藤澤利喜太郎編纂『算術 教科書 上巻』(明治30年)



第一編 緒論  第二編 四則  第三編 諸等数  第四編 整数の性質  第五編 分数

第一編 緒 論算術教科書 上
〇数の呼び方或いは命数法
4.一,二,三という如くに次第に一を足して得る数に一つ一つ名を付けることは,中中に繁雑にして,而かも際限なきことなれば,是非とも僅かの辞を組み合わせて多くの数の名を作る方法を考案せざるべからず。此の方法を名付けて数の呼び方或いは命数法という。
 一により九までの数を基数という。
(中略)
 九に1足したるものを十(じゅう)或いは「とお」と名づく。十に一足したるもの
には別に新規の名を付けずして十一と呼ぶ,十一に一足して十二,十二に一足して十三,…………箇様にして十九に至る。十九に一足して二十と名づく。されば二十とは十を二つ合わせたものなり。
 同様に十を三つ合わせたるものを三十と称し,次第に四十,五十,六十,七十,八十を經て九十に至る。
 九十九に一足したるもの即ち十を十合わせたるものを百と名づけ,百を十合わせたるものを千と名づけ,千を十合わせたるものを萬と名づく。
 一,十,百,千,萬という様なる名を作ることも中中に繁雑なれば,爰に再び工夫を施し,萬を十合わせたるものは別に新規の名を付けずして十萬と呼び,十萬を十合わせたるものを百萬,百萬を十合わせたるものを千萬と名づく。
 千萬を十合わせたるもの即ち萬萬とも称すべき数には更に新規の名を与えて億という。それより4つ目毎に新規の名を作り,萬億を兆,萬兆を京,萬京を垓と称す。該以上の数に名を付くるは用なきことなり。実際は,兆京垓などいう数を用いることすら極めて稀なり。
 一,十,百,千,萬,………をそれぞれに第一位,第二位,第三位,第四位,第五位,………という。
 或る位を十合わせたるものは其れよりも一段高き位に等し,故に此の法を十進法と名づく。

〇数の書き方或いは記数法
5.僅かの記号を用いて如何なる数をも書き表す方法を,数の書き方或いは記数法と称す。
 基数を代表する記号は,
 1,2,3,4,5,6,7,8,9
にして,此れ等記号の名は其の代表するところの数の名に同じ。又,此の9つの記号を数字或いは亞刺比亞(アラビア)数字と名づく。
 数字を以て如何なる数をも書き表す方法を説明せんに,先ず各桁の地取りをなすべし。一般に行わるる地取りは,一の桁の左を十の桁とし,十の桁の左を百の桁とし,次第に左へ行く毎に一桁宛昇り行くものとす。さて,此の図に対し,篤(とく)と勘考するに,必ずしも一,十,百,千,……と明記するにも及ばざることなり。唯予め一の桁より始めて左へ行く毎に順次一桁宛昇り行くものと約束し置けば可なり。即ち上の如き枠を作れば宜し。而して弥々(いよいよ?)数を書き表すには各の桁が幾つあるかを表す数字を其の桁の場所に入るれば可なり。例えば七万六千三百八十九を上の如きに書き表す。
 更に熟考するに,斯くの如く枠を存し置くにも及ばざることなり。結局り(つまり)76389 と書けば容易に其の七万六千三百八十九なることを知り得べし。唯爰に困難なるは或る桁に空きのある場合なり。例えば四百三という数を書き表わさんに,若し枠を存じ置くものとすれば,右端の枠に3を入れ,其の左隣の枠は空け置きて,又其の隣即ち右端より左へ三つ目の枠に4を充たせば可なり。然れども今若し枠取り除くときは4と3との間に空きを存し置くものとするも尚四十三と混淆するの恐れあり。之に加うるに空きの桁の数は1つに限らず,例えば二千八又は六万九の如く行く桁も空くことあるべし。其の様の場合に於いて空きの広狭によりて空きたる桁の数を知るとこは紛らわしくも亦誤り易きことなるべし。由って空きを表す記号の必要を生ず。
 空きを表す記号は「0」にして,其の名を零という。無しという意にして其の居るところの位に数字のなきことを示すものなり。零を用いれば如何なる数にても容易に書き表すことを得,例えば四百三は403と書き,二千八は2008と書き,六万九は60009と書くが如し。
 此の書き方に縁ある数の呼び方あり。例えば四百三を四百零三,二千八を二千零零八と呼ぶが如し。
 実際数字を以て数を書き表すには左より右へ順次数字を書き列ぬるものとす。
 此の九つの数字と零を以て如何なる数をも書き表す方法は最も有益なる発明の一つなり。
 数字という辞の意を広めて零をも数字の中に入れ,零と他の数字とを区別するの必要あるときは一より九までの数字を特に有効数字と名づく。
7.多くの数より成れる大なる数を一目して容易に会得するに便利ならしめんが為に数字を句切ることあり。而して世間一般に行はるる句切り方は右端より始めて 三桁毎に「コンマ」(,)にて句切るものなり*。例えば,三千八百九十二万四千五百六十八を38,924,568と書くが如し。
 注意:右端より始めて第一の「コンマ」の左の位は千の位,第二の「コンマ」の左の位は百万の位なることを忘れざるようにすべし。
*稀には三桁の代わりに四桁毎に句切りたるものあり。又,単に書きたる数字を読むを目的とするときは四桁毎に句切る方が便利なるが如くなれど,三桁にして既に広く世に行はるるからには,三桁毎に句切りたる数を読むに慣熟すること肝要なりと知るべし。

