By Tyrone Bomba
ゲーム・タイトル
: |
パンツァークリーク Panzerkrieg,
von Manstein and Herres Gruppe Sud ( PK ) |
価格
: $ 12.95
デザイナー
: ジョン・プラドス ( John
Prados )
テーマ 及び スケール
:
あの、失意の独ソ戦におけるドイツ南方軍集団の進撃と撤退を描く。このゲームで扱う独ソ戦キャンペーンの期間は、1941年8月27日
から 1944年3月31日 まで。各ターンは実際のほぼ一週間に相当し、マップ上の各ヘクスは実際の地形での 14マイルを表す。戦闘ユニットは戦闘団、旅団、師団、軍団、航空団、航空軍、司令部、または個々の将軍達を表す。部隊規模を特定できない砲兵や対戦車部隊のユニットも用意されている。
出版社
: |
Operational
Studies Group ( OSG )
1261 Broadway, New York City, New York 10001
※ 2005年現在、 OSG
社への郵便物の宛先は
PO Box 50207 Baltimore, MD 21211 U.S.A.
Webサイトはこちらです。
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コンポーネント
及び 内容物の品質 :
PK
は 11と 3/4インチ × 9インチ × 2インチ のボール紙製の蓋付き箱にパッケージされている。その化粧箱は
黒、青、白、赤色でカラーリングされており、タイトル名だけでなくヒトラーやマンシュタインの台詞からの引用文、さらに ロジャー
・ マクゴワン 氏が黒インクで描いたドイツ軍歩兵とティーゲル戦車のイラストも印刷されている。この箱の中には、500 個の標準サイズ
・ 裏面印刷 ・ 切れ目入りのユニットカウンターと、SPI
が雑誌付録ゲームで使用しているのと同じ紙質の用紙に印刷された 22インチ × 34インチのソフトマップ、16ページのルール・フォルダー1冊、24ページのシナリオ及びヒストリカルノート・フォルダー1冊、そしてエラッタが1枚入っている。ルール・フォルダーの真ん中に2枚のチャートが綴じ込まれているので、留め具を外して抜き取る必要がある
( これも SPI
の雑誌と同じだ )。
全体として、このゲームのパッケージとグラフィックスには高い得点が与えられる。 ゲーム・マップは
青 ・ 緑 ・ 黄色 だけで印刷されている ( 「平地」 は、明るい茶色がかった灰色がベース・カラー ) が 、それなりに識別が楽で、しかも見栄えが良くなるようにコーディネートされている。
ユニットカウンターは赤地に黒文字がソ連軍、灰色地に黒文字がドイツ国防軍、灰色地に白文字がハンガリー軍、ミディアム・ブラウンの地に黒文字がイタリア軍、ゴールデン・ブラウン(きつね色)の地に黒文字がルーマニア軍、そしてもちろん、黒地に白文字が
SS 部隊である。
( ここでちょっとだけ余談を書かせてもらいます : 何号か前の
Fire & Movement 誌で Fred Helfferich 氏は、
「黒い制服を着用している組織は他の部門にもたくさんあったのに、ゲーム制作者達が Waffen
SS ユニットを黒地に白文字の配色で描く傾向に拍車が掛かっているように見えるが、その理由が分からない」
と述べている。 ウ〜ム。 もちろん、ソ連軍も赤い軍服を着ていたわけではなかった。 これはつまり、着用していた服の色合いで全組織のユニットを均一に塗ることが事実上不可能であるという現実的な理由の他に、似たような色彩である
黄褐色 ・ 茶色 ・ カーキ色 を識別するのは困難なので、ユニットの配色は史実的な色合い
以外 の基準によって選ばれているのである。すなわち、ゲーマーの認識の中で特定の軍隊がそれぞれ放っている雰囲気、本質、ゲシュタルト
( 訳註 : [心理学で] 部分の集合としてではなく、そのもの全体を一つのまとまりのある有機体としてとらえた姿。 三省堂・新明解国語辞典より
) 、あるいは カルマ
( 訳註 : ここでは 「独特の雰囲気」 の意 ) といったものである。ここで言う
“カルマ” なるモノは、心の中で見える色を帯び、そして 20世紀より前に発生した戦争を扱うゲームの中では しばしば現実の色とカルマのそれに相当するものとを組み合わせることが可能。つまり、大英帝国の赤、(南北戦争時の)北軍の青、などなど。けれども、私達の世紀におけるモノクロームな
(面白みに欠ける) 戦争の場合は常にそうであるわけではない。現代のウォーゲームでは、この手法は
まさに神託となっていて、それゆえに共産主義のユニットは赤、ナチスのそれは黒 となっているのだ。これを証明することはできないが、ボール紙の軍隊が我々の化身として思うままに動き、そして我々がそのボール紙の軍隊と一体化しているかの如く感じられるようにするため、これらの配色が活用されていることを我々は皆、知っている。さらに言うなら、以上の事柄を考慮に入れないゲーム制作者は、自分の作品の人気という面で間違いなく痛手を被る。
例として、SPI
の "Ardennes Offensive"
を採り上げてみよう。 最近買ったこのゲームを開封して リアルな黒装束に身を包んだ悪魔の一団を見つけようとした人達のどれだけが、結局は
