Defense Advanced Research Projects Agency(DARPA) 米国国防総省高等研究計画局

 国防総省の部門名で,旧称は Advanced Research Projects Agency(ARPA:高等研究計画局)。 1957(8?)年の旧ソ連が最初の人工衛星スプートニクを打ち上げたことに危機感を抱き,軍事利用可能な科学技術で先行するために設立。 ARPA-NETを作った。 最近は,民間プロジェクトへの資金提供を担当している。 本来は宇宙機関として設立されたが,宇宙競争が熱を帯びるにつれて,惑星外空間における DARPA の任務は,NASA や米国家探偵局のような新しい団体に移された。 しかし,DARPA は2004年までの数年間に,再び宇宙に目を向けはじめ,DARPA のさまざまな部門から科学者をまとめた『仮想宇宙局』(Virtual Space Office)を設立している。
 2003年の研究費用は,280億ドル近く。

 国家安全保障の重要戦略として,量子コンピューティング技術による超高性能な計算環境の整備を目標としている。 しかし,それへと移行するまでには,まだ非常に大きなギャップがある。 そのラグを埋めるコンピューティング技術として HPCS が提唱され,2002年からスタートした。 また,コンピューターが人生の複雑さに対処する手助けをし,最終的にはコンピューターが自分で考えられることを目指す一連の計画を立ち上げている。
 国家安全保障の重要戦略として,超高性能な計算環境の整備を目標とした High Productivity Computing Systems(HPCS)というプログラムを設け,その中で IBM の Productive,Easy-to-use,Reliable Computing Systems(PERCS)プログラムに5,330万ドルのサポートを行っている。 PERCS は,複雑な作業内容を自動分析することで,多様な作業に適用できるコンピュータの設計を目指している。

サイト:http://www.darpa.mil

 1980年代の RP3 プロジェクトをはじめ,パラレルプロセッシング,セキュリティ,コンパイラ,コンピュータ・アーキテクチャなどの分野で IBM と協力してきた。 今は Power-Aware Computing and Communications という低消費電力技術開発の官民共同のプロジェクトを進めている。 PACC の一環として,IBM の Low Power Center に資金援助などを行う。
 任意の言語を英訳するシステムを短期間で構築するプロジェクトを行っている。 システムは,事前情報なしに指定された言語を対象に,データを高速に処理し,それぞれの語句を対応する英語に変換する統計モデルを構築するもののようである。
 2003年3月,プロジェクトの運用実験では,2週間以内でセブアノ語を英語に翻訳できるシステムの構築が行われた。 研究者の多くはそれがどこで話されているのかを知らず,リソースを見つけるのさえ一苦労だった(セブアノ語はフィリピンで話されている言語の1つ)。 6月9日,コンピューター科学者や自然言語の専門家たちで構成されたグループは,ヒンディー語を英語に翻訳するプログラムを1ヵ月以内で作成せよと命じられた。 今度は,情報源は膨大にあるものの,文字をコーディングするための標準的な手法が存在しなかった。 9月,米国議会上下院の合同委員会の決定により,今後はデータスキャニング計画だけではなく,歩き方や人相を記録したビデオ画像やレーダー装置を利用して,離れた場所にいる人物の身元確認を行なう計画も禁止される。 一方,将来のテロ攻撃とその対応をシミュレートできるソフトウェアの開発が2件と,生物兵器テロ攻撃の迅速な検知を促進する計画が1件,そして外国の文書と放送内容を自動翻訳するソフトウェアの開発の1件は継続される。


Defense Advanced Research Project Agency Network(DARPANET)
 ARPA-NET の前身。


Avatar プロジェクト
 2012年2月に DARPA が開始する,遠隔操作で兵士の『代理』となって働く二足歩行ロボットの開発計画。 『兵士と協力し,代理として行動できる半自律二足歩行マシンのインターフェースおよびアルゴリズムを開発』する。 二脚ロボットが対応すべき状況としては『室内制圧,セントリーコントロール,戦闘負傷者回収』が挙げられており,生身の兵士と協力して矢面に立つ状況での利用を想定しているらしい。


