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 いちじくと一緒にいると、予想もしなかったおもしろいことがいっぱい起こります。

 ある日のこと、ろうかを歩いていて、いちじくのケージのまわりにいちじくのウンチが転がっているのを発見したのです。
「ん?どうしてこんなところにウンチがあるの?」
いちじくはお部屋やお散歩のときにはウンチをしません。ケージの半分に毛布が敷いてあって、もう半分のところにペットシーツが敷いてあって、いちじくはそのペットシーツのところでウンチとおしっこをします。ウンチが落ちていたのは、ケージの中ではなくて、外でした。
「私が気がつかないときに、ケージの外でウンチをしちゃったのかな?」
初めてケージの外のウンチを見たときに、そう思ったのです。でもケージのウンチを見たのはそれっきりではなくて、それ以来何度も何度もケージの外に落ちているウンチを見ることになりました。
いちじくは眠るときもケージの中で寝ます。
「おやすみね」とケージの中に入るようにいちじくに言うと、いちじくはもっと遊びたいけど、仕方がないんだよねと言ったふうにケージの中に入っていくのです。
 その日もいつもと変わりなくケージの中に入っていきました。そして朝、いちじくの顔を見に行くと、またしてもウンチがケージの外に落ちています。
 夜、おやすみって言ったときには絶対に外にウンチは落ちてなかった…それは確かだったのです。いちじくが外へウンチを出したの?いったいどうやって??
 不思議なことは知りたくて仕方がない私です。また階段の壁の影にかくれていちじくをじっと見ていました。家族がそんな私を見て、
「そんなとこで何してるの?」って聞くのです。
「今、ちょっといちじくを観察してるの」
「そのかっこう…なんか変な人みたいだよ」
確かに階段の途中だからとても不自然なかっこうで、ずっといちじくをのぞいてみているのはきっとよそからみたらとても妙だと思います。でも何を言われようと、どうやってウンチを外に出すのか見てみたいから、ずっとずっとそこで待っていました。いちじくも私がのぞいているのを感づいているかもしれないと思ったけれど、でもいつかはウンチをするはずだからとのぞいていると、とうとうチャンスが訪れました。いちじくがしっぽを垂らして、少し背中をうかすような妙なかっこうをしたのです。そしてウンチをしました。息を殺してみていると、なんといちじくは前足でウンチを蹴るようにして外に出したのです。びっくり!!ウンチでお部屋が汚れるのが嫌だからなのでしょうか?そうですよね。犬はとても鼻がきくから自分のケージにウンチがあるのは、嫌は嫌でしょうね。
 でもね、いちじく、そんなとこにウンチがあると、私もね、踏みそうで嫌なの。ウンチに気がついたらすぐにウンチを捨ててるでしょう?シーツだって変えてるでしょう。だから、そんなことしないでよ。いつか絶対に踏んじゃうよ。私、提案させてほしいのだけど、ウンチをしたら、鳴いて知らせるというのはどうかしら?踏んでしまうくらいなら、よろこんでいつでも掃除させていただきますとも。
 
 このあいだもとても笑っちゃうことがありました。
 いちじくはなぜかピアノの椅子の下に敷いてある細長いじゅうたんが好きです。ときどき寝ころんで、それからとても困るんだけど、ときどき糸を引っ張って、その糸を抜いて食べてしまいます。ダメって言っても言っても、食べてしまいます。
 そんなある日の朝、いちじくがなんだかなさけないようなすがるような顔をしてケージの中からクーンを鳴いて私を見るのです。
「どうしたの?」
ケージの外へ誘うと、いちじくはへんてこな歩き方で出てきました。足でも痛いのかと思って、いちじくの後ろへ回って見て、事態がわかって、いちじくには申し訳ないけれど、大笑いしました。
 だって、いちじくはおしりからウンチを2つもぶらさげていたのですもの。じゅうたんの糸がおしりから出ていて、その先にウンチがふたつぶらんぶらんとくっついていて、いちじくが歩くと、いちじくがケージに置いておくのも嫌だと思ってるウンチがそのあとを追いかけるようにぶらさがって、ついて回っているのです。
「いちじく、またじゅうたんの糸を食べたでしょう。ううん、そんな顔しても、わかってるんだからね。自業自得なんだからね」
 いちじくは私の言うことがわかったのかわからないのか、「早くこのぶらさがってるもの取ってえ」とまたすがりつくように、私の顔を見ていました。

 

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