全国から寄せられたご意見、ご感想(15)


医者のある団体が、医療制度改革案の中で、来年の診療報酬改定財源項目として「調剤薬局報酬の縮減」を盛り込んでいるらしいですね。正直いってとても驚いています。健保組合からこの案が出たのならまだしも・・・・。なりふり構わずといった感じで、ちょっと見苦しい。貧する(?)といえども、まさかこんなことまで主張するとは・・・・。呆れました。その会員であることがとても恥ずかしくなってきました。これが事実でないことを祈るばかりです。だって他人の財布に、黙って手を差し込んで巻き上げたお金を自分の財布に入れようとするようなものですから・・・。しかも、それを法律によって正当化しようと・・・。穴があったら入りたいくらいです。そして同時にピンときました。日本医事新報の「医薬分業にメリットがあるか」の意見募集がなぜ今頃企画されたかが・・・・。(99/6/30)



1)「薬の安全性」は目に見えない商品です。


神明薬局:吉本泰司(埼玉県川越市、薬剤師)


吉田先生侍史

大変ご無沙汰しております。神明町薬局の吉本です。 先生のHPはいつも拝見させて頂いておりましたが、2年ほど前からアメリカへの留学を思い立ち、いろいろ準備を重ねておりましたのでお便りがご無沙汰しておりました。

ほとんどの調剤過誤は、服薬指導によって防げると思ってます。 どんなに忙しい時間帯でも、慢性疾患でいつも同じお薬の患者さんでも、必ず、服薬カウンターで、薬を監査済みの薬袋から取り出し、処方内容を一緒に確認していただき、疑問な点があれば、お互い納得するまでよくお話をお伺いする。 これだけのことだと思うのですが、いかがなものでしょうか?

もちろん、これだけで、100%完璧に予防できるわけではありません。 そのために、調剤済みの処方せんを必ずもう一度確認するようにしています。 確認といっても、特別なことをするわけではなく、調剤日誌をつけたり、レセコンを入力したり、薬歴を作成するなかで、調剤に関わった薬剤師自身が、調剤過誤に気がつけば、患者さんが服用する前に発見できる可能性が高まると思います。 そして発見された調剤過誤は、直ちに患者さんと、処方医に連絡し迅速に対応します。 今までの経験では、調剤後ただちに、薬剤師自身により発見された調剤過誤は、患者さん、処方医どちらの信頼もあまり損なわないように思いますが・・・。

調剤過誤の発生の可能性が高くなりそうなとき、私は、少し古い資料になりますが、「清水藤太郎先生の調剤規範」を再読して心を引き締めてから、調剤室に入るよう心がけております。 調剤過誤を患者さんからの申し出があるまで気がつかない薬局では、“「薬の安全性」を確保するための医薬分業”を患者さんに理解していただくことは困難だと思います。少し厳しすぎますでしょうか?

また、最近の分業バッシングは、医療費の中の調剤料の大幅な増加に比べ、患者さんたちの調剤薬局に対する満足度の低さが引き金の一つではないのでしょうか? 某医療団体の先生たちも、患者さんのニーズには敏感なはずです。 分業してないけど、処方せんを希望した患者さんにだけ発行している医療機関は結構ありませんか? 私は、自ら希望して、処方せんを発行して貰った、ベテランの患者さんを何人か受付させて頂きました。 そんな患者さん達が当たり前の時代がくれば・・・。 医薬分業の是非なんてとっくに過去の問題になっているでしょうね。

「薬の安全性」は目に見えない商品です。それを患者さんに納得して購入して頂くにはどうすればよいのか? 少なくとも、薬剤師が「薬の飲み方と薬効は紙に書いてあります。」といって薬を渡し続けている間は、「薬の安全性」どころか、患者さんにも、医師にも医薬分業の本当の必要性など理解して貰えないと思います。 この機会に、医療関係者だけでなく、患者さんも交えて「薬の安全性」の確保についてよく議論することが、必要だと感じてます。

先日の新聞で、某医療団体が、「調剤薬局報酬分の縮減」を診療報酬の財源にする。という記事を読みました。 そういう記事が大きく掲載されたり、また、どこからも「薬局は調剤報酬に見合った、いやそれ以上の仕事をしている。」という反発の意見がすぐに出ない事が、現在の医薬分業の実状を表しているのでしょうか?

