日本医事新報の意図が見えてきた。

-「医薬分業にメリットがあるか」の特集記事の裏に隠されたもの-   

はじめに 

この特集記事は医事新報社のホームページに掲載するとの約束でしたが、未だ掲載されません。掲載したくなくなった理由があるのかもしれません。そこで、各題名だけでもここに掲載します。これだけでも内容は想像できますね。ようやく掲載されました(99/8/21)。「医薬分業にメリットがあるか」

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総意見数:30 投稿者:医師26名、薬剤師3名、病院事務長1名 

分業にメリットなし:21 どちらとも言えない:3 メリットあり:6 

1)院内薬局で一元的管理を 2)病態知らずに指導できるか 3)分業できるのは都市部だけ 4)甘いえさではごまかされない 5)院内処方を堅持する 6)患者泣かせの調剤報酬 7)分業推進する根拠はない 8)医薬分業は治療上困難 9)服薬量の実感遠ざかる 10)面分業の困難さは現実 11)「かかりつけ薬局」は絵空事 12)「闇調剤」相当あるのでは 3)患者の大変さ考えているか  14)患者に全くメリットなし 15)医業の本質を失っていまいか 16)一刻も早く踏み切りたいが・・・ 17)患者からの信用一層増した 18)医師は薬剤師と連携を 19)場所・時間・人件費が節約 20)なぜ厚生省は進めるか不可解 21)厚生省の責任は重大 22)なぜ院外は処方料が二倍か 23)日本の医師はちょっと無理 24)健保・国保財政の破たん招く 25)医療費削減につながらない 26)薬剤師の説明は不要 27)「薬の安全性」が優先課題 28)「便利=安全」ではない 29)診療がスムーズに進行 30)分業はヒトを薬から守る (日本医事新報No.3924,P73)



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医事新報の記事内容や私の投稿経験から日本医事新報社≒日本医師会と考えてもいいと思います。いわゆる「御用」雑誌ということですね。そこを踏まえた上で以下の文章をお読みください。


2日前の7月11日、新潟県上越市での医薬分業担当者会議で、日本薬剤師会の佐谷会長が追いつめられたご様子で檄を飛ばされていたとのこと。発展途上の医薬分業がここへきて、空中分解しかねない状態との認識があるからでしょう。ご自分の進退や各都道府県の会長の入れ替えまでも言及された由。その背景には、薬局の技術料を減らして、その分を来年度診療報酬改定財源とするとの日本医師会の思惑が現実のものになるかもしれないという心配があるからと思われます。そんな身勝手な案が許されるはずがないと思いますが・・・・。でも、医師会はほとんど決まりかかっていた日本型参照価格制を廃案に追い込んだばかりです。かなり勢いづいています。現在の自民党は票が心配で医師会の言いなり状態。厚生省も自民党には反抗できません。となれば・・・・。


昨年は長島道夫氏が日本医事新報第3881号「医薬分業を改めて問う」で、そして今年は近藤博重氏が同第3914号「医薬分業で医療費が潰れる」で、薬剤師の技術料が高いと主張しています。そして今回「医薬分業にメリットはあるか」などという題名で意見募集をしました。そして思惑通り、医師会会員から「医薬分業は、2度手間で医療費が高くつくので、できない。」という意見が多数集まりました。これを自民党や厚生省に圧力をかける資料として利用することは明らかです。

医師会のもくろみはこれだけではありません。もっともっと怖いのです。同号の「お茶の水だより」という医師会専用コラムには、次のようなことが書かれています。




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「曲がり角に立つ医薬分業政策」

近年、医薬分業が急速に進み始めている。厚生省によれば、分業率は10年度には3割を超える見込みだという。調剤診療費も急増しており、対前年同月比では毎月約2割増を記録している。支払基金のデータによれば、調剤の金額は現在、総計の6.2%(今年3月診療分)を占めているが、このままいけば、金額ベースで歯科診療(10.6%)を追い抜く勢いである。

この現象は、診療報酬や薬価などで分業推進政策がとられた結果である。しかし、診療現場から見て医薬分業は果たして本当に良いことなのか?今回、読者の方々にこの問題でご意見を募集したところ、多くの声が寄せられた。そのひとつひとつには、分業のもつ問題点が改めて浮き彫りにされているように思う。