全てのドイツ軍ユニットが第3帝国末期の憂鬱な灰色一色で塗られているのを見てやる気を無くしたことだろう? きっと、相当な数の人々が頷くと思う。
)
ユニットカウンター上の部隊番号と部隊規模の記号の位置は、なぜか一般的な記載位置とは入れ替わっている。この誠に不思議な一点
( 初期配置表を読むたびに、あなたは少し頭を傾げたくなるだろう ) を除き、このゲームは あらゆる面で標準的だ。PK
の箱の中にユニット収納トレイは用意されていない。もし、新タイプのトレイを SPI
に追加注文する手間を惜しまないなら、あるいは あなたが所有しているゲームの中から不要になったトレイを使うつもりなら、その SPI
のトレイは十分に役立つはずだ。
まず間違いなく最も興味深い
PK の内容物の特徴は、ルールとシナリオ・フォルダーに見受けられる。両冊子を並べて置いた時、タイトルが赤色の大文字で見えるように両冊子のカバーがアレンジされていたり、マクゴワン氏の他の多くの作品のカバーが下部に描かれているのがちょっと他とは変わっている点だ。 無論、あなたは二つの小冊子を並べて使う必要は無く、どちらか一方を手にして、もう一方はどこかに置いておく。一方の冊子には
"Rules of Play Krieg" と描かれていて、もう一方には "Senario and Study Folder
Panzer" と書かれている。
シナリオ・フォルダーを開くと、新鮮な驚きに満たされることだろう。 8つ用意されているシナリオは、それぞれが折り込み(見開き)ページの体裁でレイアウトされている。ページを見開きにすると、広い一面の片隅にはプラドスの筆による、そのシナリオが扱う戦役の史実エッセイがあり、その隣にはシナリオの戦場となるマップの部分コピーが掲載されている。そのコピー上には様々な開始線や展開エリアが重ね描きされている。そして最後に、ターン記録表や増援トラック、勝利条件、さらにそのシナリオの特別ルールが最後尾に掲載されている。申し分ない。ルール・フォルダーも魅力的なレイアウトになっていて、2列に配された文章のいたるところに大判の古い白黒写真がたくさん散りばめられている。
マップ・エリア
:
マップの北西端にはプリピャチ湿地帯があり、そこから少し向こうの北東にはドン河がある。その南にはマイコプとコーカサスの丘陵があって、その西にはドナウ河の河口がある。
難易度
:
PK は 簡単なゲームではない。しかし、昨今の幾つかのモンスター・ゲームと比べたら
そう極端に難しいわけではなく、そうしたモンスター・ゲームの愛好者達を大喜びさせるとまでは言わないまでも、とりあえず満足させるのに十分なだけの内容は確かに備わっている。
1 → 9 と上昇する難易度段階で考えた場合、私なら PK
を だいたい 6.4 に据える。この点数は SPI
の "NATO" や "Sixth
Fleet"、それに GDW
の "Fall of Tobruk"
といったタイトルと同じだ。
初期配置の作業時間
:
各シナリオには 両陣営の初期配置ユニットが、その種類と必要数という形式でリストアップされている。 次にシナリオ・マップを参照すると、そこには区分けされた戦線が描かれていて、どちらの陣営にも初期配置の必要条件や特定のユニットを配置すべきエリアが書き込まれている。これらの明記されたエリアや前線密度
( 訳註 : 指定エリア内に配置が義務づけられている戦力値の合計数 ) を除き、両プレイヤーは自軍部隊の大部分を自らの判断で自由に配置できるようになっている。
ユニットを取り出して両陣営が配置を完了するには、( ユニットを何かの箱の中に入れ、大雑把に整理して収納してあったとしても )
40〜60 分くらい掛かることがある。これは、これから対戦しようとするシナリオに両プレイヤーが精通しているかどうかにもよる。
プレイ時間
:
5時間から7時間ほど掛かる。が、これもまた、プレイするシナリオ次第である。
ゲーム・ターンと勝敗判定の頃合い
:
8つのシナリオを年月順に並べると、
Kiev Pocket (1941年8月27日〜10月10日、7ターン)
Winter Counter Offensive (1942年1月14日〜4月2日、12ターン)
The Drive on Stalingrad (1942年6月28日〜9月13日、11ターン)
Stalingrad (1942年11月19日〜1943年2月11日、12ターン)
The Backhand Blow (1943年2月19日〜4月4日、6ターン)
Aftermath of Zitadelle (1943年8月2日〜10月2日、8ターン)
Battles for the
Dnepr (1943年10月2日〜12月21日、11ターン)
Pocket at Korsun (1944年2月1日〜3月29日、8ターン)
となる。
私は、これら8つのシナリオを習熟するまではプレイしていないのだが、同程度の実力を持つ相手と対戦した場合、最終ターン、あるいはその1つ前のターンより前に、どちらが勝者となるかを予測することはできないように思う。
ルール習得に掛かる時間
:
あなたが経験豊富なゲーマーなら、PK
のルールとチャート類を読み込んで充分にプレイを始められるようになるまでには 90分ほどの時間が掛かるだろう。
もし、あなたが初心者なら警告しておきます。
このゲームで ウォーゲームという ホビー に入門しようとしてはいけませんよ!
