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平成17131

 

厚生労働大臣

尾辻 秀久 殿

 

独立・中立型介護支援専門員全国協議会

代表  粟倉 敏貴                    

 

 

 

政策提言の送付について

 

時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

さて、本会におきましては、平成172005)年130日をもちまして、現在の介護保険制度内外における介護支援専門員をめぐる状況につき、分析検討した成果を集約いたしました。その結果、来たる介護保険法改正へ向けて、別紙添付書類のとおり提言を作成いたしましたので、これを送付させていただきます。

ご多忙のところまことに恐縮でありますが、今後の貴省の政策遂行に際しまして、上記の提言をご高覧の上、その趣旨の採用につきご検討くださいますようお願い申し上げます。

 

 

別紙添付書類

 

真に利用者本位の地域ケアマネジメントシステムの実現を目指して

〜介護保険法改正などに関する提言〜」

 

 


(別紙)

 

 

真に利用者本位の地域ケアマネジメントシステムの実現を目指して

〜介護保険法改正などに関する提言〜

 

 

 

意見1 地域包括支援センター関連

 

(1)地域包括支援センターは、原則として新・予防給付も含めてダイレクトケアサービスを一切持たない第三者機関とする方針をひきつづき堅持して下さい。

 

(2)新・予防給付のケアマネジメントを地域包括支援センターから居宅介護支援事業者に委託する際には、その利用者に新・予防給付を提供する法人および関連する法人以外の第三者機関に所属する介護支援専門員がケアマネジメントを行う事とするよう地域包括生活支援センターを指導して下さい。

 

 

意見2 地域密着型サービス関連

 

(1)特定施設入所者生活介護については、当該施設以外の外部の介護支援専門員によるケアマネジメントおよびダイレクトケアサービスの選択権を認める方向で法改正が検討されているとうかがっておりますが、市町村指定の地域密着型サービスについても、同様に外部の介護支援専門員によるケアマネジメントを利用者・家族が望む場合はその選択権を保障するよう法改正案に盛り込んでください。また、長期的には、第三者機関の介護支援専門員のみがケアマネジメントを行う事とするよう段階的な政策誘導を行って下さい。

 

 

意見3 障害者ケアマネジメント関連

 

(1)第三者機関主義の居宅介護支援事業者の介護支援専門員も、一定の研修修了を前提として精神障害者を含む障害者ケアマネジメントの担い手として認めて下さい。長期的には、高齢者、障害者、児童の垣根を越えた統一した地域ケアマネジメントシステムを確立して下さい。

(2)介護支援専門員を正式に「国家資格」として位置づけ、基礎資格、専門資格などの資格体系を確立して下さい。そして、その際にはわれわれ介護支援専門員当事者の意見が反映されるよう政策決定手続への参加を認めて下さい。

 

 

意見4 在宅−施設、医療−福祉の連携強化関連 

 

(1)入院・入所中の利用者やその家族が希望する場合は、施設ケアマネジメントへの在宅時の担当介護支援専門員の参加や協力が可能となるよう制度化して下さい。

 

(2)退院・退所にむけての試験外泊期間中の福祉用具貸与など、自立支援の観点から有効と思われる一定の条件を満たした場合は、入院・入所者に対しても居宅サービスの利用が可能となるよう制度化して下さい。

 

(3)医療ニーズの高い利用者等への対応に際し、医療機関との連携がより緊密となるよう標準的な連携モデルを構築し、その実現を側面的に支援して下さい。

 

 

意見5 第三者評価関連

 

(1)平成17年4月からケアマネジメントの第三者評価モデル事業が、翌18年4月からはその本格実施が予定されていると聞き及んでおります。ケアマネジメントサービスの質の確保の観点から、第三者評価と情報開示は必須であり、その実施は好ましい事と受け止めています。ただ、その評価基準が適切でなければ、良い仕事を行っている者が不当に低い評価を受ける事になりかねません。そこで、評価基準の作成や見直しに際して、われわれ介護支援専門員当事者の意見が反映されるようご配慮をお願いいたします。

 

