2006年度高齢者福祉論最終講ご質問とお答え
毎回講義の後にアンケート票(質問票)を回収し、次の講義の冒頭でお答えしておりま
したが、最終講の後に回収したアンケート票(質問票)に対して直接お答えする場があり
ませんので、このコーナーでお答えに代えさせていただきます。さらに疑問に思われるこ
とがありましたら、以下のアドレス宛お尋ねください。
(質問受付アドレス) mcbr@po2.nsknet.or.jp
※上のアドレスは複数の相談機関で共用しておりますので、分類の都合上、送信の際
には富山国際大学高齢者福祉論受講者(元受講者)である旨を明記して下さい。
(ご質問)在宅介護と施設の両方とも利用できない人はどうなるのか?
(お答え)たいへん重要な問いだと思います。様々な理由で在宅、施設を問わず医療、看
護、介護、リハビリなど必要なサービスを受けることができなくて困っている
人が増えています。必要なサービスであるのに制度上利用できないという場合
は、必要なサービスが利用できる制度に改めていかなければならないと思いま
す。お金がないために必要なサービスが利用できない場合は、お金がなくても
必要なサービスが利用できるようにするか、お金を必要なだけ補うなんらかの
しくみをつくらなければならないと思います。そういった努力をしなければ、
うつ病の発症や自殺、高齢者虐待、介護殺人、路上生活者の増加などの人とし
ての尊厳が踏みにじられる事態は止まらないと思います。
(ご質問)高齢者虐待の問題は考えられなかった。暴力を振るうこともそうだが、食事を
与えなかったり、トイレに行かせなかったり、最低だと思う。厳しく罰するべ
きではないか。
(お答え)講義の場でも述べましたが、高齢者虐待防止法は、一方で高齢者の権利・利益
を守る事が目的ですが、他方では、虐待をせざるを得ないところまで追いつめ
られた介護者へのケアも目指しています。もちろん悪意による人権侵害には厳
しく対峙し、権利・利益を回復すると同時に行為者を処罰するという事も必要
ですが、多くの場合、好きこのんで自分の父親や母親に対して虐待を行うわけ
ではありません。そこまでに追いつめられた人もまたある意味では被害者であ
り、双方の人としての尊厳を回復する視点が必要であると考えられています。
(ご質問)施設の方針を同じにしないと患者が混乱してしまい、生活に支障をきたしてし
まうかもしれないので、介護者の話し合いの場やコミュニケーションを取る必
要があると思った。それでも方針が合わなかったり、うまくいかなかった場合
はどうしたらいいのか。
(お答え)ケアマネジャーには、その人に関わる医療、看護、介護、リハビリテーション
の専門職の人々などとコミュニケーションをとり、その人がいまどういう状態
で何が必要なのか、どのようなサービスが提供されなければならないかといっ
たことについての共通認識の形成を促す仕事があるという趣旨のご説明をしま
したが、おそらくそのことについての関連質問と思います。サービスの担当者
が集まって会議を開くなどして話し合っても、方針が合わないという事は、実
際に起こり得ることです。そのような場合は、複数の方針をそのままご本人に
ご説明し、それぞれの方針の良いところと悪いところを比較してもらい、最終
的にはご自身でどの方針を選ぶか決めてもらいます。このことを「インフォー
ムド・チョイス」と言います。ご本人がどの方針も気に入らないという場合は、
ケアマネジャーを変更したり、サービス担当者の全部または一部を変更して新
たな方針を見つけられないか試すことも権利として認められています。
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