第二編 四 則
〇寄せ算或いは加法
21.寄せ算の験し 寄せ算に誤りなきかを験すには,再び寄せるも一つの方法なれど,人は同じことをするときには,兎に角同じ誤りを為し勝ちのものなれば,成丈け方法を違えて験さざれば,折角の験しも効能薄かるべし。されば数の並べ方を書き換えて寄せるは甚だ好ましきことなり。然れどもこれは如何にも手数の掛かることなれば余り面白駆らず。実際はやむを得ず書き並べある数は其の儘になし置き,唯各々の行の数字を寄せるときに上より下へ加え行く代わりに,下より上へ(最初のときに下より上へ加え行きたる場合には,上より下へ)加え行く法とす。
 最初の結果と験しの結果とが合えば,キット請け合うという訳にはゆかざれど,先ず計算に誤りなしと考えうるを得べし。
22.名数は其の名の同じきものに限り加わうることを得。例えば,7里と9里とを加えて16里を得るが如し。

〇引き算或いは減法
28.(前略) 引き算の験し 減数と差とを加えて被減数を得るや否やを吟味すべし。名数より名数を引く事を得るは同名数の場合に限る。

〇掛け算或いは乗法
35.(前略) 九九の表を閲(けみ)するに,例えば7に8を掛けたるものと8に7を掛けたるものとは何れも56にして互いに相等し。これはさもありて然るべきことなり。如何となれば被乗数と乗数とを交換するも其の積は変わらぬものなればなり。此れ故に普通に行わるる九九の呼び声にては,二つの数の中,其の小なる方を先に唱う。例えば3に4を掛ける場合にも,4に3を掛ける時にも,三四十二と唱え,四三十二とは唱えざるが如し。
注意:掛け算をする前には,予め九十九の呼び声に慣熟するを要す。例えば六八といえば特に思案するまでもなく直ちに四十八と浮かび出づるほどに習い慣れること甚だ肝要なり。
36.整数の掛け算 乗数が基数なる場合には先ず被乗数を書き,一位の数字の下に乗数を書きて横線をひくべし。例えば7326に4を乗ずるには,左の如く書き,第一に6に4を乗ずるには九九の呼び声に従い四六二十四と呼びて4を書き下し2を次の位へ送り,次に二四が八と唱えて,これに一の位より送り来れる2を加えて0を書き1を百の位へ送り,三四十二と呼びて3を書き,1を千の位へ送り,四七二十八と呼び29を書くべし。(中略)
 例(5) 453000×7200を求めよ。
 此の例に於けるが如く被乗数乗数共に右端に零を有する場合には,暫く此れらの零を捨て,掛け算を行って得たる積に,今捨てたるだけの零を書き添える。(中略)
 掛け算の験し 掛け算の結果を験すには被乗数と乗数とを交換して再び掛け算を行うべし。かようにして得たる結果が前の結果と合えば先ず計算に誤りなしと認定するを得べし。則ち両様計算の結果相等しきに拠り其の誤りなきを知る。