(2)調査費用節約のため、新規開設事業者については、情報開示モデル事業に定められた調査項目の充足を事業者指定の要件とする事を提案します。

 

 

意見6 保険者機能強化関連

 

(1)保険者である市町村の機能強化の一環として、各事業者への立ち入り調査権限を新たに認める事とされていますが、利用者・家族の権利・利益を守るため、および保険料・租税納付者の権利・利益を守るための同権限の行使を歓迎します。ただし、ともするとケアマネジメントの専門性の観点から疑義のある一方的かつ画一的な指導も地域によっては散見される事から、同権限の行使にあたっては介護支援専門員当事者と十分意思疎通をはかり、一方的、画一的な対応とならないよう求めます。

 

 

意見7 要介護認定・要支援認定申請代行業務等手続代行業務関連

 

(1)要介護認定・要支援認定の代行は原則として認めない方針とされていますが、認定手続の公正な実施の観点からこれを歓迎します。ただし、独居高齢者など市町村窓口まで出向き自ら申請行為を行う事ができない人にとってあらたな支障が生じてはいけないので、市町村として希望者に対して申請窓口担当者が利用者宅を訪問するいわゆる「出前申請窓口」の設置を義務づけるなど、申請者の手続的権利に配慮して下さい。

 

(2)認定申請だけではなく、重度身体障害者医療費助成申請や高額介護サービス費支給申請など、自分で申請行為ができない利用者に代わり、無償で介護支援専門員が書類のやりとりを行う取り組みも地域によってはありました。これらの行為も禁止される場合は、(1)同様に申請窓口を持つ市町村、都道府県がいわゆる「出前申請窓口」を設置するよう義務づけて下さい。

 

 

意見8 新・予防給付関連

 

(1)率直に申しあげて、新・予防給付が本当に自立の促進につながるのか、逆効果になるのかについて専門家の意見が分かれています。そこで、新・予防給付の対象者選定に当たっては、介護認定審査会にて職権によって決定するのではなく、審査会はあくまで意見をとりまとめるにとどめ、新・予防給付と従来の給付のいずれを利用するかの最終的な自己決定権を利用者・家族に保障する事を提案します。そして、どちらを選択した人が、結果的により自立したかを科学的に検証する事を提案します。

 

(2)出来高払いは過剰サービスを生むので包括算定という案が出ていますが、「まるめ」算定では必要な人に十分なサービスが保障されず、逆にさほど必要のない人に無用のサービスがあてがわれる傾向を生みます。かえって費用対効果を損なう恐れがありますので、従来通りの出来高算定にし、過剰サービスの抑制はケアマネジメントの適正化により実現するよう提案します。

意見9 介護支援専門員更新制および主任制、二重指定関連

 

(1)更新制の導入は望ましいのですが、その条件設定によってはがんばっている介護支援専門員が淘汰される恐れがあります。更新条件の設定にあたっては、介護支援専門員当事者の意見を反映する内容にして下さい。

 

(2)現行の減算基準は、ケアマネジメントの専門性に照らしても不合理なものなので、減算基準と更新基準を連動しないようにして下さい。また、減算基準そのものも見直して下さい。

 

(3)併設施設の介護支援専門員の中には、事業所の都合で入所部門などに配属されている人もいます。居宅介護支援事業所に配属されていない場合でも希望すれば更新のための研修を受けることができるようにして下さい。

 

(4)ケアマネジメントの独立の観点から望ましくない併設事業所管理者、経営者による利益誘導行為が後を絶ちません。介護支援専門員の身分保障が制度化されていない現行制度下では、不当な業務命令であっても、それに違反すれば不利益な処分を受ける恐れがあります。また、業務命令に従った場合は運営基準違反となり、事業所だけではなく介護支援専門員の専門職としての責任が問われる事となります。そこで、居宅介護支援事業所管理者および法人代表に対しては運営基準違反の業務命令を行わないよう指導の強化を求めます。他方介護支援専門員に対しては、不当な業務命令の事実があった場合の告発を義務付け、同時に告発者に対する不利益な取り扱いの禁止を明文で制度化する事を求めます。

 

