|
二つのゲーム (
Liberty Roads および
Victory Roads、 Vae Victis #85 と #125 を参照 ) から成るシリーズを
Hexasim 社から出版した後、デザイナーの Nicolas Rident
は同じゲームシステムで開発を継続し、今回は
Nuts! Publishing 社から発売した。
だが
このゲームが扱う領域は 以前の二作品よりもずっと狭い。というのも、そのゲームマップは ロストフ を南端として ハリコフ
と スターリングラード のあいだの地域が描かれていて、クルスク や ヴォロネジ は範囲外となっているのだ。
17ターンの長さの キャンペーン ・ シナリオ は 1942年11月半ば から
1943年3月末まで繰り広げられるが、これはつまり、ソ連軍の冬季攻勢 から ドイツ軍よるハリコフでの反攻
まで扱うものとなる。 それに加えて、12月のドイツ軍の反撃 から ハリコフをめぐる戦いまでを扱う 4つの
シナリオが用意されている。
Hexasim 社から出版された2つのゲームとは違って、こちらの
ユニットカウンター(駒)は
VUCA
社のビジュアルを彷彿とさせる簡素なデザインで描かれている。(全体の)サイズが小型化され、ゲームマップを
非常に理にかなった サイズに留めることができた一方で、取り扱いの面で ちょっとしたアクシデントの原因にもなっている。
問題は、フランス製のゲームであるにも関わらず、我々がこの記事を執筆している時点では
Nuts! 社から入手できるフランス語版ルールが無く、残念としか言いようがないことである。
( 訳註
: その後、Nuts! 社の公式ホームページから PDFファイル形式で仏語版ルールは ダウンロード可能になった )
ユニット(駒)は、この戦役期間では 常に適切 且つ 心ときめく スケール(部隊規模)である 『師団』 を表す。
シンプルな基本システム
他の大多数のゲームとは異なり、Stalingrad Roads のユニットは、補給 あるいは 特殊移動
( 鉄道移動 や 戦略移動 ) に関わる場合を除いて 支配地域 ( ZOC : Zone Of
Control ) を及ぼさない。そのため、戦線の裂け目は 即座にすべて突破されてしまう
だろうが、それは駒の移動力が 歩兵部隊で たったの 2、機動部隊 ( 騎兵 と
機械化部隊 ) でも 3 であるため、と説明できる。
ゲーム・プレイの手順 は、まずは移動、次に戦闘、それから突破、という 伝統的 なものだ。
しかし 戦闘システムは、一般的なものとは異なる。 実際、戦闘結果は
3列 で表示されていて、そのうちの 2列 は色彩の変化を用いた かなり珍しい形となっている。
1列目 (Losses) は両陣営が被る 「素の損害」 を示し、2列目
(A) と 3列目
(D) は それぞれ 攻撃側 と 防御側 の 「戦術的な戦闘結果
( 訳註 : 戦闘後前進 や
退却、突破 など ) 」 を表示している。
この
「戦術的な戦闘結果」 では "退却" と "隣接する敵部隊の反応" の両方を、あるいは 攻撃側に対して < E >
表記で "突破" の許可を提示できる。攻撃側が受け取った < E > の数値 ( E、E2、E3 )
毎に1個師団の突破許可が与えられるというわけだ。 攻撃側が "戦車戦 ( Armored Attack ) "
を宣言すると、彼はさらに < E > を1個 追加して受け取る。 さらにボーナスとして、簡素な 「 一ツ星 ☆ 」
がユニット上に 印されている エリート部隊 は、この 「戦術的な戦闘結果」 を
同じ列の中にある同色の別の結果に変更要求できる。これがために、このゲームの 戦闘結果表 は カラフルになっているのだ。
上記の ユニークな戦闘手順 には すぐに慣れてしまうものの、ドイツ軍の優位性に関するルールをマスターするには
より多くの時間を要する。その優位性は、丁度 4つ の場面 (
攻撃時の2つ、防御時の2つ ) で発揮され、『
ドイツ軍部隊が自らの損害を減少させる 』、または 『
ソ連軍部隊の損害を増大させる 』 、あるいは 『 <
E > マーカーをより多く獲得する 』 ことを可能にする。このアドバンテージは ドイツ第三帝国部隊 の
”戦術的な優位性” を表現するためのもので、ソ連軍プレイヤーが重大な勝利を得るたびに 「待った」
が掛かるようになっている。 それにより、ソ連軍部隊が主要都市 ( 当然ながら スターリングラード や
ハリコフ、ロストフが含まれ、他にも マリウポリ ) を占領するにつれて
"ヒトラー総統の慢心" と それを要因とする
"ドイツ国防軍 ( Wehrmacht ヴェーアマハト
) の 敗北" は連動しながら進行し、徐々に ナチスの傲慢 は自らを失墜させてゆく。 これは コンパクト 且つ