まず分業が機能するのは都市部にほぼ限られているという点。いくら面分業だ、かかりつけ薬局だといっても多くの地域ではそれが絵空事にすぎないことがよく分かった。診療所の多くがたとえコストがかかっても患者さんのために薬を手放せない現実があることを、医療政策担当者はもっと注目する必要がある。

次に調剤薬局の薬歴管理についてである。まじめにやっている所もあるのだろうが、医療機関の評判は概して冷ややかである。薬の安全性についてチェック機能を果たしていること、そのためにはある程度のコストがかかることを調剤薬局がアピールできなければ、医療機関や国民の理解は得られまい。

そして最大の問題は、分業のために強引な経済誘導政策がとられたことの歪みが生じていることだろう。現在、国立病院や大学病院は次々に分業に踏み切っており、これが、チェーン展開する門前薬局の急増を呼んだ。患者さんにとっては、薬をもらうために大病院で長時間またされるより、門前薬局の方がすぐもらえると評判がいいそうである。しかし、これは外来の大病院集中に拍車をかけるだけではないか。分業の趣旨を忘れた経済誘導がまかり通ってはならない。

現在、医薬分業は新たな段階を迎えている。患者さんの立場を最優先に考えれば大病院と診療所、都市部と農村部でそれぞれに適した薬の出し方があるはずである。そして、その適した方法に十分な評価がなされる仕組みが求められる時代になったのではないか。一律に分業推し進めるのではなく、院内調剤薬局の可能性など、今後論議を始めることが必要だろう。(日本医事新報No.3924,P101)

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この意見は単なる思いつきや冗談ではないようです。 日本医師会の医療構造改革構想(第一版、1997年5月20日)に改革の具体的方法の〔短期的課題〕の一つとして「調剤薬局の確保のため、院内薬局の調剤薬局化を図る。」とはっきり書かれています。又、99年6月4日、自民党の丹羽医療基本問題調査会会長の提示した「医療制度抜本改革の基本的な考え方」に『医薬分業の適切な推進・かかりつけ薬局の育成・院内調剤薬局のあり方を検討。』と書かれていたとのこと(メディファックス通信)。これは論外で、とんでもない考え方ですが、今の政治状況では実現の恐れ大いにあります。万が一現実のものとなれば、現在すすんでいる医薬分業はとん挫してしまいます。恐ろしいことですね。


「院内調剤薬局」というものはどういったことを想定しているのか今のところ不明です。たとえば、病院の調剤所を診療報酬上、院外薬局と同じ扱いにするということなのでしょうか。すなわち、調剤料を院外薬局並にするということなのでしょうね。そして、処方せん料もいただくということ。この「院内調剤薬局」をだれが経営するいうことになりますが、まさか病院が経営するということであれば、過去にあれほど問題になったいわゆる「第二薬局」と同じことになりますね。この場合は処方せん料と調剤料の2つで利益を上げようというものです。経営者が別だとしても、それでも‘門内’薬局ということになり‘門前’薬局の弊害が更に顕著となることでしょう。病院側にとって利益の出るような処方せんが増え、薬漬け医療が改善されません。

一方、診療所の場合は、もともと薬剤師がいませんのでどのようにするつもりなんでしょうか。薬剤師を雇った診療所に「院内調剤薬局」というもの認めることにするのか、あるいは今まで通り事務員・看護婦の調剤でも、それを「院内調剤薬局」として認めさせようということでしょうか。私や薬剤師の目から見れば、まさかあり得ないこと、論外なことと思っても、日本医師会側から見ればそうではないのかもしれません。「患者にとって便利」ということだけを前面に押し立てて主張していく可能性があります。


この「院内調剤薬局」には大きな矛盾点があります。医師会は「医療費が高くつくので分業に反対だ」と主張しているわけですが、もし「院内調剤薬局」になった場合には医療費は高くならないのでしょうか?ちょっと皮肉っぽくなりましたが、そんなことはないですね。院外薬局なみの調剤料がほしいからこそこんな事を主張しているのですから・・・・。これでは患者さんの自己負担分は高くなることは同じですね。「患者さんの医療費が高くなるので分業できない」と主張された方は「院内調剤薬局」などはなさらないのでしょうね。もし、そんなことをすれば自己矛盾も甚だしいことになりますから・・・。