ルールの分かり易さと完成度
:
近頃、SPI
が開発したルール記述法への反発が増しているようだ。
それはつまり、この分野における SPI
の努力が、ルール記述の技術を (時として) より高い水準へと向上させたことを大多数の人は認めているものの、あらゆるルールが明解である本当の理由は、ある1つのルールが、
3つの別々の節の中で、微妙に異なる言い回しで繰り返し記述されているからであって、私達はそんなものを読まされているんじゃないかと感じている人が多い、というわけである。
ごく普通の散文体を使うだけで、読みやすく、完璧で、繰り返しのないルール説明書を作製できて当然、という確信が高まっているし、
私はそれに同意する。 ここに至って、どうやら PK
のメーカーも それに同意し、そうした方針で冊子を試作することを認めたようだ。しかし非常に残念なことに、彼らの試みは失敗した、と皆さんに報告しておく。
ある一点で PK
のルールは全く矛盾しているし、他にも多くの点で不明瞭かつ不完全なのだ。
メーカーが主張するように、確かに このゲームのルールは誰もがプレイを始められるように、かなり上手く記述されている。
しかし、『自分は常に適切な方法で状況を解決している』 という気分をプレイヤーに与えてくれるだけの充分な記述をどうしてもルールの中に見つけることができない、という事態がプレイのたびに発生するであろうことは明白だ。
幸いなのは、ルール上に明確に記載されている事柄の一つが、質問の送付先の住所、ということである。
プレイ・バランス
:
PK の各シナリオの初期配置表に目を通すと、東部戦線末期の状況を扱うこのゲームが、兵力の点から見て酷くアンバランスなシナリオを
プレイヤーに幾つも提供していることがすぐに分かる。多くの場合、そうした一方的な様相の乱戦は、最初はゲーマーの好奇心を刺激することができるけれども、繰り返し何度も発生する一方的
かつ ワンパターンな大量虐殺となるにつれて興味は薄れていく。
PK は、勝利条件を
「バランサー」 として用いることにより、上手くこの問題に対処している (地理上の目標地点への到達、あるいは占領という観点で勝利条件が設定されている)
。一方の陣営が兵力面で圧倒している場合は、極端にあっちこっちへと走り回らないと、その陣営は勝利できないようになっているのだ。
しかし、ここでジョン・プラドスは、本来、戦域の指揮官達に課せられる上層司令部からの制限のいくつかを、大きな利点にしてしまっている。
例えば、1941年にキエフから早期に撤退してしまえば、ソ連軍の悲劇を防止することになる。 これは疑いようもないことだが、スターリンはこの街の保持を望み、そのため、この戦域のソ連軍指揮官達が奮戦する機会を、手遅れになるまで殆ど奪ってしまった。
ところが、シナリオ内で装甲タイプのユニットを後退禁止にするルールを設定してしまうと、あまりにもソ連軍プレイヤーの選択肢が制限されてしまい、誰も喜んでソ連軍側をプレイしたがらなくなってしまう。
逆に、この点に関して赤軍指揮官に自由裁量を全面的に与えてしまうと、ゲームの縮尺(スケール)が小さすぎるため、非常に危険 かつ
史実に沿わない状況でドイツ軍と対峙することになってしまう。
このシナリオの特別ルールで見受けられる上出来の妥協案が、最初の4ターンの間はソ連軍に東方への鉄道移動を一切認めない、というものだ。 これは、
(ドイツ空軍によって) 鉄道網が麻痺させられている期間中、スターリンの命令によって増援や補充が極めて不注意にも ウクライナの首都へと押し込まれ続けた、というセオリーに基づいている。
この解決策は、ソ連軍に充分な戦術的機動力を与えてシナリオの進行に緊張感と不確実性をもたらす一方で、同軍に非現実的な戦略の選択の余地を認めていない。 このようにして、史実性
と ゲーム・プレイ の両方をしっかり両立させているのである。
( 余談です : 東部戦線の後半戦のゲームで、ヒトラーによる後退禁止ルールの使用を迫られたドイツ軍プレイヤーがそれに躊躇した場合、ロシア軍贔屓(ひいき)のゲーマーが本気(マジ)で憤激しだすことにお気付きだっただろうか?
'41年の夏、モスクワからの厳命によって頻繁に実施されたようにボルシェビキのユニットが包囲されかけるまでその場に留まってくれればなぁ、
と叫びたくなった時、あなたは先のロシア軍プレイヤーがとる態度を理解するのだ。 これって、なんでだろう? )
プレイの説明
:
PK ではゲーム・ターン毎に
天候
が決定される。季節 (月 )ごとに、空模様は 晴天 ・ 降雨 ・ 降雪 ・ 吹雪 と変化する。
雨と雪は、戦闘時のダイスの目から1を引く効果だけがある。
吹雪は、雨と雪の効果に加えて、航空ユニットの離陸を禁止し、さらに地上ユニットの許容移動力を半減する。
2ターン連続で雨が降ると泥濘になり、機械化ユニットの許容移動力が半減する。
同じく 2ターン連続で雪が降ると (または吹雪が1ターンの間 吹き荒れても) 氷結し、全てのユニット (地上・航空) の許容移動力が半減する。
各ユニットから鉄道線まで 10ヘクス以内の連絡線を引くことができ、さらに、そこから鉄道線に沿って自軍側の地図端まで辿ることができることを要求することで、補給
の影響が表現されている。“補給切れ” のユニットは移動力と戦闘力が半減し、端数は切り捨てられる。補給は各々のプレイヤー・ターンの最初に一度だけ判定する。その時に明示された補給状態は、次のそのプレイヤーの補給決定フェイズまで変わらない。補給切れの地上ユニットは、そのままいつまでもマップ上に留まることができる
(航空基地は、2ターン連続で補給切れになると除去される) 。補給切れユニットの上には “非補給” マーカーが載せられる。
ソ連軍プレイヤーはヘクス毎に2個までの地上戦闘ユニットを、ドイツ軍プレイヤーは3個までを
スタック
