「ぶらうろ」
                         ひーやん

(参ったなぁ…)
 口には出さずに呟いて、まことは目の前を通り過ぎる人の波を眺めた。
 駅口から吐き出された人々の流れは、さながらダムから放流された水
のように怒濤の勢いをもって街の中へと向かっている。
 夏休みに入った最初の週末。若者の町として知られるこの場所は、ざ
っと見渡しただけでも普段の数倍以上の人で溢れかえっており、そのざ
わめきも相まって本当に川の流れを眺めているかのようだった。
 さしずめ今の自分は、流れから外れた淀みの中にいるようなものかと
思いながら、まことは額にうっすら浮かんだ汗を拭い隣にいる少女に目
をやる。
 薄い水色を基調としたノースリーブのワンピース。自分より頭半個分
低いからこそ分かるうなじの白さ。人の淀みの中にあってさえも、その
少女からは高原の岩清水にも似た涼やかさを感じられ、まことはふっと
口元を緩めた。
「はぐれちゃったね」
 声をかけられた少女、水野亜美はその声にまことを振り仰いだ。
「そうね」
 応える声に困ったような響きはない。
 こんな人混みの中で一度はぐれたら、再び会うのはかなり難しそうだ
がそこはそれ。いくら姿が見えないからと言っても今どき携帯で連絡が
とれないのは山奥くらいであるし、亜美が常に持ち歩いているシレバー
ミレニアム製の小型端末を使えば、例え手ぶらでいても皆の位置は特定
できるだろう。
「どうしよっか?」
 それが分かっているから、まことも落ち着いた様子で亜美にこれから
の予定を尋ねた。
「みんなを探す?」
「……慌てなくてもいいんじゃないかしら」
 案の定、亜美はわずかに小首をかしげただけでそう答えた。癖である
ところの「口元に手を当てる仕草」が出ないのは、あまり悩んでいない
という証明。
「元々行く場所を決めていた訳でもないんだし、それにまこちゃんとこ
ういう所へ来るのも久しぶりだもの……」
「それも…そうだね」
(モット、イッショニイタイ)
 言葉の裏に込められた想いにまことは照れたように頷き、再び人の流
れに目を戻した。
 今日は久々に五人そろってのウィンドウショッピング。一応夏物の服
や水着を見ようという予定を立ててはいたが、これといって決まった目
的が無いのもまた事実だった。
 期末試験やら何やらで、ここのところ五人揃って出かける事も無かっ
たからたまにはいいでしょ、とは美奈子の弁。
 実際に皆で出かけるという事は随分久しぶりだったという事もあり、
反対する者は誰もいなかった。加えて亜美の場合、どちらかと言うと賑
やかな場所よりは静かな所を好むため、まことと二人きりでどこかへ出
かける場合でも、このような場所にはあまり縁が無かったのだ。
「それにしても美奈子ちゃん達ときたら――――」
 駅を出るやいなや、後ろにいた自分達を振り返りもせずに人混みの中
に飛び込んでいってしまうのでは、五人揃っても何もあったもんじゃな
いとまことは思う。
(わざと……じゃないよなぁ)
 隣の亜美をちらりと見つめ、自分の考えを否定する。
 今の二人が置かれた状況を見れば「はぐれた」と言うよりはむしろ
「置いてきぼりにされた」と表現する方が正しい。だからと言って、そ
れが自分と亜美を二人きりにする為とも思えない。
 もっとも、そんな疑惑を感じると同時に美奈子やうさぎの思惑なんて
こちらが詮索するだけ時間の無駄という気もするのだから、彼女らの日
頃の素行が伺い知れようというもの。
「電車から降りてまだ五分もたっちゃいないってのに、まったくみんな
鉄砲玉なんだから。そう思わない?」
 深く考えることを放棄して、まことは亜美に向き直った。
「本当ね。どこでお昼にするかすら決めていないのに、そんなに楽しみ
だったのかしら?」
 うさぎに半ば引きずられるようにとはいえ、レイまでもが喜々として
雑踏に消えていったのを思いだし、亜美はくすりと笑う。
 口ではそう言ってみるものの、実は亜美だって今日の日を楽しみにし
ていた事に変わりはない。
 それが分かるから、まことの口元も自然とほころぶ。
「ほんっと、みんな暑いのに元気だよねー」
 冗談めかした口調に亜美も悪戯っぽく笑いかける。
「あら、そう言うまこちゃんはもう夏バテ?」
「まさか。でもあの人混みをかき分けて行くのはちょっと遠慮したいな」
(さすがに亜美ちゃんともはぐれちゃうのは、嫌だからね)
 柔らかな表情のまま、まことは言外に想いを込めて亜美の手をとる。
「……」
 亜美もそれに応えるように黙ってまことの手を握り返した。
 実際のところ、美奈子やレイとだけ来ていれば、まことの行動も今の
うさぎ達と大差はなかっただろう。今日そうしなかったのは、ひとえに
亜美の存在があったから。
 勿論、亜美がいることでまことの行動が阻害されているという訳では
ない。その気になればまことだって、うさぎと同じように自分のペース
で亜美を引きずり回すことくらいするし、そうしたところで亜美が嫌が
ることはないだろう。
 ただ、そういう楽しさは普段うさぎ達といる時に十二分に堪能してい
るので、せめて亜美と二人の時くらいはゆったりとした時間の流れを楽
しみたい。それがまことの偽らざる気持ちだった。
「……ここにいても仕方ないから、あたし達も行こうか」
「ええ」
 二人はこくりと頷きあうと、仲良く手をつないだまま人の流れに足を
向けた。