  • DARPA Grand Challenge


    Learning Applied to Ground Robots
     DARPA の『情報処理技術室(IPTO)』が提案する『学習する自律走行車』を開発する計画。 全長 70cm の自律走行車2台を競わせるレースを毎月主催し,1年半後には知能プログラムを備えた自律走行車が,出来の悪い従来タイプよりも10%速く小規模な障害物コースを横断でき,さらに1年半後には,この優れた頭脳を持つ車が,通常の自律走行車の2倍の速度で走行することを目指す。


    TRANSTAC トランスタック
     DARPA が資金援助している,音声認識ソフトと翻訳ソフトをインストールしたノートパソコン1台を使い,米軍兵士がアラビア語で会話できるようにするシステム。 兵士が英語で話すと,その言葉は即座にイラクのアラビア語に翻訳され,コンピューター合成の音声で『読み上げ』られる。 その逆も可能。


    フレーズレーター
     英語のフレーズを他言語に翻訳するプログラムを搭載した携帯情報端末。 アフガニスタンやイラクの駐留部隊や医療関係者に広く利用されているが,アフガニスタンのような識字率の低い国では役に立たない場合もある。



    IAO 情報認知局
     DARPA に所属し,レーガン政権で国家安全保障担当補佐官を務めたジョン・ポインデクスター氏が率いる組織。 同氏は,イラン・コントラ事件に関して議会での偽証,公文書の破棄,議会による事件調査の妨害を行なったとして有罪判決を受けた過去がある。 ただし,有罪判決は『議会への証言に免責が与えられていたにもかかわらず,裁判で使用されたのが不当だとされたため』控訴審でくつがえされている。 現在,一般市民の金融,電話,移動,医療に関する記録を統合してテロリストを割り出すシステム(TIA)を開発中。 2003年9月,米国議会上下院の合同委員会が,閉鎖する決定を下した。



    国防高等研究計画庁計画,DARPA 計画

     政府の機密活動での利用が増えているオープンソース OS の保護を目的としている。 以前にも,オープンソース・セキュリティーに助成金を出したことがある。



    Composable High Assurance Trusted System(CHATS)プロジェクト

     DARPA が行っている援助計画。 DARPA はオープンソース OS 開発コミュニティーの成果で機密扱いを受けていないものをすべての CHATS 計画に含めることを要求している。



    Reiser ファイルシステム計画

     ジャーナリングという概念を利用して,データ保存の高速化,信頼性の向上を実現するプロジェクト。 コンピューターがクラッシュしたり,システムを終了しないで電源を消しても,Reiser は正常な状態にすぐに回復できる。 DARPA は次期バージョンに暗号化機能を追加するために60万ドルの助成金を出している。



    Combat Zones That See(CTS) 戦闘地域監視

     DARPA が進めている,アメリカ軍が国外の都市で兵士を守ったり戦闘を行なう際の支援が目的のプロジェクト。 サイズ,色,形状,ナンバープレートから車両を割り出したり,運転手や乗員を顔で見分けたりといった作業を自動的に行なう画期的なコンピューター・ソフトウェアを開発する。 監視リストに載っているナンバープレートを付けた車両を見つけると即座に警報を発し,数ヵ月分の記録を調べて,テロ事件の現場近くにあった車両を捜したり車両の比較を行なえるものになるらしい。



    Exoskeleton

     DARPA が計画中の,歩兵に装着して基礎能力を上げるパワードスーツ。 全身を覆うハイテクのフレームで,重量は10kg以下。 装着すると 100kg の荷物を運び,時速 25km で24時間行軍し,生身の人間以上の跳躍ができる。 研究は60カ月計画で,48カ月で基礎研究や試作機製作を終了し,コスト・能力的に見込みがある場合は,2005年までに最初の試験を行なう予定。



    Terrorism Information Awareness(TIA) テロ情報認知
    旧称 Total Information Awarenss System(TIA) 全情報認知システム

