'44年夏の ノルマンディー上陸作戦は第2次世界大戦の中で最も数多くゲーム化されているというわけではないが、年を追うごとに多くのゲームが出版されている。だが、少なくとも
それらの作品の多くは上陸記念日を当てにして出版や再販されてはいない、と言える。今回、プラスチック製のフィギュア付きの簡単なボードゲームや戦術級ゲームといった少数の作品だけがリストに加わった。一番有名な作品や
最も入手しやすい作品を、スケールごとに一つ一つ検証してみよう。
上陸作戦と 恒久的な橋頭堡建設を巡る闘いは、ヨーロッパ大戦全体、もしくは 西部戦線を 1944年からシミュレートするほとんどのゲームで再体験できる。大抵のゲームではヨーロッパの沿岸ならどこにでも上陸作戦を実施できるだろう。けれども、多くの場合はノルマンディーが適切な場所となる。たとえば、中でも最も面白いのは
West End Games の Against
the Reich (1987)、GRD
の Second
Front 、それに Clash
of Arms の Brute
Force といった、師団〜軍団規模のゲームであり、力任せの上陸戦や装甲予備を使った反撃を実施する喜びに打ち震えるには、これらは適当なレベルだろう。
ほとんどの戦術級ゲーム・システムは
それぞれが数多くのシナリオを提供している。それと同様、 ノルマンディー戦の専用 (史実) モジュールも多数存在する。たとえば、今日では
MMP から発売されている Advanced
Squad Leader の場合、上陸作戦開始時の米軍空挺部隊の戦闘をカバーする 8つのシナリオを用意した
Paratrooper
が販売されている。
Critical Hit が発売したヒストリカル・キャンペーン Shanley's
Hill では、6月8日の第508空挺連隊の活躍を詳細にシミュレート可能。All
American も 6月6〜9日の米第82空挺師団のヒストリカル・キャンペーンを再現する。
Avalanche Press は、同じ戦場をシミュレートする
Panzergrenadier
システム用の US
Airborne Operation; Normandy,1944 を発表している。20個のシナリオが用意されていて、プレイの際には同シリーズの他のゲームは不要。
Critical
Hit は ノルマンディー戦を扱う独自の Combat!
システムのゲームを2つ発売した。米軍空挺部隊の戦闘がテーマである Combat!
Normandy と、レンジャー部隊の活躍を扱う Combat!
Rangers だ。近頃、Critical
Hit は明らかに Combat!
システムに見切りをつけており、以前の Combat!
Rangers の漸進的な改訂版である D-Day
Rangers と Advanced
Tactical System
(ATS) の両方に切り替えている。その上で ノルマンディー戦での実際の戦闘を扱う別の3つのゲームを発売している。:
Against
All Odds - Defending the utah Beach Exit D-Day 1944 は
6月6日の第82空挺師団がテーマ。
Scottish
Corridor - Lion Rampant は カーン正面でのエプソム作戦。
Bloody
Omaha : D-Day 1944 は オマハ海岸での上陸戦を扱う。
同社の未発売の新作・ D-Day
: Rudder's Line はエリア形式のマップ1枚、1ターン=6時間で Point
du Hoc からボカージュへと侵攻する第2レンジャー大隊の2日間に渡る闘いをシミュレートする独立したゲームである 。
最後に Vae Victis は、第31号の付録として
En
Point Toujours 2 を提供、4つのシナリオを通して ノルマンディー戦を特にカバーし、以降の号では他のシナリオが追加されている。
タイトル |
出版社 |
期間 |
ターン・
スケール |
ユニット・
サイズ |
マップの縮尺 |
Atlantic
Wall |
SPI (1978) |
6/6〜6/30 |
4ターン/1日 |
中隊〜大隊 |
1ヘクス=1km |
Battle
for Normandy |
Attactik (1982) |
6/6〜6/30 |
3日 |
連隊〜師団 |
1ヘクス=4km |
Breakout
and Pursuit |
SPI (1972) |
7/25〜9/10 |
3日 |
師団 |
1ヘクス=10km |