吉田先生のHPもアクセスが増えてにぎやかになっているようですね。これからも、薬剤師以外の医師や患者さんからのアクセスももっと増えると良いなと思ってます。 先生の、ますますのご活躍をお祈りしております。(99/6/30)



返信
吉田均

こんにちは、おひさしぶりです。アメリカへの留学を計画されているとのこと、いいですねぇ、羨ましい限りです。そして、度胸もありますね。留学されましたらアメリカの方からもメール下さい。現地の薬局、薬剤師の状況も教えてください。

調剤過誤は服薬指導によって防げるとのこと、やはりそうですか。私の近所の病院で、(院内調剤ですが、)小児に抗アレルギー剤を出すべきところ、調剤ミスで高血圧の薬を出してしまいました。病院ということもあり服薬指導は全くなされていなかったようです。次の受診時に患者さん側から「薬が変わったのですね」と尋ねられ、初めて気づいたそうです。そして「副作用の心配はない」と言われましたが、病院に対する不信感がつのり、私の所に相談に見えました。ちゃんと薬の説明をしておればと悔やまれるケースですね。調剤過誤ばかりでなく処方ミスも服薬指導の時点で発見できる場合もあるのではないでしょうか。患者さんの症状と全く違う薬が処方されていた場合などに・・・・。

調剤過誤は全国の病院、薬局で日常的に起きていることだと思います。それを防ぐにはやはりダブルチェック、トリプルチェックしかありませんね。それと調剤時に考えごとをしてたり、何か心配ごとがあったりするとミスの確率が増えたりしますよね。「清水藤太郎先生の調剤規範規範」にどのようなことが書かれているのか、とても興味があります。そんなに長いものでなければぜひ教えてください。当HPにも掲載したいと思いますので・・・。

某医療団体が調剤薬局の診療報酬を削減し、それを病医院側の診療報酬の財源にするよう提案しているとの記事、私も読みました。業界エゴ丸出しですね。私もその団体の一員ですが、よくこんなことが恥ずかしげもなく、堂々と言えるものだと思います。自分たちがしている無駄な医療については何の反省もなく、自分の懐の痛まないことであれば何でもごり押ししようとする、本当に情けないですね。


2)「医者と戦う姿勢」だって必要でしょう・・・


サラリーマン薬局長



先生、こんばんは・・。

ある日の薬局での会話

「最近、状態はどうですか?」「ぜんぜん変わらないね。」「今日診察受けましたか?」 「受けてない。受けても変わらないもの。」「先生に言って、違う薬にしてもらったら・・・。」「うーん。」

こんな会話、私の薬局では珍しくありません。正直言えば、もう一歩踏み込んで、「違う病院にも、行ってみたら・・」と言いたいことが、しょっちゅうです。それが言えないところが「門前の限界」ですかね。情けないことです。せめて、患者さんが「自分で自分の病気を考える」きっかけを作ってあげたいと思ってます。

話は変わりますが、薬剤師の中には、医者とうまくコミュニケーションをとるためのテクニックを重要視する人がいますね。「医者は、忙しいんだから・・」「疑義照会はこういう言葉遣いで・・」なんて事を、平気でおっしゃる。処方箋の不備だって「医者は忙しいんだから・・」

だけど、ちょっと違うんじゃないか・・って思います。そりゃあ、人間関係だから「礼儀は大事」に決まってます。失礼があっちゃいけません。

だけど「医者」も「薬剤師」も同じ人間でしょう。あまりに、物わかりが良すぎるのもどうかと思いますね。場合によっては、患者さんのために「医者と戦う姿勢」だって必要でしょう。立場が対等じゃなくちゃ、戦えないです。勿論、情報交換も大事。患者のために協力する姿勢も大事。全ては「患者さんが主役」って前提に立ってのお話ですけどね。

また、メールします。


返信
吉田均

医者をかえた方がいいと思われる患者さん、やはりいますか。医者も、治療効果が出ていないのに漫然と処方し続けていること、時々ありますよね。患者さんから言われて初めて処方の変更を考えたり、あるいは中止したりすることもあると思います。患者さんが黙って服用しているのならばそれでいいのかと思ってしまう傾向も・・・・・。処方医として反省すべきことですね。

