<広さと面積>の授業を終えて
尾形正宏 



1997.12.08
0.はじめに
今年度,初めて複式を担当し,けっこう大変な思いをしているのですが,まあ,これもせっかくの与えられた機会と考えて,いろいろと試みています。10月の僻地複式研究会で,授業をすることになり,ここでも新しい試みをしてみました。3・4年生合同で算数の授業をしてみたのです。授業は仮説実験授業の授業書<広さと面積>です。公開授業では,3時間目を見てもらいましたが,結局,16時間程かけて最後までやってみました。
このときの指導案やレポートは,別に紹介しましたので,今回は,「その後」ってことで,授業後の子どもたちとボクの感想を紹介したいと思います。
 
1.子どもたちの感想
授業の善し悪しを決めるのは,だれか。教師なのか,教育委員会なのか,はたまた授業研究一筋にやってきた人なのか。ボクの判断基準はこうです−「もっとも大切なのは子どもがその授業をどう思ったかである」と。「新学力観」は,いいものももたらしました。それは,「子どもの興味関心が最も大切だ」と言う視点を授業の評価に取り入れたということです。ただ,「子どもたちの興味関心を教師が評価する」という馬鹿なことをやっていますので,まだまだいかんなあとは思いますが…子どもが興味を示さない授業があった場合,それは興味を示さない子どもが悪いのではなく,教師の授業の仕方や教材そのものが悪いのです。現実には,こんなことばかり言っている訳にはいかないのですが,基本的にこういう考えでいかないと,自分の授業が自己満足に陥りそうです。かといって,今の3年生に興味ある授業をしてあげれるのは,そんなにあるわけじゃないので,悲しくなりますが…ん〜,現実は厳しい。
しかし,そのことを裏返して言えば,もし,この3年生たちが興味を持続した授業ができれば,その授業はけっこう本物だ[他所へ行っても通じる]ということになります。そんな意味では,今までにない,厳しい評価をする子どもたちがボクの授業を見ているとおもっています。
<授業の評価>
いつものように,この授業を5段階評価してもらいました。その結果,子どもたちへ,おおむね,この授業を歓迎してくれていました。特に,3年生の子どもたち3人は,みんな「4.楽しかった」と言ってい ます。この評価を見る限りは,「面積は4年生の単元だから,4年生でやるしかな い」などとは言えないことが分かります。工夫しだいでは,3年生にとっても楽し い授業になり得るわけです。
楽しかったことなど
では,授業のなかで,興味をもったことや楽しかったことには,どんなことがあったのでしょうか。聞いてみました。「どんな“もんだい”や“作業”や“実験”がおもしろかったですか。3つあげてください」と言う質問にたいしての答えは,
◇屋久島と種子島の面積を比べる(7)◇目の錯覚の問題(3)
◇北海道の面積を求める問題(1)◇陣取りゲーム(3)
◇畳と坪の話(1)◇長方形(9m,7m)と正方形(一辺8m)を比べる(1)
◇トイレットペーパーの問題(3)◇紙の寸法の話(2)

人気のあったのは,まず,全員が選んだくれた「屋久島と種子島の面積を重さで 比べる問題」です。この問題は,ちょうど公開授業の時だったので,余計に印象に残っているのかも知れません。あとは,計算が出て来ない1部の人気が高いようです。2部に入ると,計算が出てきて,ちょっと人気がないか…。まあしかし,1〜3部を通して興味のあることが散らばっているので,3年生と 一緒に3部までやってよかったなあと思います。
ひとこと感想
[3年生]
・Y男…じっけんやもんだいがでてきてむずかしかったです。
・E女…おもしろかったし4にした。
・N男…さいしょはつまらないとおもったら,たのしかった。
[4年生]
・Y男…じんとりゲームがたのしかった。またしたいとおもった。
・Y男…じんとりゲームがたのしかった。
・M女…さいごにかいたこのかんそうは,ちゃらでかいてあって,よめない所もありました。でも,おもしろかったです。
・M男…面積でも,こんなに楽しいとは思わなかった。