それともうひとつ。日本医師会は薬歴管理や薬の安全性のチェックの大切さについては十分認識していらっしゃるはず。「お茶の水だより」にもそのような内容が書かれています。「院内調剤薬局」では薬歴の一元管理、他院の薬との重複処方や相互作用のチェックはできません。「院内調剤薬局」は病医院の経営にとってはとてもいいことでしょうが、患者さんの薬の安全性の確保にはまったく機能しません。医療の安全性を大切にする姿勢はそこからは伺えませんね。患者主体の医療ではないということです。「患者さんの立場を最優先に考えれば・・・」とおっしゃっていますが、本当にそう考えているのか大きな疑問符が付きます。


ご自分の主張に矛盾点があっても、強引に押し通そうとするところが日本医師会の体質です。したがって、このような不思議な案が出てきても決して驚くにはあたりません。現在、医師会はかっての武見会長時代に匹敵するくらいの政治力を強めております。小選挙区制になってから、自民党は医師会を無視すると当選できないかもしれないという心配が先に立ち、言いなりになっているわけですね。業界エゴを重要視する姿勢です。相変わらずの体質で、情けないことです。



とここまで書いてきましたが、一晩考えてみたところ、「院内調剤薬局」について医師会は本当は実現すると思っていないし、実現すればかえって面倒であると考えているのかもしれないということに気づきました。むしろこれは“かけひき”ためのアドバルーンと考える方がむしろ正しいのかもしれない。医薬分業してないところは今まで通りの院内調剤を続け、処方料を処方せん料なみにアップし、調剤料を院外薬局と同程度まで引き上げる。これだけで「院内調剤薬局」などにしなくても病医院の収益は飛躍的に上がります。

今回の意見募集はこの“かけひき”の材料として利用する目的があったのだと思います。そして、この“かけひき”はわれわれ末端の者の手が届かないところで行われます。医事新報社のHPに募集記事を掲載して、多くの読者に知ってもらう必要性はないわけです。掲載すればかえって批判にさらされる恐れがあり、しない方が得策と考えたのでしょう。もし、本当にHPに掲載しないのであれば、{うそ}をついたということになります。

「お茶の水だより」に「分業のために強引な経済誘導政策がとられたことの歪みが生じている」と書かれていますね。この「歪み(=処方料が少なすぎる、院内調剤料が少なすぎる)」を是正すべきと強く要求するはずです。長島道夫氏や近藤博重氏の論文にもそのことは繰り返し述べられています。それはすなわち院外薬局の技術料も下げろということです。そして、薬局から取り上げた調剤報酬を、処方料や院内調剤料アップの財源に充てるということなのです。医薬分業の推進、薬の安全性の確保、かかりつけ薬局の育成などは、彼らの頭の中には全くないということです。

そしてここでも矛盾があります。本気で「経済誘導政策」がおかしいとおっしゃるのであれば、処方料を上げるのではなく処方箋料を下げるべきでしょう。この政策の基本は処方箋料と処方料に差をもうけるということでした。それによって分業を誘導したのですから。院外薬局の技術料だけ下げて処方箋料をそのままにするのであれば、片手落ちもいいとこです。自分の懐の痛むところはそのまま温存し、他人(薬剤師)はどうなろうとかまわないということになります。大変自分勝手でわがままです。

もしこれが実現すれば病医院は処方料と調剤料の2つで大幅な収益アップがはかれます。今まで院外処方を発行していた医療機関でも調剤料を求めて院内に戻すところが続出してきます。すなわち医薬分業政策が根底からひっくり返えるということですね。薬剤師会とその会員の長年の努力は水の泡と帰します。薬のダブルチェックがなくなり、国民は薬の危険性に再びさらされることになります。


おわりに

国民のためになる薬局を目指し、医薬分業を推進してきた佐谷会長はここに来て土俵際に追いつめられ、徳俵に足がかかっています。このままでは押し切られてしまうでしょう。うっちゃりの出来る粘り腰があるのでしょうか?観客(薬剤師)の盛大な応援がもっともっと望まれます。皆さん、弱腰のように見受けられます。あらゆるメディアを使って、キャンペーンを張る、議員を動かす、厚生省に陳情する、署名を集める、などなどできることはいろいろあります。そして、日々のお仕事をきちんとこなし国民の支持が得られる薬局にすることが一番です。私から見るとかなり努力が足りません。国民に安全な医療を提供するために全員一丸となって、がんばってほしい!!(99/7/13)





