後退の積極的活用法
パンツァークリークにおける効果的な防御
( GENERAL 誌 22号 4巻 )
By James Werbaneth
パンツァークリーク (PANZERKRIEG
: または PK
) で防御の重荷を負うプレイヤーは、固定防衛線に自軍ユニットを入念に配置することや、敵の強烈な打撃を吸収すること、そして今後の勝利を期待することはできない。PK
で効果的な防御を成し遂げるには、賢明な反撃と、組織だった後退を同時に行わなければならない。機動的かつ能動的な防御が絶対に必要なのだ。
このゲームの原動力の中核は、イニシアティブ(主導権)の概念だ。イニシアティブとは、どちらのプレイヤーが戦略的攻勢を満喫し、どちらが防御に追われることになるのかを決定するものだ。
どのシナリオでも領土目標が設定されているプレイヤーがイニシアティブを得ているし、"Pocket
at Korsun" 以外の各シナリオでは、そのようなプレイヤーが最初に移動を行う。しかしイニシアティブとは、単に攻勢を主導する職務ではない。最も重要な戦闘を実施する
“時と場所” を指定することも、その職権なのである。 PK
ではイニシアティブを有するプレイヤーが戦略的に行動し、他方のプレイヤーがそれに対応する。
イニシアティブと攻勢能力は、受動的なプレイヤーよりも能動的なプレイヤーを遙かに優位に立たせてくれる。防御側プレイヤーは、そうしたメリットを侵食する必要がある。防御側プレイヤーは、防御に有利な地形に部隊を配置して戦いを挑むことが必要だ。それと同時に、ゲーム終盤には、突破不可能とまでは言わないものの突破困難と思われる最終防衛ラインへと、自軍部隊を後退させなければならない。そして、短期間だけでも敵
(攻撃側) に後退を強いるため、計画的な反撃を実施する必要がある。
ほとんどのシナリオで、イニシアティブを持たないプレイヤーは初期配置を対戦相手の後に行う。しかし PK では最後の2〜3ターンで勝敗が決まることが多いので、そのことはさほど重要ではない。そのため、防御側プレイヤーは、序盤と中盤のターンを
「真の決着の時節のための非常に重要な前触れ (準備段階)」 と見なすべきである。ゲーム終盤の防御側プレイヤーの戦略的立場をできるだけ優位に保つには、“後退”、
“領土防衛”、 そして “反撃” を組み合わせることが極めて決定的に重要となる。
能動的な防御を適切に実行した場合、『領土と目標ヘクス』 は 『時間と戦力の保持』 と交換される。そうなれば、たぶん防御側プレイヤーは、効果的で堅固な守備への変換、あるいは勝利へと導くであろう強烈な反撃をゲーム終盤には開始できるようになる。決着がつく時節が到来するまで、防御側は最終的な勝負を除く全ての事柄を快く譲歩しなければならない。
後退
PANZERKRIEG
における防御の要(かなめ)は 『後退』 である。逆説的に言うと、効果的な防御の頼みの綱は領土を相手に譲歩することだ。領土、それも時として驚くほど広大な領土の明け渡しによってのみ、防御側は自軍部隊の大半を維持することが確実にできるチャンスが手に入る。こうすることで維持しておいた戦力は、ゲーム終盤における反撃や、最終防衛線の確立に必要なのである。このゴールへ到達するために目標ヘクスの放棄が必要なら、それらのヘクスを相手に譲らなければならない。防御側プレイヤーは、最終的な決着以外の全てを、躊躇することなく犠牲にしなければならない。
防御側プレイヤーは、統制のとれた防衛線の内側へ自軍部隊を後退させるべきだ。敵の浸透、とりわけ戦車や自動車化歩兵によるそれは殆ど防げないものの、より遠くへ後退したり反撃を行えば、普通は防衛線を無傷な状態に回復させることができるし、そうすることによって防御陣地が大包囲されることを防ぐこともできる。
とは言っても、防御側プレイヤーは、継続的な後退や、まれに実施する反撃に努力を集中させることはできない。 自軍部隊の一部を配置して敵に抵抗し戦闘を挑む
“拠点” を選定しなければならない。都市はその用途に最適であり、明らかに防御の中心となる場所だ。町、要塞、それに小河川ヘクスサイドはもっと頻繁に戦闘が発生するし、防御に最適な場所でもある。戦術的な意味では、主要河川を跨ぐ橋や渡河ヘクスは、さらに防御に適する配置場所だ。次に述べる戦略的根拠が無いなら、そのような場所は後退が終わる前の戦闘に最適とは言い難い。