〇割り算或いは除法
43.第一の数を第二の数で割る或いは除するということは,第二の数が第一の数の中に幾つ含まれて居るかを策むることなり。つまり第一の数よりして第二の数を幾度び引いたならば残りが無くなるか,或いは,残りが第二の数よりも小さくなるかを見いだすことなり。(中略)
 第一の数を実或いは被除数,第二の数を法或いは除数,法が実の中に幾つ含まれて居るかを表す数を商,残りを剰余と称す。
46.整数の割り算 法が基数なるときは法と実とを一横線上に書き其の間の境界には小さき曲線)を用い実の下に横線をひき其の下に商を書くものとす。
47.法が二桁以上或いは二桁以上の数なる場合
48.割り算の験しには,掛け算を用ゆ。則ち商に法を掛けて得たる積が実に等しくなるを確かむるものとする。又,剰余のある場合には商に法を掛けて得たる積に剰余を加えたるものが実と相等しからざるべからず。
53.(前略)
   15÷3+7×2−6÷2×3=5+14−9=10
注意:上の如き書き方は甚だ紛らわしきが故に,成るべく避くる様にすべし。則ち上の如き書き方に出遇うたるときは従来の慣例によりて解釈すべしと雖も,自ら上の如き書き方を用ゆべからず。混雑を生ずるの恐れある場合には必ず充分に括弧を用いて運算の順序を明示すべし。例えば
(15÷3)+(7×2)−{(6÷2)×3}

第 三 編 諸 等 数
57.億兆という様なる非常に大なる数は勿論,其の他の大概に大なる数と雖も,口にこれを唱うるは造作なきことなれど,明瞭にこれを心の中に想像するは決して容易のことにあらず。例えば,学校より某山に至る距離3万8880尺なりというも,明瞭に其の距離を想像すること難し。然るに後に示すが如く,3万8880尺という代わりに3里といえば容易に其の距離を想像するを得べし。
 小さき数に就きても矢張り同じことなり。例えば,学校へ行くに0.00625日の時間を要すとありては,如何にも解り悪けれど,後に示すが如く0.00625日は9分に等しく,9分の時間は容易にこれを考えうることを得べし。
されば,普通,日用の名数を言い表すに,余り大なる数又は余り小さき数を用いるときは,つとめてこれを避けざるべからず。而して,この目的を達する為には,宛も不名数の場合に於ける位の如く,単位を若干集めたるものを,一段高き等級の単位とし,此の単位を若干集めたるものを更に一段高き等級の単位とし,以上これに準い,又単位を若干に分かちたるものを一段低き等級の単位とし,此の単位を更に若干に分かちたるものを更に一段低き等級の単位とし,以下,これに準い,それぞれに特別の名称を付す。
 斯くの如くにして得たる単位を 補 助 単 位と名付け,補助単位に対し,原の単位を 基 本 単 位と称す。例えば,長さの基本単位は尺にして,補助単位は,里,町,間,丈,寸,分,厘,毛なり。
 ある等級の単位幾つが次の等級の単位になるかを定むることを 命 位という。
 諸々の等級の単位の名称によりて言い表されたる名数を, 諸 等 数或いは 複 名 数と名づけ,諸等数と区別するの必要あるときは,一つの単位の名称によりて言い表されたる名数を 単 名 数と称す。例えば,3里,7.35円,5日は単名数にして,3里5町8間,7円35銭,1時38分は緒等数なり。

