biometrics バイオメトリックス(単数扱い)

 生物測定学、寿命測定。 コンピューター業界では個人の識別の意味で使われる。 ここ2000年ごろから技術は飛躍的に進歩し,機器の低価格化も進み,一部は100ドルを切る。 単にパスワードを入力するのではなく,指紋,声紋,顔貌,掌形,虹彩,網膜などの身体的特徴を利用して個人を認識するバイオメトリクスは,高速かつ高精度な新技術の発表が続き,偽造や盗用を防止しやすいため,重要施設への入退室管理,機密データへ のアクセス管理,PC 端末での本人確認といった分野で導入が進んでいる。
 歩き方の特徴から個人を特定・追跡する方法も研究されている。 ジョージア工科大学の研究グループは,足の運び,腕の振りなどを解析し,2002年10月の時点で,個人の特定は80〜95%らしい。
 各個人の DNA にはわずかな差異があり,これを身元確認の指標として使うことが可能で,個人の遺伝子の塩基配列を特定するための指標が続々と開発されている。 もしかすると DNA が究極の身分証明書になるかもしれない。

認証方式(デバイス)としては下記のものがある。
指紋読み取り機
・静脈分布,手の甲・ひらなど
・フェイスレコグニション(ビデオカメラ)
・眼球の虹彩(こうさい)のスキャナー
・声紋
・キーボードから特定の単語を入力する時の癖

 個人識別の方法としてバイオメトリックスは現在のパスワードに変わりうる可能性がある。 しかし導入には,ネットワークに接続されているコンピューターのすべてにそのハードを装備し,必要なソフトウェアをインストールするのみならず, バイオメトリックスセキュリティデータベースの維持管理などを含めた膨大な費用が必要である。 また,スキャナーが正確に機能しないときや,スキャン用ソフトウェアを動かしているコンピューターが不調の場合にそなえ,バックアップ・システムが必要だとされる。
 現在,セキュリティの専門家たちは,パスワードのもろさに危機感を募らせている。 だが,バイオメトリックスを導入した場合の初期投資や設定コスト,不便さを考えれば,パスワードシステムによる潜在的な損失は,十分許容範囲に収まると思われる。 したがって,すべてのデスクトップ PC やラップトップに標準でビデオカメラが装備されるようになるまでの間, ネットワークを守るのは依然としてパスワードシステムと思われる。

 ネットワークで行き詰まりを見せるバイオメトリックス認証だが,ネットワークセキュリティとは全く無関係な分野で注目を集めている。 例えば,フェイスレコグニションは,失そう者や手配犯などを店などに設置された防犯ビデオなどから探し出すための利用が検討されている。 また,空港管理局は,手配犯のデータベースと照合することで,容疑者の検挙率を向上させようとしている。

 各種企業では,社内コンピューターやネットワーク上に保存された重要な情報を保護し,高いセキュリティーを確保しようとしている。 こういったなかで新しい指紋認証デバイスが登場し,バイオメトリクスが勢いに乗っていることを示している。

 これによる個人認証システム市場は急速に発展しており,International Biometric Industry Association は,2011年には US 25億ドル規模の市場へと成長すると予測。
 矢野経済研究所は,国内のバイオメトリクスのハードウェア市場は,2002年度で46.8億円,2005年度で157.3億円,2007年度で223.5億円,2010年度で451.7億円と予測。 2002年度の用途別では,出入管理用途が 26.2億円,PC などのアクセス用途 19.4億円,その他 1.2億円。 同年度の識別方式予測では,指紋認証 39億円,顔貌認証 3.2億円,虹彩認証 2億円,声紋認証 0.7億円 ,署名認証 0.5億円,掌形認証 0.5億円,その他 1億円。
 2003年10月10日,NTTデータと全日本空輸は,成田空港で「e-チェックイン実験」を12月から2004年3月まで実施すると発表。 バイオメトリクス(生体認証)技術を利用して搭乗手続きを迅速化するシステムの検証を行なう。
 2005年10月13日,フィンランド国立技術研究所は,携帯電話などの盗難対策として,持ち主の歩き方で本人かどうか識別する技術を発表。 加速度センサーなどで歩行の特徴を計測するもの。 購入後の最初の使用時に,本人の歩行データを記憶しておき,データと照合,食い違えばパスワードの入力を要求する。 90%以上の確率で認証に成功しているが,別人を本人と間違えた例が2%,本人を別人と判断した例が4.9%ある。