(5)主任介護支援専門員を新設する事により専門性と公正を担保する構想を歓迎します。しかしながら、主任となる要件の設定によっては、かえって専門性を損なうなどの弊害が懸念されます。そこで、主任介護支援専門員となるべき者の評価基準の策定に当たっては介護支援専門員当事者の意見が反映されるよう求めます。

 

(6)独立型の介護支援専門員が事業所を興すにあたり、主任介護支援専門員兼管理者の配置を事業者指定の条件とするならば、独立妨害のため併設事業所の管理者、法人経営者による主任介護支援専門員研修の履修妨害を惹起する恐れがあります。そこで、不当な履修妨害を禁止する事に加え、独立開業に際してはその配置を指定条件とせず、指定後一定期間以内の履修を義務づけるにとどめる事を提案します。

 

(7)主任介護支援専門員を配置する「独立型」事業所には、いわゆる門前薬局的な偽装独立の事業所を含めるべきではありません。そこで、アメリカの高齢者ケアマネジメント専門職協会(仮訳)の基準を参考として当協議会が作成するガイドライン(本日の時点で未定稿ですが、参考資料として別添します)に準じた区別の基準を設けるよう提案します。

 

 

意見10 自己作成ケアプラン支援について

 

(1)介護保険法上ケアプランの作成を介護支援専門員に委ねず利用者・家族が自己作成する事が認められており、いわゆるマイケアプランを選択する利用者・家族が少なからず存在します。マイケアプラン自己作成者の中には、能動的に自分のライフプランを自分で決めたいという人もいらっしゃいますが、周囲にいわゆる「囲い込み」型の介護支援専門員しか見当たらず、自分の望んだプランを立ててもらえないためやむを得ずマイケアプランを選択する人も少なくありません。後者の場合、ケアプランの作成支援サービスがあればとても助かるという声が独立型の介護支援専門員宛寄せられております。そこで、自分のライフプランは自分で立てて自己管理するという「本来の自立」を促すため、かつ利用者・家族が意識しているニーズ以外の専門的見地から拾い出せるニーズまで取り込んだより良いケアプラン作りを促すため、利用者・家族からの相談に応じて助言・支援を行う事業を新設し、ケアマネジメントに準じた報酬を設定するようご検討下さい。

 

 

意見11 介護給付や予防給付の調整について

 

(1)介護給付や予防給付の適正化が進められていますが、旧来の日本の伝統的な社会慣行の影響を受け、主として年輩の男性を中心に、自分自身や家族の生活環境整備が不得手な人たちが存在し、これらの人たちが要介護・要支援者や介護者の立場になった場合に、介護保険サービス等の公的サービスへの依存により、不適切な介護給付や予防給付の増大に結びつきやすい状況を引き起こしていることは否定できません。制度の変革に当たっては、男女共同参画の視点に立ち、関係省庁と連携して、市民の意識改革、家事の訓練、介護指導等に積極的に取り組んで下さい。また一方で、生活援助等のサービスがなければ在宅生活が本当に困難な人に対しては、安易な給付制限を行わず、給付を認める事を前提として下さい。

 

 

 

意見12 その他の意見について

 

(1)これまで述べてきた意見1〜11の他、従前より当協議会として発表してきた提言等につきましてもいま一度お目通しの上、その実現を検討下さい。

 

 

意見13 ケアマネジメントの視点からの災害復興支援システムの構築について

 

(1)昨年は、台風による風水害、地震による災害など、大規模自然災害による被害が数多く発生しました。その復興支援にあたる現場スタッフの方々からは、いわゆる災害弱者である障害者、高齢者、児童がどこに住んでいて、それぞれどのようなニーズを持っているのかという個人情報がない(市町村は守秘義務があるため情報を提供しない)ために、緊急で救助・支援が必要な方々への救助・支援が遅れてしまったことが指摘されています。また、ニーズ把握の遅れから、どの地域にどのくらいの物資や介護人材が必要かという情報が、必ずしも速やかかつ正確に伝わらず、過剰な物資やボランティアでかえって被災地が迷惑する事態や逆に不足して困る事態が発生したことが確認されています。これに加え、本来真っ先に駆けつけるべき担当介護支援専門員やその地域の介護専門職も、広域災害ゆえにいっしょに被災してしまい、容易に機能麻痺に陥ることが指摘されています。このような教訓を踏まえ、災害が発生してから考えるのではなく、平素から災害発生時の速やかなニーズ把握とサービスの種類、量の決定、その円滑な供給を保障するシステムを構築しておく必要があります。そこで、別添参考資料のとおり「転ばぬ先の災害復興支援介護ボランティア管理システム(仮称)」の創設を提案します。

