富山市宛公開質問状(2006.04.20)




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  •                               2006年4月20日

    富山市長殿
    富山市障害福祉課長殿
    富山市介護保険課長殿
    富山市社会福祉課長殿

                             仮称「自立生活を考える会富山」
                             設立準備委員会
                             委員長


                      公開質問状


     わたしたちは、介護保険法と障害者自立支援法のサービスを利用する者、サービス提供
    事業者の者、介護支援専門員、その他自立生活に関心のある者の集まりです。この度、自
    立支援法の施行にあたり、富山市障害福祉課より、介護保険法と自立支援法を併用する場
    合、介護保険法の単位数を毎月1単位まで使い切らなければ自立支援法の給付を認めない
    との法解釈と運用の方針が打ち出されました。しかし、そのような方針には、別紙に例示
    するさまざまな問題があることは明らかであり、その方針の撤回を求めるものです。そも
    そも今回の法解釈と運用の方針について、4月1日を過ぎた現在に至っても、いまだにサ
    ービス利用者である当事者に何も説明がありません。これは、サービス利用者の主体性、
    当事者性を無視する不作為であり、到底容認できません。
     このような理由から、富山市としてサービス併用利用者、自立支援法事業者、介護保険
    法介護支援専門員などの市民向けの説明会を可及的速やかに開催することを求めます。


    (別紙)


    (1) 自立支援法施行前の富山市の解釈

    1)2006年2月7日までの富山市障害福祉課の支援費制度運用

       支援費支給決定時に介護保険との併用要件を満たしているか確認し、満たしていれ
      ば支給を決定。その後は介護保険の利用実績と支援費の支給実績の照らし合わせは行
      ってこなかった。

    2)2006年2月8日以後の富山市障害福祉課見解

       介護保険との併用の場合、介護保険の単位数を1単位まで使い切らなければ支援費
      の支給要件を満たさない。
       1単位まで使い切る場合は介護保険で超過負担が出る(利用者側に新たな負担が生
      じる)事についてはやむを得ない。

    3)厚生労働省社会援護局障害保健福祉部障害福祉課居宅支援係見解(2006年2月8
      日現在)

       介護保険を1単位まで使い切る事を支援費支給条件とするかどうかは市町村の裁量
      に委ねており、国としてそこまで求めているわけではない。

    4)富山市介護保険課見解(2006年2月8日現在)

       介護保険を1単位まで使い切る事は不要。


    (2) 自立支援法施行後の富山市の解釈

    1)2006年4月1日以後の富山市障害福祉課見解

       支援費同様、自立支援法のサービスも介護保険の単位数を1単位まで使い切らなけ
      れば支給は認められない。自立支援法の給付費請求に際しては介護保険を使い切って
      いる事を証明する領収証の添付を求める。

    2)厚生労働省見解

       支援費制度から自立支援法に変わって後も、介護保険併用に関しては国として新た
      な解釈通知などを発出していない。従前通り、介護保険の単位を1単位まで使い切る
      事を支給要件とするかどうかは市町村の裁量に委ねており、国としてそこまで求めて
      いるわけではない。


    (3) 富山市障害福祉課の解釈と運用の問題点

    1)行政手続上の問題点

    ・仮に富山市が支援費制度施行当初から「もともと」介護保険の残単位数を1単位まで使
     い切らなければ支援費の支給を認めないという立場であったのならば、支援費制度施行
     当初に遡って各人の各月ごとの介護保険残単位数を調査し、残単位数がある場合は使い
     切る形で介護保険の給付管理票を修正の上、国保連宛当該修正給付管理票を提出するよ
     う当該月を給付管理した居宅介護支援事業所に依頼する必要がある。しかし、介護保険
     法上の介護給付費の請求権は2年で消滅時効にかかるため、それ以前の修正はできない。
     従って、消滅時効により請求権が消滅した期間は修正する事ができず、残単位数のある
     月は支援費支給の対象にならなくなる。そこで、当該月の支援費支給決定は誤りという
     事になり、遡って利用者に支援費支給分費用の返還を求めるか、もしくは国庫補助金返
     還分を市単独で補填する必要が生じる。
      これに加え、請求権が消滅していない期間であっても、担当介護支援専門員が離職な
     どで既に当該居宅介護支援事業所に居ない場合や事業所自体が閉鎖されている場合も想
     定され、現実問題として遡及計算がどの程度できるか疑問が残る。
      もし、富山市が支援費制度施行当初から「介護保険の残単位数を1単位まで使い切ら
     なければ支援費の支給を認めない」という立場であったと主張し、かつ遡及計算を行わ
     ないならば、過去に支援費の支給要件に該当しない事例が(ほぼ全数)存在し、しかも
     あたかも支給要件に該当するかのように国庫補助を得ていた事となり市の言動は論理的
     に矛盾する事となる。

