第三次ハリコフ戦ゲーム

ハリコフ攻防戦 【エポック】
    その2

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「ハリコフ攻防戦」 の特徴

第三次ハリコフ戦当時、 ドニエプル渡河を目指して猛進するソ連軍にブレーキが掛かった要因は、補給線が延びきって補給物資が滞った事が挙げられます。では、補給ルールを持たない「ハリコフ攻防戦」は、どのようにして史実を再現しているのでしょうか?

★ゲーム前半、ソ連軍が前進できる理由

ゲーム開始時はマップの北西と南東にドイツ軍の歩兵師団が6つ存在するだけで、マップ中央にはソ連軍の進撃を妨げるものがありません。ソ連軍は史実に近い速度で西進できます。
対してドイツ軍の各増援ユニットは、史実よりも遅いタイミング(1〜2ターンの遅れ)でマップ上に登場するように設定されています。例えば、第4ターンに登場する GD と 2SS の両装甲師団がハリコフに到着する以前にソ連軍はハリコフ市街を制圧できるので、史実でのSS装甲軍団によるハリコフ放棄といった状況は、このゲームでは起こりにくくなっています。
これらの相乗効果により、ソ連軍は大した抵抗を受けることなくドネツ川以西の各都市へ進撃・占領することができるのです。


★ブレーキが掛かる理由

ソ連軍は、勝利ポイント源であるドネツ川以西の都市地域まで進撃する必要があります。しかし、これらの都市はドイツ軍増援部隊の登場エリア(マップ南端と西端)近くにあるので、ソ連軍ユニットが都市地域に到着するころには、ドイツ軍増援ユニットもその地域で待ちかまえているわけです。
また、ソ連軍ユニットの戦闘力は全体的にドイツ軍のそれ(特に装甲師団の)と比べて多少劣る値に設定されている為、無理な攻撃を行うことができません。これはハリコフ周辺へ進出するソ連軍部隊(40、3T、6の各軍、そしてポポフ戦車集団)に顕著な傾向であり、これらの部隊は自発的にドイツ軍を攻撃することは怖くてできません。一方、ドネツ川南方へ進出する 1GD、3GD、5Tの各軍担当方面はドイツ軍部隊との戦力差はそれほど無く、ゲーム終盤までいい勝負を展開します。

これらの理由で、ソ連軍はドイツ軍の増援ユニットと遭遇するゲーム中盤以降は全般的に守勢に回らざるを得なくなります。


★ドイツ軍の反撃が成功する理由

右に用意した、このゲームの戦闘結果表(CRT)をご覧ください。
AEは攻撃側全滅、ARは攻撃側1ヘクス後退、EXは両軍とも1ユニットずつ除去、D1〜4は防御側1〜4ヘクス後退、DEは防御側全滅の意味です。

戦闘で通常用いられる、2:1〜4:1 のレートはほぼ防御側が後退する結果になっています。
ゲーム序盤のソ連軍の攻勢時は、この流動型のCRTのせいでドイツ軍部隊をなかなか除去することができません。
しかし、中盤以降のドイツ軍側の反撃時には、特に平地地帯においては装甲部隊を主力にしたZOC包囲攻撃による除去や、2ヘクスの戦闘後前進によって隣接するソ連軍ユニットを包囲するチャンスが増大します。
それでも、ソ連軍がハリコフ周辺の森林地帯に籠もるようになると、ドイツ軍の反撃も鈍り始めます。ここから先はハリコフ市街の1ヘクスを巡る力押しの様相を呈すようになり、やがてゲームが終了します。

  1:2 1:1

2:1

3:1 4:1 5:1 6:1
1 AE EX EX EX D1 D2 D3
2 AE AR AR D1 D2 D3 D4
3 AR AR D1 D2 D3 D4 DE
4 AR D1 D2 D3 D4 DE DE
5 D1 D2 D2 D3 D4 DE DE
6 D2 D3 D3 D4 DE DE DE

 

 

 


「ハリコフ攻防戦」のカラクリは成功しているのか?

シミュレーションとして考えた場合、ドイツの増援部隊の登場を史実よりも遅らせているというのは疑問に感じます。
しかし入門用ゲームとしての成り立ちを考えると、ソ連軍に適用させる不自然な移動制限ルールや厳しい補給ルールを盛り込むのは百害あって一利なしと言えるでしょう。
ですから、それらの陰謀ルール無しで第三次ハリコフ戦の全体像を再現することに成功している本作は、手放しで褒めることはできないものの、高い競技性も相まって “ 佳作 ”と認定して良いと思います。

20年も前の作品なのに、いまだにプレイされ続けているという現実は、逆に第三次ハリコフ戦ゲームにいかに傑作が少ないかということを物語っているとも言えるでしょう。

 

 

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