       ☆         ☆         ☆


 人混みをさけるように歩道を歩きながら、目についたショーウィンド
ウに飾られた夏物の服を眺める。時々は店の中にまで足を踏み入れもす
るのだが、「買う」よりもあくまで「見る」のが目的なので、店員の視
線がこちら固定される前に移動する。
「あ、あの人こっちを見てる。次いこ、次」
 ターゲットを定めた店員が彼女の方に足を踏み出すより早く、まこと
は亜美の手を引いて店の外に出た。とたんに夏の暑さが二人を包み込む。
「やれやれ、これで三件目だよ。それなりに混んでるのに、なんですぐ
目をつけられちゃうかなぁ」
 暑さのせいだけではない汗をぬぐいながら、まことがぼやく。
「まこちゃんは何を着ても似合うから、きっと店員さんも放っておけな
いのね」
「そうかなぁ?」
 何が嬉しいのかにこにこ顔の亜美に、まことは不思議そうに首をひね
る。実際に店員の視線から、話しかけられる相手は亜美ではなく自分だ
ろうという事までは分かるのだが、どうしてそうなるのかが分からない。
 服のセンスで言えば、自分より亜美の方がよほどいいとまことは思っ
ている。ブランド品で身を固めている訳ではないが、亜美の外出着はい
つもそれなりに品があり、何よりそれが彼女の雰囲気に合っていた。
「……もしかして、あたしの格好って、変?」
「どうして?」
 突然の言葉に亜美は首をかしげる。
 まことの今日の出で立ちは、若草色のトラックシャツにオフホワイト
のスリムパンツ。派手に動くとおヘソが見えかねないといういささか大
胆な格好だが、季節が季節であるだけにむしろ健康的な美を感じさせる。
「いやほら、あんまり変だから、見るに見かねて声をかけてくるとか…」 
「そんなことないわ!」
「え?」
「あ」
 思わず強く否定した自分の声の大きさに驚いて、亜美は慌てて口元を
押さえると顔を赤らめた。
 まこと自身は自分の身長をコンプレックスにしか思っていないらしい
が、端から見れば彼女は十分にモデルとしての資質を備えていた。ブテ
ィックの店員にしてみれば、彼女の服をコーディネイトする事こそ自ら
の腕の見せ所と思っていたことだろう。
 その事をまことに自覚させるべきかどうか。
 亜美は、彼女にしては珍しく口にする言葉を選ぶのに幾らかの時間を
費やした。
「まこちゃんは……素敵よ。とっても」
 熟考の結果、とりあえずそう言うに留める。
 素養のある人に任せれば、まことは幾らでもはるかやみちるのように
綺麗にあるいは華麗になれるのだろうが、そうなればそれこそ周りが放
っておかないだろう。
 まことの素敵さが万人に理解されるのはとても嬉しいことだと思えて
も、その事は逆に亜美の心にかすかな不安をもたらさずにおかない。
 もっともまことの場合、綺麗や華麗よりはどちらかと言えば「可憐な」
と呼ばれる姿にこそ憧れがあって、それと他人の考える「まことらしい」
格好とのギャップ、それこそがコンプレックスの一因になっていたりす
るのだが、そのような彼女の内面までをブティックの店員は理解し得な
いだろう。
「……だから、あまり気にしない方がいいわ」
「あ、ありがとう」
 照れくささに染まった頬を、まことは指でぽりぽりと掻いた。
 なんだか訳が分かったような、それでいて全く分からないような気分
だったが、少なくとも亜美は良いと思ってくれているのは分かった。
(それならそれでいいや)
 単純なことはなはだしいが、まことは素直にそう思えるのだった。
 

