相変わらず。他人の褌で勝負する管理人です。(^^;) 
以下、平成15年度の「神社有職故実研修会」に参加された先達のレポートを公開します。
一部、管理人の思い入れに依って編集されていますことを、申し添えます(文字色を付けた程度ですが・・・お許しを)

macで作成された文章をwinで受け取って、編集していますので、もしかしたら「文字化け」が発生しているかも知れません。その節は、意訳してお読み下さい((((((((((((((((((((^^;)


内容は簡潔にさせていただきます。ご容赦ください。

 参加62名で二日間の日程でした。初日は院の教授、二日目は館の教授がそれぞれ「服飾」と「調度」を担当され(これは日程表にも見受けられず、当日初めて知りました)ました。
 前者は主に束帯が中心で、教材としてその皆具一式が用意されました。衣冠は残念ながら途中で時間切れで束帯ほど内容は踏み込めませんでした。一応狩衣 もお話はありましたが、服制表に完全に沿っての解説や著装実習は無しです。女子装束についてはご存じのように「制定」分ですので、一部ねじまち袴につい て言及がありましたが、あくまで意見的なものでした。教科書は『有識故実図典』図は『有識故実大辞典』から講師がコピーされたモノを掲げられました が、A4サイズでは恐らく大講堂の中列以降の席からは見えなかったと思います。(因みに私は最前列で参考図書も別送(あれは重いっ!)して持っておりま した)
 後者は「社殿の装飾と調度」がテーマでしたが、こちらも一日(実際は90分で三コマ分のみ)では当然全てではなく、教材としては簾の總角結付鉤紐、幌 (及帷及壁代)のかかげ(←PC外字)紐、各種裂地、及び参考図書として『古事類苑器用部』をご紹介頂きました。「装束」の意義(服飾と限らぬこ と)、『神社有職故実』74頁から音読でしたが、内容的には『祭式大成調度篇』(金光慥爾著)及『有職の話』(八束清貫著)からの説明が主でした。
 何れも「有職(有識)」の字義・訓から講義が始まり、両先生共に手腕を発揮されていました。例へば二日目は時代に沿って詳細な資料を提示されて、と 云った具合です。が、ホワイトボードでは例によって後列の方には見辛かったと思います(最前列でも苦労しました故)。
 両日とも、教科書に沿って進められました。有意義なチップスがちらほらとありましたが、ほぼ音読に終始し、実習もなく時間が来てしまい残念でした。
 今後各地で今般の成果が伝へられると思いますが、ビジュアル的な教材も必須だと思はれます。以前に比べると参考図書なども揃ってきたと思はれますが、 相変はらず必要な教材は「自前」で用意せねばなりません。私自身では、例へば『古事類苑』を全巻揃へていませんし、逆に『有識故実大辞典』は結構お持ち の方もいらっしゃると思ひます。
 つまり習ふだけでなく、一人一人が積極的にこれらの資料に目を通して各地での有職故実の習得に臨んで頂きたいと感じました。
 受講生から指摘されたのは(主なもの)、教材として用意されていた直衣に(本来ない)小紐がついていたこと、また三重繦菱紋なのに夏の料の設へで無いことなどで、そういう点からは結構レベル差が感じられました。私も折角でしたので總角結について「人」と「入」の型につき講師の先生に説明を求めましたが、最前列とはいへ、壇上の結を「では、これは何型ですか?」と聞かれたのには(結目が明瞭に見えるほどの距離ではありませんでしたので)躊躇しました。休憩時に何人かで教材に寄って判別しましたが、初めて知った方も、「ウチでは文官と武官の別としている」とのご意見もありといふ状況でした。
 この受講生の意見交換には(あくまで私の話した範疇ですが)貴重な意見が多かったと思います。
 例へば「黄櫨染」の色目ですが、今回たまたま宮西修治先生から「山王」を頂き、教科書には載っていない「太陽が真南に来た時の色」(通巻92号6頁?「色、いろいろ(其ノ一)」)について話が弾みました。これは付け加えるならば「真夏」の話だと記憶しています。あの、直視せずとも窓や開け放った扉など至る所、外界から差し込んでくる強烈な太陽の黄色をモチーフにした色です。類似例としてダイヤモンドの「四つのC」があります。カット・カラット・カラーに加えてクリアランス(透明度)があり、色ではありませんが、こちらは冬場、北欧でやはり午後二時頃窓から差し込んでくる日差しがチャート表の基準に採用されています。日本でも感じられる、弱いながらも透明感のある、あの「冬の日差し」です。洋の東西で期せずして高貴な存在に日差しが採用されていることが興味深く感じられるのは私だけではないと存じます。
 二日目には各コマ毎の最後に、質問の時間を設けて頂けました。斯様な埋もれた話もしてきましたが、時間を追うにつれ、結構受講者から有意義な質問も出て来ていただけに一日半の研修が短く稍残念でもありました。
 最後に研修所から「
来年以降は検討します」とのご挨拶があり、二回目が開催されるのか、その内容が今般の続きであるのか、繰り返しなのか、はたまた「神社有職故実」として広汎ながら明確な教授カリキュラムが推敲されていくのか委細不明です。が、兎に角もこれまで祭式の「執持扱」などでちらほら触れられてきた程度が、生涯教育の場に於て正面から扱はれる一歩を踏み出した点で意義深い研修会でした。十二月という時期からしても、講師の先生方や研修所のご準備も大変だったと思います。
 「奉務先の`社の造は解るが、神社建築全般や部分部分の構造物や付属建物の全ては解らない」と云った具合に、現実的に現場では「レベル差」が大きいと思れます。ここはあくまで「祭式」のHPですのでこの辺で止めておきます。今般の内容はあくまで皆さんのお手元の教科書が中心でした。十分「自習」が出来ます。今後、神社有職故実は、段々と整備されていくでせう。各自でも、少しづつでも研鑽を深めて「用意」しておく必要があると感じられました。

