脳幹の青斑核からはじまって、大脳辺縁系、視床下部、小脳などに広く分布している神経系が、アドレナリン作動性神経系と呼ばれています。 アドレナリン作動性神経系とA-10神経系は相互に連絡しあうことが知られていて、片方の興奮が他方に伝わるという関係になっています。 ヒトは恐怖・驚愕の体験に遭遇すると青斑核からノルアドレナリンを分泌し、闘争か逃避かの態勢に入り、ストレス体験を終息させるための行動に入ります。 長期間回避不能のストレスにさらされた動物は、やがて無痛覚の症状に至り、ストレスを回避する行動を止めてしまいます。 この無痛覚の状態は脳内麻薬様物質(オピオイド)の作用によるものと考えられています。 オピオイドの拮抗物質であるナロキソンが分泌されると、無痛覚の症状は打ち消されれることになります。 長期間回避不能のストレスにさらされた場合、動物実験ではノルアドレナリンが減少します。 ノルアドレナリンの使用が合成を上回るようです。そしてこうした体験をもつ個体は、体験を持たない個体が反応しない刺激に対してもノルアドレナリン濃度を減少させます。 ノルアドレナリン濃度の減少が繰り返された場合、脳内のノルアドレナリン受容体の感受性が上昇して、ささいな刺激に対しても過敏に攻撃・逃避反応をするようになります。 また、幼少期に愛情剥奪(母親からの隔離)などを受けたサルに少量の麻薬様物質を投与すると、ノルアドレナリン濃度は普通に育てられたサルより上昇し、過敏で攻撃的な状態になります。 PTSDのベトナム帰還兵は、尿中のノルアドレナリン濃度が慢性的に高いことが知られています。 アドレナリン作動神経系が慢性的に興奮し、現在にいたるまで戦闘態勢のままであることが示されています。