        ☆        ☆        ☆


 それから小一時間ばかり後、二人は再び人混みから離れて街路樹の木
陰に身を寄せていた。
「次は水着を見に行かない? あれなら店の人も寄ってこないだろうし」
 そう言うまことの言葉に亜美も同意し、さらに数軒の店を覗いて回っ
た二人だったが、結局買うのはうさぎ達と合流してからでも遅くないと
いう意見に落ち着いていた。
「亜美ちゃんは、今年はどういうのにするつもりなんだい?」
 自動販売機で買った清涼飲料水の缶を亜美に手渡しながらまことが尋
ねる。
「そうね……」
 ぷしっ、と音を立ててプルトップを倒した亜美は、しかしそれきり口
をつけるでもなく両手で缶を弄びながら、しばし考えを巡らせた。
「まこちゃんは、どんなのがいいと思う?」
「え、あたし?」
 逆に亜美から尋ねられて、まことは困ったような笑顔を浮かべた。
 まことが知っている亜美の水着は、一部の例外を除けば常にファッシ
ョン性よりも機能性により重点を置いていたように感じられた。勿論そ
れも似合っているのだが、もっと可愛らしい水着を持っていてもいいの
にと正直思う。
 だからと言って、レイや美奈子のように魅せる事に重点を置いた水着
を着けた亜美というのも、あまり想像できない姿ではあったのだが。
「まこちゃん?」
「うーーーーーーーーーーーーーーーーんと、ビキニ」
「えっ? あ…えぇっ!」
 思いのほか真剣に悩んでいる様子のまことに声をかけた亜美だったが、
意外にもはっきりと返ってきた言葉に思わず面食らい、手にしていた缶
を落としそうになった。
「ビキニ?」
「ビキニ」
 おうむ返しに尋ねられた言葉に、まことは今度はしっかりと頷く。
「あたし、亜美ちゃんのビキニ姿って見たことないもの」
 断言。
「……見たいの?」
「見たい」
 即答。
「うーーーん」
 今度は亜美が悩む番だった。
 彼女が所有する水着のほとんどは飾り気の無い物だったが、中には水
玉模様だとかフリルの付いた可愛い感じのワンピースなどもあった。
 だがそれらを一足飛びにしてビキニ、である。
「……分かったわ」
 しかし亜美は、わずかな時間で顔をあげるとそう言って頷いた。
「ほ、ほんとに?」
 逆にそれをリクエストしたまことの方が驚く。
 それくらい、自分を魅せる事に関して亜美はこれまで関心を払ってこ
なかったし、むしろ目立つ事と恥ずかしい事はイコール、という図式が
彼女の中で成立している。そうまことは思っていた。
「ええ」
 だがまことの驚きを尻目に亜美はゆっくりともう一度頷く。
 ビキニという、自分の選択肢には到底浮かびそうもない水着を言われ
て驚いた彼女だったが、その衝撃から回復し少し心を落ち着けて考えた
時、自分の内側に何も迷う理由など無い事が分かった。
 これまでの水着は自分自身のためだった。泳ぐ、という目的のための
もの。自分が可愛いと思ったもの。それ以外の用途は必要ではなかった。
 けれども今年の夏はちょっと違う。普段と違う自分の姿を見て欲しい
人がいる。
(「まこちゃんは、どんなのがいいと思う?」)
 何気に投げかけた問いは、自分でも気付かぬうちに自らの心を表して
いた。そしてまことの答え。
 だから亜美は、初めて泳ぐ為でなく見せるための水着を買う決心をし
た。それは彼女にしてみれば当然の帰結だった。
「ふふっ。それは嬉しいなぁ」
「…でも一つだけ、聞かせてもらってもいいかしら?」
 思わぬ所で夏の楽しみが一つ増えたとウキウキのまことに、一転やけ
に神妙な面もちで亜美が尋ねる。
「な、なに?」
 何かとんでもない事を聞かれるのでは、と少し不安に思うまこと。
「まこちゃんは……どんな水着にするの?」
 だがそんなまことの様子には気付かず、亜美は少し照れたよう頬を染
め、モジモジと手にした缶をいじる。あるいは今さらながらに、ビキニ
を着た自分の姿を想像してしまったのかもしれない。
 そんな亜美の仕草に、まことは愛しさがこみ上げてくるのを感じる。
(そうだね。不特定多数の誰かに見せるんじゃなくて、一人の人の為に
ってのもいいかもね)
 答えは笑顔と共に自然と口をついて出た。
「亜美ちゃんはどんなのがいいと思う?」