させることができる。さらに、両陣営とも リーダーを一人、戦闘航空パトロール(CAP)、橋頭堡、砲兵、対戦車、司令部の各ユニットをヘクス毎に1個ずつ追加してスタックさせることができる。航空基地と航空ユニットはスタック制限から除外される。
( そうです、高く高く積み上げられた扱いにくいスタックが、いくつも形成されるのです。)
ユニットが 支配地域
( ZOC ) を及ぼすには、それが装甲化または機械化されていて、移動力を少なくとも 11
は有していなければならない。例外として、ドイツ軍の降下猟兵師団も ZOC を及ぼすことが認められている。けれども、このユニットはパラシュート降下ができない。
敵ユニットと隣接している場合でも、たとえその中の1つ以上のユニットが ZOC を有していたとしても、戦闘は強制されない。しかしながら、ZOC
が及ぶヘクス内に敵のユニットが進入するには、追加の3移動力のコストが掛かる。味方の地上ユニットが敵ユニットの ZOC 内に存在すると、そのヘクス内の
ZOC は無効となる。
(訳註 : 敵 ZOC 内に味方のユニットが存在していても、移動に対する敵
ZOC の影響を無効にすることはできない。ルール 8.1を参照 )
ユニットは ZOC から ZOC へと (じかに) 移動することができる。しかし、オーバー・ランは一切認められないし、1ターン毎に少なくとも1ヘクスだけは移動できる能力を保証されてもいない。
(訳註 : その後のルール改訂により、ユニットは移動力が不足していても1ヘクスだけは移動できるようになった。ただし、その場合は敵
ZOC から敵 ZOC への直接移動は不可。)
道路は 地上ユニットが移動する際の 地形の影響
を無効にし、移動効率を2倍に高めてくれる。
鉄道移動は 各シナリオのスタート・ラインから自軍側にある、敵 ZOC や敵ユニットが存在しないヘクス内の鉄道線路上で (距離)
無制限に利用できる。鉄道移動を行うユニットは、自軍ターンに線路上で移動を開始し、終了しなければならない。また、敵ユニットに隣接する目的で鉄道移動を利用することはできず、そのターン中に他の行動
(戦闘等) を行うこともできない。
両陣営は、黒海沿岸における非常に限定的な海上輸送および海上補給能力を所持している。
町と都市は 道路と同じコストで通過可能であり、前者は地上ユニットの防御力を2倍に、後者は3倍に引き上げてくれる。
小河川は 渡河時に機械化部隊で4移動力、徒歩部隊では2移動力のコストが掛かる。小河川越しに攻撃を実施する場合、攻撃側の戦闘力から
( その数値の大小に関係なく ) 「5」 を差し引き、さらにダイスの目からも1を引く。
主要河川ヘクスサイドは ZOC が広がるのを妨げる唯一の地形物で、しかも 橋が存在するか、あるいは渡河ヘクスサイドである場合を除き、主要河川越しに攻撃することは禁止されている。橋や渡河ヘクスサイド越しに攻撃する際は、攻撃側の戦闘力を
2/3 に減少させて、さらにダイスの目から2を引かねばならない。
橋を通過するには道路と同じ移動コストで済む。
渡河ヘクスで主要河川を渡るには、機械化ユニットで6、徒歩ユニットで3の移動力が必要。
山岳と沼沢地ヘクス (極僅かしか存在しない) は、渡河ヘクスと同一の地形効果を有する。
森林ヘクスは防御力2倍、移動コストは機械化ユニットなら4、歩兵なら2である。
ユニットの能力値
は以下の通り。 【戦闘力値 - 移動力値】
ソ連軍の地上ユニットは部隊規模と移動力に違いがある。小規模な 1-7 空挺旅団 (空挺降下能力を持つがゆえに、戦闘力が致命的に低い)
から順に、3-7 ・ 4-7 ・ 5-7 ・ 7-7 ・ 9-7 の狙撃兵 (歩兵) 師団がある ( 7-7 と 9-7 は親衛部隊
) 。ソ連軍の騎兵軍団は 4-9 か 5-9 であるのに対し、戦車軍団と機械化軍団は 4-11 ・ 6-11 ・ 8-11
・ 10-11 の能力値を持つ。砲兵は大抵が 8-5 か 13-5 で、対戦車部隊は 3-7。
枢軸軍の最弱ユニットは戦闘力が1または2のルーマニア、ハンガリー、イタリア軍のユニットである。ドイツ軍ユニットの大半は 3-7
・ 4-7 ・ 5-7 だが、2-7 も少数含まれていて、これは 訓練師団ならびに保安師団である。ドイツ軍の機械化師団は 5〜16
-11 と多彩だ。枢軸軍には対戦車部隊ユニットが無く、砲兵ユニットも 8-5 の1個だけである。
このゲームでは 司令部
ユニットが重要な役割を演じる。 両陣営の司令部は 1 防御力と 11 移動力を有し、通常の地上ユニットと同様に移動する。さらに、ZOC
は持たず、自ら攻撃することも許されない。ただし、一般の地上ユニットは、味方のいずれかの司令部ユニットまで7ヘクス以内の連絡線を引くことができて初めて攻撃可能となる。この
“連絡線” は敵ユニットやその ZOC を通過でき、さらに1個の司令部はその指揮範囲内に存在する全ての (味方) ユニットに影響を及ぼすことができる。
枢軸同盟諸国のユニットは司令部から4ヘクス以内に存在しないと指揮を受けられないし、ドイツ軍の司令部と自国籍の司令部からのみ指揮を受けることができる
(他の同盟諸国の司令部からは不可) 。しかも、これらのユニットが防御時に全戦闘力を発揮するには、司令部の指揮下にあることが求められる。指揮範囲外に存在する場合は、防御力が半減
( 端数切り捨て ) になる。( ルール19.0を参照 )
枢軸同盟諸国軍
には、他にもまだ制限がある。国籍の異なる部隊同士がスタックする事は認められず、また、ルーマニア軍とハンガリー軍を互いに隣接するヘクスに配置することもできない。ドイツ軍ユニットは全ての友軍ユニットとスタックすることができる。枢軸同盟国の航空ユニットには、自国籍の地上ユニットとの共同攻撃だけが許されるという制限がある。同様に、ルーマニア軍とイタリア軍のリーダー
( ドゥミトレス と ミュッセ ) は自国籍のユニットだけで実施される攻撃、もしくはドイツ軍の1個ユニットと自国籍のユニットが共同で実施する攻撃に対して、その増加戦闘力を加えることができる。
