7 日曜日の朝のことです。
朝起きていちじくの顔を見に行くと、ゲージの近くに置いたシューズのひもが、いつもまにかほどけて、ひもの先がゲージの中に入っていました。
ん?いちじくのゲージにいったい誰がひもを入れたの?
ひもの先っぽのかたい部分はもうかじられてなくなっていて、ひも自体もぼろぼろになっています。
「だあれ?いちじくにズックのひもあげちゃったの?」
家族は誰もそんなことしていないと言うのです。おかしいなあ。
あーあ、ひも買い変えなくちゃね…急にみずぼらしくなったシューズのひもを結びなおして、ゲージから少し離して置いて、朝ご飯の用意に取りかかりました。しばらくして玄関の前を通りかかったら、どうしたことでしょう。シューズのひもがまたいちじくのゲージの中に入っていたのです。
え?いちじく、あなたのしわざ?まさかね。一瞬だけそう思ったけど、そんなことできっこないことです。
私は狐につままれたような気持ちがしました。
いちじくが「どうかしたの?」という顔で、私を見上げていました。
「ねえ、おまえにひも渡したのは誰?」つぶやくようにいちじくに尋ねて、
「ねえ、いちじくにズックのひも、誰か渡してない?」大きな声で聞いたけど、みんな「知らなーい」って声をそろえて言うのです。
おかしいね。いったい誰?不思議でたまらなかったけれど、そこにいてもわからないから、またシューズのひもを結んで、ゲージから少し離れたところに置きました。
日曜日の朝は、たいていてお掃除とお洗濯をしています。お部屋の掃除をして、玄関を掃除しようと思っていちじくのところへやってきたら…
「あーーっ!!」
またです。またシューズのひもがほどけていて、長くのびていちじくがそれをかじっていました。
「こうなったら、犯人を見つけるわ!!」
私はさっきと同じようにまたシューズのひもを結びなおして、そしらぬ顔して、シューズをゲージから少し離れたところにおいて、玄関からいったん離れ、そして、壁からそっといちじくのゲージあたりを見張っていました。
そして私は見たのです。
私がその場を離れたとたん、いちじくはゲージのすきまから、まるで遠山の金さんのように、腕をぎゅっとのばして、シューズの結び目に手の爪をひっかけて、シューズをたぐりよせ、そしてひもがほどけたら、満足そうにそのひもをくわえて遊んでいたのです。
ぎゅっと腕をのばしているときの格好と来たら、いったいいちじくが犬なんだろうかと思うくらい不思議な格好でした。顔をゲージにぴったりとつけて、のびる限りの腕をのばして一生懸命シューズに手をとどかせようとしていたのです。
私はその姿を見たら、いちじくを叱る気持ちをすっかりなくしていました。もうその姿が可愛くて可愛くて、シューズのひもがダメになっちゃうのは困るのだけど、こんなに一生懸命していることは「いけない」なんていうことじゃないような気がしていたのです。
それでその日一日、それから次の日学校に行ってからも、そのいちじくの姿を何度も思い出しては、ああ、可愛いいちじくが家にいるのはうれしいなあと思ったのでした。