2020. 5. 5 更新
テレビドラマの犯罪捜査などで、タバコの吸殻からでも血液型を鑑定するシーンがある。
多くの人は、唾液にも『ABO式の型物質』が存在するのである。
(このタイプのことを『分泌型』という)
※
分泌型・・・唾液、精液、汗、尿などの分泌液や体液からもABO式の型物質が検出されるタイプ。
概ね8割のヒト(人種問わず)はこのタイプ。
(このタイプのヒトは、タバコの吸い殻や、使用したコップからでも血液型が判定されてしまう)
非分泌型・・・体液や分泌液中に、ABO式の型物質を殆ど分泌していないタイプ。
消化管粘液中にもABO物質なし(液ではない組織には存在)。概ね2割。
遺伝的には『分泌型』が優性。
皆さんは、自分が『分泌型』であるのか? or 『非分泌型』であるのか?
知りたくはないだろうか?
何と! 血液を検査すれば判るのである!
日本人での頻度
Le(a+ b- c-)型 非分泌型 22%
Le(a- b+ c-)型 分泌型 68%
Le(a- b- c+)型 多くは分泌型 10%
Le(a)抗原に陽性のヒトは非分泌型で、
陰性のヒトが分泌型だということが判っている。
唾液などにABO抗原を分泌しているか否かが、
血液を調べれば判ってしまうとは、実に面白い!
このLewis式の抗原(とくにLewis『b』抗原)が、
ABO式、Rh式に次いで抗原性が強いということも判っている。
かつて、ほんの一時期(1986年頃か?)、
『最近、気付かれた方もおられると思うが、東京ならびにその周辺の日赤献血センタ ーでは、献血カードに第3番目の血液型としてルイス式血液型も記載している。』
(Bioscience Series 生命現象への化学的アプローチ「血液型」山本 茂 著 化学同人
1986年4月10日第1版発行 より)
ということもあったようである(現在は記載していない。何故やめたのか?)。
健康診断の検査項目に、
『CA19-9』という腫瘍マーカーがある(基準値は37U / ml 以下)。
このCA19-9、最近の知見では、Lewis式血液型との関係が指摘されている。
Le(a- b- c+)型の人(日本人の10%いる)は、
この型の人についてだけは、ガンがあったとしても数値が上がって来ず、
体内にガンがあっても、CA19-9を産生できない。
腫瘍マーカーとしては利用できない!
ということが判ってきている。
しかし、自分がLewis式の何型かを知る人は稀である。
その型の人が、検査結果を見て(知らずに)安心しているのだとしたら、
それは危険なことではないだろうか?
それがムリであるなら、
献血センターでは、ぜひLewis式血液型の記載を
全国的に開始して頂きたいものである。
せめて Le(a- b- c+)型 の人には、本人に通知すべきであろう!
その人は、自分が 『Le(a- b- c+)型である可能性』を考えて
他のいくつかの腫瘍マーカーを併用するべきだと思う。
もし、過去にCA19-9の検査をして、その数値が『ゼロ付近』という超低値の人がいたならば、注意したほうがよい。
(日本人の10%もいるのだから!)、
ところで、『非分泌型』は、ノロウィルスに感染しないという報告もある。
ノロウィルスが口などから体内に入ったとき、
ノロウィルスは、胃や腸の粘膜に存在するABO式の糖鎖
(あるいはルウィス『b』抗原)
を足掛かりにして体内にとどまり感染するという。
しかし『非分泌型』では、
消化管の粘膜(粘液)にABO式の糖鎖が存在しないために、
ノロウィルスはとどまることができずに、体外に排出されてしまうのだという。
感染が成立しないのだ。
『非分泌型』は、ノロウィルスに対しては有利なようである。
消化性潰瘍の主な原因のひとつである『ヘリコバクターピロリ』菌についても、
同様の報告がある。
(H・ピロリも、胃粘膜・胃粘液のABO糖鎖を足がかりとしてくっつく)
『非分泌型』は『ヘリコバクターピロリ』にも感染しないらしい。
ところで筆者は、『B型の非分泌型』と判明している方を、
ごくごく少数だが存じ上げている。
そのほんの僅かな観察経験しかないのだが、
筆者の印象としては、一般のB型に比べて、図太さが少なく、
やや繊細な印象を受ける(まさに『非分泌的な』印象!?)。
ただ、観察例数がきわめて少数なので、責任は持てない(笑)。
Le(a+b−c−):非分泌型 日本人の22%
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