Breakout
: Normandy |
AH (1993) |
6/6〜6/13
(30日まで延長可) |
1日 |
大隊〜連隊 |
ゾーン |
Cobra |
SPI-TSR (1984) |
6/6〜8/23 |
3日 |
連隊 |
1ヘクス=3km |
2e
DBI - Normandie |
Jeux Descartes
(1983) |
アランソン周辺の戦闘
8/12〜8/13 |
2時間 |
小隊 or 中隊 |
1ヘクス=600m |
D-Day
: Normandy 1944 |
Sunset Games
(2000) |
6/6〜7/20 |
4日 |
大隊〜旅団 |
?? |
Hitler's
Counterstroke in France |
TFG (1986) |
モルテンでのドイツ軍の反攻 |
4時間 |
大隊〜連隊 |
1ヘクス=500m |
June,
6th |
GMT (1999) |
6/6〜6/30 |
2日 |
大隊〜旅団 |
1ヘクス=2km |
The
Killing Ground |
NES (2002) |
7/6〜8/22 |
1日 |
大隊〜旅団 |
1ヘクス=2 .5km |
The
Longest Day |
AH (1980) |
6/6〜8/31 |
1日 |
大隊 |
1ヘクス=2km |
Monty's
D-Day (S&T 102) |
TSR (1985) |
6/6 の英軍戦区での上陸戦 |
2時間 |
中隊〜大隊 |
1ヘクス=1km |
The
Normandy Campaign |
GDW (1983) |
6/7〜8/20 |
3日 |
師団 |
1ヘクス=10km |
Normandy |
SPI (1969/1972) |
6/6〜6/11 |
1日 |
大隊〜連隊 |
1ヘクス=2km |
Normandie
1944 |
Vae Victis 27
(1999) |
6/6〜8/28 |
1週間 |
大隊〜師団 |
1ヘクス=6km |
Omaha |
The
Gamers (1991) |
6/6-7のオマハ・ビーチでの上陸戦 |
20分 |
小隊 |
1ヘクス=125m |
Omaha
Beachhead |
VG (1987) |
6/6〜6/15 |
1日 |
大隊 |
1ヘクス=1km |
Overlord |
GDW (1979) |
6/7〜8/30 |
3日 |
連隊〜旅団 |
1ヘクス=10km |
St
Lo |
WEG (1986) |
7/11〜7/18 |
1日 |
大隊 |
1ヘクス=300m |
Victory
in Normandy |
XTR (1993) |
6/7〜8/25 |
1日 |
師団 |
1ヘクス=15km |
|
ノルマンディー戦をシミュレートするゲームのほとんどは、ほぼ6月いっぱいの上陸戦と橋頭堡建設であれ、7月〜8月のボカージュ地帯の戦いであれ、実際にはそれらの一部分しかカバーしていない。極めて少数のゲームだけが、多少なりとも
この闘いの全てをカバーしていることが分かる。
Vae Victis 第27号(1999年7〜8月号)の付録ゲームとして登場した
Normandie
1944 は、2つのシナリオと1つのキャンペーン・ゲームで6月〜8月の作戦全体を再現している。そのメカニズムは天候と艦船と航空機、特にドイツ軍の増援ペースを遅らせるのが目的となる戦略爆撃を考慮に入れている、という比較的簡単なものだ。天候によって左右される特別なチャートに従って両陣営は攻勢マーカーを取得し、そのマーカーを使って
軍団司令部に強襲を行わせた後で、移動 → 戦闘 という通常フェイズを実施できる。こうした戦闘手順は、3損害ステップを有する師団ユニットや補充ルールと共に、ノルマンディー戦での消耗をよく再現している。このゲームは
現在唯一、出版社に在庫があるゲームだ。
Cobra
は 1977年に SPI が初版を出し、1985年に SPI-TSR
が再販したゲームで、同じ様にシンプルなルールで この戦い全体を再現することができる。このゲームは あいにく絶版になっているが、中古品なら入手できる。
The
Longest Day は 1980年に Avalon
Hill が出版したモンスター・ゲームであり、戦役全体を一気に、あるいは多数のシナリオを用いて 戦術 〜 作戦レベルで再体験できる。ゲームの外観 -
ハードマップである - は巨大で、ユニットも多数用意されている。プレイを上手く進めるには、実際にはチームを組む必要があるかもしれない。残念ながら、このゲームを見つけるのは