 

 

 

 

 


(別添参考資料)

 

 

 

転ばぬ先の災害復興支援介護ボランティア管理システム(仮称)

 

 

(1)介護支援専門員(ケアマネジャー)が利用者・家族との間でケアマネジメント契約を締結する際に、大規模災害時を想定した災害ボランティアネットワーク(都道府県・市町村・都道府県社会福祉協議会・市町村社会福祉協議会の参加が前提)への個人情報公開同意書の作成を利用者・家族に勧め、同意が得られれば当該同意書を作成する。

 

(2)同意書は、エマージェンシーレベルに応じた段階的情報公開をその内容とし、緊急度に応じて利用者・家族が望む支援の内容とその理由を明記する。

 

3)同意書の提出があった場合、同意された範囲の個人情報を担当の介護支援専門員(ケアマネジャー)が所定の個票にとりまとめ、当該情報を都道府県社会福祉協議会に提出する。個人情報は1か月ごとに異動を確認し、異動があった場合は当該情報を更新の上、都道府県社会福祉協議会にその都度提出する。

 

(4)都道府県社会福祉協議会は、集まった個票を複数の場所で管理し、災害時以外は当該情報がいかなる理由によっても活用されないよう厳重に管理する(管理場所を分散させるのは管理場所が被災してシステムの機能麻痺をきたさないため)。

 

(5)都道府県社会福祉協議会は、いざ大規模災害が発生した場合、災害ボランティアネットワークに対しあらかじめ同意を得た範囲の個人情報を災害被災地に該当する地域分のみ速やかに提供する。

 

(6)災害ボランティアネットワークは、当該情報をいわゆる「災害弱者」である障害者、高齢者、児童等の居住位置確認および個別ニーズの可及的速やかな充足のためのみに用いる事とする。

 

(7)災害ボランティアネットワークは、個別ニーズの充足にあたり、どのような技能を持った介護スタッフがどの地域に何人必要かを速やかに調査し、その情報を都道府県介護福祉士会に連絡する。

 

(8)都道府県介護福祉士会は、災害時を想定し、平素から災害時介護ボランティアが可能な会員を募り、名簿を作成しておく。

 

(9)都道府県介護福祉士会は、災害ボランティアネットワークからの連絡を受け、介護ボランティア派遣期間、派遣場所、派遣人数、介護内容を確認し、登録会員のローテーションを計画・実行・管理する。

 

10)介護支援専門員(ケアマネジャー)ではフォローしきれないいわゆる「災害弱者」(自立度が高くケアプランを必要としないが災害発生時には自分で自分を守りきれない独居高齢者など)のニーズについては、市町村社会福祉協議会が平素から情報を収集管理し、災害発生時に備える。

 

11)市町村社会福祉協議会の個人情報収集・管理は、富山県の宇奈月町社会福祉協議会方式など先進事例を参考に構築する。

 

12)本システムに携わる関係団体担当者は、平素から定期的に情報を交換するほか、災害発生時にそなえた訓練を定期的に行う。

 

13)長期的には、看護ニーズや医療ニーズについても看護専門職能団体や医療専門職能団体の協力を得て充足できるようネットワークを拡大・強化する。

 

14)短期的にはモデル事業を全国数カ所で実施し、長期的には、全国に同システムを拡げ、市町村、都道府県の垣根を超えた広域相互救援システムを確立する。

 

15)本システムの構築・維持にあたり、所要の経費を国、都道府県、市町村の公費負担とする。

 

 

 


(別添参考資料)

 

 

 

居宅介護支援事業者の独立・中立型を定義するガイドラインについて

(作成中のため未定稿です)