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 いちじくは手術の前と変わらないくらいに元気になりました。もう元気で元気で、うれしいけれど、すごいんです。
 パピヨンってとても小さいから、運動が苦手なのかなと思っていたら、大間違い。いつもはのんびりやのいちじくだけど、あんなに小さいのに、階段を駆け上がったり駆け下りたりするのはお手のもので、椅子にも簡単にジャンプしてそれから机の上までぴょんぴょんとあがっちゃうのです。猫みたい…
 今までいちじくが食べたら困る物、危ない物、さわられたくない物は、机の上などにあげていたのに、だんだんとそれだけじゃむつかしくなってきました。
「あがっちゃダメ」というとすぐに降りてくるおりこうさんだけど、でも、机の上には、おもしろいものがあるって、わかってしまったみたいで、すぐにあがろうとします。
 それから動きもとっても素早いのです。走り出すと、身体がまっすぐになって、耳がうしろになびいて、流線型というのでしょうか?そんな形になって、びゅーと駆け抜けていきます。
 朝、出かける前にお化粧しようとコンパクトを開いたら、目の前を、いちじくがさっと駆け抜けて行きました。みると、ファンデーションのスポンジがなくなっています。
「ああー。いちじく持ってた?」
「待って…」なんて言っても、いちじくは待ってなんてくれません。口にくわえてまんま、私の方を振り向いて、私の顔を可愛い顔してじっと見るけど、すでに半分くらい食べてしまってなくなっています。他におもちゃいっぱい持ってるでしょう?どうして、スポンジがいいの?おまけに食べちゃって、お腹痛くなっても知らないからね。
半分になったスポンジを見て、憮然としていたら、いちじくは申し訳のなさそうな顔をしていたのです。それなのにです。それなのに、いちじくったらまた私を怒らせるようなことをしたのです。
 私はあまりブランド品といえるようなものは持っていないのです。お誕生日に家族からエルメスのトートバッグをもらいました。エルメスって言っても、ただの布でできた手提げぶくろです。どーってことないんだけど、(なんて言ったら、家族にしかられちゃいますよね)でも私にしたらお誕生日にもらったもので、毎日重宝して使っている大切なものなのです。
いちじくはスポンジなんか食べたものだから、きっと気持ち悪くなったのです。突然、ゲーゲー言いだして、大丈夫?って思っていたら、あろうことか、エルメスのトートバッグの上まで行って、そこでスポンジと食べたものとを一緒に吐いて、トートバッグを吐いたものだらけにしたのでした。
 あのね、他にも場所はいっぱいあるでしょう?自分のトイレシートの上とか、そうでなくても、床とか、あんまりうれしくないけど、クッションの上とか…、でもね、何も大事にしてるトートバッグの上に吐かなくてもいいでしょう?もちろん私、心配はしてるのよ。大丈夫かなあって。でもね、そんなものを食べちゃうあなたが悪いんだし、吐いちゃったんだから、もうきっと大丈夫だしね、やっぱりね、私怒ってるのよ。
 それなのに、いちじくはまたすごく可愛い顔をして私をじっと見つめて、すごくいいお顔をして、「どうしたの?何を怒っているの?私、力になれる?」なんて可愛い顔するものだから、結局は、しょうがないなあと思っちゃうんだよね。
 

 

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