定の運用はかなりいい加減だと感じました。1年に1回でも勤務すれば、員数に入れられますので、オーナーは書類上は5軒のチェーン薬局に勤めていることになっています。しかし、今年度から行政も薬剤師数の定義をはっきりさせ、週32時間以上勤務している薬剤師を常勤薬剤師とすると通達を出しました。週16時間の勤務ですと、0.5人とカウントします。しかし、満たされていなくても罰則規定がないとオーナーは今後もそれを遵守しないでしょう。また、行政も「満たしてください。」といって帰るだけですので、オーナーにとっては、痛くも痒くもなんともないと思います。

その薬局では薬剤師2人でとても調剤できないので、7名の事務スタッフのうち2名(男性)は、実質、調剤助手専門で雇っている状態です。また、忙しいときには、残りの女性スタッフ5名も交代で調剤に加わります。勿論彼らは薬について全くの“しろうと”ですので、「無資格者の調剤」ということになり、法的には違法です。

そして、5月からは、ようやく女性で経験のある薬剤師(K先生)が就職しました。しかし、その時点で、オーナーは現場にほとんど顔を見せなくなりました。名義だけは残し、新たに開設できそうな医療機関の門前に薬局を作ろうと毎日東奔西走するためのようです。K先生は、”できる”薬剤師でしたので、薬局の運営も見た目には順調でした。ただし、この時点でも、薬剤師は、実質2名、名義だけのオーナー薬剤師を合わせても3名と必要人員の4名には達していませんでした。

ところが、おめでたいアクシデントが起こってしまいました。5月から就職されたK先生が、妊娠されていたのです。そのため、11月で産休に入られました。育児が一段落した時点で、元の薬局に復帰されればよかったのですが、今年の4月からは、オーナーが新たに作った薬局に行ってしまいました。もちろんK先生の名義はちゃんと薬局にも残っています。

12月からは、オーナーが週に1、2回様子を見に来てまたどこかへ行くという具合で、薬剤師は私1人という状態でした。1人のときは、さすがにきつかったです。といいますのは、病医院では、昼休み時間が設定されていますが、薬局の場合は、午前中の混雑時に処方せんだけあずけて、昼休み時間にお薬を取りに来られる患者さんがいらっしゃるため、ゆっくりと休憩できる日がありませんでした。

そうこうしているうちに、今年の5月から新人が来ることになりました。これで、薬剤師数は書類上は4人になりました。掲示板にも、薬剤師が4名もずらりと並んでいましたが、実質は1人プラス半人前1名の状態でした。新卒とはいえ1名薬剤師が増えたので、やっと、昼休憩が取れるようになり、ほっとしました。しかし、実際は思い通りになりませんでした。新人を教育しながらの投薬はそれまでより2 倍疲れたのです。もう、このころには、私も堪忍袋の緒が切れてしまい、こんなオーナーのために働く気は失せてしまい、ついに辞めようと決心したのです。

在職中は、先生のHPにて医薬分業に関していろいろ勉強させていただきました。 11月からは、他の県の薬局に勤務いたします。今後とも、ご指導ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。(99/10/20)