薬の副作用を警告する本は今までも数多く出版されています。しかし、副作用を防ぐにはどうしたらよいのかという方法論が書かれたものがなかったように思います。私がこの本を出したいと思い至ったのは「薬を安全に飲む方法」があるのに患者さんはなぜそれを有効活用しないのか、とても歯がゆく思ったからです。
私はHPで医者に「医薬分業は薬の安全性のために大切」と訴え、院外処方箋の発行を促しています。これが一番手っ取り早いと考えたからです。しかし、その意図に反し、反応はわずか。HPの作成目的がほとんど達せられていません。むしろ医者のあいだから聞こえてくるのは分業バッシング。しかしよくよく考えてみれば、日本の医者の「姿勢・体質」から推測すればこうなるのは当然と言えば当然。そこで「次の手」として、国民に直接、医薬分業の大切さを訴えるしかない、と考え、「単行本」の出版という賭けに出ることにしました。患者さん側から医者に分業を促すということです。「急がば回れ」ということですね。
本文では薬の副作用から身を守るためには、いかに医薬分業、かかりつけ薬局が大切かを訴えます。そして、薬や医薬分業を取り巻く諸問題も取り上げ理解を深めます。読者対象は一般国民ということになりますが、医師や薬剤師、看護婦、病院経営者にも有益な内容にしたいと思っています。医薬分業の本来の目的が明解になり、日々のお仕事の励みになればと思います。また、診療や調剤の現場で患者さんから「医薬分業は何のため?」と尋ねられた時にもお役に立つはずです。医薬分業を計画している病院経営者には患者教育の資料に使えるかもしれません。(9/25)
10月15日から執筆開始しました。12月31日脱稿の予定です。本は4つの章で構成されることになりました。予想以上に快調に書き進んでいます。不思議なくらい書きたいことが次々とわき上がってきて、産みの苦しみは今のところありません。むしろエンジョイしながらの執筆で、診療の合間に書いています。日常生活や睡眠に影響は出ておりません。そういうわけで7日間で第一章がほぼできあがりました。想像していた以上におもしろい内容になりそうなので、ほっとしています。ただ、第2,3章に入ってどうなるか、もしかして突然行き詰まるのではないかと不安感はありますが・・・。(10/20)
書き始めて1ヶ月たちました。第2,3章も思った以上に筆が進みました。患者の視点に重きを置いて書いています。一般の方にとっても読み応えのある内容になるかな、とちょっと自信が出てきました。医薬分業という新しいシステムを推奨するということは、逆に言えば、古い医療を否定するということにつながります。といいますか、思いっきり批判的に書いています。自分の思いがそうだから致し方ないのですが、仲間うちをそのように言うのはやはり心苦しい。この点が唯一気になるところ。しかし、医療の主役は患者さん。そこを分かってもらえば、多くのドクターはこの本を肯定的に受け止めてくれるはず。(11/15)
1週間前に校正原稿がアドバンス・クリエイト池上知子さんから送られてきました。優秀な編集のプロに直してもらうとここまで良くなるものかと感心しました。原本は、このホームページのように独りよがりで排他的な自己主張でしかありませんでした。しかし戻ってきた校正原稿は見事に変身し、私が言うのもおかしいのですが、最後まで一気に読みたくなる内容です。やはりプロはプロに任せるべき、私一人ではどうあがいても売れる本はできなかったでしょう。出版元の東京新聞出版社の担当者も
「歯切れがよくてとても面白い。たくさん売りたい!」と言っているとか。池上知子さんは文章の構成力や表現力がすばらしいだけでなく、医療問題や、医薬分業、薬局、薬剤師の現状についてもとても詳しい方です。私の本の編集にはこれ以上の適任者はいなかったでしょう。彼女のお陰で「自信を持って世に問う」そんな内容になったかなぁと今は「ほっ」と一安心しているところです。
1週間で私の校正も終わり、残りは「あとがき」だけとなりました。何とか締め切りに間に合い、静かにお正月が迎えられそうです。(12/22)
<本文より> 製薬メーカーの営業マン「この薬をぜひご処方ください。お隣の調剤薬局から1箱注文があるごとにその薬価の30%をリベートとしてお持ちしますので。」 院長「ほう、そんなことができるのかね。いろいろ考えるものだねぇ。」 製薬メーカーの営業マン「えぇ、まぁ先生に少しでもお得になるようにと思いまして・・・。薬局への納入価はその分高くなりますが・・・・。薬局にはこの話は伏せておきますので、大丈夫です。」 院長「口外無用ということで頼むよ。」 製薬メーカーの営業マン「絶対大丈夫です。」 |
初校ゲラ刷りの校正が終わりました。来週再校ゲラ刷りを校正すれば完成です。執筆からほぼ解放され、「ほっ」としています。
本の内容は医薬分業からさらに発展し、日本の医療批判の書になりました。医者として日々感じていたこと、疑問に思っていたことを正直にそのまま全部思いっきり書上げました。読む人(医者)によっては、きっとかなりお怒りになるでしょうね。ある団体からは圧力がかかるかも知れません。しかし、自分の考えを世に問うには多少の軋轢もやむを得ないでしょう。その場合の対策もすでに練ってあります。又、小児科の医者仲間からも四面楚歌となるかもと覚悟していましたが・・・。
薬についての情報をもっぱら製薬会社のセールスマンを介して得ることのないように。 ドクターズルール425(医者の心得集)クリフトン・ミーダー著・福井次矢訳、南江堂 |
先週の木曜日、小松市周辺の医者の集まりがあり、2人のドクターから、「小児科医は無駄な治療をしている」「風邪は医者にかからなくていい」「多くの医者は薬を出しすぎだ」「薬の副作用にもっともっと気をつけた処方が必要だ」「吉田先生に言われてから、解熱剤めったに使わなくなった。」「あらゆる治療をもう一度見直すべきだ」と言われました。私がこの発言を引き出したのではなく、私はもっぱら聞き役だったにもかかわらず・・・。そして次の日は、金沢市周辺の医者の集まりがありました。私の横に座った小児科医から「抗生剤は極力使わないようにしている。かって病院勤めの頃、アメリカ人の子供の扁桃炎に抗生剤を出したら、アメリカにいる父親から国際電話でその処方の根拠を質問されたが、納得させられずとても困った。」「解熱剤はいらない、抗生剤も風邪に使わないとなれば、小児科医自体の存在価値が問われるようになる。しかし、それもやむを得ない」「小児科医は別の生きる道を探るべきだ」などなど。本に書いた内容とそっくりなことを言われ、とても心強い思いがしました。今の日本の医療を憂えているのは私だけでなかったことを知りました。
本の表紙と挿し絵が出来ました。表紙はファントムグラフィックス加藤浩之氏、挿し絵は漫画家ハシヨシヒサ氏にお願いしました。「ちょっと待って、そのクスリを飲む前に」のクスリの後ろにリスクの文字をぼかして入れる工夫がしてあります。私はとっても気に入っています。挿し絵の方も私の意図を一枚の絵でとてもうまく表現されています。出来上がりが楽しみになってきました。出版日は3月にずれ込みそうです。(2000/1/29)