私はホームページで、薬剤師は医師から独立しているべきである、患者さん側に立った発言ができなければならない、時には医師とは違う見解を述べなければいけない、すなわちセカンドオピニオンをはっきり言える薬剤師であるべきと主張しています。今回いただいたメールはこれを具体的に分かりやすく述べられたものです。私としてはとてもうれしい内容です。(99/7/1)



3)「調剤規範」を読んで


ひげの薬剤師」

「調剤規範」、読ませていただきました。 正直言って、勉強になります。以前に読んだ時にも「それなりに」ショックを受けたのですが、すっかり、忘れてました。私も、プリントアウトして身近に置いておこうと思います。

日々の仕事に慣れてくると、どうも「患者さんとの世間話」に価値を見いだしてしまうものです。軽口をたたき、冗談を言い、それを患者さんとの「信頼関係」と錯覚している自分に気づきました。きょうから、自分の仕事ぶりを再度、振り返ってみようと思います。

私は「調剤」は「パフォーマンス」た゜と考えています。ただ、処方箋通りに調剤をして、投薬するだけではない。そこに必要なのは「患者」と「疾患」を理解した上での服薬指導。それはすべて待合室からの視線の中で行われるパフォーマンスです。薬剤師の価値はその中で、如何に薬剤師個人のキャラクターを生かせるか・・・・。

薬剤師だって「指名制」の「歩合制」でいいと思います。「私はあの薬剤師に調剤して欲しい・・」と言われる薬剤師になりたいと考えています。「誰が作ったって同じ効き方」ではないはずなので。

最後に、あと一言だけ。私は「かっこいい薬剤師」になりたいです。子供が「大人になったら薬剤師になりたいな・・」と思われるような・・・・。



返書
吉田均

「私はあの薬剤師に調剤して欲しい・・・」 これ、いいですね。。医者の場合も・・・・、近場の病院だから、あるいは親切だからという理由で受診される方もいます。病院を選ぶということですね。一方、あの医者は見立てがいいから、手術がうまいからなどと、医者を指名して受診される方もいます。むしろその方が多いはずです。薬剤師もこの点は同じだということですね。あの“薬剤師”の薬が欲しいということで、遠くから探し求めてやってくる・・・・そんな時代がきてほしいものですね。「ひげ」さんのおっしゃる「かっこいい薬剤師」いうのはそんな薬剤師のことだではないんですか。薬剤師の理想を求めて、それを日々追及されている姿勢に敬意を表します。


その又返書
ひげの薬剤師」

先生、メール有り難うございます。先生、薬剤師が出てくるドラマって、見たことありますか。私、ないんです。医者や、看護婦のドラマはたくさんあるのに・・・・。やっばり「地味」な存在なんでしょうね。世間的には・・・・。

私の周りには「子供の頃から、薬剤師にあこがれてた」なんて薬剤師は1人もいません。勿論、自分も含めて。せめて「こんな薬剤師もいるんだなぁ」って思われたい。「薬剤師って、結構かっこいいなあ」って思われたい。そんなことを考えています。


そのまたまた返書
吉田均

確かに薬剤師が主役になったドラマは見たことがありませんね。病院が舞台のドラマでも医師や看護婦、患者が登場するばかりで、薬剤師は登場しない・・・・。ドラマになりにくいお仕事なんでしょうかね。

子供に「将来なりたい仕事は?」の質問に対し、医者とか看護婦が出てきますが、確かに「薬剤師」はあんまり聞いた事がないですねぇ。今まで、患者さんや子供たちの目に触れないところでのお仕事がほとんどだったからかもしれません。調剤薬局が増えてきてますので、今後そこを舞台にしたドラマができ、「かっこいい薬剤師」が活躍すれば子供たちの認識も変わってくるかもしれませんね。(99/7/5)




4)もっとも気を使うのは「併用薬」・・・・

ひげの薬剤師」


先生、又メールです。
突然ですが、私が日々の業務の中で、もっとも気を使うのは患者さんの「併用薬」です。

患者さんには、必ず「他に服用中の薬はありますか」と聞いているのですが、「あるよ。血圧の赤い玉・・」とか、「白くてコロコロしてるの」とか言われると、正直言ってがっかりします。患者さんは自分の薬を知らないですね。「医師に、他でも薬をもらっていることを伝えましたか?」と聞くと「言ってないよ、聞かれないから。」とか「別の病気だから関係ないと思って言わなかった。」なんてこと、よくあります。何を飲んでるか、わからない状態では、私は恐くて投薬できません。そんな時はこうします。