司令部ユニットには、コマンド・コントロールを及ぼすという重要な機能に加えて、防御戦闘に 予備
を投入するという非常に重要な役目がある。
町、あるいは都市ヘクス上で1個以上の地上ユニットとスタックしている司令部ユニットは、(その場所から)
5ヘクス以内の防御戦闘ヘクスへ、自身とスタックしている地上ユニットを投入することができる。予備の投入は、攻撃側
(相手側) が攻撃宣言した後に実施できる。予備として投入されるユニットは通常の地形移動コストを消費する必要が無く
( 橋が架かっていないか、あるいは浅瀬ではない主要河川ヘクスサイドはこの場合も通過禁止であることを除き ) 、5ヘクスの範囲内なら無償で進出することができる。予備ユニットは敵の
ZOC に進入すると移動を停止させられる。投入された予備ユニットは、攻撃を受けたヘクス内で防御ユニットの戦闘力に自身の戦闘力を加える。ただし、そうした新参のユニットは、そのヘクス内の既存ユニットが得ているであろう地形効果の特典を享受することができない。
いずれの地上戦闘ユニットも、ゲーム・プレイ中に何回でも予備ユニットとして使用することができるし、予備として一旦投入されて攻撃を受けたら、再び通常のユニットとして扱うことが可能である。
PK
では、戦史上著名な両陣営の リーダー (将軍)
達が、独立したユニットとして表現されている。各リーダーには 7 または 11 の移動力と、3〜13 の増加戦闘力が与えられている。
この増加戦闘力を単独で使用することはできない ( 20世紀のウクライナの地で、英雄同士が1対1の決闘をするわけがない! )
のだが、一箇所の戦闘につき一人のリーダーが、彼自身の戦術戦闘指揮能力を表現している増加戦闘力を、一緒にスタックしている友軍ユニットの戦闘力に加えることができる。
このボーナスは 攻撃 ・ 防御 の両方に使えるものの、リーダーとスタックしている地上ユニットの中での最大の通常戦闘力
( 訳註 : 額面戦闘力 ) を超えることは許されず、超過分は無視する。
リーダー・ユニット は補給の影響を受けないし、地形効果によって増加戦闘力が減少することも無い。 攻撃時にリーダーが存在すると
+2 のダイス修正が得られるし、防御時には攻撃側のリーダーによるダイス修正を無効にしてくれる。ただし、防御時に、たとえ攻撃側のリーダーが参加していなくても、-2
の修正を得ることはできない ( PK
の戦闘結果表ではダイスの出目が大きいほど攻撃側に有利となる ) 。 リーダー・ユニットは予備を派遣できないし、彼ら自身を予備として投入することもできない。
両陣営の参戦航空兵力は、3種類のユニットによって表現されている。: “航空基地” ・ “航空ユニット”
(地上支援機) ・ “CAP マーカー” の3つである。
航空基地 は、セットアップ時に、鉄道が通過している町または都市ヘクス上に配置しておかなければならない。ゲーム開始後はターン毎に1個の基地を移動させることができる。その場合、基地ユニットを裏返しにして、鉄道線路沿いの自軍支配下の他の町または都市ヘクスへと移動させる。各航空基地は4個までの航空ユニットの活動をサポートできるが、基地そのものが移動している間は、そうしたサポートを実施できない。航空基地は敵の航空ユニットによる攻撃を受けることは無く、敵の地上ユニットによる強襲に対しては固有の1戦闘力で防御する。
航空ユニット
は、航空基地から 8〜20 ヘクスまで及ぶ航続距離と、 3〜5 の戦闘力を駆使して地上支援を行う。航空ユニットは、ターン開始時に出撃した基地と同一の基地へ帰投する義務は無いし、ZOC
を及ぼしたり 打ち消したりすることもない。さらに、出撃する都度、2つあるうちのどちらか一方の方法で戦闘に参加できる。
敵が占拠しているヘクスへと飛行し、味方の地上ユニットによる支援無しで (単独で)
そのヘクス内の敵ユニットを攻撃できる。この方法による攻撃は通常の戦闘結果表を用いて解決されるが、この方法で攻撃を受けた地上ユニットは、“混乱”
( これは空対地攻撃だけで生じる ) の戦闘結果のみ被る可能性がある。 “混乱” は “補給切れ” と同じ様な影響を及ぼす。
もう一つの方法は、味方の地上ユニットとの共同攻撃という形で戦闘に参加することだ。そのような戦闘における航空ユニットの戦力値は、あたかも通常の地上ユニットの戦力値の追加分であるかの如く加算される。地上支援を実施する航空ユニット自体は、決して不利な戦闘結果を被らない。
さらにドイツ軍の 5-20 航空ユニットは、孤立状態にある味方の地上戦闘ユニット ( 個数制限有り ) に対する航空補給任務に使用することもできる。
各プレイヤー・ターンの最後に、手番プレイヤーは自軍の CAP
(戦闘航空パトロール) マーカーを配置することができる。このマーカーは、出撃拠点となる航空基地から 12
ヘクス以内に存在する自軍の地上ユニット上にだけ置くことが可能 (
訳註 : AH版のルール・ブックでは、CAP マーカーを自軍の地上ユニット上に置くように規制する記述は無い )
で、CAP マーカーは次の相手プレイヤーのターン中、その CAP マーカーが置かれているヘクス内での敵航空ユニットの活動を全て妨害する。敵の
CAP マーカーを追い払うことはできない。
( 訳註 : エラッタとして、敵の航空基地上空に CAP マーカーを配置できないことにもなった。)
PK
においては、全ての戦闘が任意で実施される。 戦闘結果表
はダイスを1個振って解決するタイプで、戦闘比列は [ 1 - 4 ] から [ 7+ - 1 ] まである。ダイスの出目は最低で
-1、最高で 8 まで修正される。適用される戦闘結果は…
・攻撃側潰走 (Ar)
: 攻撃側ユニットは除去され、防御側ユニットは3ヘクス前進する。
・攻撃側除去 (Ae)