〇度量衡
58.長さ,面積,体積,目方に関する制度を度量衡の制度と称す。
 我が国に2種の度量衡あり。一つは明治26年1月1日より施行の度量衡法により,
適法のものとなれる「メートル」法度量衡にして,今一つは,従来よりして本邦に行わし,同法律によりて確定せられたるものなり。

〇「メートル」法度量衡
59.「メートル」法度量衡は,其の昔,仏国にて創定せられたるものなれど,今日は最早仏国一国の専有にあらずして,広く欧米諸国に行わるるものなり。
 長さの基本単位を「メートル」とす。(中略)
 仮名にて「メートル」と書く代わりに米突或いは単に米と書きてもよし。
 「メートル」補助単位の名称命位は次の如し。
  ミリメートル (粍) = 0.001「メートル」
  センチメートル(糎〉 = 0.01 〃
  デシメートル = 0.1 〃
  メートル (米)
  デカメートル = 10「メートル」
  ヘクトメートル = 100 〃
  キロメートル (粁) = 1000 〃
61.(前略) 容 量の単位を「リットル」とす。1「リットル」は1立方「デシメートル」に等し。「リットル」の外に尚次の名称あり
  センチリットル = 0.01「リットル」
  デシリットル = 0.1 〃
  リットル (立)
  デカリットル = 10「リットル」
  ヘクトリットル(立百) = 100 〃
62. 目 方或いは 重 量或いは 重 さの単位を「グラム」とし,千「グラム」を「キログラム」という。
 目方の単位の名称命位は次の如し。
  ミリグラム (瓱) = 0.001「グラム」
  センチグラム = 0.01 〃
  デシグラム = 0.1 〃
  グラム (瓦)
  デカグラム = 10「グラム」
  ヘクトグラム = 100 〃
  キログラム (瓩) = 1000 〃
 「キログラム」を略して「キロ」と呼び,又基と書くことあり。非常に大なる目方例えば船の積み荷の目方の如きものを計るときには,仏噸(ふっとん)を用ゆ。一仏噸は千「キログラム」に等し。

〇本邦度量衡
64.長さの基本単位を 尺とす。1尺は1「メートル」の33分の10なり。即ち,33尺は10「メートル」に等し。
 長さの単位の名称は次の如し
  毛 = 尺の万分の一 = 0.0001尺
  厘 = 尺の千分の一 = 0.001 尺
  分 = 尺の百分の一 = 0.01 尺
  寸 = 尺の十分の一 = 0.1 尺
  尺 = 10/33「メートル」 = 0.30303「メートル」
  丈 = 十 尺 = 10 尺

