仮説実験授業の魅力

菅原美津子


2006.10.14

◆はじめに◆
 7月下旬に参加した「KITサマーサイエンススクール」(金沢工業大学主催)で『空気と水』の授業書をしました。
そしてつい先週(7・8日)「科学の祭典」(文科省主催)で『分子で見る世界』のブースを担当させてもらいました。この二つは,とても楽しく,ピッタリくる言い方ではないけれど,仮説の魅力を再認識することができた貴重な体験だったと思っています。

◆なかなか刺激的だったKIT◆
 久しぶりの仮説実験授業。KITでの授業は,久しぶりだっただけに,とても楽しみにしていました。準備もめずらしく早く始めたし,授業ノートも買ったし(実は先にも持っていたことが判明),KITにかける意気込みが自分でも感じられました。
 楽しみにして迎えた2日間は,本当に思っていたとおりに自分を満足させてくれました。ただ今回のクラス(1,2人生混合27人くらい?)には,かなり刺激的なお子さんがいて,パートナーの山形さんや学生ボランティアさんは,苦労したようです。授業がスタートする前から,なかなか元気なお子さんだな〜と思っていたのですが,始まった後も予想通りの行動をしてくれました。それが授業を参観していた保護者から,KITの事務局までクレームがついたようです。そして休み時間になったときに,担当者に「ここは託児所ではないので,保護者に連絡して迎えに来てもらいます。」なんて言われたり,気が付いたら学生ボランティアが増えていたり,関係者のおじさんたちが見に来ていたりして,KIT始まって以来の騒ぎになったような感じでした。確かに元気なお子さん二人で,水槽の前に立って,私に水をかけてみたり,床に寝ころんだり,実験が始まるとみんなの前に立ってしまったり,声をあげてみたりと見ようによっては,大変な問題児だったと思います。でも予想に○をつけていたし,予想の理由も転がったままでも答えていたから,なんとかなるだろうと思って,私は授業を進めました。その間,山形さんと学生さんが右往左往してましたけど。
 でも2日間終わってみれば,どの子も楽しんでいたようだし,KIT始まって以来の元気者のお二人もニコニコ笑顔でいてくれたので,私も最高に気分がよかったです。休み時間の手洗い場での会話でも「空気と水,最高に楽しいよ。ぼくこれでよかった〜」って,他のクラスの子に自慢している姿も見ました。ただあんなに準備をしたはずなのに,最後の問題の醤油差しを忘れてしまい,子供たちの思考に醤油ならぬ水をさした形になってしまったことだけは,大きな反省材料でした。(よく分かんない説明ですね)
 最後に,工大さんが用意した感想文用紙に子供たちが書き込んでいる姿も微笑ましく映りました。ほとんどの子が,かなりよい評価を書いていたし,「先生の授業は分かりやすかったですか」みたいな質問の時には,ある男の子が「あったり前じゃん!」なんて大声を上げてくれたりして,本当にうれしかったです。なんとステキなお子さんたちであり,そこまで子供を引きつける仮説実験授業の授業書なんだろうと,その魅力を再認識しました。
 子供たちが書いた感想文は,工大さんが回収したので手元にありませんが,後ろで参観していらっしゃった保護者の皆さんに,感想文用紙を渡して書いて頂きました。それを紹介します。

【参観された保護者さんの感想】
・2日目の午後だけの参加でしたが,普段の日常生活でしていることが,改めて質問されると分からなかったり,違う答えに手をあげている子どもの姿がとても楽しく微笑ましく思えました。
 一つひとつの実験に対しても,とてもわかりやすく説明して頂けて,子どもも楽しかったようで,1日目の話も目をキラキラさせて話してくれました。また工作も楽しく,家に帰ってから,お兄ちゃん,お姉ちゃんにもみせていました。2日間ありがとうございました。           (1年 保護者)

・大変楽しかったです。子供の講座を受ける姿も2日間も見ることができたし,授業の内容も大人の私たちが見てても大変有意義な,また自分が子供だった頃のことも,授業と子供たちの姿を見て感じることが出来たときは,普段では感じられない思いを感じることが出来たように思います。先生方のいろいろな子供に対する接し方にも大変勉強になったというか,(素晴らしいなー)と思いました。2日間ありがとうございました。                         (1年男児保護者)

・明るい先生のトークが授業をより楽しいものにしていたと思います。頭で考えるだけでなく,実際実験してみることでよくわかり,子どももおもしろかったと喜んでいました。
 勉強を楽しく学べる機会をあたえて下さり,また参加させて頂き,本当にありがとうございました。                                               (1年男児保護者)

・先生が子供の目線に立って話してくださり,とてもよかったです。実験も子供の興味をひくものであり,よかったと思います。スタッフの方々も温かく見守って下さり,ありがとうございました。 また是非参加したいです。よろしくお願いします。                    (1年女児保護者)

・昨日から見たかったです。家でもう一度やってみたいです。ホース買ってきて,家族で楽しみたいです。ありがとうございました。                              (1年 保護者)

・本当に楽しい2日間,とてもわかりやすく,家に帰って,さやがお兄ちゃんに教えていました。また来年を楽しみにしています。先生方ありがとうございました。          (2年女児祖母)