facerecognition フェイスレコグニション,人相認識システム

 カメラなどから入力された顔の画像から個人を特定するシステム。 画像に映った顔の輪郭は目鼻の配置などを解析し,事前に登録してある顔写真と照合する。 指紋と比べても,非接触であることから抵抗感が少なく,本人に気づかれずに認証・照合を行うことも可能。 照合ミスを避けるため,写真は高品質でなければならない。 撮影の際の頭の動き,間接照明,サングラスやメガネはシステムを混乱させる要素となる。 2001年9月11日の同時多発テロ以降注目されるようになったが,技術開発の歴史は長く,日本で顔認識の研究開発を行ってきた NEC やオムロンは,1990年ころから取り組んできた。
 1998年,治安の悪化していたロンドン東部のニューハム地区に監視カメラ300台が設置され,Identix 社の FaceIt が導入された 犯罪発生率は2年間の間に30%以上も低下したとされる。
 2001年9月11日の同時多発テロが拍車をかけ,ダラスのフォートワース空港やパームビーチ空港,ボストンのローガン空港などに FaceIt などの製品が次々に導入された。
 2002年に入ると,街中にも顔認識監視カメラが導入されだした。 導入する際には,市民の賛同をどれだけ得られるかが最大の障壁となっている。 2002年にフロリダ州のパームビーチ国際空港で行われたテストでは空港職員の認識率は47%だった。 米国防総省やボストンのローガン空港や陸軍研究所でも同様の結果だった。 開発元は照明が不適当だったと主張している。 また,写真や顔の画像を表示したノートパソコンを掲げるだけで騙せるシステムもある。 2002年8月,ミズーリ大学は原子炉のセキュリティー手段として採用した。
 2009年2月,写真で ASUSTeK Computer (ASUS) や Lenovo,東芝のノートパソコンが採用する顔認証技術を突破できることが実証された。



手の静脈分布による個人同定

 手の甲の静脈を認識するものは,1999年,韓国のベンチャー企業,バイオキーシステムズ(ソウル市)が開発, 静脈の分布が個人により異なることを利用し,赤外線で認知する。 認識にかかる時間は約1.5秒で,個人を認識できない確率は 0.01 %らしい。
 手のひらの静脈も人によって異なり,パターンが生涯変わることがないため個人認証の手段として信頼性が高い。 また,体内にあるため,他人には知られにくいというメリットもある。



指静脈認証 血流認証(狭義?)

 光学技術を用いて指内血管パターンを検出する方式の認証システムまたはその技術。 指の静脈パターンを用いて個人を認証する,目に見えない静脈パターンを利用するため偽造によるなりすましが困難で,認証精度が高いのが特徴とされ,偽造に強いとされる。 血管パターンは,指紋と同様に個々人で特有のパターンを持ち,一卵性双生児でも全く異なる。 近赤外光を指に照射してその透過光をカメラで撮影,血液中のヘモグロビンで吸収されることで現れるパターンを,データベースの登録者パターンと比較して本人かどうかの確認を行う。 指紋認証などと異なり,接触面が非常に小さいため,汚れなどによる誤認識率が非常に低い。
 2003年9月,日立製作所が実用的な技術の開発を発表。
 2004年1月8日,ジェーシービーなど5社は,分譲マンションに「血流認証」を採用した多機能ソリューションを導入すると発表。 本人拒否率0.01%,他人受入率0.0001%の精度を実現し,オリックス・リアルエステートが販売する分譲マンションに採用される。



Common Biometric Exchange File Format(CBEFF)
バイオメトリックファイル共通交換ファイルフォーマット

 バイオメトリクス技術に対応するために必要なデータ要素を標準形式で記述するための規格。 共通のデータ定義により、バイオメトリクスデータを厳密に検証し交換することが可能となる。
ANSI が草案を作成し,国立標準化技術研究所(NIST:National Institute of Standards and Technology)が維持・管理している。



XML Common Biometric Format(XCBF) XML 共通バイオメトリックスフォーマット

 DNA,指紋,瞳の虹彩,手の形状といった人体の特徴で個人を認証する情報を記述するための規格。 電子文書へのアクセス許可や電子商取引における認証, 出席の確認・計測,文書やその他情報源へのアクセス管理,商取引における否認防止など,さまざまなバイオメトリック応用分野で使われる見込み。



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