防御拠点の場所選びの基準は2つある。 まず第一に、防御に有利な地形でなければならない。 第二に、攻撃側がそこを攻撃するよりほかに方法がないという地域内に拠点を定めるのは当然である。
もし、その地域内で敵を完全に打ち負かすことができない、または 一時的に敵の前進を止めることが事実上不可能なら、そこで戦いに挑むのは無意味だ。
そうした場所で攻撃側ユニットの攻撃を受けて立つ防御側スタックは、少なくとも1個の装甲ユニットと、使える中で最強の歩兵ユニットを用いて編成するべきである。最強の装甲タイプ・ユニットは、おそらく反撃や予備の役割を果たすために控置されるだろうから、弱小の装甲ユニットがこの任務に使われる。ソ連軍プレイヤーは
4-11 戦車軍団を最も多く使うだろうし、もし可能なら 6-11 も使う。このような用途に最適な枢軸軍プレイヤーのユニットは、装甲および装甲擲弾兵の戦闘団(KG)、5-11
の装甲擲弾兵師団、それに、ハンガリー ・ ルーマニア ・ イタリアの装甲部隊だ。枢軸軍が後退中なら、ドイツ軍の装甲師団は反撃の準備をさせておくべきである。
枢軸軍の装甲部隊は稀少な存在であるため、枢軸軍プレイヤーは、歩兵師団だけで編成したスタックを防御戦へ投入することを たびたび強いられるだろう。いくつかのシナリオで枢軸軍プレイヤーは、4つ以上のドイツ軍装甲戦闘団
(訳注 : 2-11 KG の装甲部隊) ユニットを所持してゲームを開始する。しかし、すべての敵の攻撃に抵抗したり防御するために装甲プレゼンスを与えるには、それだけでは不足していると気付くだろう。その場合、防御能力を向上させるため、1つのドイツ軍装甲師団を3つの装甲戦闘団に分割してもよい。だが、このオプションは潜在的反撃能力を著しく犠牲にすることになるので、細心の注意の下で選択するべきである。
リーダー・ユニットは、攻撃 (あるいは反撃) に役立つのと同じくらい防御戦でも役立つ。防御スタックの中には、できる限り リーダー・ユニットを加えるべきだ。とは言っても、戦闘団への戦力減少が可能なユニットが存在しないスタックには、絶対にリーダーを配置するべきではない。有用なリーダーを、味方の弱小ユニット壊滅の巻き添え
という危険に晒してはならない。
PANZERKRIEG
で全般的に行われる後退は、勝利のための譲歩を意味する。ゲームを始める前に、防御側プレイヤーは最終防衛線の役目を果たす主要河川を選んでおくと良い。理想としては、少なくとも一つの目標は河川の背後に定めるべきで、さらに要塞は河川の背後に設置すべきであり、しかもそれは増援として到着するユニットを使って、橋の背後や渡河ヘクス内に建設すると良い。最終防衛線は、防御努力が遅滞活動から保持活動へと変わる場所である。一旦、防御側プレイヤーのユニットの大半が川の向こう岸へ到達したのなら、もはや(背後に)領土は無いこと、及び、戦線の裂け目を修復するために固定防御と反撃を組み合わせて選択することを認知するべきだ。川の向こう岸、そして防御線の重大な突破口内で、攻撃側プレイヤーの兵力を拘束しておかなければならない。最強ユニットは、できるだけリーダー・ユニットと共に渡河可能地点でスタックさせておくべきである。同様に、強力なユニット、特に装甲ユニットは予備として活用すべきだ。さらに、敵の侵入を阻止するため、橋や渡河ヘクスの近辺に弱小ユニットを配置しておく。
最終防衛線の概念により、ゲーム序盤から中盤にかけて防御側ユニットの大半を可能な限り維持する必要性が さらに重視されることになる。いくつかのシナリオでは、かなり大規模な増援が投入されるとはいえ、もしそのプレイヤーの開始時戦力の大半が壊滅してしまうと、勝利は極度に困難になる。有利な地形を占めている場合でも、初期配置ユニットの一部を維持することなく最終防衛線を保持することはできない。プレイヤーは、増援それ自体を防衛線に並べるだけでなく、最終防衛線予定地に沿って要塞を建設する作業にそれらを使用することも考慮すべきである。
勝利するために、防御側プレイヤーは様々な方法で最終防衛線を活用することができる。もし、ゆっくりとしたペースで後退することが可能なら、間違いなく
初期配置ラインと最終防衛線の間にある攻撃目標ヘクスで拠点防御を実施できるはずだ。一旦、これらの攻撃目標が陥落すると、そこは防御側の反撃に晒されることになる。
