平成10年度疑義照会状況調査


日本薬剤師会から疑義照会に関する詳細なデータが手に入りました。その主要部分を掲載します。

対象薬局:全国の853薬局

対象処方せん:対象薬局で平成10年8月に応需した1,560,000枚

データ解析、評価:日本大学薬学部中村研究室



疑義照会の内容とその措置

処方内容の変更 服薬指導により対応 処方内容に変更なし 合計
形式的疑義 4,929 266 8,415 13,610
用法用量に関する疑義 4,717 247 1,539 6,500
日数回数に関する疑義 3,293 68 475 3,836
安全上の疑義 8,279 516 1,566 10,361
コンプライアンスや患
者のQOLの改善に伴う
疑義
1,607 25 99 1,731
その他 733 21 82 836
合計 23,555 1,143 12,176 36,874


処方せん内容の変更等の内訳

処方医薬品を変更 3,604
処方医薬品を削除 2,936
処方医薬品を追加 4,151
用法を変更 3,236
用量を変更 3,459
規格を変更 1,292
日数・回数を変更 2,800
剤形を変更 593
一包化・錠剤粉砕等のうえ調剤 586
処方せんを廃止 98
その他 797
合計 23,555

<コメント>

日本薬剤師会が平成10年度の院外処方1,560,000枚を調査した結果、その2.1%の36,874枚が疑義紹介されました。この表には載っていませんが、その2分の1は処方せんからの疑義照会であり、残りの2分の1は薬歴や患者インタビューから疑義照会でした。また照会後の措置としては、処方変更枚数/疑義照会枚数=23,555/36,874 ≒2/3 と高率に処方変更がなされています。このことは疑義照会内容の的確さを表しています。

さらに、処方変更の23,555枚を全処方せん枚数1,560,000枚で割ると1.5%になります。この1.5パーセントが全国一律であると仮定して概算すると・・・・平成10年度に全国で発行された院外処方せんは約400,000,000枚ですので、その1.5%は6,000,000 枚と膨大な数となります。これはあくまでも仮定の概算ですし、また、念のための処方変更もあるでしょうから、このまま服用しても、すべてのケースに副作用が出るわけではありませんが・・・・それにしてもすごい枚数です。このままノーチェックで薬を飲んだ場合、どれだけの患者さんに副作用の危険性があったのか、考えただけでも恐ろしい数字です。

これを逆に考えれば、ダブルチェックのおかげで誤投薬の危険性が大幅に減少し、薬剤師が安全な薬物治療に貢献したと言えるわけです。これは紛れもなく、医薬分業が本来の役目(=薬の安全性の確保)を十分果たしている証左ですね。医薬分業の進展にともない、分業のメリットについて問う声がありますが、今回のデータを見ればそのメリットは計り知れないほど大きいことが分かります。多くの患者さんに知っていただきたいデータですね。(99/7/27)