    ・富山市は2005年4月1日に近隣町村と合併しているが、合併前の町村では、介護保
     険の残単位数を支援費利用分に振り替えないという方針を明確に示し、利用者にも説明
     してきたところがある。市町村合併に際し、合併協議会にて本件の取り扱いを統一する
     旨決まっていたのならば良いが、実際の運用を見ると、旧富山市ですら結果的に振り替
     えなしで運用されている。

    ・仮に一定の期日をもって(例えば2月9日をもって)富山市として取り扱いの変更を決
     定したという事であれば、取り扱い変更後は利用者に新たな負担を求める事となるにも
     拘わらず利用者に対して事前に説明する義務が果たされていない。また、事後に広報す
     る義務も果たされていない。このままでは取り扱いの変更を知らない利用者と知ってい
     る利用者との間に新たに二重の基準を実質的に設ける事となり、行政公平の原則に反す
     る。また、変更期日以後に取り扱いの変更を知った者が遡って計算をやり直す場合、前
     述の「もともと」支援費制度施行当初からの取り扱いであったと富山市が主張する場合
     と同様の矛盾が生じる。

    ・各人に対し各月ごとに支援費の支給変更決定を行う事は実務上不可能であり、かつ月途
     中に支給量増の変更決定を行わない場合は差額分の利用者負担を求める事となるが、支
     払えない利用者の必要な介護量をどう確保するか支援費以外の施策を新たに設ける必要
     が生じる(設けなければ支援費制度自体の安定的な運用が困難となるため)。

    2)サービス利用者から見た問題点

    ・ほぼすべての利用者にとって、介護保険超過分の全額自己負担を前提としなければ支援
     費・自立支援法のサービスの支給を認めないとする取り扱いは不利益変更に該当し、遡
     及して利用者に負担を求める事は生存権の自由権的効果の観点から認められない。

    ・毎月毎月最終的な介護保険の利用実績が確定しなければ超過負担がいくらになるか分か
     らず、支援費・自立支援法のサービスの支給も認められるかどうか分からないという事
     になれば、安定した在宅生活、地域における生活を営む事ができなくなり、支援費制
     度および自立支援法の趣旨にも反する。また、新たな費用負担を行うだけの資力がない
     者は、制度の利用自体ができなくなってしまう。生活保護受給者で他人介護料の算定を
     受けている者にいたっては、支援費・自立支援法を利用していない事を理由に打ち切ら
     れる恐れすらあり、各制度の体系から考えても1単位の端数も認めない取り扱いには矛
     盾が多い。

    3)サービス事業者から見た問題点

    ・毎月毎月介護保険の実績が確定しなければ、支援費・自立支援法利用実績が確定しない
     という不都合が生じる。例えば、介護保険の訪問介護員と支援費の訪問介護員とでは時
     給などの条件も異なり、月末にならないとどの日が支援費に該当する訪問日か分からず
     給与計算もできないとなれば実務上極めて問題がある。また、支援費・自立支援法のみ
     で介護保険の事業を行っていない事業所の場合、同一法人内で単位数を振り替える事自
     体がそもそもできない。その場合は、振り替え可能な事業所を利用している利用者は支
     援費・自立支援法を利用できて、振り替え不可能な事業所を利用している利用者は支援
     費・自立支援法を利用できない事に結果的にはなってしまうので、草の根で障害者運動
     から支援費事業のみを立ち上げる道を絶たれてしまう。

    ・介護保険の領収証は翌月後半に発行される例が多く、すべての事業者の領収証がそろう
     まで支援費・自立支援法上の給付請求ができないという取り扱いでは、月遅れ請求が常
     態化してしまう。

    4)ケアマネジャーから見た問題点

    ・仮に1単位まで振り替えるとしても、そもそも介護保険のサービスと支援費・自立支援
     法のサービスとではサービス内容も利用条件も単価も異なる。同じ「身体介護」という
     名称のサービスでも果たして時間数が同じだからといって直ちに互換可能と考えて良い
     のか疑問が残る。また、互換しようにも介護保険に該当するサービスがない場合、振り
     替えようがない。その場合には端数を使い切りたくてもできない事となり、支援費・自
     立支援法の支給対象からはずれ、支援費・自立支援法分が全額自己負担となってしまう。
     それを避けるためには、無理矢理にでも月末で介護保険の単位数を使い切るようプラン
     を途中変更するしかないが、そんな事をすれば介護保険法上の介護支援専門員としての
     倫理に反する事になる。

    ・そもそも、介護保険のケアマネジャーにどこまでの義務があるのか疑問が残る。最終的
     な単位数の確認と支援費・自立支援法支給額の確定は障害者ケアマネジメントの担当者
     もしくは市町村にあるのではないか。

    5)障害者運動全体から見た問題点

    ・上記1)から4)を概観しただけでも、介護保険の単位数を1単位まで使いきらなけれ
     ば支援費・自立支援法上のサービスの支給を認めないという制度解釈は、障害のある人
     が地域で安心して暮らしていくための制度の解釈として問題があまりにも多く、認める
     わけにはいかない。