 厘   町    間     尺
 1 = 36 = 2160 = 12960
    1 =  60  = 360
        1   =  6
 従来慣用の 鯨 尺は,布帛(ふはく)を度るときに限り之を用ゆ。鯨尺1尺は,1尺2寸5分にして,その10倍を鯨尺1丈,10分の1を鯨尺1寸,100分の1を鯨尺1分とす。
注意:度量衡法発布前にありては,鯨尺と区別するが為に普通の尺を曲尺(かねじゃく)と称せり。
 土地の遠近を測るときには通例,厘,町,間,尺を用ゆ。
 地上の高さ例えば山の高さを測るときには,尺のみを用ゆ。
 鉄道距離を測るときには 哩(マイル)を用ゆ。哩は原来英国の長さの単位の名にして,
 1哩は0.4098里に等し。
 水の深さを測るときには, 尋(ひろ)を用ゆ。1尋は6尺にして即ち1間に等し。
 海上の路程を測るときには海里或いは浬を用ゆ。1海里は約そ17町なり。
 船の速さを言い表すときには「ノット」を用ゆ。「ノット」は海里の別名なり。
65.面積の単位 既に第60節に於いて述べたる如く,長さの諸々の単位よりして,それぞれに面積の単位を作るを得べし。例えば平方尺,平方寸と如し。
 地積の単位を 歩或いは 坪とす。1歩或いは1坪とは6尺の長さを辺としたる平方の,面積即ち36平方尺なり。他の地積の単位の名称命位は,次の如し。
  町  段   畝     歩
  1 = 10 = 100 = 3000
      1  = 10 = 300
           1  =  30
                坪   合   勺
               1 = 10 = 100
                   1 = 10
 田畑山林等を測るときには,町,段,畝,歩を用い,市街宅地家屋の面積等を測るときは,坪,合,勺を用ゆ。
 地積を表す名数が町,段,畝を以て終わるときは通例歩なる語尾を添えて以て其の地積なることを表示す。例えば,田地3町と言わず田地3町歩というなり。又1町3段歩,5段8畝歩と唱うるが如し。
 非常に大なる地積を測るには,方里を用ゆ。方里とは1里平方のことなり。
66.体積の単位 (前略)
 土砂利等を量るときには 立 坪(或いは略して坪)を用ゆ。立坪とは6尺立方のことなり。
 1立方尺を 才と称することあり。
 船の容積船積貨物の体積を計るときには,噸を用ゆ。容積の1噸は40立方尺に等し。
 容量の単位を 升と称す。1升は6万4827立方分なり。(中略)
 容量の単位の名称命位は次の如し。
  勺 = 升の100分の1 = 0.01升
  合 = 升の 10分の1 = 0.1 升
  升 = 64827立方分
  斗 = 10 升 = 10 升
  石 = 100 升 =100 升
67.目方或いは重量の基本単位を貫とす。1貫は1「キログラム」の4分の15なり。即ち4貫は15「キログラム」に等し。
 目方の単位の名称命位は次の如し。
  毛 = 貫の100万分の1 = 0.000001貫 = 0.001匁
  厘 = 貫の 10万分の1 = 0.00001 貫 = 0.01 匁
  分 = 貫の 1万分の1 = 0.0001 貫 = 0.1 匁
  匁 = 貫の1000分の1 = 0.001 貫 = 3.75 「グラム」
  貫 = 15/4「キログラム」 = 3.75「キログラム」 = 1000 匁
 此の外,160匁を斤と称す。1斤は600「グラム」に等し。
 貫の代わりに貫目ということあり。匁の代わりに目ということあり。1の位の0なるときは通例目という。例えば,230目というが如し。1の位に有効数字ある場合には,必ず匁という。例えば,17匁と唱え,決して17目と言わざるが如し。

〇貨幣
68.(前略)我が国は従来事実上銀貨国にして,1円とは銀貨1円のことなりしが,明治30年10月1日より思考の貨幣法により,金貨本位を採用することになれり。
69.純金の目方2分を持って価格の単位と為し,之を 円と称す。1円以下は1円の百分の一を 銭と称し,1銭の10分の1を厘と称す。

〇時間
71.日中より次の日中に至るまでの時間を太陽日と称す。太陽日は時々に少しずつ不同あり,然れども之を1年中に平均したるものは一定不変の時間にして之を平太陽日或いは略して単に日と称す。
72.(前略)1月1日に始まり12月31日に終わるものを暦年という。会計年度は4月1日に始まり翌年の3月31日に終わる。又,学年に2種類あり,一つは会計年度に同じく4月1日に始まり3月31日に終わるものにして,今一つは9月11日に始まり翌年の9月10日に終わるものなり。 …(中略)… 或る格段なる月を指さずして単に月というときは30日の意にして,例えば3カ月とは90日のことなり。

〇諸等通法
73.諸等通法とは,諸等数を単名数に直す計算なり。
10進法による諸等数の通法は既に前に其の例を見たるがごとく極めて簡単なり。例えば12円35銭を銭に直すときは1235銭を得,256「メートル」32「センチメートル」を「キロメートル」に直すときは,0.25632「キロメートル」を得るが如し。
10進法によらざる諸等数の通法は,次の例に就きて見るべし。
例(1) 3里5町20間を間に直せ。
一里は36町なるが故に3里は36町の3倍即ち108町なり。これに5町を加えて113町を得,1町は60間なるが故に113町は60間の113倍即ち6780間なり,これに20間を加えて6800間を得。
(中略)
諸等通法の験しには,後に説明する諸等命法により元へ戻してみるを捷径とす。