・膠着 (S) : “戦闘継続中” のこと。ただし、他のユニットをそのヘクス内に進入させることはできない。
・相互損害 (Ex)
・防御側2ヘクスの退却 (D2)
・防御側除去 (De)
・突破前進 (BkTh)
ユニットが 除去 あるいは 退却 させられると、必ず相手側のユニットは、先のユニットが占めていたヘクスを占領できる。無修正での戦闘比が
[ 4 - 1 ] 以上なら、確実に領土獲得を達成できるだろう。一方のプレイヤーの部隊に機械化ユニットが含まれていて、もう一方のプレイヤーの部隊には含まれていない場合、機械化ユニットを含む側の攻撃
(または防御) の戦闘比は、そのプレイヤー側が有利となるように1コラムシフトが適用される。(
訳註 : ルール 12.0 ・装甲効果のこと)
PK
の戦闘結果表から得られる最も重大な結果は、間違いなく “突破前進 (BkTh)” だ。 攻撃側ユニットがこの結果を得ると、局地的な
『装甲部隊突破フェイズ』 が発生する。要するに、その攻撃を実施したユニットに隣接していて、一切の攻撃に参加していない自軍機械化ユニットならどれでも、その突破フェイズ中に活動する資格が与えられるのだ。そのようなユニット
( それらとスタックしているリーダーも含む ) には 「突破マーカー」 が置かれ、他の全ての攻撃が終了した後に始まる 突破フェイズ
で通常どおりに移動と戦闘を行うことができる。しかしながら、航空ユニットは突破フェイズ中に移動することができない ( ただし、突破前進の発生を予測して事前に配置しておいた航空ユニットは、突破フェイズ中に実施する戦闘に参加できる
)。
両陣営ともに、歩兵部隊と機械化部隊の 補充
割合が各シナリオに記されている。その正確な割合は、両部隊タイプとも ターン毎に2ユニット以上再建されることは無いという点を除き、一定ではない。
再編成 (補充) の資格を有するのは、戦闘時に何らかの被害を受け、裏面に印刷されている “戦闘団” に戦力減少しているユニット
( ドイツ軍の SS部隊 ・ 装甲 ・ 装甲擲弾兵 ・ 5-7 歩兵師団の全てと、ソ連軍の 10 ・ 8 ・ 6 戦闘力を持つ機械化と親衛狙撃兵ユニットの全てには、裏面に
“戦闘団” が印刷されている ) である。 上記の戦闘団状態のユニットが再編成を行うには、丸々1ターンの間 移動することなく、補給下にあるいずれかの町または都市ヘクスで司令部ユニットとスタックして留まっていなければならない。そのプレイヤー・ターンの最後
( 訳註 : 管理フェイズ )
に、そのユニットは正常な戦力面へ裏返され、次のターンの開始時から通常どおりに 移動 ・戦闘 ができるようになる。
初期配置時に戦闘団状態でシナリオを開始するユニットは、そのシナリオをプレイしている間は再編成を行うことができない
。
( 訳註 : これは、ルール 13.2
の末尾に書かれている 『そのシナリオの進行中に戦闘団となったユニットだけを回復させられます』 から導き出される “掟” ですが、再編成の可否の区別をつけるのが
やや面倒かも )
戦闘団は、あらゆる点で通常の地上ユニットと同様に活動する。
ドイツ軍プレイヤーは装甲師団を “装甲戦闘団” に分割することもできる ( 1個師団につき、3個の
2-11 戦闘団へ分割する ) 。その手順は補充のそれとは逆であり ( 追加分の 2-11 ユニットが用意されている )、一度分割されたユニットを元に戻すことはできない。
両陣営ともに、要塞 を建設できる。要塞カウンターを設置するには
丸々1ターンが掛かる。自軍ユニットが1ターン間留まり続けていた、町や都市ではない補給下のヘクス上に建設される
( 訳註 : 森林ヘクス上も建設不可 )
。 要塞は、そのヘクス内に存在するユニットの戦闘力を2倍に引き上げる。
さらに、両陣営は要塞建設とほぼ同じ手順で、渡河ヘクスに “ 橋頭堡
” を建設することもできる。この橋頭堡カウンターは “橋” と同様に機能するが、それを建設したユニットがそのヘクスから離れてしまうと、その橋頭堡カウンターは除去されてしまう。この点は、要塞の場合はユニットがその場を離れて無人となっても、後に再び占有して活用できるのとは違うところだ。
最後に、戦闘時の 砲兵と対戦車ユニット
用の特別ルールについて。
対戦車ユニットは、戦闘時に攻撃側が装甲効果を得る場合に生じる1コラム・シフトを無効にする。
砲兵は、河川越しに攻撃する場合でも、その攻撃力は全く減少しない。
以上の事柄は、全て ターン・シークエンス
によって制御されている。
ターン・シークエンスは 天候決定 から始まり、補給決定フェイズ → 移動フェイズ
→ 戦闘フェイズ → (もしあるなら) 突破移動・戦闘フェイズ を経て、“管理セグメント”
で終了する。
管理セグメントでは CAP の配置、要塞と橋頭堡の建設、補充および装甲師団の分割を行う。
一方の側のプレイヤー・ターンには、優に 30〜40 分は掛かるのが普通だ。
評価
:
もしあなたが
OSG が出している
PK の広告を読んでいるなら、
『これは単なる “焼き直し” ではない …… むしろ、経験を積んで円熟したプラドスが、長年に渡るプレイテストの末に手掛けた
再デザイン、さらに OSG の専門スタッフによる 再デベロップの成果である 』
と謳っている箇所を、たぶん思い浮かべるだろう。実にいい感じではあるが、しかし悲しいことに、何か重要な点で ちっとも正確ではないように思える。
私はこのゲームの古い初版 ( 訳註 : Rand
社が発売した "Von Manstein"
のこと ) を所有しているが、パッケージは別としても、古いバージョンと今回の新バージョンのあいだには殆ど違いが見られない。とは言え、それは必ずしも悪いことではなく、後で簡単に説明するけれども、この新バージョンには
気に入った点が沢山ある。しかし OSG
の広告文には、PK