妥当 な サブシステムではあるが、( プレイヤー側に) 吸収
・ 習得 する努力が求められる。
突破フェイズ時
に貴重な < E (突破) > マーカー を所持している師団は、その
移動力値の半分まで 移動できる。その師団が 機械化部隊 ならば、攻撃 もできる。
支援が無いなんて、ありえないyo
このゲームの もう一つの特性 は、"支援マーカーの無作為抽出" である。
枢軸軍陣営は ヒトラー総統の満足度 次第で
"支援マーカー" を1枚引き当てるが、総統の満足度は ソ連軍の 「重大勝利」
および 「目標地の占領」 に応じて変動する。 この "支援マーカー"
を使って 将軍 ・ 特殊部隊 ・ 航空部隊 ・ 砲兵部隊
による支援提供、あるいは 特殊戦 (例えば、移動フェイズの前に "一撃喰らわせる") を実施する。
枢軸軍は、これらの
支援マーカー を前線のあらゆる場所で活用できる。
それに対し、ソ連軍は もっと遥かに複雑である。 なぜなら ソ連軍側の支援では、無作為抽出した枚数の支援マーカーを 攻勢マーカーの有効範囲内
に配置しなければならないからだ。 ここで詳細には触れないが、赤軍 (ソ連軍) は 大規模攻勢 (大攻勢) マーカー を1枚 と
小規模攻勢 (小攻勢) マーカー を2枚を所持 し、各ターンでは 実施中の攻勢 (つまり、マップ上に配置した
「攻勢マーカー」 ) 毎に 支援マーカーの枚数をランダムに決定する。 (
訳註 : 攻勢マーカー毎に
6面体ダイスを2個振って出目を合計 (2d6) して 「支援表」 を参照し、 "無作為抽出する支援マーカーの枚数"
を決定する)
上記の方法で、上手く行けば 赤軍は最大で 14枚の支援マーカーを入手するのに対し、枢軸軍は
敬愛するヒトラー総統が特別上機嫌な時でも せいぜい3枚しか得られないのである。
このように、Stalingrad Roads
は 「ドイツ国防軍の最高度の柔軟性」 と 「赤軍の 戦闘手段 と 戦闘能力 の顕著な優位性」 とを 同時に 且つ
精緻に 再現している。 このシステムの もう一つの利点は、"ソ連軍プレイヤーが 戦略的な自由度 をある程度残しつつ、自身の望む場所に 戦争資源を集中 できる" ことである。 けれども、この自由度は 攻勢マーカーの枚数 と
その影響範囲 が原因となって 窮屈なまま であり、その為に プレイヤーには
(攻勢マーカーの) 展開移動ルールに耐え忍ぶ努力
が少しだけ要求される。
こりゃぁ、錯綜するわな
Stalingrad
Roads には "特別ルール" が多数用意されている。
例えば 「ヒトラー総統の満足度 Satisfaction
of Hitler」 は、フォン・マンシュタイン将軍の更迭へと至る可能性がある。
しかし
この マンシュタイン将軍は条件付きで 二度の反攻を枢軸軍に実施させることができて、その反攻のターンの間は 無作為抽出なしで 支援マーカー
を選択できるのだ。 一度目の反攻は、'42年12月のターン中に自由に実施できる (史実的に
この反攻は、スターリングラードで孤立している第6軍との合流を試みた「冬の嵐作戦」なのだが、これは無駄に終わった)。
'43年1月からの 二度目の反攻は 「後手からの一撃 The Backhand
Blow」 の呼び名でよく知られていて、(枢軸軍は)疲弊した赤軍に手酷い絶望を味わせてから ハリコフを奪還したのである。
「ヒトラー総統の気力 (moral)」 が ゼロになるたび、ヒトラーは
OKH (ドイツ陸軍総司令部) に対して苛立ち始めるのだが、これにより フォン・マンシュタイン
の信用が低下する可能性がある。この信用がゼロになると彼は更迭されてしまう。 これは
なかなか面白いルールだが、あなたはそれを (イチイチ)
確認するハメになるので、局所的な勝利を対象とする
少々面倒なルール でもある。
「ウラヌス
(天王星) 作戦 (スターリングラード方面でのソ連軍の攻勢)」 と同様の意図により、これと対になる作戦が、もっと北のモスクワ方面で繰り広げられた。 「マース
(火星)」 と名付けられた
この作戦は、ウラヌスの時と同様の戦法を多く採用したにも関わらず、塹壕をめぐらせて守りを固めたドイツ軍部隊に直面し、
血まみれの大失敗 に終わった (赤軍側の死傷者は
50%を越えた)。 まぁ、そういうわけなので、ソ連の歴史家達は 良心的に
(訳註 : ここでは 「忖度して」 の意です) この作戦を
"無かったこと" にしてしまったのだが。 今ではよく知られている この 「火星作戦」 を、Stalingrad Roads
では 幾らかの 増援の到着を 早めたり遅らせたり する "火星作戦トラック"
で表現 している (訳註 : 「火星作戦フェイズ」 の際、ソ連軍プレイヤーはダイスを振り、出目に従って
マーカーをトラック上で前進させる)。 その点では