  1. うちに帰って併用薬を持ってきていただくか、もしくは電話で教えてもらう。
  2. かかってる医療機関を教えてもらい、薬局から私が電話をかけて聞く。
  3. 当日処方の薬品名を患者に伝え、併用薬を出している医療機関へ電話をしていただき、主治医に判断してもらう。

毎日のように「添付文書の改訂のお知らせ」が届き、すごい勢いで「併用注意」が増えている現状において、診察医が一人で、併用薬を細かくチェックすることは至難の業です。院外処方箋を発行して、かかりつけ薬局に薬歴管理を任せることは、医療事故を防ぐ上でとても重要と考えます。


返書
吉田均

薬の情報開示は進んできたというものの、今でも薬の名前も知らされていない患者さん、結構いますね。相互作用や重複投与の可能性を考えると怖いことです。情報開示しないのは数年前までは当たり前でしたが、今は「無責任!」と言われても仕方ないでしょうね。

おっしゃるとおり併用注意の薬は非常にたくさんあり、しかもどんどん増えています。私の能力ではとても覚えきれませんし、覚えること自体不可能と思っています。薬剤師に任せるべき事柄です。かかりつけ薬局での併用薬チェックの重要性が、今後もさらに増していくでしょう。しかし残念ながらそれを認識していないか、あるいは重要視してないドクターが多いようです。日本医事新報7月10日号の記事にも、相変わらず、2度手間で医療費が高くつくので医薬分業できないなどと主張される方が多かったですね。薬の安全性をどう確保するかの認識が希薄なように見受けられます。とても残念なことですが・・・。(99/7/11)



5)こむらがえり・・・・横紋筋融解症?

田舎の薬剤師


先生、今日、副作用の疑われる症例がありましたので紹介します。 

39歳女性。頻尿で受診。尿検査で潜血がみられたとのこと。膀胱炎の疑いとのことでクラビット、セルベックスを処方。昨日朝より服用開始。昼頃より咽頭痛を感じはじめ、風邪かと思っていた。今朝、こむらがえりで目が覚める。症状は薬のせいではないかと問い有り。副作用報告をみると、咽頭痛(無顆粒球症)、筋肉痛(横紋筋融解症)が載っています。ただ、服用後24時間以内の症状発現で、副作用としてはちょっと早すぎるかなと思いましたが、・・・・念のためドクター受診をすすめました。医院ではCPKの検査オーダーあり。トミロンに変更。来局時にはアキレス腱の痛みも訴えていました。副作用とは確定されていませんが、この患者さん、薬を飲むとよく副作用の出る方ですので、ドクターも万が一を考え即座に薬を変更したのだと思います。。


話は変わりますが、最近よく問題になるのがCa拮抗薬の服薬指導でグレープフルーツジュースと一緒にのまないでくださいということについて。数人の患者さんが、私どもの薬局でも説明を聞いていったのですが納得がいかなかったらしく処方医に再度聞き、処方医より問い合わせあり。血中濃度の上昇が報告されているためと話しましたが、何故グレープフルーツだけと不思議そうでした。メーカーに問い合わせたところ、皮と実の間にある苦味成分がそういう作用をしめすという話。

先日、「薬局」という雑誌で実は実の部分にその成分が含まれており、従来含まれているといわれていた部分にはほとんどないとのこと。以前はグレープフルーツジュースは駄目だけどグレープフルーツは大丈夫という話もあったがどちらもだめと。その影響は、グレープフルーツ(ジュース)を摂取してから10時間以上続くとのこと。服薬指導上は、 薬剤服用の10時間以上前並びに服用後2時間はグレープフルーツ及びグレープフルーツジュースは摂取しない方ががよいとありました。これは、グレープフルーツ近縁果物も同様でその他の柑橘類にはみられないようです。欧米では、このことは患者もよく知っていることで効果の増強を期待して食べる例もあるとか・・・情報まで。(99/7/12)