かなり困難であり、しかも相当高価だろう … 。
この戦役の最初の段階:上陸戦と橋頭堡の建設を扱い、中古で入手できる最も優れたゲームは、もしあなたが
このシリーズのエリア・システムを好むのなら、間違いなく Avalon
Hill の Breakout
: Normandy
となる。 このゲームは上陸作戦の最初の1週間をシミュレートするのだが、さらに2週間延長することもできる。ゲームは両プレイヤーが交互にインパルスを実施することで進行する。各インパルスでプレイヤーは活性化するゾーン(エリア)を選択し、そのゾーン内のスタックに移動や戦闘を行わせ、ゾーン内の残りのユニットは(砲撃)支援で戦闘に参加させる。ターンは突然終了する。メカニズムを把握するのに多少時間が掛かるかもしれないが、このシミュレーションは各陣営の能力や問題点を良く再現している。
GMT の June
6th は絶版だが中古でなら入手可能であり、6月中をシミュレートしている。デザイナーは
リチャード・バーグで、容器から無作為にマーカーを引いて 部隊 (師団) を活性化させるというポピュラーなシステムを継承している。マーカーは補給ポイントを使って
「購入」 する。上陸から6月末までを扱う5つのシナリオが用意されている。
最後に、1978年に出版された SPI の Atlantic
Wall は入手困難、且つ かなりの高値がつくゲームだが、確実にその価値を留めている。104ターンで6月をシミュレートできる。 :上陸戦用のサブシステムを併用し、1日を4ターンで再現している。6つのシナリオに加えてキャンペーンが用意されているが、現実的にはチームを組んでプレイすると良い。公開済みのエラッタやルール変更を全て適用してプレイするなら、このゲームは間違いなく
The Longest Day
よりもリアルだ。6月末でゲームが終了するという難点はあるけど … 。
この戦役の第2段階 : ボカージュやカーンを巡る戦い、アヴランシュでの突破、モルタンでのドイツ軍の反撃、そしてファレーズ包囲戦を扱い、しかも現在でも販売されている最も優れたゲームが、New
England Simulations の The
Killing Ground である。5つのシナリオで、この戦役の第2段階の様々な局面全部をシミュレートできる。メカニズムは
70〜80年代の SPI の古いゲームシリーズ ( Victory
in the West ) のそれを再利用しているものの、まだまだ余裕で通用する。ユニットは通常の戦力値を保有せず、そのユニットが初めて戦闘に参加する際に、ユニットに記されている兵員充足度と士気値に応じた戦力チットを容器から引き当てる。補給、空軍、そして補充管理は史実と同様に重要な役割を果たす。これらの要素は実に見事であり、キッチリと記述されたルールにはどこにも手抜きがない。このゲームについての詳細は、VV
47号を参照すること。それでもやはり、これはビッグ・ゲームだから 4人でプレイするのが妥当だろう。耳寄りなニュースとして、この戦役の冒頭、つまり上陸時から再現可能となる拡張モジュールが今年中に予定されている。これが発売されたら、この戦役期間の
「基準」 となるゲームになるのだが ( 訳註 : 拡張モジュール
OVERLORD
: D-Day and the Beachhead Battles が発売された ) 。
というわけで、一覧表には最近の作品は少ししか載っていないが、他にも優れたゲームはいくつか存在する。
問題は、それらを探し出す際に間違いなく多少の時間が掛かることと、その中のいくつかは (誰かに) 見つけ出されてしまって、直ぐになくなってしまうことだ。探索の最初の手掛かりは、インターネット上の
www.strategikon.net
や、www.ebay.fr、そして
www.secondchancegames.com
にある。また、Vae Victis 誌面の三行広告 ( 訳註 :
付録ゲームのマップ裏に掲載されている 『売ります・買います』 コーナーのこと ) や小売店でも、思いがけない掘り出し物が結構見つかるかもしれない。
Pascal Valentin そして
Nicolas Rident に感謝します。
Fin
本記事掲載誌の Vae
Victis 57号は、2004年6月に発行されました。
この非公式翻訳文は Vae Victis 編集部の許可を得て公開しています。
Translated
by T.Yoshida
|