天国とんぼ 「一寸一言二言三言」

 ●No.0022 亡き母のメッセージ

 私の母は、「夫を泣かせるか、子供を泣かせるか、という選択をして、私は夫をとった。何にも出来ないあの人を単身赴任で送り出すなどということは出来なかったから、お前たちには何回も転校をさせてしまい、本当に申し訳なかった。お前なんか、小学校だけで四回も転校し、大事な高校の時も、転校させてしまった」と私に、詫びたことがありました。

 そのときに彼女はこう言いました。

 「私は幼い時に両親を亡くしたけれど、そんなことでぐれたりはしなかった。こんなことで負けてたまるかと思っていた。こんな駄目な親でも、いないよりは、ましでしょう。私たちは、親や国や時代を選べないの。ただ受け入れるしかないのよ。だから、そんなことで親を恨んだり、運命を呪ったり、絶望したりするような、か弱い子には育って欲しくなかった。ただ祈ることしか出来ない駄目な親で本当にごめんなさい」と。

 彼女が言いたかったのは、「人間は与えられた環境の中で生きなければなりません。その中で、絶望することなく、与えられなかったことに目を向けるのではなく、与えられたことに目を向け、感謝して生きる人間になってほしかった」というような意味だったと理解しています。


  


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