他方で、非常に素早い後退も勝因となりうる。多くの場合、防御側プレイヤーが部隊の後退を整然と実施することは、攻撃側プレイヤーが同じ状態で追撃を実施することよりも容易である。敵が存在しない時、一部のユニット、とりわけ戦車や機械化歩兵ユニットは他のユニットよりも速く前進してしまうことが多い。しかし、その動きがあまりに急なため、しばしば側面や背後を危険に晒すことになる。皮肉にも、それは最高の戦術的勝利である
「突破」 の後でよく起こる。誰も自分の作戦行動に完全な戦術的勝利を求めることはできない。弱小ユニットは撃破され、強力なユニットは戦闘団になり、そして如何なる戦力のユニットでも、戦闘結果による強制的な後退、または膠着によって前進を止められてしまうことがある。したがって、攻撃が大成功を収めたときに、防御側部隊よりも攻撃側部隊の側に酷い混乱が生じることがある。防御側プレイヤーが巧みな後退を実施している場合は特にそうだ。
最終防衛線は防御側プレイヤーが部隊を再編成したり、増援を受け入れたりするための非常に重要な場所だ。多くの場合、進撃する軍隊は態勢が乱れた状態で接近してくるので、もし後退する部隊の大半が既に渡河を終えているなら、攻撃側の先頭部隊が最終防衛線に侵入するのは困難と思われる。防御側プレイヤーは後で再び河川を渡って攻撃側の先頭ユニットを反撃するか、包囲して脅かすかのどちらかを行うこともできるだろう。
“バックハンド・ブロウ” のような反撃は、上手く再現できそうだ。
反撃
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における反撃とは、短期間かつ頻繁に防御側が執行する局地的な主導権の横領である。たとえ戦術的にはリスクが無いように見えても、一般的に、反撃にはある程度の戦略的リスクが伴うものである。防御側プレイヤーは反撃のリスクを見積もり、そのリスクと、この小規模戦闘で見込まれる戦術的
・ 戦略的な成果とを比較しなければならない。
防御側プレイヤー (それに、"Pocket
at Korsun" での攻撃側プレイヤー) は、通常、ゲーム開始時に初期配置ラインの何ヶ所かが浸透されることを予想できる。殆どの場合、以降の数ターンの間に、後退するにつれて相手は追撃し、防御地点を突破されてしまうだろう。このことは
PANZERKRIEG
では攻撃側が優位であることを示している。
そうした敵の突破は格好の反撃目標となることがある。特に、防御側ユニットが、初めに壊滅ではなく後退を強いられたのなら。反撃が成功した場合、攻撃側の侵入は無効となる。失敗した場合は、ほぼ十中八九、反撃を実施したユニットは2ヘクスの後退を強いられるだろう。どちらの場合でも、後退は反撃の代わりとなる最も有望な選択肢だったので、防御側の戦略的状況は殆どダメージを受けないと思われる。
戦闘ユニットは限りある資源なので、無駄な使い方をしてはならない。けれども、攻撃側プレイヤーは、防御側に自軍ユニットを壊滅させるチャンスを頻繁に与えてしまう。このような事態は、攻撃側プレイヤーがどこか余所(よそ)の最重要攻撃目標へ部隊を集中させている間、守りの薄い自軍戦線のいくつかの箇所を放ったらかしにすることによって起きてしまう。最初の強襲を実施するために、攻撃側プレイヤーが最強の部隊
(とりわけ装甲・戦車部隊) を集結させる序盤の数ターンの間、このような状況は殆ど毎回発生する。防御側プレイヤーは、ほとんど避けようのない序盤の相手側の質的優勢を侵食するために
この状況を利用することができる。
おそらく、ゲーム序盤での最適な反撃目標は、もし攻撃側がそうさせてくれるのなら、攻撃側が初めに支配している都市ヘクスだ。そうした目標に対する反撃は、初めの数ターン中に実施しなければならないようだ。というのは、防御側プレイヤーが後退するにつれて、敵支配下の攻撃目標は中盤から終盤にかけては、多分、自軍部隊の展開範囲の遙か向こうへと遠ざかっているだろうからだ。もちろん、攻撃側プレイヤーはイニシアティブ
(主導権) を保持しているのだから、戦闘を行う 「時 ・ 場所 ・ 範囲」 等を決めることができる。しかし防御側プレイヤーは、都市を強奪することによって立場を逆転させてしまう。その結果による都市の喪失は、直接かつ即座に攻勢主義に対する障害を増大させてしまう。
攻撃側プレイヤーは難しい選択を迫られる。
選択肢の一つは、都市の喪失とリスクを容認すること。そのリスクとは、両側面と背後でさらなる反撃が起きそうな兆候を受け入れるだけでなく、勝利するためには