1)日本医事新報「医薬分業にメリットはあるか」を読んで


“転職”薬剤師



いやぁ〜、吉田先生、予想はしていましたが、記事を読んで、やはりショックを受けてしまいました。「病態知らずに指導できるか」「甘い餌ではごまかされない」「患者に全くメリットなし」等々。やはり、これらの意見を述べられる方は、日本の薬剤師は頼りないと思われているのでしょうか?薬剤師として、ちょっと反省させられました。

しかし、「患者に全くメリットなし」と、言われては、だまっていられません。医薬分業になって、薬剤師に感謝される患者さんがたくさんいます。これらの患者さんは、根本的には、十分納得した医療が受けられない現状があるからではないでしょうか?医師に聞けないのか、薬局で病気のことをいろいろ質問していきます。病気の説明は本来は診察医の役目のはず。私も、患者になって病院に行った時、診察中に疑問に思うことが時々あります。しかし、お医者様に向かって、「ほんとうに大丈夫?」とか「もっと、いい治療法があるんじゃないの?」なんてことを思ってもなかなか口に出していえません。こんな時に、誰か別の人に確認したくなるものです。それが、薬についての場合は“薬剤師”ではないでしょうか。医薬分業にはセカンドオピニオンを聞くという目的もあります。

結局のところ、医師会は、院内調剤薬局を認めさせたいということでしょうか。そして、今までどおり、薬剤師を医師の監督のもとに置き、薬剤にかかる費用をすべて医師サイドで握っていたいということではないでしょうか。しかし、これでは、いつまでたっても、納得のいく医療は受けられないと思います。


2)医薬分業はどこへ


ひげの薬剤師


医薬分業はどこへ行くのでしょうか。日本医事新報の特集を見て、そう思います。「医薬分業」の精神は「医者といえども人間である・・」という前提に立っていたんじゃないかと思います。

「ミスをする可能性がある」「知識が100パーセントではないかも知れない」「多忙のため、服薬指導に手が回らない」「他院との併用薬のチェックができない」もっと言えば「患者の利益より自分の利益を優先する可能性がある」など・・そうだとすれば、その部分に触れないまま、患者に「医薬分業のメリット」を感じてもらうことは不可能だと考えます。

薬剤師は今まで意図的にその部分には触れずに来たのではないでしょうか。その部分を患者にPRできない事に、日々ジレンマを感じています。しかし、今こそ勇気を持って全てを市民に伝える時なのではないでしょうか。

「法律的に調剤権は誰にあるのか」
「あなたがもらった薬の調剤は誰がやっているのか」
「疑義照会はどんな成果を上げているのか」
「薬剤師の薬の知識は医師と比べてどうか」
「医薬分業で患者負担はどのくらい増えているのか」

その上で、国民がどう判断をするのかが大切だと思います。



3)戦う薬局を目指します。

ひげの薬剤師

先生、こんばんは。佐谷会長の苦しい立場、先生のホームページで実感できましたので、早速、それをネタに薬局にてミーティングしました。「今、何をするべきか」「今、何が出来るのか」その結論です。

  1. 「薬歴」の存在をPRしながら服薬指導を行う。「薬歴」とは、「あなたの薬の歴史」である。これは「かかりつけ薬局」にしか作れない。
  2. 「どこの薬局へ行くかは100パーセント、患者の自由」ということを患者教育していく。未だに「病院指定の薬局」がある・・と信じている患者がいるそうなので。
  3. 「門前の医師」の顔色を気にしない。患者メインの「戦う薬局」を目指す。「お薬相談タイム」を設定し、相談したい患者を集める。 必要なら薬剤師の責任に置いて、セカンドオピニオンを積極的に提供する。そうすることによって、「薬剤師および医薬分業の存在価値」をPRする。


気合い入れてやりますよ。今が正念場だと自覚していますので・・。また、報告しますのでよろしくお願いします。


返信
吉田均

「戦う薬局」を目指し、「薬剤師および医薬分業の存在価値」をPRされるとの力強いお言葉、感じ入りました。全国の薬剤師よ、雄叫びを、「“ひげ”ダイナに続けぇ〜 うぉー!!」