チップスの例(抄録)
『有識故実図典』1頁?だいたい104頁辺りまで
・有職故実上は「礼服・朝服・制服」の順。これを「服制表」の礼服の順位と混同して誤解しないこと
・御即位に於て礼服が束帯に換ったのは明治期からであり、近来まで礼服だったこと
・半臂、下襲は、縫腋(袍)、闕腋により省略の有無があること
・襟高が高かったこと
・格袋は束帯と衣冠では内外の相違があること
・同上 小紐の有無
・胡?の矢羽根の向は左肩側に出る(右脇下から矢を番へられる実戦的な理由から)
・縵(固織の義)
・纓の菱紋は縦長か横長か(有職的には頂部から凋で縛ると、纓部はどうしても縦長となるはず)
・繁紋は厳密には「有紋」とは呼べないこと
・遠紋は「無文」とは異なること
・立纓は垂直ではないこと
・盤領は上頸ともいい、別に垂頸があること
・有職と有識 黄丹は「おうに」「おうだん」と訓むこと(何れも前者は八束氏、後者は鈴木氏が採る)
・緑衫は濃浅葱、縹を経て明治以降緑(あを)袍化したこと
・中紫も同様に黒袍化した
・『飾抄』は群書類集装束部に所収。
・一例として「雲鶴」紋は遠慮すべきこと
・別裾の下襲(教材のもの)が起ったこと
・袴(表袴・大口)の紐の結びを中央から左右に面した理由は束帯を中央に結んだ為
 (この理由がない限り面す必要はない、という指摘)
・笏は「尺」でないこと。柾目を不適当としたのは例へば笏拍子で明らかに割れやすいといふ理由
・半靴は「ほうか」と訓むこと
質問の一例
 M8『神社祭式』以降、真榊図に見られる鏡は袋が無いこと

PS すっかり風邪を拗らせてしまい、病院の待合室で打ち込みました。いたらない部分はご容赦ください。