さらにもう一つの攻撃目標を奪取しなければならないということ。別の地域で攻撃側が進撃したことが原因で、たとえ防御側がその都市から後退を強いられたとしても、その都市を奪取していなかった場合に比べれば、その後退は緩やか、または短期間で済む可能性が非常に高いと考えられる。
もう一つの選択肢は、都市を奪回するために必要なだけのユニットを主戦場から転用するというもの。この状況下では、防御側プレイヤーは
その都市から撤退してしまうまで、攻撃側プレイヤーの前進速度は抑えられてしまうだろう。
ゲーム終盤、“敗北の瀬戸際” から勝利を奪取するため反撃を行うことができる。攻撃側が勝利に必要とする目標、主として “町”
を奪うために、防御側プレイヤーは反撃を行うことがある。もし、攻撃側プレイヤーが広大な地域に進出していて戦闘で優位に立っているものの、ゲームに勝利するために必要な最後の1個の都市が敵に奪われているなら、あなた方2人は素晴らしい対戦を楽しんでいることになる ・・・ まるで攻撃側の進撃が極僅かだったか、あるいは戦闘で目覚ましい勝利を収めたかのように。 もし防御側プレイヤーが土壇場での反撃が必要だと気付いたら、攻撃目標のすぐ近くに自軍ユニットを配置し続けるように努めるべきである。最終防衛線に到着した場合を除くと、これは戦略的後退を中止する唯一の理由となる。さらに、反撃
(または陽動作戦) は、攻撃可能な勝利目標ヘクスに対して できる限り数多く実施し、少なくともその中の1つが成功するようにチャンスを増大させておくべきである。
ゲーム・プレイの最中、防御側プレイヤーは反撃のための いくつかの一般原則を遵守するべきである。
反撃は可能な限り最強の部隊で行うべし。 装甲効果のアドバンテージを得るため、あるいはそれを相手に与えないために、最低1個の装甲ユニットを参加させるべし。
歩兵のみを用いた反撃は、相手が弱体である場合のみ、期間限定で実施すべし。 さらに、1個のリーダー・ユニットを反撃部隊に含めるべし。
PANZERKRIEG
で守勢に立つ枢軸軍プレイヤーには、ドイツ装甲師団という反撃用の最優秀兵器が用意されている。枢軸軍の反撃に 3個装甲師団 (特に、その中の少なくとも1つが
16-11 または 13-11 ユニット) が参加していて、防御側のスタックに戦車ユニットが含まれていないか、あるいは弱小戦車ユニットで構成されているなら、その反撃は必然的に成功する。さらに、(13)
11 のリーダー・ユニットを加えることによって装甲師団のスタックを増強することもできる。装甲擲弾兵師団は、反撃中の装甲師団と共に行動するだけの戦闘力と機動力を有しているので、「突破」
の戦闘結果を十二分に活用するには最適である。ドイツ軍の 5-7 歩兵師団は装甲師団や装甲擲弾兵師団と共同攻撃を行える能力があり、弱体なソ連軍スタック相手なら歩兵単独での強襲も可能だ。より強力な師団が先鋒として同伴している場合を除き、ドイツ軍の
4-7 と 3-7 歩兵師団ユニット、または ハンガリー ・ ルーマニア ・ イタリア軍ユニットによる反撃は実施するべきでない。
ソ連軍プレイヤーは、ほぼ上記の原則に従って反撃用ユニットの割り当てを決め、そしてこの目的には最強のユニットを用いるべきだ。しかし、自軍の
5-7 狙撃兵師団ユニットの使用には注意を要する。というのも、ドイツ軍の同じ 5-7 歩兵師団ユニットとは、戦闘団へ戦力減少できないという点で異なるからである。ソ連軍の
4-7 及び 3-7 狙撃兵師団ユニットを決して単独で反撃に用いるべきではない。
空軍力
空軍力は攻勢の原動力として不可欠な要素だが、防御にも大いに役立つ。そのため、防御側プレイヤーは自軍の航空基地と航空ユニットを維持するように努めるべきである。尤も、相当な数の地上ユニットを犠牲にしてしまうことになるのだが。
航空ユニットの最も多い使い道は、攻撃側プレイヤーのユニットを混乱させることだろう。混乱させることによって、攻撃側の最強部隊による追撃や攻撃の実施を強力に阻止することができる。さらに、地上ユニット無しでの航空攻撃は、他の航空ユニットが地上支援役として参加する
“反撃” に先立って、効果的な “露払い” を務めることができる。
戦闘航空パトロール
(CAP) は、防御に対しての継続的、そして時には非常に重要な航空支援である。CAP