・いつもとちがった角度から,空気と水を見つめて何らかの発見が出来たのではと思います。すばらしい機会を与えて下さいまして,本当にありがとうございました。興味深そうなキラキラした瞳にたくさん出会えました。                                  (2年女児保護者)

→ いっしょに参加した山形さんのレポートはこちら

◆分子模型の奥深さ◆
 先週の土日,金沢駅地下広場で「科学の祭典」に参加してきました。担当ブースは「分子が見せる世界」。10年くらい前に,金沢のラブロ片町で,水分子を作ってもらうことからはじめた分子模型作りも,その後,羽咋,小松(2回)とやってきて5回目になりました。今回は,水とエタノールの分子を作り,それをプラコップに入れた水割りセットにしました。なかなかのかわいさもあってか,作ってくれた参加者の皆さんには,かなり好評だったと思っています。
 さて今回の科学の祭典では,いろいろな出会いがありました。それはまさに分子の魅力であり,不思議な分子間結合?とも言えるようなつながりでもありました。
 それは,2002年の羽咋大会にさかのぼる話です。その大会では,「もしも原子が見えたなら」に出てくる分子模型セットを作ったり,展示した分子模型で作ってみたいというものを興味ある人に作ってもらったり,モルQというカードゲームをやってもらったりと,サービス満点のブースを展開しました。その大会の時に,ダイオキシンを作ったという二人の少年のお話からです。

 一人は,イタイ君。彼は,その後の小松の大会でも,私たちのブースにやってきて見よう見まねで分子模型作りを楽しんでいったお子さんでした。また今回もやってくるかなあと思っていたら,なんとあの少年が高校生になっていて,別のブースにスタッフとして参加していたのです。思わず声をかけると,彼も私だとすぐに分かったようで,照れくさそうな顔をしていました。彼のお父さん(小松大会で顔見知り)とも会ったのですが,「科学の祭典で,分子に出会ったことがきっかけで,こうなったみたいだし,自分が今まで楽しませてもらったから,今度は,楽しませる立場でがんばれと言ってあるんですよ。それにここに来たら,分子のお姉さんにも会えるかなと話していたんです」と話して下さいました。最終日の後かたづけの時に「ご苦労さんだったね。ブース担当は大変だったでしょう」と声をかけると,「はい。足が痛くて…」と満面の笑みで答えてくれました。

 もう一人は,サカシタ君。これも羽咋大会からのつきあいでした。彼も高校1年生になっていました。彼は,「宇宙への道」の担当ボランティアだったのですが,1日目から頻繁にやってきただけでなく,自分の休み時間は,うちのブースでスタッフとしてお手伝いをしてくれました。そして「アドレナリンを作りたい」と言い続け,2日目には,自分で作ったアドレナリンを嬉しそうに持ち帰ることができたのです。彼は,羽咋大会のことをよく覚えていて,「羽咋の時は,1立方メートルの模型があった。カードのゲームができた。空気の分子の模型を作って,それは自分の部屋にまだ飾ってある。時間がない中で,ダイオキシンのセットを切ってもらって,家で組み立てた」と,とても嬉しそうに語ってくれました。

 そして,小松で2回とも来ましたという中2の少年。彼は科学の祭典があると聞き,分子があるのでは?と思い,電車でやってきましたと朝一番にやってきました。彼の今年の夏休みの研究は「分子模型」。角度定規などないので,厚紙で角度定規もどきを作り,手芸やさんで買った発泡スチロール球で,模型を作ったそうです。今回は,ダイオキシンを作っていきました。山田正男さんの分子カッターを使わせてあげると,いたく感動していたようです。そして,とても丁寧に色を付け,できあがったダイオキシンを,満面の笑顔で持ち帰っていきました。雑誌「Newton」を読んでいるとか,周期表を全部覚えているなど,分子に魅せられているようでした。
 その他にも小松で2回やってきたという中学生少年。彼はKITで私と真智さんがいっしょにやった「もし原」の2日間講座の体験者でもありました。 今日は,少し難しい分子を作りたくてやってきたとお母さんと妹と来場。お母さんが,「みんなと違うのを作りたいなんて,この子のわがままですから」と遠慮されているのですが,彼の目は,かごに入った発泡スチロール球で,作れそうなものはないかと,展示されている分子模型に集中。「ぼく,エタンか,ブタンとか作りたいな〜」と言うので,尾形さんに言って対応してもらい,プロパンを嬉しそうに持ち帰っていきました。
 また内灘からやってきた小学校3年生の少年は,今日はこれを作りますと見せたら,すぐに「水分子」と答えました。え?なんで知っているの?と聞くと,図書館で借りた本「もしも原子が見えたなら」に出ていたからというのです。お母さん曰く,今回の科学の祭典と聞いて,分子のものがあればいいな〜とやってきて,「分子」というのを見つけて,この場所を探してきましたとのことでした。

 こんな感じで,継続したステキな出会いがいっぱいあったのです。さすが「読み書きそろばん・分子模型」という基礎基本だなあと再認識した2日間でした。


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