を購入することによって、膨大な量の改訂や包括的な最新のシミュレーションを入手できるような意味合いがある。でも本当は、ちっともそうでは無いのだ。
新版の PK
で最も腹立たしい箇所は、旧版もそうなのだが、明らかにそのルールの中にある。やや学術的 且つ 親しげな語調で書かれていて、読者とデザイナーが同一視され、(そのルールは)
PK というゲームを観察することが主目的となっている。従って、必ずしも全ての事項を詳細に説明する必要性は無い、という考えの下で書かれているようだ
( 実は、殆ど何も詳しく説明されていない ) 。
このような姿勢は、我々のホビーでは全く無縁というわけではなく ( 無縁となって欲しい ) 、もし PK
のルールを OSG
の新ラインナップの他のゲームの基準にするつもりなら、この会社は危うくなる。私は2ダース以上の質問を ブロードウェイにある彼らの事務所に送らなければならなかった。私の質問はルールのほぼ全ての章に渡る項目に及んでいる。このゲームのルールが校訂、あるいは校正されていることですら、私には到底信じることができない。
気になる例を挙げてみよう。"Kiev
Pocket" シナリオは、キエフから数ヘクス西に主戦線があり、さらに グデーリアンの装甲部隊がマップ北端の4ヘクス上で待機している状況で開始される。このシナリオの初期配置ルールには、
『歩兵(のみ)のスタックを除くすべてのソ連軍ユニットは、Chernigov
と Novgorod-Seversky で、 グデーリアンの部隊と向き合う状態でゲームを開始してはならない』
と書かれている。この2つの町は、グデーリアンの部隊のスタート・ラインからそれぞれ3ヘクス、および1ヘクス離れた位置にあるので、これら2つの町の位置は、ドイツ軍部隊から正確にどこまでの距離が
“向き合う” 状態と見なされるのかを決める基準としての役には立たない。ましてや、ルールブックにはその事について述べている箇所はどこにも無い。
さらに広告文について言及すると、
『ロシア戦役は、プレイヤーの皆さんが滅多に最後までプレイすることができない1本の長大なキャンペーン・ゲームにするよりも、複数の管理された短編シナリオにバラしてしまう方が大抵は具合が良いのです』
と OSG
は説明している。
このゲームの初版ではさらに、
『キャンペーン・ゲームは省略されています。理由は、(このゲームで扱う) 長い期間中のドイツ南方軍集団
(AGS) では、マップ外やマップ上のほんの一部分 (すなわち、クルスク) で発生した戦闘の結果、多くの戦力の変遷や配置変更が否応なく発生しました。そのため、長時間掛けて行う1回のゲームでは、一貫性のある円滑なプレイを保つことができなかったのです。』
という説明がある。
私は次の2つの基本原則は正しいと考える ;
AGS がロシアで過ごした全期間をカヴァーするキャンペーン・ゲームというのは、ウンザリするほど時間が掛かるだろうし、 PK
のサイズのマップ上でプレイする限り、どのような意味深い歴史的な点から言っても、一つにまとめ上げることは難しい。
しかしながら、プラドス氏と OSG
のベテラン・スタッフ達が、この作品のディベロップメントを完璧に仕上げることに気乗りしなかったのだとしても、連結ルール、例えば同じ年の各シナリオを3つの
“長期シナリオ” へと連結するルールをなぜ提供できなかったのか、私には理解できない。
この長期シナリオは約 30 ターンの期間となり、割合に複雑なメカニズムを PK
に与え、プレイは確実に長く感じるだろう。しかし同時に、このホビーの現在の基準から見れば、間違いなく扱いやすいものになると思われる。これらの追加事項は、より多くの歴史的な深みを
PK に与えたことだろう。 と言うよりも、現状のショート・シナリオ形式では、戦術的 ・ 作戦的な部隊指揮の機会をプレイヤーに提供してはいるが、戦略的なレベルでプレイヤーがもたらすことができる変化量は僅かしかない。各シナリオでのそれぞれの陣営は、プレイ開始から終了までずっと攻撃側
または 防御側を担当するようになっていて、各々の役割が変わることは無く、各シナリオの戦役を再現するために与えられているタイム・スパンは短い。
扱う期間がもっと長いゲームでは、プレイヤーは、その長い期間の中で採用し得る作戦指示の代替案の全てを、自分で探ることができたものだ。
さらに余談 : 当然のことながら、シミュレーション・ゲームは完璧にはディベロップメントされていないことは、今日まで
やむなく容認されている我々のホビーの特徴である。 ここで直ぐに頭に浮かぶ例が、SPI
の "Drive on Stalingrad"
。 このゲームのディベロップメント不足は PK
で見受けられるそれとは丁度正反対のものだが、両者から感じる不満は殆ど同じものである。つまり、12ドルを支払って DoS
を購入した後、箱を開けたら長期キャンペーンが1本用意されているだけで、(短編)シナリオが1つもないことを、あなたは本当に信じられますか
?!? ってことだ。もし、趣向の異なるデザイナー連中の何人かを結集することができたなら、恐らく、私達は誠に素晴らしい南方軍集団のゲームを手にしていたことだろう。その一方で、この問題は何回も採り上げられてきたのは確かなのだが、まだ解決されるには至っていない。
OSG
の広告文は南ロシアでの戦闘について、こうも述べている。
『 歴史研究家達は、時間や場所というものが、単にある出来事の範囲や重要性を表現するのに部分的に有効だということを研究しているのです。ですが、弊社のゲームをプレイすることによって、私達はユニークな手段
… 驚愕するような出来事の真っ直中に私達を放り込み、深い見識を与えてくれる … を得るのです。』
新版の PK
を目にしたりプレイする以前にこれを読んだとき、私は狂喜したものだ ―― ゲームの史実的正確さに対する我々の欲求や要望に対して、厚かましくも率直に敬意を払うウォーゲーム会社だな! 1979年の珍事だ!