     DARPA が計画している,テロリストの情報につながる痕跡を探知し,テロ発生前にそれらを解明するシステム。 情報認知局(IAO)で退役海軍中将のジョン・ポインデクスター氏(イラン・コントラ事件に関する嘘の議会証言をした人物)が指揮していたプロジェクト。 5年がかりで情報の蓄積およびアクセス技術を根底から作り直すことを目指していた。 クレジットカード,医療,教育,世界中の米国人や外国人の旅行などの移動に関する記録を「空前の規模」で統合。 これらの記録を調査し,テロ攻撃の準備を示す証拠となるような行動を見つけ出すソフトウェアを開発するもの。 具体的には,パスポート申請,ビザ,労働許可,運転免許,レンタカー利用記録,航空券の購買記録,逮捕歴,クレジットカードの履歴,学歴,医療や居住の記録などから,浮かび上がるパターンを見付けだし,テロリストによる攻撃を予想するというものだった。
     2002年12月,ポインデクスター氏の個人情報を割り出され,自宅の写真や電話番号がオンラインで公開され,100以上のウェブページに転載された。
    2003年5月ころに,Terrorism Information Awareness(TIA:テロ情報認知)に改名。 目的は,手がかりになりそうな幅広い種類のデータベースから取り出した情報を比較して,テロリストの疑いのある人物を特定することになった。
     発表以来物議を醸し,左右の両派から,米国民に「ビッグブラザー」を押しつける試みだとして批判されてきた。 2003年,アメリカ議会の反対に遭って中止された。 無数の手続きや記録を調査して検証する場合,何の罪もない市民が疑われる危険性があり,プライバシーにもたらす影響を懸念したためで,情報認知局(IAO)は閉鎖され,行なっていたほとんどの研究の継続が禁止された。 ただし,秘密裏に進められていると考えるアナリストは多く,行っていた研究の一部は,米国の諜報機関に引き継がれているらしい。



    LifeLog プログラム ライフログ

     アメリカ国防省が計画中のプロジェクト。 DARPA の,あらゆる情報を網羅した壮大な日記を作り上げる実験。 個人に関する全情報を追跡し,エピソード記憶をコンピューターに持たせようとする試み。 主人となる人間の習慣や願望について学習する機能を持つ,コンピューター・アシスタントを作ることが目的で, そのため,ある人物が見たもの,行った場所,感じたことまですべてを記録しデータベース化することを目的とし,収集された情報はつなげられ,関係や出来事,経験をたどるべく脈絡を与えられることになっている。 つまり,コンピューターは,ちょうど人間が人生を送る場合と同じで,まずはよく見て記憶していかなければならない。 これにより,特定の個人のためにカスタマイズされ,その人物が何を求めているか推測できるデジタル・アシスタントが,次には,自分で考えることができるコンピューターが登場するかもしれない。
     DARPA の計画では,個人の生活で把握可能なあらゆる要素を収集,データベースに保存し,それをつなげて脈絡を与え,関係や出来事,経験をたどる。 そのため,送受信した電子メール,撮影した写真,閲覧したウェブページ,通話,視聴したテレビ番組,読んだ雑誌などあらゆる行動を1つの巨大なデータベースに取り込み,個人の生活における『脈絡』を追跡する。 それにより,日課,人間関係,習慣など,個人に特有の行動パターンを得られれば,集団の中から個人を区別したり,その個人を監視したりすることが容易になる。 DARPA は『戦場で活用できる可能性を探っている』という信じがたい説明を行っている。 また,ライフログが経験を記録することで,よりリアルにコンピューター化された訓練プログラムや,戦場の司令官を補佐するロボットの開発に役立つ可能性があると主張する。
     2003年5月に公表された途端,猛烈な批判を招いた。 7月14日まで,『研究者は,明確な事前同意を得ていない人物の映像や音声を記録してはならない』と募集要項を変更して研究者を募っていた。
     2004年1月末にひそかに中止された。 ただし,人工知能の研究者たちは中止を残念がっている。 また,民間レベルでは,この分野の研究は進んでいる。



    Just In time Power(JIP)
     DARPA のもと Power-Aware Computing and Communications(PACC)で進められている研究。 パフォーマンスを発揮するために必要な電力を,適切な時に適切な場所だけに供給する技術の開発を目指している。



