犬のアトピー性皮膚炎


まず人のアトピー性皮膚炎を考えると、大気汚染の影響、皮膚のバリアー機能の低下、消化管内寄生虫がいなくなった等、現代社会において、実際人のアトピー性皮膚炎は増加の傾向にあるようです。そしてその病態は、2つの大きな異常に分けて考えることができます。1つは免疫異常であり、他の1つは皮膚のバリアーつまり角質の異常です。しかしその解明には至っていないようです。
 このような状況の中、犬のアトピー性皮膚炎はどうであろうか?犬と人のアトピー性皮膚炎の病態は必ずしも同じではないと言われています。犬のアトピー性皮膚炎は、花粉、カビ、ハウスダストのような普通の環境物質に対してIgE抗体を産生する遺伝的疾病素因として定義されています。しかし人と動物とのコミュニケーションが以前より深くなっている現在、人と同じ環境の中で生活している犬にとってアトピー性皮膚炎が当然増えてくるとの考え方もあります。実際犬のアトピー性皮膚炎は、犬全体の3−15%に認められており、この石川県でもアトピーの症例で、動物病院にて治療を受けている犬は5−10%はいると考えられています。
 そして犬のアトピー性皮膚炎の診断の基本は病歴と臨床症状です。
1,犬のアトピーには強い品種特異性があり、家族性の発症が認められることもあるから遺伝性疾患である可能性が示唆されています。石川県内でも人気のあるテリア系、レトリーバー系に特に多く発症し、現在雑種の犬が少なくなりこのような犬種が多く飼われるようになったのもアトピーの発症を多くしている要因かもしれません。
2,発症する年齢 1−3歳までの間が多い。
3,臨床症状
 主症状  痒み
 2次性疾患  脱毛、紅班、毛色の変化、脂漏、色素過剰、苔癬化  特徴的分布パターン  顔、足先、耳、腋窩、胸部、腹部、四肢  関連疾患  外耳炎、膿皮症
 発生状況  季節的に起こることが多いが、75−80%は最終的に通年型になる。
石川県内でも、皮内反応テストによりアレルゲンの特定をしてみると、ハウスダスト(家のほこり)、ハウスダストマイト(家ダニ)が犬のアトピー性皮膚炎における原因の70−80%を占めているのがわかった、これも人のアトピーと非常に似ている点でしょう。
 犬のアトピー性皮膚炎に関してはまだまだ解明されていない部分も多く、人のそれに比べると、ずいぶんで遅れているようです。しかしアトピー性皮膚炎の一番の問題となる「痒み」に関しては人も犬も同じであり、それを治療するのがとても難しい。なぜなら、アトピー性皮膚炎の「痒み」及び「皮膚症状」を一番抑えるのがステロイドと言うホルモン剤で、これがとても副作用の多い薬であると言うことだろう。加えて、アレルギーを抑える作用のある抗ヒスタミン剤や、その他の非ステロイド系の抗アレルギー剤があまり効果がない事にある。一応、以下にアトピー性皮膚炎の治療法をあげておきます。
  1.ステロイド剤
 2.抗ヒスタミン剤や非ステロイド系の抗アレルギー剤
 3.抗生物質(アレルギーを起こして赤くなっている部位に細菌の感染を受けるから)
 4.細菌を殺す作用のあるシャンプーを最低週1回はする、できれば毎日でもかまわない。保湿剤入りのリンスも有効。
 5.減感作療法(アトピーが1型アレルギーだけの反応ではないように思われ、あまり効果が期待できないようだ?)
以上アトピー性皮膚炎の病気についてと、治療法を簡単に書いてみましたが、アトピーの犬を飼われている飼い主さんに、これだけは解ってほしいと思います。それは、基本的にアトピーは「治らない病気」で、「痒み」や「皮膚病」を薬や薬浴で抑えていく病気だと言うことです。ですから動物病院へ行っても治らないからと言って途中で治療を放棄しないで、永くこの病気と付き合っていかなければいけないと思います。