〇諸等命法
74.諸等命法とは,単名数を諸等数に直す計算なり。
例(1) 2325764秒を日時分秒に直せ。
1分は60秒なるが故に,与えられたる秒数を60で割りて38762分と残り44秒とろ得。1時は60分なるが故に38762を60で割りて646と残り2分とを得,1日は24時なるが故に646を24で割りて26日と残り22時とを得。乃答えは26日22時2分44秒なり。
例(2) 3.5413里を里町間尺…に化せ。
3里は其の儘に残し置き,.5413里を町に直す為に之に36を掛けて19.4868町を得,此の中19町を残し置き,0.4868に60を掛けて29.208間を得,此の中29間を残し置き0.208に6を掛けて1.248尺を得,乃前きに残し置きたるものを拾い集めて3里19町29間1尺2寸4分8厘を得て答えとす。
諸等命法の験しには諸等通法んより元に戻して見るを可とす。(後略)

〇諸等数の寄せ算
75.諸等数を加えるには,先ず第1に同じ名称を有する数字が1縦線をなす様に並べて書き,其の下に横線を引き,右より始めて順次各単位の数を加える毎に諸等命法を行うものとす。(後略)

〇外国度量衡
79.外国度量衡の中にて最も広く本邦に行わるるは英国度量衡なり。今,其の中の最も重要なるものを選びて次に掲げん。
長さの単位の名称命位は次の如し。
1吋(インチ) = 2.540 糎 = 8.382分
12吋 = 1呎(フィート)= 0.3048米 = 1.006尺
3呎 = 1碼(ヤード) = 0.9144米 = 3.017尺
22碼 = 1鎖(チェイン)
80鎖 = 1哩(マイル) = 1.609 粁 = 0.4098里
英国の1海里は6080呎なり。
地積の単位を噎(エークル)とす。1噎は4840平方碼即ち10平方鎖にして,640噎は1平方哩なり。
1 噎 = 0.4047「ヘクタール」 = 4.081 段
1平方哩 = 259.0 「ヘクタール」 = 0.1679方里
容量の基本単位を(ガロン)とす。1ガロンは華氏の寒暖計にて62度の温度に於ける蒸留水目方10封(ポンド)の容量にして,277.274立方吋なり。
1ガロン= 4.554立 = 2.519 升
(後略)
80.米国 81.露国 82.清国

〇外国貨幣
83.英国貨幣の名称命位は次の如し。
磅(ポンド)
志(シリング)
片(ペンス)
20240


112

84.仏蘭西,白耳義(ベルギー),瑞西,伊太利等の諸国は 貨幣同盟なる名の下に同一の貨幣制度を有す。此れら諸国に於ける貨幣称呼の単位は法(フラン)にして,
1法の100分の1を参(サンチーム)と称す。但し,伊太利に於いては法を「リラ」,
参を「サンテシミ」と呼ぶ。
85.独逸貨幣の称呼は,馬(マルク)を以て基本単位とし,1馬の100分の1を布(ブフェニヒ)と称す。
86.米国貨幣の称呼は弗(ドル)を以て単位とし,1弗の100分の1を1仙と称す。
87.清国貨幣の命称命位は10厘(カッシュ)を1分(カンダーリン)とし,10分を1銭(メース)とし,10銭を1両(テール)とす。
88.露国貨幣の称呼の単位を留(ルーブル)とし,1留の100分の1を1哥(コペッ
ク)と称す。