    High Productivity Computing Systems(HPCS) 高生産性コンピューティングシステム

     DARPA の開発計画。 2002年からスタートした第1段階では,各大学や企業からの幅広いプロジェクト募集が進められた。 2003年7月の発表で,第2段階では,公募されたプロジェクトから3つに絞られ,3年にわたる HPCS の実用化レベルを検討する研究開発が行われ,さらにプロジェクトを厳選し最終開発段階に入る。
     DARPA は HPCS 研究開発プロジェクトの第2段階として,Cray/IBM/Sun Microsystems の3プロジェクトを承認,資金提供を行うこと発表。 IBM は Productive, Easy-to-use, Reliable Computing Systems(PERCS)プロジェクトという,複雑な作業内容を自動分析し,リアルタイムにコンピュータが判断を下して対応できる,システム開発を目指す。 これは,人工知能をもつコンピュータが状況の変化に柔軟に適応している「Adaptability」が前面に掲げられている。 ロスアラモス国立研究所や全米の12の主要大学が参加する。 Cray は New Technology Endeavors と提携し,メモリ性能の大幅な向上を目指す Cascade プロジェクトを行う。 NASA の JPL およびカリフォルニア工科大学との共同研究となる。 Sun Microsystems の Hero プロジェクトは,革新的なチップ技術とシステム設計により,ペタフロップレベルの HPCS を目指す。
     2006年11(?)月,この第3段階として,IBM と Cray の開発計画を承認し,総額およそ5億ドルの資金提供を行なうと発表。



    Policy Analysis Market 政策分析市場

     DARPA のテロリストの攻撃を防止するためにできる限り幅広く,新しい諸方法を調査する研究努力の一環として,将来のテロリスト攻撃や特定の指導者に対する暗殺の起こる可能性について,投機家がインターネット上から賭ける方式の先物取引市場を設置する構想。 トレーダーは,経済,市民,軍の行動,テロリストによる攻撃などの条件を考慮して,中東で何が起きるかという予想シナリオに基づいて先物契約を売買。 予想が当たった場合,その先物契約をしていた投機家は,予測が外れたトレーダーから上がり(賭け金)を集める。 2003年7月29日,米国防総省は計画を破棄すると発表。



    Real-World Reasoning project(REAL) リアルワールド・リーズニング

     DARPA が取り組んでいるプロジェクト。 コンピューターが状況を複数の方法で検討するようになることを目指している。 さまざまな事を推測するには,違った種類の推論が必要だが,推論のモードを切り替える点はまだ非常にお粗末である。 そこで,さまざまな思考方法を1つのシステムに統合することを目指している。 2003年7月7日,詳細が公開された。
    サイト:
    http://www.darpa.mil/ipto/index.html



    ASCI プログラム

     HPCS に基づいた,高性能コンピューターの開発計画,核爆発のシミュレートを目指す。 IBM Power PC 604e を 5,808機搭載し 3.9TFLOPS を実現した ASCI Blue Pacific,MIPS R10000s を 6,144機搭載し 3.1TFLOPS を実現した ASCI Blue Mountain,IBM POWER 3 を 8,192機搭載し 12.3TFLOPS を実現した ASCI White,Alpha EV68 を 8,160機搭載し 20.5TFLOPS を実現した ASCI Q,ASCI Red などのスーパーコンピュータが誕生している。


    ASCI Red
     ASCIプログラムで建造され,サンディア研究所に1996年に設置された設置されたスーパーコンピュータ。 Pentium II Xeon 9,632機を搭載し,ピーク時性能 3.2TFLOPS を実現。



    Tactical Mobile Robotics(TMR) 戦術的移動ロボット

     DARPA の自律型知能ロボットの開発計画。 1997年に開始され,危険地帯で人間に代わって作業するロボットを作ることを目的に, 学術機関や企業など数多くのロボット研究事業に資金を提供してきた。 これで開発された TMR 17台は2001年9月11日の世界貿易センターの崩壊現場で,7人の遺体を発見。 人間の兵士にはできないこと,あるいはしたがらないことを代わりにするロボットの開発が実現可能だと証明された。
    サイト:
    http://www.darpa.mil/ato/program/tmr.htm



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