まだ好感の持てるルールなのだが、その効用には異論の余地があるし、しかも、プレイヤーには手出しができない 「ダイス振り」 によって完全にコントロールされてしまうのである。
当然ながら 「火星作戦」 ほど 無駄ではないものの、大半のルールを動員する 「スターリングラード要塞 Fortress
Stalingrad 」 の重要性である。実際には、第6軍がスターリングラード地区で補給を断たれた際、ドイツ軍プレイヤーは
この都市の周辺に要塞地帯の形成を宣言できる、というもの。この決断を下せば、まず第一に "ヒトラーの気力(moral)"
に与える影響を抑制できる。 第二に、これら包囲下の部隊は "ピストン空輸(航空補給)"
の恩恵に浴するのだが、この恩恵は、ピストン空輸の総輸送量に応じて無作為抽出される "特殊支援"
が追加で与えられる、という形で表現されている。 第三に、要塞内に閉じ込められたユニットは "非補給下"
の状態ではあるものの、少なくとも補給レベルが規定内であれば、そのユニットは潜在的な防御力の低下が免除される。 そして第四に、ソ連軍プレイヤーは
スターリングラードの包囲に少なくとも
24個師団を割くだけでなく、それらの部隊を第6軍殲滅のために尽力する攻勢に投入しなければならないが、この攻勢は必然的に西方への
圧力を抑制することになる。
スターリングラード・ポケット
は、枢軸軍に対して 一つの可能性 を ・・・ 少なくとも初期段階では ・・・ 示しているかもしれないし、コントロール不可能な重圧とは到底言えないものだ、とは理解できる。 なぜなら、赤軍に
"一時停止" を強いるのだから。 とは言っても 一方で、 数の上で勝り続ける数多の敵部隊 と対峙する ドイツ国防軍 (Wehrmacht)
は、他の戦線を維持するために 自軍部隊を上手く運用 しなければならない。 他方で、件のポケット (孤立地帯)
の補給を復旧可能にする "装甲部隊の拳" を形成するために (他の戦線から) ドイツ軍部隊の大半を引き抜いたことが
バレバレになる、そんな事態は くれぐれも回避するように (この事態は現実に発生した)。
見た目よりも難しいゾ
これらの
「複雑さ」 は、史実の経緯や、そこに加えられた(政治的 ・ 軍事的な)強制作用を
かなり細かく復元 (再現) 可能にしてくれる。 ソ連軍優位であるにも関わらず、枢軸軍は
切れ味鋭いであろう反撃能力を依然として所持している。 加えて、赤軍が西進するにつれ、無作為抽出される
支援マーカー は、徐々にではあるが確実に (支援体制の悪化を経て) 弱体化していく。そのため、ドイツ国防軍は最後の反攻のための部隊再建が可能になる。 他方で、ドイツ軍は最初からスターリングラードの第6軍の撤退を試みることが十分に可能だが、その試みが
政治的観点からも 軍事的観点からも お世辞抜きで非常に現実的 であることが明らかになるという "代償" を、彼は払うに違いない。
とはいえ、Stalingrad Roads は "制御された害悪" だと思われかねない 「複雑さ」
を提示している。
それは まず第一に、このゲームのルールが常識的な長さ(22ページの分量)で、且つ
理解するのは難しくないとは言いながら、各々のサブシステムには詳細なルールがたくさんある。確かにそれらは必要なのかもしれないが、しかし
プレイヤーの習得努力を かなり重くしてしまっている。そして一見したところ 中難度 のゲームとしか思えないこの作品が、実は
高難度、それどころか 極めて高難度であると 直 (じき) に判明するのだ。
第二に、その 「複雑さ」 を通じて 私たちを導くのが仕事であろう
"プレイ補助アイテム"
が、その役目を果たしていない、と言うか、それほど十分には果たしていないのである。そのため、キャンペーン・シナリオをプレイする際はゲームマップの
およそ二倍に等しい面積が必要、と見ておかなければならない。 というのも、「増援表」 や
「状況表 (火星作戦、天候、etc)」 といった多くの 紙片(カード) を置くスペースを見つけなければならず、そこには 「ソ連軍の支援の一覧表」、「ドイツ軍の支援の一覧表」 それに 「スターリングラード要塞」 のルール・カード が加わり、まぁ、地形や戦闘結果用の補助アイテムは
いらないとして ・・・ もう たくさんだ! これらの 補助アイテム は、気軽に扱うには (素材が)
柔らかすぎて
どうにもならない 点に注意すべきである。
これら全てが Stalingrad Roads
を粗悪にしているわけではない。
それどころか、示唆に富み、独創的、しかも何度でもプレイできる優れたゲームであることが(逆に)問題なのだ。 この点に関しては、どちらかと言うと、このゲームが要求する
"負担" を吸収するための 決意 や 記憶空間( = 記憶力?) が、プレイヤーの側に必要となるだろう。
|