2.授業を終えてみて
3年生が4年生と一緒に算数の授業をするというので,どんな反応を示すか,とても興味がありました。授業にかけるのは仮説の授業書だとは言え,<かけざんやわりざんを習ったとこの3年生にとっては,計算が出てくると結構大変なのではないか><面積という概念について理解できるだろうか><そもそも,こういうプリントにそってやっていく授業に,ついてこれるだろうか>と心配だったわけです。
4月当初,3・4年生一緒に<空気と水>の授業をしました。圧倒的な支持を得て,「やっぱり仮説は学年差なんかない」と思った次第です。しかし,算数となるとなんとなく違うような気もします。いろんな事を考えながら,「もし3年生があっち向いたら,途中でも退却しよう」と思っていました。結局,ほとんど最後まで(一番最後の2ページはやらなかったー紙の枚数を重さではかる問題),4年生と一緒に<広さと面積>の勉強をやったことになります。しかし,3年生と一緒にやることで気をつけなければならないこともいくつかありました。それを上げてみます。
●授業書の中の言葉の意味が分からないことがある
これは,どんな授業書をやるときも同じだと思います。教科書でもそうですよね。事前に授業書をよく読んでおき,「どんな説明をすると分かりやすいか」を考えておきました。
●分数・小数がでてくることについて
分数や小数を習うのは3年生の下の本です。うちの子たちはまだ習っていませんでした。そこで,プリントに出てくる分数は使わず(読まないで),「この紙を10こに分けて,その一つ分を乗せていきます」などと言いました。3年生に前もって「分数」を教えてあれば,すんなりいけるでしょう。でも,必ず教えておかなければならないということはないと思います。小数も同様ですが,分数よりは身近に感じているでしょう。体重測定のときや体温をはかったりするときに使っているので知っています(調査済み)。でも,これも,できれば使わない方がいいでしょう。「半端の数だ」くらいでさっとやればいいと思います。
●面積を重さで比べる−「重さ」について
この授業の要とも言うべきものが,この「面積を重さで比べる」という方法です。この方法があるから,<面積比べの実験>ができるのです。そこで,「重さ比べ」ということについて,最低限度のことは知っていなければなりません。教科書では「重さ」を3年生の算数で教えます(上皿天秤は4年生の理科)ので,この授業の前に「重さ」を済ませておくことが必要でしょう。ボクは,<広さと面積>の授業の前に,「重さ」の単元を済ませました。ただ,これでいいということはありません。「秤からはみ出ていると,そのものの重さは正確にはかれるか」ということは,必ずしも自明ではありません。この点については,4年生は1学期に<ものとその重さ>をやっているので問題はありませんが,3年生が心配です。教科書どおりの「重さ」をやっただけですから…。
そこで,3年生に1時間だけ,<ものとその重さ>の第1部にある「粘土の形を変えた場合」「粘土がはみ出ている場合」「はみ出したものの一部が,何かに乗っている場合」などの問題を与えてみました。案の定,よく分かっていなかったようです。
<広さと面積>では,島の形に画用紙を切り抜いて秤の上に乗せますが,そのとき,「はみ出ているから…」なんてことになると,なんの授業だかわかんなくなりますからね。これはなにも3年生に限ったことではなく,この授業の前にはしっかり<ものとその重さ>をやっておいた方がいいと思います。紙の上で陣取りゲームをした子どもたちは,自分の取った陣地を切り抜いて,おおきな実験天秤で重さを比べていました。ちゃんと定着してますなあ。
●大きな数の計算について−電卓の使用
2学期の3年生が計算できるのは「×一位数」までです。それで,はがきの面積とかは,筆算で計算するのは無理。そんなときは,電卓を使わせました。ボクは,高学年にもよく電卓を使わせます。とくに体積や面積の応用問題では,せっかく式が合ってるのに,一カ所計算ミスをしただけで,不正解になる問題があります。体積の勉強のときは,求める式が分かっていればいいんですですから,こういうときには積極的に電卓を使わせます。そうしないと,体積の授業なのにいつのまにか小数の掛け算や割り算の授業に変わったりして,分けわかんなくなっちゃうんですね。一斉授業において,計算力の差をなくするためには電卓は最高です。小数の乗除はまた別の機会にやればいいのですから…。
 話はそれましたが,そんなわけで,3年生に無理な問題は簡単な数字にしてやるか,電卓を使うかしてやれば,この授業プランは3年生にも可能です。

3.さいごに
この授業プランは,3年生にも十分受け入れられるということがわかりました。テストの結果も,3人とも90点以上です。しかし,あたらな問題は,「このようなことまでして,二(ふた)学年一斉に授業をやる必要があるのか」ということになります。「別々の教材で,普通どおり複式でやればよい」と思う人はそれでいいでしょう。だがしかし(と2回繰り返すのがみそ)「人の考えには何種類かある」「考えが自分とちがったときは意見を述べ合う」「何が正しいのかの決着は実験でつける」というような科学的な手順を踏んでもらおうと思えば,少人数よりは,多人数でやったほうがおもしろい授業になります。ボクは,できるならば
<ここぞという法則をつかむまでは一緒に授業をし,練習問題等で学年差のあること をやればいいのではないか>
と思っています。つまり,同単元・同教材・同内容・異程度くらいまで絞り込むように授業を組めればいいと思うのです。このことは,これからのボクの課題ですが。