〇経度と時
93.地球は西より東へ回転す。然れども見懸け上は,宛も太陽が東より西へ地球を周ぐるが如し。即ち,東より昇りて西に没し再び東に出づ。故に経度と時との関係などを吟味するには,仮に地球は静止し太陽が1日1回地球を周ぐるものと仮想するを便利なりとす。(中略)
本邦に2個の標準時あり。1つを中央標準時といい,今一つを西部標準時と称す。中央標準時は東経135°の子午線の時にして,東は千島より西は琉球に至る間は此の時を用いゆ。西部標準時は東経120°の子午線の時にして,台湾及び澎湖列島並びに八重山及び宮古列島に於いて之を用いゆ。
中央標準時は西部標準時に先だつこと正に1時間にして,中央標準時の正午は西部標準時の午前11時なり。故に,内地より台湾に行くときには時計を1時間後らせ,台湾より内地に来るときには時計を1時間進ますべし。
96.温度を計るに用いる器械を寒暖計と称す。寒暖計の度盛りに摂氏華氏の別あり。摂氏の寒暖計にありては,水の氷点と水の沸騰点との間を100に等分したるものを1度とし,氷点を零度と呼び沸騰点を100度と呼ぶ。華氏の寒暖計にありては氷点と沸騰点との間を180に等分したるものを1度とし,氷点を32度と呼び沸騰点を212度と呼ぶ。

第四編 整数の性質
97.本編に於いては整数のみにて論ず。乃本編全体に通じて単に数とあるはいづれも整数のことなりと知るべし。

〇倍数及び約数
102.偶数,奇数 2で割り切れるとき数を偶数或いは丁(或いは調と書く)の数と称し,2で割り切れざる数を奇数或いは半の数と称す。

〇9或いは11にて加減乗除の験しを行う法
109.既に第2編に於いて与えたる加減乗除の験しを行う方法の外に9にて加減乗除の験しを行う方法(九去法ともいう)あり。
前節に於いて説明せるが如く,或る数を9で割りて得たる剰余は,其の数を組み立つる数字の和を9で割りて得る剰余に等し。是,此の方法の根源なり。
寄せ算の場合において,寄せらるる数の各々を9で割りて得たる剰余を加え合わせるものを9で割りて得たる剰余は,和を9で割りて得る剰余に等しからざるべからず。
(中略)
寄せ算に誤りあるも尚剰余の符合することあるが故に,此の験しは未だ完全なりとすべからず。例えば,前例において正しき和235848の代わりに誤って234048を得たりとするも,之を9で割りて得る剰余は矢張り3なり。然れども若し剰余が符合せざれば何処にか誤りがあること確かなり。
110.9にて験す方法は寄せ算引き算の場合に於いて実際用いらるること稀なり。之に反し掛け算割り算の場合に於いては層層此の方法を用いることあり。
掛け算の結果を9にて験すには,最初に被乗数と乗数とをそれぞれに9で割りて得べき剰余を索め,更に此れ等の剰余を掛け合わせたるものを9で割りて得べき剰余を索めよ。又,別に積を9で割りて得べき剰余を索むべし。此の2つの剰余が符合すれば,多分は計算に誤りなかるべし。兎に角に此れ等の剰余が符合せざれば,何処にか誤りあること確かなり。

〇素数及び素因数 〇最大公約数 〇最小公倍数

第五編 分数
○分数の緒論
116.既に第45節に於いて割り算の剰余をして処分するに当たり言えるが如く,2を7で割るには如何にすべきかと問うに,特に工夫するまでもなく,2を7で割りたるものは何処までも2を7で割りたるものなり。唯之を簡単に書き表すにことを得れば足れり。仍て先ず2を書き其の下に横線をひき,更に其の下に7を書く。即ち2/7とき,7分の2と読む。されば,2/7とは其れの7倍が2になる様なる数なりと考うるを得べし。
 分母が分子に等しきか或いは分母より大なる分数を仮分数と称し,分子が分母より小なる分数を真分数と名付く。
117.分数は亦,1を分母が表す数に等分したる其の一部分を分子が表す数だけ探りたるものなりと解釈することを得べし。
118.分数の分子が分母に等しきか或いは分母の倍数なるときは,其の分数は整数に等し。例えば15/15は1に等しく,15/3は5に等し。
 整数と真分数とより成る数を帯分数或いは混数と称す。例えば1+1/2 ,5+3/7の如きは帯分数なり。
 帯分数を書くには通例整数と真分数とを結びつける寄せ算の符号を省略す。例えば上の帯分数の如きは,11/2,53/7と書き,それぞれに「一と二分の一」或いは「一個二分の一」,「五と七分の三」或いは「五個七分の三」と読む。