は、攻撃側がある特定のヘクスを攻撃する際に、そこへ航空支援を割り当てることができないように妨害する。 攻撃側が航空ユニットを攻撃用途に使うと、僅かに有利なだけだった戦術状況を、まず間違いない攻撃側大勝利へと変えてしまうことができる。逆に、攻撃側プレイヤーに対して航空支援の使用を認めないようにすれば、不利な戦闘比での攻撃を強いたり、あるいは完全に攻撃を控えるように仕向けることができるようになる。
したがって、防御側プレイヤーは、地上支援を伴って攻撃される可能性が最も高い自軍スタックの上に、CAP
マーカーを置くべきである。
同様に、防御側プレイヤーは、直前のターンに敵から攻撃を受けて戦闘結果が 「膠着」 となったスタックの上には、全て CAP
マーカーを載せるべきだ。もし、その直前の攻撃が地上支援を伴って始められていた場合は、攻撃側プレイヤーを大胆にさせている戦力
(空軍力) をある程度無効にすることができる。 航空ユニットを参加させていなかった場合は、攻撃側は有利な戦闘比では戦闘を再開できないか、あるいは混乱攻撃を始めてしまうと思われる。戦闘航空パトロール
(CAP) は、攻撃側プレイヤーがイニシアティブを握ることへの一時的な拒絶、と捉えることができる。
結び
PANZERKRIEG
のシナリオで防御側をプレイする際、このゲームは攻撃側が防御側より優勢な状況での機動戦を再現していることを 想起すべきである。実際、防御側で上手にプレイするのは、攻撃側でプレイするよりも困難な任務である。機動力や能動的な防御を頼りにするなら、または、ユニットの損失を回避して領土の喪失に耐える気があるのなら、防御側の不利な点を克服できないこともない。
防御側プレイヤーは、相手の部隊だけではなく、イニシアティブにも対処しなければならない。ときには相手にイニシアティブを与えることなく、自分のものとしなければならない。しかし、防御側が2ターン以上に渡ってイニシアティブを握り続けることは滅多にできないので、それが攻撃側の手に戻った時には常にその利点を減らすことが肝要である。
実際の防御戦では正確なタイミングが要求される。いつ抵抗して戦闘を挑むのか、いつ反撃するのか、後退を実施するペースをどのように決定するのか、といった事を
プレイヤーは的確に判断しなければならない。PANZERKRIEG
が提供する試練の殆どのルーツは、適切なタイミングを見抜く力量なのだ。
能動的な防御の原則は全てのシナリオに適用できる。尤も、"Battles
for the Dnepr" では不明瞭なのだが。 このシナリオにおける枢軸軍プレイヤーは、自陣営の最終防衛線となるはずだった、嫌な守備位置でゲームを開始する。もっと悪いことに、ドニエプル防衛線は、イニシアティブを握るソ連軍プレイヤーによって既に穴を開けられてしまっている。故に、枢軸軍プレイヤーは確固として反撃を重視しつつ、最初から堅固な防御を実施する方針を選択すべきである。
"Aftermath of Zitadelle"
では、ソ連軍プレイヤーには目標となる町や都市が与えられていない。このシナリオでは、特に能動的防御が有用である。ソ連軍プレイヤーは、大挙してドニエプル川を渡りさえすれば勝てるのだから。そしてドニエプル川は、枢軸軍の最終ラインとして活用するには最適である。ドニエプル東岸には、攻撃側プレイヤーを押し止めるものは何もないのだ。
PANZERKRIEG
の戦争は、機動作戦の戦争である。ソ連邦南部における戦争の一般的なイメージは、キエフであれスターリングラードであれ、攻撃側が敵の両側面を駆け抜けて、不幸な防衛部隊を巨大なポケットに包み込んでしまうという攻撃側の挟撃作戦の戦争だ。
しかし攻撃側にそのような衝撃的な勝利をもたらす PK
での卓越した機動力は、必ずしも防御側プレイヤーの敗北を保証するものではない。 PANZERKRIEG
における後退は “敗走” と同義ではない。 間違いなく保証できるのは、逆に “勝利” と同義かもしれない、ということだ。
Fin
執筆者の James (Jim) Werbaneth 氏は現在、"Line of Departure"
というゲーム雑誌 (同人誌?) を発行しています。 詳しくは、OnLine
of Departure の Web サイトを御覧ください。
本記事掲載誌の General 22巻 4号は、1986年に発行されました。
この非公式和訳文は、著者の James
Werbaneth 氏から許可を得た上で公開しています。
Translated
by T.Yoshida
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