        ☆        ☆        ☆


「うさぎちゃん達、どこに行ったんだろうね?」
「そうね、途中で追いつけるんじゃないかと思っていたけど、どこかで
すれ違っちゃったのかしら?」
 そろそろお昼も近くなり、まことと亜美はちらりとそれぞれの時計に
目をやった。
 通りを歩く人の数は、この二時間ばかりの間にさらに増えたようで、
改めてここがTOKYOである事と、今は夏休みだということをまこと
は実感する。これでは亜美の言う通り、確かに途中ですれ違っていたと
しても気付くのは難しかっただろう。
 もっとも分かれたきり一度も連絡がないところをみると、あちらはあ
ちらで自分達の買い物に忙しいのかもしれない。この時間になっても二
人が置いてきぼりにされた事に気付いてないなんて事はないだろうから、
そもそも探す気なんて無いのかもしれないが……。
「探してみましょうか」
 亜美はそう言いつつ、マーキュリーのシンボルが入った小型端末を取
り出した。滑るようなタッチでキーを打つと瞬時に画面が切り替わり、
二人を中心としたこの街のマップが表示される。
「どうやるの?」
 まことは亜美の背後にまわり、肩口から画面を覗き込む。
「簡単に言うと美奈子ちゃんのデータから、彼女が今どこにいるかを予
測するのよ。今の場合、うさぎちゃんやレイちゃんと一緒にいることを
条件に加えているから、かなり場所は限定される筈だけど」
 話しながらも亜美の指は止まらない。
「ふーん。ね、そのコンピューターには当然あたしのデータも入ってん
だよね」
「ええ勿論よ」
「そういうデータって、どうやって集めるの?」
「…………それはひみつ」
「…………」
 はにかみながら答える亜美に、一瞬返す言葉を見失うまこと。深く追
求しない方がいいという心の声に、この場は素直に従うことにする。
 ピ。
 そんなまことの内心の葛藤には気付かず、全ての入力を終えた亜美は
最後のキーを人差し指で触れた。思考モードに入ったコンピューターは、
時折画面を明滅させながら対象範囲を絞り込んでいく。
「……あたしはどこにいるのかな」
「?」
 画面を見つめながらふと呟くまことに、亜美は僅かに首をかしげる。
「あ、これの性能を疑ってる訳じゃないよ。疑ってる訳じゃないけど、
……ちゃんとあたしの場所も分かるのかなと思って」
 多くの人が生み出す唸りにも似たざわめきに、まことは不意に世界に
たった一人の自分を感じていた。それは両親を亡くしてから、そしてシ
ルバーミレニアムの記憶を取り戻した時から時々襲い来る根元的な不安。
 この街だけでもこれだけ多くの人がいる。これがTOKYOなら、日
本なら、まして世界なら、身寄りのない自分を果たして見つける事が出
来るのだろうか。
「そうね」
 幾分トーンの低くなったまこと声に、亜美は考え込むように目を細め
口元に手をあてた。
「まこちゃんの場合だと『先輩に似た人』が不確定要素として加わるか
ら、これだけ人が多い街だとピンポイントで絞り込むのは難しいかもし
れないわね」
「はは…」
 思わずジト汗のまことに、亜美は小さく「大丈夫よ」と声をかけると