にも関わらず、戦闘序列を簡略化したうえに航空輸送ルールを持たないゲームを、この会社は後に我々に提供し続けているのである。
師団または師団を分割した規模のユニットを使用し、史実にまったく忠実なロシア戦線のゲームを作ることは不可能、と私は確信しているから、戦闘序列の簡略化については、大抵は大目に見ることにしている。そもそも、なぜ扱いにくい多数のソ連軍
1-7 狙撃兵師団ユニットでマップ上を散らかす必要があるのか (訳註
: この箇所は意味不明) 。ゲームの史実性を損なうことなく、ここで成し遂げていること
(訳註 : 多分、戦闘序列を簡略化したこと) と同様、簡単にそれらを 4-7 や 5-7 のユニットへ集約できるというのに。
どうにも引っかかるのは、OSG
が1つの独立した会社だと自称している一方で、他の別会社の製品であるかのようなゲームを製作しているように見えることである。
同じ問題点は、航空輸送ルールの欠如にも当てはまる。とりわけドイツ軍にとっては、たとえ限定的なものだとしても、その空輸能力はタマン半島やクリミア半島での闘いにおいて決定的に重要であることは証明されている。空輸ルールを含めるとなると、別の新しい段落
( あるいは恐らく、空輸関連の単なる1つの従属項目 ) を、ルール・フォルダーの各ページの左側にたくさんある空白スペースに追加することを余儀なくされるだろう。
言うまでもなく、通常の航空ルールは PK
最大の不評の原因である。この航空ルールは、アヴァロン・ヒルが "Blitzkrieg"
の初版を出したときには、既に “過去のもの” になってしまっていたのだ。
PK
の駄目な部分を事細かに述べてきたが、それでも PK
は悪いどころか良いゲームであることを説明していきたい。
当初 私は、PK
には 一律的な第2移動フェイズが無いことから、このゲームが “電撃戦” のシミュレーションから “長期戦 (居座り戦)” のそれへと変質してしまうのではないかと危惧していた。 が、幸いなことに、そうではなかった。このゲームでは大半のユニットに
ZOC が無く、それを持つユニットも流動的な ZOC しか持たない。故に、途中で途切れた箇所がある防衛線は全くその役目を果たさないことは直ぐに理解できる。
実際、殆どのシナリオにおいて、ゲーム終了までにマップ上で繰り広げられる状況を記述するには、“流動的” というのは あまりに穏やかすぎる表現だと言ってよく、“見渡す限り至る所で乱戦”
と言った方が適切である。
常に注目を集め “引っ張りだこ” となる SS 部隊や親衛部隊のユニットは、あらゆるシナリオで登場するし、ルフトヴァッフェ
(ドイツ空軍) は どこにでも姿を現す。さらに、プレイ開始時に、どちらか一方の陣営の初期状態が、たとえどれだけ深刻に見えたとしても、両陣営は局地的な反撃をやってのける強大な
“火消し” ユニットを常に保有している。
このゲームで唯一 不足していないのは、「劇的な状況」 である。 ―― 動きが素速く、獰猛で、決定的、しかも血生臭い戦闘の数々が、確かに存在する。
これまでの話を基に、結論を述べることにしよう。
私は、Panzerkrieg
を初心者ゲーマーに薦めることはできない。 ルールブックを手にしながら 初心者が一度このゲームをプレイすると、少なくとも不満を持ち続けるようになるだろうし、恐らくは、このホビー全般から足を洗う準備を始めることだろう。
同様に、歴史全般に興味を持つだけのベテラン・プレイヤーにも薦めることができない。 PK
は、そんなあなたに ヒストリカル・ゲーム・プレイ への円滑な参加を提供するには不十分だと思われる。
しかし、もしあなたが私のように本物の東部戦線マニアなら、是非とも このゲームを手に入れて欲しい。 このゲームに存在するいくつかの制約や欠落に直面して、あなたも歯ぎしりしたり、服を掻きむしったりするだろう。
しかし同時に、第2次世界大戦の東部戦線という前代未聞の出来事のかなりの部分を横断的に追体験するのは、とてつもなく楽しい、とも感じるだろう。
Fin
本記事掲載誌の Campaign magazine 91号は、1979年に発行されました。
本記事は、著作権の所在を特定できていません。 そのため、ネット上で この和訳文を公開する旨を著者の Ty
Bomba 氏に連絡し、 これを知っていただいた上で公開しています。
Translated
by T.Yoshida
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