○約分
120.分数の値を変ぜずして其の両項を小にすることを名付けて分数を約する,或いは一層簡単に約分するという。分数を約するには,其の分子分母を其れ等二数の公約数を以て同時に割るべし。出来るだけ幾回も繰り返し約分し遂に最早約分する能わざるに至りたるときに顕わるる分数,換言すれば分子と分母とが互いに素なる分数を既約分数と称す。 分数の分子及び分母を其れ等二数の最大公約数で割るときは直ちに既約分数を得べきや明らかなり。
 約分するという言葉は層々既約分数に直すという意味に用いらるることあり。
例(1) 855/915を約せ
 855/915=(855÷5)/(915÷5)=171/183=(171÷3)/(183÷3)=57/61
例(2) 637/819を既約分数に直せ
 この場合に於いては,例(1)に於けるが如く「メノコ」にて公約数を見いだし難きが故に,第114節により分子と分母との最大公約数を求め91を得。

○通分
121.2つ或いは2つより多くの分数の値を変ぜずに其れ等の分数の分母を同一にすることを名付けて此れ等の分数を通分するという。
 幾つかの分数が共通(即ち同一)なる分母を有するときは,此の共通なる分母を此れ等の分数が公分母と称す。
 与えられたる若干の分数の公分母は沢山ある。其の中にてもっとも小なるものを其れ等の分数の最小公分母と名付く。

○分数を小数に直すこと
122.分数は原来割り算を表示するものなれば,分数を小数に直すには,分母を以て分子を割ればよし。(中略)
   0.12567567567・・・・
 循環小数を書き表すには,循環する部分を唯一度書きて,其の両端の数字の上に点を打つ。例えば,上の循環小数を0.123567と書くが如し。又,循環するところの数字が唯一つなるときは,其の数字の上に点を打つ。例えば,1/3を0.3と書くが如し。
 循環小数に2つの種類あり。其の小数点の直ちに右なる位即ち分位の数字よりして循環し始めるものを純循環小数と名付け,其の小数点と循環する部分との間に循環せざる部分のあるものを混循環小数と称す。
124.分数を小数に直す為に分母を以て分子を割るに,割り切れずして出て来るところの限りなき小数は必ずや循環小数なり。其の理由は次の如し(理由は省略)。
125.(前略)既約分数の分母が2なる因数のみ或いは5なる因数のみ或いは2及び5なる因数のみを有するときは,此の分数は限りある分数に等し。

○小数を分数に直すこと    ○分数の寄せ算    ○分数の引き算

○分数の掛け算及び割り算
131.分数に整数を掛けるには,此の整数を此の分数の分子に掛けるか或いは此の整数を以て此の分数の分母を割ればよし(第119節)。
132.整数の分数に掛けること 分数に整数を掛けるということは,此の分数を此の整数だけ採りて加え合わせるということにして,其の意義は極めて明白なれば,之を説明するの必要なかるべし。整数に分数をかけるときに就きては,少しくその意義を説明するの必要もあらんや。
 或る数,例えば5に3/8を掛ける即ち3/8倍するということは,与えられたる数を八つに等分したる其の一つの三倍をとるというのに同じ。
135.整数を分数で割ること 5を1/2で割るということは,5の中に1/2が幾つあるかをもとめることなり。さて1の中には1/2が分明に二つあるが故に,5の中には1/2が十あり。乃ち5÷1/2=5×2=10。(中略)故に,ある数を1/2,1/3,1/4,1/5………で割るということは,その数にそれぞれ2,3,4,5………を掛けるということなり。


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