身を翻し、まことの顔を正面から見つめる。
「まこちゃんがどこにいたって、絶対に私が見つけるから」
「亜美ちゃん……」
 表情は穏やかだったが、まことを写すその瞳は決意とも言うべき光を
たたえていた。その光によって、心の内にあった不安がかき消され、か
わりに暖かいもので満たされてゆく。
「だから……」
 亜美の声のかすかな揺れに、まことは彼女の心を感じた。
「うん。亜美ちゃんがどこにいたって、絶対にあたしが見つける」
 自分と亜美は似ているとまことは思った。姿形は異なっていても、心
はきっと同じものを求めていると。根拠は無かったけれど、それは確信
と言ってよかった。
 与えて、そして与えられる。
(ありがとう)
(こちらこそ)
 二人は目と目で頷きう。言葉にする必要などなかった。
「あーっ、いたいた。まこちゃんと亜美ちゃん!」
「うさぎちゃん」「みんな」
 急にかけられた声に顔をあげれば、そこには二人の向かって手を振る
うさぎと、その後ろからやれやれといった感じでついてくる美奈子とレ
イの姿があった。
「だから言ったでしょう」「ねぇ」「うん、ほんとだ」
「何が?」
 三人の間に交わされる会話の内容が分からず、まことはレイと美奈子
に目を向ける。視線を向けられた二人は、その言葉に何やらにやにや笑
いながらまことと亜美を見較べた。
「何だよ」
「あなたたちの居場所について、よ」
 いやーな予感を感じつつ聞くまことに、美奈子は「焦りなさんな」と
でも言いたげに人差し指を立ててユラユラと振る。
「そうそう、うさぎがどうやって二人を捜そうって言うから、そんなの
簡単だっていう話」
「ふうん。で、あたし達はどこにいるって?」
 レイの言葉にうさぎを見ると、彼女はにっこにっこと笑いながら待っ
てましたとばかりに口を開いた。
「人混みから離れた場所でイチャついてるって」
 ぼんっ。
 そのとたん、音をたてそうな勢いで亜美の顔が真っ赤に染まった。そ
の様子にまことの頬も熱くなる。
「な、何を――――」「あ、あのねぇ――――」
「まぁ分かりやすくて何よりね」「そうね、あなた達なら多分どこにい
たって見つけられるわよ」
 からからと笑う二人に、まこと亜美は何も言い返せないまま視線を交
わす。レイが何気に言った言葉は、二人が等しく求めていたもので。
「じゃあ、みんなでお昼食べにいこー」「おー」
 うさぎの気勢に美奈子が腕を振り上げる。
「亜美ちゃん」
「ええ」
 まことの声に、亜美は手にしていた端末をしまう。
 確認される事なくシミュレーションを終えた画面には、仲良く並んだ
五つのシンボルが映し出されていた。

                            了
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
           あとがき


感想などありましたらこちらまで MAIL to heyan@po2.nsknet.or.jp

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