「時速30kmの福祉」(第254回)




2022.10.19.

時速30kmの福祉(第254回)

 2022年10月初旬、富山県東部の方から一本の電話相談をお受けしました。
その方によると、お住まいの地域で「共通診断書」なる文書が流通しており、
介護保険のサービスを利用するときは必ず作成して提出しなければならないと
のこと。また、その文書料も1万円以上と高額で困っているとのことでした。
当方にて調べたところ、こういった文書についてかつて全国的に問題となった
ことがあり、厚生労働省から各都道府県の介護保険担当部局に対して事務連絡
文書が発出されておりました。それによると、ホームヘルパーやデイサービス、
短期入所などの利用に際しては、ずっと同じ施設内で住み続けるわけではない
のでそのような診断書の提出強要を行ってはいけないこととされています。ま
た、診断書の提出がないことを理由にサービスの提供を断ってはならない旨も
記されています。さらに、どうしても他に選び得る手段がなくやむを得ず診断
書の提出をサービス利用者・家族にお願いするとき(実際にはそのような極め
て特殊な事情などほとんどあり得ないのですが・・・・・・)は、診断書の文書料を
当然のように利用者に全額支払わせることがあってはならないという趣旨のこ
とも書かれています。介護サービス事業者の都合で取り寄せが必要なのであれ
ば介護サービス事業者が全部または一部の費用を支払うのがむしろ当たり前。
厚生労働省の関係法令解釈は至極もっともと言えます。

 全国的に見ると、こういった共通書式の運用事例は京都府医師会が嚆矢のよ
うです。施設入所を申し込むときに施設ごとに診断書が異なると施設の数だけ
診断書の作成が必要となり、それを書く医師も費用を支払うサービス利用者・
家族も大変だというところから共通書式を作ろうという話になったようです。
しかし、先に述べた厚生労働省からの事務連絡文書が発出されて後は、書式作
成元の京都府医師会から注意書きが出されるようになり、事務連絡文書に反す
る書式の運用が禁じられました。京都府医師会を見習って共通書式を作った他
の地域の団体も、時を同じくして同様の対応をとりました。

 今回問題となった富山県東部の事例は、事務連絡文書が発出されて後もなぜ
か20年以上放置されてきた不可解な例であり、個別の事例によっては違法行為
すら疑われます。本来必要のない文書の作成と文書料の支払いを介護保険サー
ビス利用の条件として強制されて困っている人は当研究所宛連絡ください。
弁護士等と連携して問題解決のお手伝いをいたします。

(参考情報)
平成13年3月28日付厚生労働省老健局担当各課発各都道府県介護保険担当主幹部(局)等宛事務連絡より抜粋








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